休日3日目 お泊り会 隊長ご来店編
『それにしても……滅茶苦茶になっちゃったわね……』
〔まったくですよ~。大事な売り物を滅茶苦茶のバラバラの粉々に撃ち壊しくれちゃってぇ~〕
『それについては、あんたが撃った奴らに言いなさいよね!? あたしはここを死守しようとしたんだから……! まぁ、結局、多勢に無勢で武器も悪かったから、あっさり捕まっちゃったけどねぇ……』
〔チェフさんも大変でしたね……。1杯奢りたい所ですが、酒瓶が無くなっちゃいました……〕
『店を守る為の致し方ない犠牲よ……。我慢するわ……』
チェフは内心はガッカリしていて、肩を落とした。ところが、そんなチェフを鈴音が一瞬で元気にさせてくれた。
〔チェ~フさん♪ これをどうぞ♪〕
『えっ……? そ、それは……? まさか……?』
〔うふふ~、そうですよ~? カクテルでぇす♪ チェフさんが頑張ったご褒美です!〕
『で、でも、どこから……?』
〔そんなの決まってるじゃないですか~? ストックくらい、用意しておかないとお店じゃやっていけませんからね?〕
『鈴音……』
チェフは鈴音の店への熱意とお客様への愛情に感動していた。その時だった。
⦅もし……? お邪魔じゃなければ、少し話を伺いたいのだが……?⦆
(ジャキッ!)
2人は来店客に鋭い眼つきで銃口を向けた。それを見て、慌てて、両手を上げる来店客。見た目はチェフよりも大人っぽさを感じる。しかし、まだ大人にはなり切っていない……そんな感覚もどこかにあった。
現世で言う『高校生』の様なスタイルだ。よく見ると彼の左の腰には刀が差してあった。見るからに幕府っぽさを感じる。その時、彼が焦りながら、話しかける。
⦅ち、ちょっと……! そんな物騒なモノ向けないでくれるかな……? 俺はとある方を探しに来ただけなんだって……⦆
『あんたが他人の事言えるのか……? あいにくだけど……ここには、あたしたち以外はいないわよ?』
⦅そうかな……? この店の情報を聞いて、訪ねたのだがね……⦆
〔少し偉そうですが、あなたは普通の方じゃないというのは何となく分かりますわ〕
⦅何を基準に普通って言っているんだ……? 俺は何も間違った事は言っていないぞ? とりあえず、銃を下ろしてくれないかな……? 物騒なモノを突き付けられちゃ、お互いに話しも進まないだろう⦆
『………』
〔そうですね……。とりあえず、武器を下ろしましょう〕
『そうね……。話しを聞かせてもらおうかしら?』
2人は銃を下ろす。チェフは愛銃をホルダーに収める。鈴音は特注品の違法改造されたイサカM37を背中のホルダーに収めた。
⦅別に危害を加えるつもりはないぞ? ここに俺の探している方がいると情報を掴んで、立ち寄ったんだ⦆
『ふ~ん? それでそのお相手さんって誰かしら?』
⦅「みつ」って名前だ。ここで寝ていると聞いたんだが……⦆
〔みつ……? ハニーシロップですか?〕
⦅違うっ!! きみらが連れている猫の事だ!! 俺は彼女に用があるんだ!!⦆
突然、怒鳴り声を上げて、2人は驚いた。そして、銃を収めていて、すぐに取り出す事が出来なかった2人であった。
⦅はぁはぁ……あっ……す、済まない……悪気はなかったんだ……⦆
〔い、いえいぇ……からかったわたしもいけませんでしたから……失礼しましたぁ……〕
『仕方ないわね……相当、逢いたい様だし、その「みつ」って娘を探させてあげるわ。もちろん、うちらの同行ありでね?』
⦅構わないよ。みつに逢えればいいんだ……⦆
『って言っても、うちらはその「みつ」って娘を知らないから、案内してくれる?』
⦅知らない……? あなたが知らないはずがない。彼女はずっと、あなたの傍にいたんだから⦆
彼はそう言い、背を向け、スッと歩き出した。
『何を言ってるのか……うちの傍にずっといた……?』
〔チェフさん……? 百聞一見にしかずですよ? とりあえず、着いて行きましょう?〕
『あっ、そ、そうね……真相は彼が知ってるはずね……』
彼は少し歩くと喋り始めた。その話は今と覚えている限りの過去の話だった。
⦅俺はさ……ミストって名付けられたんだ……変な男の部屋で変な霧に包まれたら、こんな姿になってさ……それからは、サルスって言う女社長に連れて来られて……良くわからない事をさせられてたんだ……⦆
『ミスト……? 男の子にしては可愛らしい名前ね……? あと……サルスって聞いた事あるわね……?』
⦅あれに絡まれたら、最後だと思え……身体を裂かれるぞ……⦆
『さ、サルスって何者よ……』
⦅まぁ……会社の社長をしてるらしいが……関わらない事を勧めるよ……んっ、ここだな……?⦆
『あはは……関わらない……ね……って……ここはフミャが寝てる部屋じゃない……?』
⦅フミャ……あなたが名付けたのか……?⦆
『そう……だけど……? どうかしたのかしら……?』
ミストは少し黙り込み、その後、笑いながら、口を開いた。
⦅いやっ……あまりにネーミングセンスが無くてさ……ははっ……あの男社長も同じだったな……そのままあった事で名付けた……⦆
徐々にミストの名付け親が誰なのかが分かってきて、恥ずかしくなってきたチェフだった……。
そして、ミストは扉を開く。
⦅みつ……いるか……? いたら、返事をしてくれないか……?⦆




