よかろう、ならば盛大に正体を明かして全てを殲滅してやろうではないか!
「お嬢様、ひとつ気になることがあるであります」
「言ってみよ、ウリユ」
「なぜこの総攻撃は『死後』なのでありますか、強化を受けた魔族が絶対服従なら生きている間にだってできたのは?」
「ふむ、そのことか」
そういえば、魔王と直接の面識があるのはこの場だと妾だけか。
ルシアが対面した時にはもう死体だったことだし。
「奴の性格だよ、魔王には封印が解けて魔王城を出られるようになるまで本格的な攻勢に出る気は無かったようだからな」
「よくわからないであります」
「人間界に総攻撃を仕掛ける際には奴自身も参加したかったのだよ、そういう性格だったとしか言いようがない」
「ラピア様、詳しいんですね」
「不可侵条約を結ぶ時に直接会ったのでな、どんな男かは知れた」
だからこそ今回の世界同時多発スタンピードは奴にとって不本意なプランだったであろう。
ついでだ、ソレも台無しにしてやる。
「って、不可侵条約を結んでいたのに私と一緒に魔王討伐しちゃったんですか!?」
「妾は悪魔ぞ、口約束など守るものか。 強制力のある魔法の契約をしなかった奴が悪い」
「流石お嬢様であります!」
「ラピア様と一緒にいると、私の悩みもどうでもよくなっちゃいますね」
とはいえ、妾1人では勝ち目など無かったからな。
聖女と手を組むのは完全に想定外だったということであろう。
妾自身もこんなことになるなどとは思わなんだ。
「では作戦会議に移るぞ。 大きな口を叩いたものの、かなり厄介なのでな」
「お嬢様の固有能力を使えば簡単に終わるのではありませんか?」
「確かにそうだが『ネーディスクリミネシオ』は無差別に生命力を収奪する、人間は射程外に逃がせばいいだけかもしれぬが家畜や作物は巻き込まれる」
「あ……」
「妾はこの村の営みをこの目で見てきた、ウリユもそうであろう」
そして、魔王の計画を台無しにするというのであれば完全勝利したい。
したい、が……。
「逆に『ネーディスクリミネシオ』を使わないのであれば圧倒的な数に押しつぶされるであろう、だから難しい」
「自分も加勢するであります!」
「それでもだ、マトモな戦力がたった2人では今も戦う気満々な人間共も無事なまま完全勝利するのは不可能であろう」
「でも傷ついたのなら、私が治せます」
「そうだな、だがそれはお互いに正面衝突し徹底抗戦できた場合の話だ」
そこまで我々に都合良く転ぶとは考えにくい、見張りの話からすると別動隊はいないようだが。
「もし敵が強行突破を選んだ場合、防衛ラインは簡単に突破され村は蹂躙される。 それだけは避けねばならない」
「そんな……」
「だから2択だ。 『ネーディスクリミネシオ』を使い人間だけは無事に済ますか、それとも使わず分の悪い賭けに挑むか」
妾のチカラではそれが限界だ、情けない……。
「いえ、まだ他にも方法があります」
「……言ってみよ」
「私が『聖なる加護』と同じ効力を持つ結界で村を覆います、そうすればラピア様の『ネーディスクリミネシオ』で殲滅できるんじゃないでしょうか」
「実質『聖なる加護』で村全体を護るということか、そんなことが可能なのか?」
「一度もやったことはありませんが、できます!」
確かにそれならば被害0の完全勝利を収めることができる。
ルシアの願いも叶えてやりたくはある、だが……。
「上手く事が運べば一番良い結果が得られるのは間違いないな、しかし……」
「何か、あるんですか」
「『ネーディスクリミネシオ』を使ってしまえば妾の正体を隠しきれない、貧乏貴族の娘にできることではないのでな」
「それは……」
「その案を採用するならば村を追放され、二度と戻ってくることはできないだろう」
それでもその選択をするのか、と目で訴える。
ここはルシアの故郷だ、どうするかの選択はルシアがするべきであろう。
「例え二度と戻れなくなっても構いません、私はこの村の全てを守ります!」
ルシアの真っ直ぐ見つめる瞳が妾の視線と交わる。
先程までの責任感に押しつぶされそうになっていた弱い人間の姿は、もうどこにもないようだな。
それでこそだ。
「よかろう、ならば盛大に正体を明かして全てを殲滅してやろうではないか!」
「全てはダメです、村の全てを守るんですから!?」
「それはルシアの役目ぞ、やってみせるがよい!」
「はい!」
「お館様、見ているでありますか。 お嬢様は立派になられました、ちょっと悪魔らしくないでありますが」
最後が余計だ、ルシアの願いを叶えてやりたいというのは何もおかしいことではなかろう。
特別で、愛しているのだから。
「往くぞ。 敵の侵攻は遅いという話だから、先手を打つ」
「悪は急げ、でありますね!」
「魔界にはそんな言葉があるんですか?」
妾も初耳だ、ウリユが今勝手に作ったのであろう。
「何者かは知らぬが愚か者め、この大悪魔ラピアと敵対したことを後悔させてやろう」
ドアを開けて外に出る。
さあ、決戦だ。
せいぜい今だけ調子に乗っているがよい、どのような奴かは知らぬがその顔が絶望に染まる時が楽しみだ。




