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私だけでも生きてくれと、勇者の名に恥じない立派な最期でした……

「さて、準備が整いついに人間界へ進出するわけだが」


「……何か問題があるのでありますか?」


「妾の転移魔法では人間界のどこに出るか分からぬ、それでもよいか?」




 なにせ人間界へ一度も行ったことがないのでな。


 ルシアの故郷へ行くという約束だったが、すぐには果たせそうにない……。




「自分は人間界に行く術を持っておりませぬ故、他に手はないかと」


「えっと、それなんですけど」




 ルシアが手を挙げる。


 そういえばルシアも魔界へ乗り込んできたのだから、移動する手段を持っているではないか。




「私の神聖魔法なら聖教会本部直通の転移ができますよ」


「勇者が死んだ報告もしなければならないのだったな、ならルシアに任せた方がよいか」


「私の故郷も聖教会領内なのでそこまで遠くありませんし」


「なら都合が良いな、頼むぞ」


「はい!」




 ルシアが転移魔法を展開させる。


 最優先はルシアを人間のまま不老不死へ至らせること。


 人間界で見つかればよいが。





「ラピア様、到着しましたよ」




 目を開ける。


 そこには魔界とは違う青い空が広がっていた。




「魔界と人間界とは、こんなにも違うものか」


「自分も驚いているであります、空の色が違うとは……」




 最初の印象はウリユと同じだったようだ。


 まさしく、世界が違うのだな。




「そしてあそこが聖教会本部です」


「目に見える距離とは、便利なものだ」


「ではラピア様とウリユはここで待っててくださいね」


「どういうことだ、同行せずともよいのか?」


「聖教会各支部は結界に覆われていますから、本部のものは特に強力ですし」




 そういうことか。


 魔族である妾とウリユはその結界に身を焼かれてしまう、と。




「確かに外見は誤魔化せても結界をすり抜けるのは不可能だな」


「ではルシア様の言う通りに我々はここで待機するとしましょう」


「遠くまで行かないでくださいねー」


「妾は子供ではないぞ」




 確かに魔法で偽装している今は人間の子供にしか見えぬだろうが。


 そうしてルシアは1人で入口の門へと向かっていった。




「こっこれは聖女様、どうぞ中へ!」




 門番とのやり取りが聴こえる。


 どうやらこれは無効化されぬらしい。




「いっ、今の声はなんでありますか!?」


「聴覚共有の魔法だ、今ルシアに聴こえるモノを我々にも聴こえるようにした」


「便利でありますね」


「ウリユには出来ぬのか?」


「ずっと鍛えてばかりいたので、今の自分は戦闘特化であります」




 淫魔なのにか。


 妾についてきたことといい、こやつも中々に変わり者のようだ。




「どうやら偉い人に謁見するようでありますよ」


「待ち時間無しでか、聖女というのは思った以上に人間界で権力があるようだな」




 もしくは魔王討伐の報告だから特別なのかもしれぬが。




「そうか、勇者殿は魔王と相打ちになって……」


「私だけでも生きてくれと、勇者の名に恥じない立派な最期でした……」




 自分で死の宣告をしておいてよくもまあここまで言えるものだ。


 悪い娘だな。




「お嬢様、嬉しそうでありますね」


「ああ、妻が悪辣なことをしているとつい笑みがこぼれてしまうな」




 顔に出てしまっていたか。


 人間のままにしておくには惜しい、と思ってしまう。


 しかし共にいるためには人間でないと駄目なのだから、全てが上手くはいかぬものだ。




「して、聖女としての役目を終えたそなたはこれからどうするつもりだ?」


「一度故郷に帰ろうと思っています、その後のことはそこで考えるつもりです」


「そうだな、長い旅だったのだ。 しばらく休むがよい」




 そこは嘘をつく必要もないか。


 しかしよくもここまで堂々と嘘が言えるものだ、真偽判定の魔法を使われたら危ないというのに。




「帰郷までの護衛を用意しよう、今日はここに留まるがよい」


「その必要はございません、1人で帰れる距離です」


「そうか、そなたがそう言うのなら……」




 危ない危ない。


 護衛なんて付けられたら妾とウリユは確実に怪しまれるからな。


 外見の偽装だけで聖教会総本山のエリートを騙すのは難しいだろう。


 しかし、ルシアの発言は全て鵜呑みとは。


 いや、それがわかっているからこそ平然と嘘をつけるのやもしれぬな。




「話は終わったようでありますね」


「うむ、もう少し待てば戻って来るであろう」




 そして、入った時と同じ門からルシアが出てくるのが見えた。




「お待たせしました、物資の調達もしたら遅くなっちゃいましたね」


「構わん、ルシアには必要なことなのだろうからな」


「それでルシア様、目的地まではどのくらいかかるのでありますか?」


「ここから歩いても日没までに辿り着ける町があります、私の故郷へはそこから定期便が出ているのでそれを利用しようかと」




 なら、とりあえず今日の目的はその町か。


 妾とウリユは土地勘など皆無なのだからルシアに全て任せるとしよう。




「日没までに到着しないといけませんから、出発しましょう」


「妾やウリユは人間界だと夜の方が活動しやすいハズだが、ここはルシアに従おう」


「障害はお任せください、全て自分が蹴散らして御覧に入れるであります!」




 結局ウリユの意気込みも空しく、特になにかと遭遇することもなく目的の町に到着した。


 そういえばコヤツの実力を知らぬままだったな。

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