はい、愛らしい女の子が増えて嬉しいです♪
お嬢様、だと?
そんな呼ばれ方に心当たりは、いや……。
まさか。
「貴様、かつてこの屋敷にいた者か?」
「はい、ウリユであります!」
確かに、そんな名前の者がいた気がする。
その容貌にも覚えがあるような……。
「悪いな、そなたのような者がいたかハッキリとは思い出せぬ」
「仕方ありません、自分はあくまで使用人の1人でしたから」
「しかし今更何用だ、見ての通りココにはもう誰もおらぬぞ」
「そうです、どうしてこのようなことに!?」
「何を言っておる、皆妾を恐れて去っていった。 貴様もそうなのであろう」
この屋敷にいれば『ネーディスクリミネシオ』に巻き込まれる、と。
「滅相もない!」
「ふむ、どういうことだ?」
「自分はお館様の命を受けてお嬢様の固有能力をなんとかする方法を探して旅に出たのであります、そして今しがた帰還したばかりで……」
真偽看破の魔法を使うが反応は「真」。
ならば、去っていった他の連中とは違うということか。
「そして戻って来てみればこの荒れよう、人間の襲撃を受けたものかと」
「人間の襲撃なら何度も受けておるぞ、全て返り討ちにしたがな」
「ではお館様の懸念が当たった形になってしまったのでありますね、自分がもう少し早く帰還できていれば……」
「先代がそのようなことを考えていたとはな……」
こうなることが分かっていて、対策までしてくれていたとは。
結果が伴ったかは別として、先まで考えてくれていたのか。
「ウリユといったな、一度休め。 その後で旅の成果を聞かせてもらおう」
「ありがとうございます、しかしその前にひとつだけ質問があるのですが」
「なんだ、言ってみろ」
「お隣にいらっしゃるのはどなたでありますか?」
視線がルシアに向けられる。
人間を連れていたら気になるのは当然か。
「この者はルシア、妾の伴侶だ」
「人間、でありますよね?」
「その問題については今後解決するつもりだ、そなたが懸念することではない」
「はっ、失礼しました!」
それ以上は何も言わずウリユは去ろうとする。
と、忘れておった。
「待て、ウリユ」
「はっ、お呼びでありますか!」
「風呂に入るだろう、湯を用意してやる」
そして翌日。
「さてウリユよ、そなたの旅の成果について聞かせてもらおうか」
「結論から言いますと、屋敷の者全体でお嬢様の固有能力をどうにかする術というものは見つかりませんでした」
「そうか……」
「ですが、自分個人でなら見事解決してみせたであります」
全体では無理だが個人では、か。
ならその術を実行可能な者が増えれば光明が見えてくるかもしれぬな。
「それで、どういった方法なのだ?」
「それは耐えることであります、お嬢様の固有能力を受け続けても戦闘中に倒れないタフネスを得られれば良いのです!」
「ふむ……、ふむ?」
確かにその通りかもしれぬが、それはなんというか……。
「力業過ぎはしないか?」
「ですが自分には他に何も思いつかなかったであります、ですから修行に明け暮れました」
「そうだな、そもそもスマートな方法が簡単に見つかるのであれば皆妾の下を去ったりはすまい」
「なので安心ください、自分だけはどこまでもお嬢様について行く所存であります!」
「良かったですねラピア様、これでまた一緒にいられる方が増えましたよ」
確かにその通りなのだが、ひとつ懸念がある。
「ルシアよ、嫉妬はせぬのか?」
「嫉妬……ですか?」
「そうだ、妾が誰か他の者と共にいることに忌避感は持たぬのか?」
「それは相手次第ですけど、ウリユさんは可愛らしいですし。 メイド服良いですよね」
「これは、お嬢様に仕える正装でありますから!」
想像よりも簡単に打ち解けたな。
当然、関係が険悪になるよりもその方がいいので助かるが。
「それでウリユさん、質問があるんですけど」
「ウリユで構いませぬ、お嬢様の奥方なら自分にとってはもう1人の主であります」
「じゃあウリユ、貴女から出てる何かを『聖なる加護』がずっとブロックしてるんだけど。 これは?」
それを聞いた途端ウリユは顔色を青くさせ、頭を下げる。
「申し訳ありません。 自分の種族はサキュバスでして、無意識に魅了をバラ撒いていたであります!」
こやつ、淫魔だったのか。
「お嬢様の奥方になんてことを……、なんなりと罰を!」
「えっと、効かないからいいんだけど」
「効かないってどういうことでありますか、そういえばさっき『聖なる加護』とか聴こえたような……」
「ルシアは聖女だ、よって精神操作の類は一切効かぬ」
「…………」
ウリユが一切反応を示さなくなった。
もしやこやつ、驚くと固まるタイプか?
「はっ!?」
「ふむ、戻って来たか」
「お嬢様が聖女を伴侶として迎えられたということは、新たな魔王として魔界に君臨しようということでありますか!」
「確かに魔王は始末したが、そんな気は無い」
「これから私達は人間界に向かうので」
これまでに起こったことをウリユに説明する。
そして、これからどう行動するかも告げた。
「なるほど、ルシア様を人間のまま不老不死に」
「そんな方法が魔界で見つかるワケがないだろうからな、人間のことならやはり人間界だ」
「承知しました、勿論自分もついて行くであります!」
「だろうな、ルシアもよいな」
「はい、愛らしい女の子が増えて嬉しいです♪」
返事が少しズレているが、まあ構わぬか。
共にいられる者が増える、今はそれを喜ぶとしよう。
「どこまでもお供するであります、お嬢様!」




