休日 2日目−グッドモーニング(後編)
ボタンを押すとエレベーターはすぐに来た。もちろん、秘書専用のエレベーターなので、上り下りが他のより速い。
ただし、重力をもろに受けてしまうので、ある意味、欠陥品なのかもしれない。
『さ〜て、今から下に下りるわよ? フミャ?』
「うん! 早く行こう!」
『あ〜……言わなくても、速く着くと思うわよ……?』
「じゃぁ、行こうよ! 早く早く!」
『ちょっ……フミャ……』
チェフは物凄くノリ気ではなかった。
しかし、フミャはお構い無しに食堂の間のボタンを押した。その瞬間、ガクンッとエレベーターが動きだした。
〔下へ落下します〕と言うと一気に急降下した。
「ふみゃぁぁあああああ!!?」
『おぉちぃつぅけぇえ!! フミャぁぁああ!!』
落下速度はフリーフォール並みで身体が宙を舞い、二人ともエレベーターの天井に背中が付いていた。
「チェフぅうぅう!! 浮いてるよぉおぉ!!」
あまりの速度にフミャも恐怖している……と思ったが、さり気なく、楽しんでいる様に見える。
『も、もうすぐ着くからぁあ! もう少し耐えてぇええ!!』
しかし、チェフは確実に恐怖していた。
フリーフォールの様に落下するエレベーターの中で二人の叫び声が響き合う。
そして、エレベーターが急に止まると車のエアバッグの様な物が床と天井から出てきて、二人を受け止めた。受け止めたと言うより、バウンドさせている。
「あはははは! もう一回、もう一回!」
フミャはご満悦の様だった。
『ご、ご飯だから……また後で……』
チェフはゲッソリとしていた。チェフは大の絶叫マシン嫌いであり、このフリーフォールシステムはまさに拷問と同等のレベルであった。
もちろん、このシステムを採用したのは、神様のラントであった。
そのラントも食事には下に来る。しかも、チェフよりも早く来て、チェフが怯えている姿を見て、優越感に浸る。実に悪質な神様である。
これがチェフのノリ気がしないもう一つの理由だった。
この扉が開けば、朝食の時間である。開けば、神様が確実にいる。
今、エレベーターの幕が開かれた。




