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計画を台無しにしてやりたい気分だ

 それは、我々がこの村に到着して一週間程経った頃に起こった。




「大変大変、この村目掛けてモンスターの群れが侵攻してきているわ。 それも凄い数!」


「なんだって!?」


「ただ様子がおかしくて、侵攻速度が凄く遅いの。 あんなの見たことないわ」




 侵攻速度が遅い、なんだそれは?


 いやまさか、足の遅いモノに合わせているのか?




「よくわからねえがスピードが遅いってんなら援軍が間に合うんじゃねえのか、聖教会に要請は?」


「遠隔通話の魔法が使えるアレクがとっくにしたわよ、でもダメなの!」


「ダメってのはどういうことだ?」


「聖教会本部……ううん、聖教会領にある全ての村や街でも同じことが起こってるって話なの!」




 村人全員が集会所に集められて何事かと思っていたら、とんでもないことになったな。




「じゃあ援軍も来ないし他の村や街に避難することもできないってのか!?」


「……そうなるわ」


「どうするんだよ、ウチの自警団はあくまでも早期発見と早期連絡ができるだけでモンスターと正面から戦える戦力なんて無いぞ」


「ルシアを頼ろうにも聖女自身の戦闘力はまるで無いんだろ、八方塞がりじゃないか……」


「こうなったら、俺達自身で徹底抗戦するしかないだろ!」




 妾とウリユが戦力として数に入っておらぬが、よそ者に頼る気がないということか。


 もしくは、貧乏貴族というカバーを使ってしまったから対して強くないと判断されたか。




「どうしたらいいんでしょう……」




 結局あの場は男達が徹底抗戦をし女は足手まといにならないように村の外にこそ逃げられないものの、後方に下がるという結論になった。


 そしてルシアと妾とウリユは一旦ルシアの部屋へと戻ってきた。


 外に声が漏れないように魔法をかけて。




「まさかここまで準備周到だとはな、おのれ魔王め……」


「お嬢様、どういうことでありますか?」


「あくまで妾の仮説にすぎぬが、この事態は魔王が事前に用意していた可能性がある」


「自分が倒れた後のことも考えていたってことですか?」


「そうだ、現状では妾の憶測だがな」




 当たっていたとすれば、とんでもない置き土産を残してくれたものだ。




「ラピア様、どうしてそう思ったんですか?」


「ひとつめは侵攻速度が遅いという話があったからだ、ほぼ間違いなくリーダーによって足並みを揃えられている」


「各個撃破を避けるためでありますね」


「そうだ、連中がそれぞれ好きな速度で侵攻などしていたら個体差でバラバラになり折角の数を活かせなくなる」




 そんな隙を晒さないこの動きは頭が回るリーダーがいる証拠だろう。


 そして……。




「ふたつめだが、こちら強い根拠となる。 魔王の固有能力だ」


「魔王の固有能力って確か、魔族を強化するんですよね?」


「ルシアには以前話したな、魔王が倒れれば魔族は烏合の衆に落ちると。 だがヤツはそれを逆に利用したのだ」


「まさか、それぞれのリーダーが弱体化したことで統制がとれなくなったのでありますか!?」


「もしくはリーダーの知能が元に戻った結果、正面から突撃することしか考えられなくなったかだ」




 現状わかっている範囲でまとめるとそう考えざるを得ない。




「それが今聖教会領内で起こってることなんですか?」


「いや、恐らくは人間界全体で起こっているであろう。 魔族には人間の国境など関係ないからな、世界同時多発スタンピードとでも呼ぶべきか」


「魔王を倒したことが原因なら、私がこの事態を引き起こしてしまったということですよね……」


「それは違うぞ、これは勇者が魔王を討伐しても起こったことだ。 そして魔族全体が弱体化したのもまぎれもない事実であろう」




 全体で見れば、間違いなく人間側有利に傾いたハズだ。


 戦力が整っている集落はこの事態を乗り越えられるであろう。


 それとこの村が無事で済むかは別問題だが。




「でもお嬢様、この村を襲うリーダーが賢いなら逆におかしいであります」


「そうだな、この村の襲撃者は先程の話のどちらにも該当せぬ。 他の連中と違い個人で何かしらの思惑をもっているか……」


「もしくは、何でありますか?」


「元々こう動くように魔王から指示されていたのかもしれぬな」




 知能の低いリーダーなら勝手に人間を襲う、高いなら便乗するよう事前に指示しておく。


 筋は通っているハズだ。


 今ではもう確かめる術などないが、これが本当に魔王の計画通りだったとしたら。


 面倒なことをしてくれたものだ……。




「私が、私がなんとかしないと……」


「ルシアよ、落ち着くがよい」


「でも……!」


「魔王を仕留めたのは、この妾だ」




 堂々と宣言する、ルシアの背負っているモノを肩代わりするように。




「そして悪魔はな、責任など一切感じぬ」


「ラピア様……」


「だが魔王の奴にしてやられたというのが気に食わん、計画を台無しにしてやりたい気分だ」


「お嬢様コレ照れ隠しとかじゃなく本気で言ってるでありますね」


「だから守るぞ。 この村を、ルシアの故郷を」




 魔王よ、地獄で見ているがいい。


 貴様の計画は、この場だけでも台無しにしてやるぞ!

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