本来なら勇者様の取り分になるハズだった分も貰っちゃいましたから
「のう、ルシアよ」
「はい、なんですか?」
「移動には定期便とやらを使うと言っておったが本当にこれがそうなのか、我々以外誰もおらぬが」
「一番高級な便を選びましたから、高ければ高い程利用者は少ないんです。 それに浮遊の魔法を利用してるお蔭で揺れないから乗り心地も悪くないでしょう?」
一番高い、か。
昨晩の宿もそうだったが、ルシアに任せると基本高いコースを選びがちになってしまうな。
大丈夫なのだろうか。
「こんなにもお金のかかる方針で大丈夫なのでありますか、全てルシア様の負担になっているでありますが」
やはりというかウリユも同じことを考えていたらしい。
魔界では人間の貨幣など使い道が無いから妾も手持ちは0。
どうにかする方法もあるにはあるが。
「平気よウリユ、ラピア様も気にしないでくださいね」
「なぜだ?」
「魔王を討伐した報奨金として一生遊んで暮らしても使い切れない額を貰っているんです、本来なら勇者様の取り分になるハズだった分も貰っちゃいましたから」
「ほう、聖教会も太っ腹よの」
ならば有り難く使わせてもらうとするか。
誰にも言えぬが実際魔王にトドメを刺したのは妾なのだし。
「一応金策も考えてはおったのだが、必要なさそうだな」
「ラピア様、人間界で働くつもりだったんですか?」
「そのようなことはせぬ、その気になればいくらでも金貨を生みだせるというだけよ」
「そんなことができるんですか!?」
「当然のように偽物だがな」
本来は自分用ではなく文字通り「悪魔に魂を売ってでも願いを叶えたい」という人間に対して使う能力だが。
「見てみたいです!」
「構わぬぞ、ルシアだけは特別に無償で見せてやる」
とりあえず金貨を1枚生成する。
「すごい、見た目も重さもまるで本物みたいです」
「専門の鑑定士は見破るだろうが、田舎の個人経営商店店主レベルであれば騙すことも可能であろう」
「でもこれ旧金貨ですね」
「今は新しくなったのか?」
「そうです、私と勇者様が旅に出た頃に新しくなりまして、勿論お金の価値に変化は一切ないんですけど……」
それにしてはなんというか、新金貨の話題を口にするルシアはとても嫌そうに見える。
「その新金貨とやら、何かあるのか?」
「彫られているのがその、私と勇者様なので……」
それは確かに、妾も気分が良くない。
「死してなお妾とルシアの邪魔をするとは……なんだ?」
「馬車が止まりましたね」
「今日の移動はここまででありますか?」
「それにしては外の様子がおかしいような……」
これは魔界の臭い、ということは。
「聖女様、モンスターの襲撃です!」
「わかりました、私も行きます」
「ありがとうございます! 聖女様と共に戦えるとなれば、皆の指揮も上がりましょう!」
ルシアはやってきた護衛と共に外へ出て行こうとするが、一度立ち止まり。
「ラピア様はここで待っててくださいね」
「なぜだ、『ネーディスクリミネシオ』を使える状況ではないとはいえ戦えないわけではないぞ」
「それが問題なんです、今のラピア様は人間の子供のフリをしなければならないですから」
「む……」
ルシアの言う通りだ。
ここで妾がモンスターを蹴散らせば、確実に怪しまれる。
か弱い人間のフリというのも面倒なものなのだな。
「でしたら自分が行くであります!」
「いえウリユも……」
「コレだけなら、問題ないでありましょう」
そう言ってウリユは異空間に収納してあった剣を取り出す。
「かなり使い込んでいるな」
「修行していた間、ずっと握ってきたでありますので」
「ではラピア様、行ってきます」
「すぐ終わらせてくるであります!」
外に出るウリユに向かって、聴覚共有の魔法をかける。
これである程度だが外の様子がわかるであろう。
が、心配することなど何もなく襲撃してきたというモンスター共はあっさりと退治されたようだった。
護衛の兵士達がルシアを称える声が聞こえる。
と、そこに近づく足音があった。
「君も加勢ありがとう、お陰で助かった」
「この程度、お安い御用であります」
「我々としてはお客様の手を借りるなんて情けない話ではあるんだけどね、それはさておき」
「他にもなにかあるでありますか?」
「君の剣の振り方が気になってね。 必要以上に大振りをしているように見えたから、もう少しコンパクトに振るかもしくは振り方に合わせて大きな剣を使った方がいいんじゃないかな」
何だコヤツは、やたらとウリユに絡むではないか。
いや、まさか……。
「『解除』!」
「あれ、俺は一体……?」
「ルシア様、まさか……」
「さっきの人魅了されてたよ、アドバイスするフリをして口説こうとするなんて遠回りなやり方だったけど」
「不覚であります……」
やはり無意識に振りまいた魅了を受けておったか、面倒なことになる前に解除してくれたルシアに感謝だな。
しかし剣と振り方が合っていない、か。
見る限りウリユの剣はかなり使い込まれて切れ味も悪そうだった。
いざという時ウリユが武器のせいで本来のチカラを発揮できないなんてことになれば、それは主である妾の管理不行き届きだ。
ウリユのための新しい剣のことは、考えておかねばな。
結局モンスターの襲撃はこの時の1度だけでその後は何事もなく順調に進み、ルシアの故郷である村に無事到着した。




