休日 2日目−ゴーイングアウト(中編)
『んっ……いけない……。寝てしまったわ……。時間は……三十分程度か……』
チェフは時間を見て、大体の寝た時間を察した。日頃の疲労が重なりに重なって、睡魔が彼女を襲ったようだ。天国なのに一時的に地獄から開放されたチェフには致し方ない事だと思われる。
「ねぇ~、チェフ~」
『フミャ……寝ちゃってごめんね……? あと乾燥鯖でほっぺつつくのやめてくれる……?』
意識を失った人を木の棒でつつく様に、フミャは乾燥鯖でチェフの頬をつついていた。
「だって、チェフ起きないんだも~ん」
『わたしは異物か……。て言うか……フミャ? 最近、わたしと話が出来るようになってきてない?』
「ふぇ? そうなの? わたしは全然知らないよ~?」
本人には自覚が全くない様だが、フミャの話し方は明らかに人間の話し方に等しかった。そして、子どもらしい話し方だった。もはや、ロリに等しい。
『寧ろ、好都合だわ。それだけ話せるなら、外に出掛けても問題なさそうね。会話指導の手間が省けて、凄く助かるわ』
「ふ~ん? よくわからないけどぉ、お出掛けするなら早く行こぉよ!」
フミャはテンションが相変わらず、高かった。
『わかった、わかった。じゃぁ、早く行こうね……早くね……』
「うん! 早く早く!」
『は~いはい、先にエレベーターに乗ってて、すぐに行くから~』
少々、かったるそうだが、手早く準備を済ませて、エレベーターに乗った。
『はい、じゃぁ、急降下スタンバイしててね』
「大丈夫! これ楽しみなの!」
『フミャは元気で羨ましいわ……』
そう言った瞬間、エレベーターはフリーフォールと化した。そして、数分後、一階に到着した。
『はぁはぁ……死ぬ……』
「きゃははっ! もっかいもっかい!」
『断固拒否! 絶対断るわ!』
「え~……けち~……」
『文句言わない……。早く行くわよ? ここよりもっと楽しいとこに行くんだから」
普通の人が聞けば、さり気なく怪しいセリフであるが、フミャにはそこまでの理解力はなかった。
「ほんと!? 行きたい行きたい! チェフ、早く連れてってよ!」
『だから、落ち着きなさい。じゃぁ、歩行死体繁華街に行くから』
「りびんぐでっどはんかがい?」
『そうよ。まさに死体旅行ね。』
「楽しいの? 明らかに変なの居そうだけど?」
『まぁ、ここよりは楽しいわね。まぁ、色々と面倒だけどね……』
そう言うと、チェフが壁に「歩行死体用」と書かれた扉開いた。その部屋に置いてある小型銃を手にとった。
「チェフ、それなぁに?」
『これ? これはコルト・パイソンよ。PYTHON357で口径は9ミリ(357マグナム弾)をぶっぱなすのよ。このモデルは全長が241ミリの4インチ・モデルなの。たまに使うのよ。」
「ぱいそん357……? こうけい……? まぐなむ……?」
『ん~……フミャには難しすぎるだろうけど……マグナムは英語で「大きな酒瓶」って意味なのよ。つまり、大きなお酒は強いって思ってくれたらいいかしらね?』
「う~ん……おっきぃお酒は強い……は~い……」
マニアックすぎて、理解する以前に意味すら、分かっていなかった。
『あとはこれね。わたし愛用のサブマシンガンのUZIよ。これの口径も9ミリで全長は640ミリとまぁ、そこそこのお手軽サイズってとこかしらね。装弾数はマガジンによるけど、25、32、40発って色々とあるのよ。今は両手で支えないと撃てないけど、いつかは片手で持って、いずれは二丁拳銃の様に構えて、撃ちたいわねぇ……』
「チェフ~? お~ぃ……戻って来てよ~……」
フミャは再び、乾燥鯖で頬をつつくが、理想と妄想の世界に飲み込まれたチェフの耳には、悲しくもフミャの声が届いていなかった。




