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勇者は101人いる(リメイク版)  作者: 酔生夢死
勇者は101人いる 2章 少年、拾われる

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04話 少年、宿を取る

 (´・ω・`)やばい、書いている内に「自分が書きたかったのってこれかなぁ」なんて疑念が沸々と浮かんできてしまいます。

 勇樹が持ち込んだシルバーウルフの解体ついては、商人ギルド内で混迷を極めた。


 まず勇樹とガメツの間に認識の齟齬(そご)があり、勇樹は自分で解体する気であったが、ガメツとしては高級素材を素人(だと思っている)相手に任せるつもりは毛頭なく、裏の解体場に職人たちを待機させていた。


 だが、解体場に着いた勇樹はそんな彼らを気にも留めずにシルバーウルフの解体を始めようとして、その場にいた者たちを大いに慌てさせる。

 そして、そこからは勇樹と職人たちは大いにもめた。


 勇樹としては下手に他人の手でやった物を後から加工するよりも、解体から加工までを全て自分の手で行いたかった勇樹は、自分が解体すると主張する。

 対して職人たちは、どこの馬の骨ともわからない子供に高級素材を台無しにされたくない危機感と、自分たちの職場で勝手をされたくないというプライドから解体は自分たちがと主張した。


 平行線を辿る両者を見かねてガメツは解体の腕を競うという提案を出す。

 そこから特に描写されない全六話くらいかかりそうな激闘を経て、見事に勇樹が勝利を収めてシルバーウルフの解体権を勝ち取り、金塊と共にガメツに買い取ってもらったのだった。




 当座の活動資金をガッツリと手に入れた勇樹は、当初の予定通り冒険者協会で紹介された宿へ意気揚々と向かった。


 宿は大通りから少し外れた裏通りの並びにあった。

 和製RPGに出てくるような街並みに、どちらかというとSFチックだったノームの里では味わえなかったファンタジー感に、密かに勇樹は胸を躍らせていた。


 人気があまりない立地ながらも冒険者協会から勧められるだけあってか、外観は他の建物よりも綺麗でしっかりとした造りになっており、すぐに見つける事が出来た。

 『金の小鳥亭』と書かれた看板の宿のドアを勢いよく開けると、カランコロンと激しくドアベルが鳴ると、カウンターの奥から恰幅の良い女将が顔を出す。


「こんにちはー! 泊まりたいんですけど部屋って空いてますか!?」


「おや、お客さんかい? いらっしゃ……坊や、悪いけどウチはCランク以上の冒険者が泊まる宿だよ。坊やみたいな駆け出しは、まずは通り沿いの宿の厩舎で寝泊まりして金を貯めて装備を揃えな」


 最初こそ愛想の良さそうな顔をしていたが、勇樹の姿を見た瞬間に迷い込んできた子供を諭すような内容に変わる。

 東洋人特有の童顔に加え、何でも入るマジックアイテム“旅人のポーチ”に武器一式を仕舞い簡素な革鎧だけの勇樹を見て、初心者冒険者が迷い込んできたのだと判断された。


 やんわり追い返そうとする女将に対し、勇樹は冒険者協会で受け取った宿へのメモを見せた。


「大丈夫です。ここへは冒険者協会で管理がしっかりしている宿だと紹介されてきました。1週間ほど泊まりたいんですが、予算はコレくらいですが足りますか?」


 勇樹はそう言ってポーチから銀貨を取り出して、カウンターに並べて見せた。

 それを見た女将は感心したように息を吐いて、台帳を取り出した。


「なるほど、危機管理はしっかりしている見たいだけど……全く、他の誰かが見てたらどうすんだい。大事なお金をこんな所で広げるんじゃないよ。ウチは朝晩飯付きで一泊120Eだよ」


「じゃあ、とりあえず一週間、一人部屋でお願いします」


「はいよ。えーっと、一週間だと……」


「840Eですね」


「え? ……本当だ。驚いた、まだ子供なのに計算が早いんだね!」


 暗算でパッと答えた勇樹に対して、女将が点棒のような物で計算を終えると目を見開いて勇樹の肩をバシバシ叩いた。

 必要以上に子供扱いされて複雑な気分の勇樹だったが、苦笑いするだけに留める。


「あはは、コレくらいはヨユーですよー。それで部屋は……」


「ああ、はいこれ鍵ね。部屋は2階だよ。それとウチはアタシも旦那も元冒険者だし、客もCランク冒険者が多いから泥棒の心配はいらないけど貴重品は極力自分で管理しておくんだよ」


「分かりましたー」


 女将から絵が掛かれた札の付いた鍵を受け取り、勇樹は宿の2階へ上がった。


 部屋の扉には文盲の冒険者の為に、鍵に付いた札と同じ絵が描かれたプレートが付いていた。

 これは一目で自分がどの部屋か分かるようになっているのと同時に、盗みに入った阿呆に「部屋を間違えた」という言い訳をさせない為でもある。


 宿の鍵程度ならば、手先が器用な斥候職の冒険者であれば誰でも容易に開ける事が出来る。

 だが、現場証拠さえ揃っていれば空き巣の現行犯は生死を問わず報酬が出るので、腕に覚えのある者が積極的に斬り殺す事も珍しくない。


 ちなみに『ステータス』というシステムがあるこの世界では、犯罪行為をすると『強盗』や『殺人鬼』などの犯罪系称号がステータスに刻まれる。

 市民証や冒険者カードなどの身分証には、それに連動して黒く染まる仕掛けがあるので犯罪者なのかは簡単に判別できる。


 鍵の札と同じ絵のプレートが付いた部屋へ滑り込むように入ると、勇樹は目にする者すべてが目新しく見える仔猫の如く、好奇心に満ちた目で部屋の中を見回し始めた。


「おお、日本では見られない西洋風のちょっと草臥れた木造の宿。ベッドはマットレスじゃなくて藁なのか。当然だけど家具は無し、クローゼットみたいな収納スペースも無くて、まるでRPGから抜き出したような完全に寝る為だけの部屋だ……凄い!」


 簡素でやや埃っぽい部屋を見て、自分が好きな作品のモデルとなった場所にでも訪れたかのように感激の声を漏らす。

 暫く、部屋の中をグルグルと見回したり、藁敷きのベッドに寝転んで思っていた以上にクッション性が低い事に驚いてみたりと、異世界へ来て2ヶ月が過ぎて初めて人間の暮らしに触れて、勇樹は自身でも驚くほどにテンションが上がっていた。


 その理由には『命の危険が無く余裕があるから』というのもある事には本人も気づいてはいない。


 異世界の宿屋体験に暫し堪能した勇樹は、徐にポーチから剣立て(ソードスタンド)を取り出して並べ始めた。

 といっても、立て掛けるための剣は無い。


 ノームの里で作った物は希少な素材をふんだんに使えるので、勇樹の作った失敗作ですらドラグニールに軒並み持ち出し禁止を食らっていた。

 故にこれらは今ある武器を並べる為の物ではなく、これから勇樹が作る武器を並べる為の物だった。


 スタンドを並べ終るとそれらを連結して、しっかりと固定されたのを確認する。


「これでよし、とりあえず部屋は確保っと……それじゃあ、荷物の整理でもするかなぁ。そうだ、ジェイド師匠は何くれたんだろう?」


 勇樹は藁敷きのベッドに座りながら、別れ際にノームのジェイドが寄越した旅人の鞄を開く。

 ガサガサと中を漁ると、金属のインゴットや各種の道具などが詰まっていた。


「お、魔鉱石にミスリル、アダマンタイトまであるや。師匠太っ腹~……あっ、燻製も沢山入ってる……やっぱり在庫処分だったんじゃん!」


 ゴソゴソと鞄の中身を確かめていき、必要な物やすぐに使う物を自分で製作したウエストポーチ型の旅人の鞄へ移して行った。


 ポーチのモデルは勿論猫型で青い起き上がり小法師の四次元なポーチである。

 旅人の鞄というと、大体がショルダーバックかナップザックの様な形しかなかった為、不便さを感じた勇樹が工房に引きこもって作った物の1つである。


 鞄の中身を移し終えた勇樹は、鞄から取り出したミスリル製の金槌を眺めながらニヤリと笑った。

 ノームの里を出た事でノーム達のサポートは得られなくなったが、逆に言えばここならば1日中引き篭もっていようが見咎める者は誰も無い。


「フッフッフッ、この量なら暫くは調達しに行かなくても充分ある。そして、ここにはちょっかいを掛けてくるノームも赤爺もいない。これなら存分に幾らでも……」


 勇樹はポーチの中を覗き込みながら、ひっそりと笑みを浮かべた。




 翌日、冒険者協会に来た勇樹は早速、協会内にある貸工房を借りようとしていた。


「阿呆か、その前に働け。バカ野郎」


「えー」


「えー、じゃねぇ。下っ端には“依頼達成ノルマ”ってのがあんだよ。仕事もしねぇ馬鹿を囲って置けるほど冒険者協会に余裕はねぇ。つうか、それでお前も再発行になったんだろうが。言っとくが、再発行してノルマを一度も達成せずにまた失効した場合には協会全体で永久剥奪だからな」


 面倒臭そうに頬杖を突くアーノルドは、呆れながら大きく溜息を吐いた。


 “依頼達成ノルマ”とは、FからDランクまでが冒険者を続ける上で課せられているもので、これは冒険者になっただけの者を足きりする為の制度である。

 来るものを拒まない冒険者の中には、登録だけ済ませて何もしない者が毎年一定数存在する。


 何故ならFランクの冒険者になるだけでも“最低限の身分証明”、“登録した街での入市税免除”、“冒険者向けの情報公開”、“特定の店舗や公共機関での割引”などが適用される。

 特に入市税免除と冒険者割引は幾らでも悪用し放題なので、それを防ぐ為に短い期間での依頼達成と高い再発行料なのである。


 そして今、既にノルマ不達成で再発行した勇樹には労働という義務が迫っていた!(当然)


「はぁ、仕方ないなぁ。それじゃあテキトーに依頼書見繕って持ってきますね!」


「おう、持ってくる時は隣の綺麗なネーチャンの所へ持ってけよ」


「あははー」


 心底面倒臭そうな振る舞いを隠しもしないアーノルドの言葉に対して、勇樹はただ笑って依頼書が張り出されている掲示板へ向かった。




 ――冒険者協会の掲示板の手前の床には、一本の白い線が引かれている。


 通称『愚者の境界線』と仰々しい名前で呼ばれ、越えれば奈落へ落ちるかの如く依頼を求める冒険者たちは白線へ近づかない……が、事実はそれほど大層なものでもなく、その線を越えると協会から重いペナルティが下されるのである。


 その線は以前、血気盛んな冒険者たちが掲示板の前を陣取ってしまい、新たな依頼書の張り出しすら困難になった事から引かれた物だった。


勇樹は朝一番で工房を借りるつもりだったので、まだ新しい依頼書は張り出されておらず、先に来ていた冒険者たちが掲示板の前に陣取っていた。

 初めて見る光景に勇樹が一団の後ろから興味深そうに覗き込んでいると、女性職員に先導されて大きな掲示板を運ぶ男性職員たちが現れた。


「すみませーん。道を開けてください。掲示板が通りまーす」


 ざわついていた冒険者たちが、女性職員の声を聴いた途端に雑談を止めて花道の如く道を開けた。

 途中、フライングしようとした若い冒険者がいたが、前列にいた年配冒険者に拳骨を落とされ、女性職員から「出入り禁止にしますよー」と釘を刺されていた。


 最も依頼書が貼ってある表面はピン止めされた大きな布で覆われていて、ちょっと覗き込んだくらいでは掲示物を見る事は出来ない。

 職員たちは掲示板の前まで来ると、前日の掲示板を外して新しい掲示板と入れ替える。


 壁の固定具で固定すると女性職員はくるりと冒険者たちの方に振り返った。


「それでは、今から依頼書を開示しますけど安全第一で選んでくださいね!」


 それだけ言うと掲示板の端へ移動して、勢いよく布を引っぺがした。

 その瞬間、慌てて布を回収して走り去る女性職員には目もくれず、その場にいた冒険者たちが一斉に掲示板へと押し寄せた。


「どけどけ! 高ランクの討伐依頼は俺の物だ!」

「隣町まで行きたいが、そっちへ行く護衛依頼はないのか!?」

「前回、失敗してピンチなんだよ。ここらで点数稼いで昇級に繋がりそうな依頼が欲しい!」


 若手もベテランも入り乱れて我先にと奪い合う様に、掲示された依頼書を覗き込む。

 少々傲慢そうな青年は高ランクモンスターの討伐依頼を持って仲間らしき少女たちと合流し、筋骨隆々な一団は依頼書を剥がさずに内容だけ確認するとゾロゾロと受け付けの方へ移動していく。


 また一部には、まるで合格発表を見に来た受験生のように祈りながら掲示板を見る冒険者がいれば、目当ての依頼が無かったのか肩を落としながら渋々別の依頼を持って行く冒険者もいる。


 そんな、熱気に包まれた依頼書争奪レースから完全に出遅れていた勇樹は、飴に(たか)る蟻のように掲示板に集まっている冒険者たちから追い出され、少し離れた所からウンザリしながら眺めていた。


「あ~、あの中へ入って行かないといけないワケか……えー……」


 それはさながら“セール品を漁る主婦(オバサマ)集団”の如く、スクラムを組んだかのようなむくつけき黒の砦は侵入者を阻むかのように蠢いて、見ている者の飛び込もうという気を減衰させていた。


 結局、掲示板の前の人が疎らになるまで勇樹はその場から動かなかった。


 最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。

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