休日2日目 歌姫ライブカフェ -5
フミャが猫化して、28分が経過した。猫用ミルクが気に入ったのか、美味しそうに舌でピチャピチャと音を立てながら、飲んでいた。
しかし、人間の舌と猫の舌は大きく違う為か、飲むのに手間取っている。本来、猫は飲む際には音を立てない生き物だ。
音が立たないのは舌を器用にスプーン状の形にしている為、飲み物をスプーンですくう様に飲んでいるのだが……
今の姿は人間そのもの……
ザラザラはしているが人間の厚い舌である。なんとか、スプーン状に曲げてる事は出来ても、思う様に口に運ぶ事が出来なかった。
落ちた猫用ミルクは床や顔に飛び散り、辺りが猫用ミルクでベトリとしていた。
「うぅぅ……」
『ちょっと、鈴音? フミャがちょっと不満げに見えるんだけど……?』
〔ん~……本来は猫なのですから、猫としての本領が発揮出来てないからでしょうか……? 顔がミルクまみれですよ?〕
『な、なんか、あれはあれで……悪くないわね……』
〔チェフさんは助平さんですか? とりあえず、ミルク作戦は中断にしましょう〕
『そ、そうね……。中断……って、誰が助平だ!』
ある意味、図星ではあるが鈴音に突っ込んだ。その時、フミャはチェフを睨みつけた。流石に騒がしかった様で声に反応してしまったのだろう。
チェフはヤバッ!っと身を隠し、ヒソヒソ声で鈴音と対策を練っていた。
『どうするのよ……? あれじゃ、半永久的に終わらないわよ……』
〔そういえば、こんなもの持ってたの忘れてました〕
『こんなもの……? どんな道具よ……?』
鈴音が懐に手を入れて探る。しかし、取り出すのに少し手間取っていた。
『あんたね……先に出してから、言ってくれない……? こっちは大変なんだから……。そっちも大変なのは分かるけど……』
〔えへへ~、もう少し……待って……ん~っ!(PON!)出ました!〕
『おぉっ! そ、それは……! ……何っ? 小さいペンライトみたいな感じだけど……』
〔ペンライト類ではありますね。レーザーポインターですよ。これを目に当てて……〕
チェフが鈴音の頭をポカッと叩く。
『止めなさい! でも、その名前の道具は知ってるわ。うちもレーザーサイトを持ってるから便利よねぇ』
〔やっぱり、チェフさんとは話が合うから嬉しいです!〕
『それは同感だけど……今は目の前の獲物に集中しなさい?』
〔はっ……!? そうでした! じゃぁ、これを……ON!〕
鈴音がレーザーポインターのボタンを押すと紅い点がフミャの目の前に現れた。フミャは一瞬だけ、後退りしたが、少しずつ紅い点に近づいていく。しかし、手で触れても、何も反応がないので、離れようとしたが、不意に鈴音がポインターを動かす。
するとフミャが動きに反応して、また近づく。徐々に紅い点に興味を持ち始めた様だ。ポイントを動かす毎にフミャが俊敏に反応して、顔で追いかける。
見ている側は、その反応に物凄く楽しんでいた。何しろ、人間の姿をした猫がポイントを必死に追いかけまわしているのだから。
〔うふふふふ……これいいですねぇ……いいですよこれぇ……〕
『同感よぉ……共感よぉ……フミャ可愛いよぉ……』
その時の2人の顔は生まれたばかりの赤子を見る様に微笑んでいた。フミャは遊ばれているとは知らず、猫の本能のままに紅いポイントを追い続けた。
ポインター遊戯を始めて、13分が経ったが、しかし……鈴音はひたすら、ポインターを動かし続けるも、フミャの体力は予想以上に高く、ヘトヘトになる様子は未だにないのであった。
「にゃっ! ふぅっ! にゃぁっ!」
店内では元気の良い声が店に響いた。フミャは疲れるどころか、むしろ、爽やかな汗をかいて、「今っ!わたしは青春まっしぐらよ!」と言わんばかりに爽快な顔をしていた。
『………』
〔………〕
想定外の事にチェフと鈴音の方が疲れていた。今では喋る気力すらなかった。そんな時、鈴音がとんでもない行動に出た。
〔チェフさん……? 少し待っててください……〕
『っえ……? わ、わかった……』
鈴音が立ち上がると徐々に……ではなく、堂々とフミャへ近づいていった。それを見て、流石に焦るチェフが呼び戻した。
『ばっ……!? 鈴音!? 何してんのよ!? 早く戻りなさい!?』
〔大丈夫ですよ、6秒で終わらせますので……。フミャさ~ん、こっち向いてくださ~い〕
「ふにゃっ……! っ………!!? ふみゃぁああああああっ!!?」
突然、フミャが悶絶し始めた。時間にして1秒もかからないでフミャの動きを止めた。しかし、フミャが威嚇して、一瞬で悶絶するまで瞬間をチェフは見逃してはいなかった。
しかし、その事は気にせず、鈴音がフミャに止めをさした。
〔当て身〕
「み゛ゃっ!!?」
フミャの項を加減しながら、チョップして、沈黙させた。フミャはそのまま、気を失い、その場に倒れた。
〔これで安心ですね。チェフさん?〕
『あ、安心……か分からないけど……。あんた、レーザーをフミャの目に当てたわね……?』
〔………。これでもしないと収まらないと思ったんですよ……〕
『気持ちは分かるけど……いけない事を有言実行するのは悪い事よ……?』
〔すみません……〕
『とりあえず、フミャをベッドに運ぶわよ……? 続きはそれから……』
鈴音は黙って頷き、チェフと一緒にフミャを抱えて、ベッドのある部屋へ向かった。暴れ猫モードのフミャはひとまず、幕を下ろし、ベッドの上で静かに眠っている。
レーザーポインターの光を目に当てちゃぁ
ダ メ ! 絶 対 !
目が悪くなります!




