表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/24

人を勝手に貴方のお嫁さんにしないでください、気持ち悪い

「くっ、ここは撤退して体制を……」


「私と一緒に旅をしていた頃は一度も逃げ出すことなんてなかったのに、情けない姿ですね元勇者様」


「逃がしはしないがな、『拘束する』!」




 逃げようとする元勇者の影が動き、纏わりつく。


 勇者としてのチカラを失った今のヤツに振りほどくことなどできるハズもなく。




「こんなもの、いつもなら簡単に……」


「このような人間をいたぶっても楽しくないであろうからさっさと終わらせてしまうか、『ネーディスクリミネシオ』!」


「なんだ、俺の中から何かが抜けていく……?」


「最早は貴様は絞りカスだろうが、残りの生命力はいただいてゆくぞ」


「生命力、だって……?」




 元勇者の表情が絶望に染まる。


 ルシアに言われても実感できなかった死を、今悟ったのであろう。




「やめてくれ、死にたくない!」


「以前妾に挑んだ人間は『勇者様の負担を減らすため』などと言って息絶えるその時まで戦うこと辞めなかったというのに、当の勇者がこの有様とは。 情けないな」




 まさか命乞いとは。




「あんた達のことは誰にも言わない、だから命だけは……」


「あんなことを言っておるがどうする、妾の魔法で今の約束を強制させることも可能だが?」


「私の意志は変わりません、最初に言った通りここで死んでもらいます」




 ルシアからの無慈悲な宣告。


 実際、元勇者をこのまま生かしておくメリットなどどこにも無い。


 勇者としてのチカラを失ったとしても、必ず一度は表舞台に引きずり出されるだろうからな。




「なんでだよ……」


「うん?」


「前世じゃあ良いことなんて何もなかった、それで交通事故で死んで転生したから。 これからが俺の本当の人生が始まると思ったのに、こんな終わり方なんてアリかよ!」




 ルシアと顔を見合わせる。


 何を言っておるのかさっぱりだ。




「異世界に転生するっていったらもっと良いことばかりじゃないのかよ。 チート能力を手に入れて奇麗なお嫁さん貰って、他にも……他にも……」


「人を勝手に貴方のお嫁さんにしないでください、気持ち悪い」




 散々男との結婚は嫌だと言っておったしな。


 ここまで容赦がないのとは思わなんだが。




「貴様が何に嘆いておるのかはわからぬが」


「たす……、しにたくな……」


「ルシアと妾の将来に貴様は邪魔だ」


「どうして……、こんな……」


「あえて言うなら貴様は負けた、それだけだ」




 勇者だった人間から力が抜けて、動かなくなる。


 『ネーディスクリミネシオ』による収奪も終わりを告げる、この場で生きているのは妾とルシアの2人だけになった。




「さようなら、貴方との旅はずっと最悪でした」




 もう聴こえておらぬだろうにまだ追い打ちをかけるのか。


 一体どれだけ嫌っていたのか。




「死体を誰かに見られても面倒だから喰らっておくか」




 自らの影を伸ばす。




「待ってください、その前に持ち物を回収しておかないと」


「どうするのだ?」


「荷物が見た目以上に入る魔法のカバンは便利ですし、装備品も形見として聖教会に届けないといけないので」


「裏工作も面倒なものだな」


「『勇者様と魔王が相打ちになった』という話を世界中に信じこませないといけないので」




 ルシアは手際良く魔法のカバンの中へ元勇者の亡骸から剣やら何やらを回収していく。




「では、死体も処理するぞ」




 もう一度影を伸ばしていく。


 身ぐるみ剝がされた死体も影の中へ沈み、跡形も残らず消えた。




「では一度屋敷に戻るか、人間界へ旅立つ準備をせねばな」


「はい!」


「しかしルシアも悪辣よな。 口封じのために勇者を始末し、真実を隠して魔王と相打ったことにしようとは」


「そんな女は嫌いですか……?」


「妾は悪魔ぞ、多少は悪辣な方が好みに決まっておろう」





 戻ってきた屋敷には、何か違和感があった。


 これは……。




「侵入者がいるな」


「私達が魔王城に向かっている間に誰か来たってことですか?」


「気をつけろ、また妾の命を狙っている人間かもしれん。




 『ネーディスクリミネシオ』で先制攻撃を仕掛けるか?


 いや、ルシアという前例もある以上敵とは限らぬ。


 足音が近づいてくる。


 向こうもこちらに気が付いたのだろう、警戒している様子が伝わってくる。


 ふむ、影になってここからでは姿がよく見えぬな。




「何者だ!」


「その声、そのお姿は!?」




 なんだ、この反応は。


 さっきの声は明らかに喜びの色を称えていた。


 まさか、ルシアの同類がもう1人現れたのか?


 そうも考えたが、次の言葉でかき消された。




「お嬢様、よくぞご無事で!」


「……は?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ