休日3日目 お泊り会 ヴィンテージワイン編 (前編)
お酒は20歳になってから!
フミャが落ち着いて、しばらくした後の事だった。鈴音は強いサービス精神で半ば無理やりだが、フミャとチェフに泊まる事を勧めた。
『ふぅ……まぁ、とりあえずは助かるわ。でも、ほんとにいいの? 鈴音の寝る所がないんじゃ……?』
〔いぃえ、お構いなく。わたしは予備の寝袋がありますから!〕
『予備の寝袋……。なんだか、なおさら悪いわね……。ちょっと見せてくれる……?』
〔はい! こちらですよ!〕
鈴音に案内されて、地下へ向かう2人。徐々に薄暗くなっていく地下に思わず、コルト・パイソンを抜いてしまうチェフにクスリと笑う鈴音は言った。
〔チェフさん、大丈夫ですよ? 怪しいものは何もありませんから。むしろ、美味しいものが置いてありますよ?〕
『美味しいもの……? それって何よ……?』
〔うふふっ、見てのお楽しみですよ?〕
少しだけ、間が空いた事にチェフは不審に感じた。しかし、そのまま先へ進んだ。
2人が扉に辿り着いたそこは豆電球よりも薄暗い地下であった。その先には湿気た扉があり、鈴音は扉まで足を運ぶ。
『す、鈴音……!? 危ないわよ……!? 生温かくて、凄く湿ってるし……』
〔チェフさんは心配性ですねぇ~。これを見たら、驚きますよ?〕
(ガチャッ)
鈴音が扉を開く。そこも薄暗い部屋で離れているチェフにはよくわからなかった。
〔チェフさん、誰もいませんから安心してください〕
『わ、わかったわ……。誰かいたら、即刻、撃つからね……』
〔えぇ~っと……逆に撃たれると困るんですがぁ……〕
鈴音はチェフの反応に困った顔をして、返事をした。
(………)
何もないと悟ったチェフはゆっくり鈴音の居る部屋に向かった。すると鈴音が再び、困った様に話し出した。
〔あの……ゆっくり来られると湿度が下がっちゃうんですよ……。その……できれば、早めに……〕
『むぅ……わかったわよ……。焦らさずに何があるか、言ってくれればいいのに……』
〔すぐに言うと面白くないじゃないですか。銃も閉まってくださいね? 湿度が高いから錆が出ちゃいますから〕
『そ、それはまずい……。繁華街で錆が出られちゃ、銃としての役目が果たせないわ……』
鈴音に忠告されて、すぐにコルトパイソンをホルダーに収めると部屋に少し警戒しながら、入った。
〔はいっ! じゃぁ、湿度維持の関係で閉めますね~〕
『えっ? ちょっ……』
(ギィッ……ガチャンッ!)
鈴音は急いで、扉を閉めるとチェフの手を握り、部屋の紹介を始めた。
〔怖がらなくていいですよ? ここはワインの貯蔵庫です!
一定の温度と高めの湿度を保って、何年も置いて、長期熟成させてるんですよ?
わたしは立て置きにして、貯蔵してます! これも鈴音のこだわりの1つなんですから~!〕
『へぇ、ワインかぁ……なんか、疑って悪かったわね』
疑っていた事を謝罪するチェフに鈴音は〔いえいえ〕と笑顔で返事を返した。
そこまではよかったと思ったチェフだったが、彼女には1つ疑問に感じる事があった。
『ところで……ひとーつだけ聞きたい事があるんだけどぉ……』
〔はいっ? どうしました? 何でもお聞きしますよ?〕
鈴音は満面の笑みでチェフの方を見た。
『んっ……? 何でも……じゃなくてっ……! あたし、どーうみても……未成年でしょ……? まさか、そのワインを飲ませるつもりじゃないでしょうね……?』
〔はぁ……お客様なので、ヴィンテージ物のワインをご用意しようかと思いましたが……?〕
『いや、「未成年」って単語に触れてよ……。あたし、まだ14歳よ? ヴィンテージだかヴォルテージだか知らないけど……お酒は20歳になってからでしょ……?』
まともな意見を出すチェフに鈴音は驚いた。
〔ち、チェフさん……14歳だったんですか……? てっきり、ロリな大人かと……〕
『誰がロリだっ! ていうか、鈴音はいくつなのよ!?』
〔えっ? わたしですか? 19ですが……?〕
鈴音は「何か問題でも?」と言わんばかりの顔でチェフを見つめた。
『あんたも未成年かぃっ! アイドルだから、いい歳だとは思ってたけど……まさか、同じ未成年だったなんて……複雑な気分がするわ……』
〔まぁ、19なんて、20の1歩前ですよ~! 少々は大丈夫ですって~!〕
『こらっ! いくら19でもお酒はダメ! 絶対!』
〔まぁまぁ、そう堅い事言わずに~〕
能天気な事を言いながら、鈴音が1本熟成したワインを取り出した。
〔はい、1974年ワインです。ご賞味あれ~〕
『いや……だから、呑まないし、呑めないってば……』
あくまでも未成年と主張するチェフと既にワインの漂う香りに酔いが回り始めた鈴音の抗議が始まる事となった。




