お嬢様とルシア様の敵など、ただ切る対象でしかないであります
*今回はウリユ視点でお送りします
「見つからない、どこにいるでありますか……」
リーダーは少なくともルシア様の光で覆われている村の中にはいない様子。
この光を嫌ったでありますか?
となると、残る候補は……。
「そういえば、お嬢様とルシア様がデートに行った村外れの丘があったでありますね」
お2人の話によると村全体が見渡せるとのこと。
もしかしたらお嬢様の固有能力の射程外である可能性もあるでありますな。
「指揮官にとっては都合がいい場所でありますね、きっとそこに!」
お嬢様がモンスターを倒し過ぎた後では逃げるかもしれませぬ、急がなければ。
「やはり、ここにいたでありますか」
「チィ、気づかれたか」
思った通り、ただお嬢様の固有能力の範囲内だったことは予想外でありましたが。
「貴様、向こうで我が配下を次々と仕留めていく奴の仲間だな?」
「……その通りであります」
「少しづつだがチカラが抜けていく、なんだこれは?」
「答える義理は無いであります」
お嬢様とルシア様の敵など、ただ切る対象でしかないであります。
「いいや答えてもらうぞ。 貴様もこの広範囲攻撃を行っている者も魔族だな、なぜ人間の味方をする?」
「だったら、自分の質問にも答えてもらうであります」
「交換条件というヤツか、いいだろう」
む、まさか乗ってくるとは。
こうなってしまっては自分も騎士として正直に答えるしかないであります。
「我は約束を守る、貴様から先で構わんぞ」
「見たところ正面から突撃するしか脳がない輩ではないようだが、何が目的でありますか!」
「我が何者かは興味ないというのか、少し傷つくな」
どうせこれから切る相手のことなど、覚える必要は無いであります。
「我の目的だったな。 単純に勢力拡大だよ、他の連中に先を越されては困るんでな」
「魔族が人間界で勢力拡大、おかしな話をするでありますね」
「本来ならな、だが魔王様が己の死をトリガーに発動するこの最終作戦に便乗してしまえば人間と魔族の勢力図を大幅に塗り替えることが可能かもしれないではないか!」
今の人間界の状況が魔王によるものというお嬢様の仮説は当たりだったようでありますね。
しかし、何か引っかかるものがあるであります。
「個人で勢力拡大などして、最終目的は何でありますか!?」
「知れたこと、我が次の魔王となることだ」
なんと!?
とんでもないことを考えるヤツもいたであります。
「今度は我の質問に答えてもらうぞ、貴様は何者だ?」
「悪魔ラピアの騎士、ウリユであります」
「ラピアだと、あの大悪魔ラピアがここにいるというのか!?」
「お嬢様を知っているでありますか」
「当然だ。 大悪魔ラピアといえば魔王様も手を焼き配下に加えるのを断念した存在、自らの拠点で常に傍観してるとの噂だったがまさかヤツもこの時を狙っていたのか……」
なんか尾ビレ背ビレがついてるでありますね。
お嬢様に言われた通り、相手が勘違いしているのならわざわざ訂正しないでおくであります。
「大悪魔ラピアの配下よ、ひとつ取引をしよう」
「一応聞くであります」
「我と手を組まないか、いや不可侵でもいい。 今大悪魔ラピアと事を構えるつもりはない」
「それを呑んだら、この場は引くでありますか?」
「ああ、約束しよう」
とは言ったものの、自分にこの交渉の決定権は無いであります。
お嬢様からの指示はあくまでもこの男の無力化。
まてよ、倒さなくても自分が魅了して言うことを聞かせればいいだけでは?
「さあ、どうだ?」
「応えこれであります、『チャーム』!」
「何、ぐおおおおおおおおおお!?」
ここまで苦しむとは、魅了への抵抗力がかなり高いでありますね。
視線がこちらを向く。
しかし、その目は魅了かかった虚ろなモノではなく……。
「こんなにも強力な『チャーム』かけてくるとは、貴様まさか淫魔か?」
「くっ、失敗したでありますか」
「よくもやってくれたものだ。 交渉は決裂だな、こうなったら大悪魔ラピアもろとも皆殺しにしてくれる!」
「そんなことはさせないであります!」
「ハッ、淫魔にこれ以上打つ手などなかろう!」
普通のサキュバスなら、そうでありますね。
でも、自分は一味違うであります。
お嬢様から賜った剣を取り出す。
「淫魔ごときが立派な剣を持ったところで、たかが知れてるわ!」
「ならばその身で受けるであります!」
「ほう、剣に雷撃を纏わせるとは器用だな」
「ここはお嬢様の固有能力射程内、長期戦はできないから最大の一撃を叩き込むであります!」
「だが、そんな大上段の大振りが当てられると思ってか!」
そう、普通ならこんな見え見えの振り降ろしが当たるわけがない。
だから、こうするであります。
「『重力結界』、これで動きを封じるであります!」
周囲に重力の力場が発生し自分と名も知らない魔族をその場に縫い付ける。
そう、自分もあります。
「こんな魔法まで使えるとは……、だがこれでは貴様も動けまい!」
「何を言ってるでありますか、自分は重力に従ってこの剣を振り下ろすだけでありますよ!」
「しまっ……。 待て、我は次の魔王に!」
命乞いなど無視。
遠回りをしたもののお嬢様とルシア様の敵は切ると最初から決めているのでありますから。
「必中必滅、『フルーモグラビターギュート』!」
渾身の一撃を振り下ろす。
名も知らぬ魔族は断末魔の叫びすら上げることができぬまま、直撃を受け粉々に消し飛んだ。
「うわっ、やり過ぎたであります!?」
見事に丘の地形が変わっている。
お嬢様がここで何かの家畜を放牧していると言っていたような……。
「さっきのヤツに罪を擦り付けるでありますか、いやいやそれは騎士として失格であります……」
うーむ、正直に謝るしかないでありますね……。
「やり過ぎた謝罪も含めて、お嬢様と合流しなくては」
リーダーを撃破して、何か変化があったもしれないあります。
事態が好転したことを祈って、来た道を引き返しましょう。




