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猫にこんばんは  作者: 犬鳴 椛子
第六章 休日にこんばんは 2-2
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第1回目 メイド長中間報告会

 メイド長がバレットを背負いながら、A4用紙の束を持ち、ラントのオフィスに入ってきた。


〈失礼致します。ラント様、フミャ様とチェフ様の状況報告をさせていただきます〉

《うむ、その前に1つ良いかな? メイド長くん?》

〈えぇ、何なりと〉

《じゃぁ、遠慮なく言わせてもらおうか……》

〈何故、わたくしがバレットを背負っているのか……っと言いたいのでしょう?〉


 メイド長が会話をさえぎり、質問を言って魅せた。


《め、メイド長くん……? ぼくのセリフを盗らないでくれるかな……? あはは……?》

〈申し訳ありません。既に分かり切った内容をお聞きするのは時間の損失になると思いましたので、先に申し上げました〉


 いつになく、隙のないメイド長にラントはため息を付き、疲れた表情を見せた。


《やれやれ……メイド長くんは変わらないねぇ……。まぁ……少しは退屈しないで済むから良いんだけどさ……》

〈やはり、フミャ様とチェフ様がいらっしゃらないと静かですね。わたくしも同じ気持ちですわ〉

《そうだよな……。ところで状況報告と言ってたね? 2人の状況はどうだ?》


 寂しい話をひとまず、打ち切って、ラントは外出したフミャとチェフの話に話題を戻した。



 普段、騒がしい者は鬱陶うっとうしく感じるが、いるはずの場所にいなくなるだけで寂しさを感じるものである。




 そして、メイド長の中間報告会が始まった。



〈そうですね。報告致しますわ。監視用ドローンで追跡しました所、チェフ様は出発早々から極度の興奮状態でフミャ様とご一緒にハンビーで出られました。その後、物凄い速さで死体歩行リビングデッド繁華街へ向かわれました〉


《あ~、あの死体だらけの繁華街ね……。それで? また鈴音くんに会いに行ったのかな?》



 メイド長はその問いに頷いた。

〈はい、チェフ様がフミャ様を死体共から守りながら、鈴音様のお店へ入店されました〉



《ふむ……報告は以上かな?》


 ラントは報告が終わったと思い、終わろうとしていた。その時……



(バガーンッ!)


 突然の銃声が響いた瞬間、ラントの脳天を見事にバレット用50口径のNATO弾が貫いた。しかも、片手でぶれる事なく、1発で仕留めるメイド長。


〈報告はまだ終了しておりません。ラント様?〉

《だ……か……ら……そういう物騒な物で撃たないでくれって何度言えば、わかるのさ……!? あぁ~……銃怖いわぁ……メイド長くん怖いわぁ……》

〈申し訳ありません。少しは華のある賑やかな空間があった方が良いかと思いまして〉

《あぁ……お気遣いどうも……。はい、じゃぁ、続けて続けて……》


 面倒になったのか、ほぼ投げやりに事を進めるラントだった。


〈かしこまりました。フミャ様とチェフ様の入店を確認後、ドローンの透視カメラで店内を拝見しておりました。ごく普通の鈴音様のライブですが、チェフ様はまたも極度の興奮状態でライブを楽しんでいる様子でした〉


《ははっ……チェフくんらしいなぁ……》


〈そうですね……しかし……〉


 メイド長が珍しく言葉を詰まらせた。メイド長が言葉を詰まらせるという事は何か必ず、問題があるという発言の前触れであった。


 そして、メイド長が言葉に詰まった事に気付いた瞬間、ラントの表情が険しくなった。

《ふむ、構わないから早く言いたまえ……》



〈はい、ライブはいつも通りでしたが……フミャ様のご様子がおかしいのでございます。広い空間に怯えて隠れる事はこちらでもありましたが……隠れるだけでなく、チェフ様や鈴音様を睨み付け、唸りだし、挙句の果てには暴れるという事態になりました。まさかとは思いますが……フミャ様の記憶がフラッシュバックして、徐々に猫に戻っているのではないでしょうか?〉


《ふむ……有りゆるな……。それで今はどうなっている?》


〈はい……鈴音様の強行手段により、フミャ様は気絶しております。鈴音様とチェフ様は何やら、揉めていた様ですが……内容までは存じません。報告は以上でございます〉



 メイド長の報告を終えるとラントは考え始めた。慣れない人間化で心も身体にも余裕が無く、自分は猫であるといった部分がきっとどこかにあるのだろうと……


 すると、ラントがしぶしぶ、提案した。


《うぅむ……この手は使いたくは無かったんだがな……。あの手を使うしか方法は無さそうか……》

〈あの手と申しますと……例のあのお方を繁華街へですか?〉


 ラントは嫌そうな顔で頷いた。


《あぁ、そうだよ……。あいつには関わりたくないんだがなぁ……。》

ラント様は彼女の事がお嫌いですものね。わかりますわ〉

《単刀直入で実によろしい。そいつから例の1人……いや……例の1匹拝借させてもらわねばならないな……》


 ラントは右斜め前に置いてあるカラフルな受話器を手に取り、番号を押した。もちろん、番号も1色ずつ色が付いていて、カラフルである。


ラント様、前々から感じておりましたが、その受話器はあまりにも趣味が悪すぎますわ〉

《べ、別にいいでしょ! この辺、あんまり色が無いんだから、「オーバー ザ レインボー」でもいいじゃん! 色付けるの苦労したんだからね!? 深く塗りすぎて、壊れた受話器が数知れず……》

〈そちらはすべて処分いたしましたのでご心配なさらないでください。それよりも早くお電話した方がよろしいと思われますわ〉

《ふっ……神の苦労も知らないで……。まぁ、ほぼ暇つぶしなんだけどね……。さっさと電話して、さっさと切る! じゃないと絡め捕られるからねぇ》



 受話器のボタンを押し、連絡を試みるラントは物凄く浮かない顔をしていた。それはもう一瞬で嫌いなのが分かる程、浮かない顔だった。

 ラントが番号を押し終え、受話器からコール音を聞こえてくる。



(プルルルルルルルルルル……)



(トゥルルルルルルルルルル……)




(……ガチャッ)


{ただいま、われは電話に出る事が出来ぬ。ピーッとなったら……}

《茶番はいらないから、早く出んかぃ。このイカ野郎……》


 ラントが黒い声を出した。相当、話す事が嫌なのが、瞬間的に伝わってくるのがメイド長にも分かった。


{おやぁ、ラントではないかの~? おぬしから掛けてくるとは、ようやく、われの魅力が分かった様だのぉ~}

《やかましい。そんな事を聞く為に連絡したんじゃないっつぅの……》

{ほほぉ……? 望みはなんじゃ? おぬしが身体を張ると言うなら……応じてやっても良いぞ?}

《何の為に身体を張るんだよ……。1匹拝借したい人物がいる……。あんたが支配してる所の社長さんをな……》

{ミストの事か? おまえさんからわれが引き取って、良い社長として頑張っておるのだぞ? 何を今更貸す必要が……}



 通話相手が言い終わる前にラントが会話を断ち切り、目的を告げた。




《ミストの友人が危ない状況にあるんだ。今すぐに連れて行かないと手が付けられなくなる……》

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