休日 2日目−ゴーイングアウト(後編)
あれから、銃の事を語りに語ったチェフは満足そうに武器庫から出てきた。そして、フミャは散々、意味の分からない話を聞かされて、クタクタな状態で出てきた。
もちろん、フミャも護身用程度の銃をいくつか持たされた。
デリンジャーの銃身を短くした二連発小型拳銃【バックアップ】
指輪型6連式小型リボルバー【ルプティ・プロテクター・リング】
リボルバーを最小限に小さくした様なキーホルダーとしても使える6連式リボルバー【スイスミニガンC1ST】
の三種類である。
出来る限り、小さく、威力も殺傷能力もある武器を推薦した結果がこれらだったようだ。
もちろん、反動の事も考えて、小さい武器にしている。チェフはフミャに優しい。神様には恐らく、容赦はしないで発砲するだろうが、GODなので撃っても結果は出ない。実に残念な話ではあるが、これから、向かう歩行死体繁華街では絶好の射撃スポットである。
しかし、弾にも限りがある為、無駄撃ちはあまり出来ない。さらに音と光に敏感な歩行死体達は銃声を聞けば、一斉に寄ってくる。
なので、あくまでも銃は護身用。チェフが守り切れない時は自分で身を守る様にしないといけない。
しかし、なぜ、そんな危険なところに行かないといけないのかは、本人からは教えなかった。訓練の為なのか、スリルを味わいたいのか、ストレスの発散なのか……それはチェフのみぞ知る。
『さて、軽く訓練したら、行くわよ! さぁ、訓練するよ! フミャ!』
「ふぇえ……少し休ませてよぉ~……お話ばっかりで疲れたよぉ~……」
『休むなら、外で休む! ほらっ! 護身用の銃持って、外に行くわよ!』
「ふみゃぁ……チェフが鬼だよぉ……」
チェフに無理矢理、引っ張られ、外に連れ出された。
『はいっ! まずは構え方の練習よ! 構え方はこうっ!』
チェフは銃を持ち、両腕を真っ直ぐ突き出した。
『両腕を前に真っ直ぐと突き出して、バックアップを構えてみなさい!』
「えっと……こう……?」
真っ直ぐ構えるが、すぐにひょろっと肘が曲がる。
『ダメね……こうよ……! そこまで重い銃じゃないんだから!』
チェフの指導の元、フミャの両肘を伸ばさせた。しっかり伸ばせて、なかなか良い伸ばし方になった。
もし、これが通常の拳銃であれば、とても良い構えなのだが、護身用の小銃なので、銃としては軽い為、基礎中の基礎程度にしかならない。
『よし、じゃぁ、撃ってみなさい。的はあそこよ』
そう言うと、的を指差す。そこには神様の板が立っていた。点数まで付いていて、顔面100点、胸部50点、腹部20点、腕75点、足10点、大事な所300点となっていた。
「チェフ? あれってまさか?」
『んっ? あぁ、気にしないで撃ってもらって構わないわよ?』
「えっと……うん……」
……パンッ!
的を目掛けて、フミャはバックアップを一発放つ。
しかし、発車時の反動と銃声に目を瞑ってしまい、身体が仰け反ってしまった。
「……当たった?」
『くっ……凄く惜しいわ……あと数ミリ下だったら、ラント(やつ)の大事な所に命中していたわ……』
何故か、チェフの方が物凄く悔しがっていた。相当、神様に不満がある様だ。
『でも、見込みはあるわね。次は倒れそうにならない様な姿勢で挑んでみなさい!』
こうして、訓練は一時間続いた。
「はぁ……はぁ……もうだめぇ……」
『よしっ! 今日の訓練はここまで! かなり成長したわねぇ。わたしは嬉しいわ!』
「あっ……はぃ……」
流石に普段から元気が有り余るフミャもみっちりと指導されたら、疲れる様だ。
そして、チェフのミリタリー好きに引いてすらいた。
『さて、訓練も終わった。フミャもスキルを身に着けた。あとは、歩行死体繁華街で楽しく、爽快に買い物よ!』
「お、おぉ~……」
『ノリが悪いわよ! ほら、あそこのハンビーに早く乗りなさい!』
チェフが示した方向には【M1025 ハンビーウェポンキャリー】があった。しかも、M2機関銃まで搭載されていた。
「ふぇ……あれに乗るの……?」
『当たり前でしょ! 歩行死体繁華街の安全な駐車場に止めて、そこからお買い物するのよ! もし、バレたら、ハンビーに乗りなさいよ。中は基本、安全だし、M2機関銃で道を作って逃げればいいだけだから!』
チェフはすごく楽しそうに言った。それは今から『お買い物をする』ではなく、『狩りをする』という感覚であった。それを察しながらも、フミャはハンビーにしぶしぶ助手席に乗る。
そして、乗った事を確認したチェフは運転席に乗り、さっきの血の気が盛んだったのが、まるで嘘の様に静かにフミャにこう言った。
『フミャ……この先は何があるか分からないけど、悪い様にはしないわ……』
「ふみゃ……?」
『さぁ! 楽しいお買い物にしようじゃない! フミャぁあ!!!」
いきなりハイテンションになり、エンジンをかけるとハンビーを飛ばし始めた。
「ふみゃぁああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!??」
あまりの圧力にフミャも思わず、叫んでしまった。
ハイテンションなチェフと超圧力に耐えるフミャの楽しい歩行死体繁華街へのお買い物がこれから始まるのであった。
《あ~ぁ、チェフくん……あんなにテンションが上げてしまって……。フミャくん、頑張ってね~……》
そして、オフィスで一部始終を見ていた神様は他人事の様に言うのであった。




