休日 1日目−バスタイム 5
フミャとの長い葛藤が終結し、メイド長の協力もあり、フミャを台車に乗せる事ができた。
『ふぅ……。助かったわ、メイド長。お陰で乗せるのに30分も掛かってしまったわよ』
〈いえ、礼には及びません。チェフ様が起こさない様にと緊張し過ぎて、膝を崩さなければ、数分で済んだ事だったんですよ』
時間が掛かった原因はチェフだったらしい。この時、メイド長は頭側、チェフは足側で抱えていた。緊張のあまり、足が震えてしまい、自ら、膝カックンしてしまった様だ。
『う、うるさいわね! フミャを丁寧に運びたいと思ってただけよ! 何か文句あるの!?』
〈大有りです。もし、フミャお嬢様が怪我をされたら、どうするつもりだったのですか? わたくしが膝の方を抱えていたとしたら、フミャお嬢様は指を骨折していたかもしれないんですよ? 膝が崩れて、そのまま指をボキッっとやっちゃう……。なんてことも有り得ましたし〉
『うっ……』
メイド長はチェフを最もな一言でズバッと切り捨てた。そして、チェフはメイド長の真面目な一言に言葉がでなかった。自分の過ちを深く反省していた。
〈さぁ、落ち込むのは後です。今はフミャお嬢様をお風呂にお入れするのがチェフ様の使命です。参りますよ?〉
メイド長は台車を押して、脱衣所へと向かった。チェフも足取りは遅いが、その後ろをついていく。
〈先程も申しましたが、わたくしはお風呂のお世話は致しません。チェフ様自身のお力でフミャお嬢様をお風呂でお世話してあげてください。良いですね?〉
『分かってるわよ……。二回も言わなくていいのよ……』
〈大切な事なので、二回申し上げたまでです〉
『だから、分かってるって……。ありがとう……』
〈とんでもない事でございます。さて、到着しましたよ〉
『ありがとう。後はわたしが頑張るわ』
〈はい。チェフ様。最後にもう1つ……〉
『何かしら……?』
〈これは絶好の好機です。よく地上界では「裸の付き合い」って言いますよね? これをおきに、お風呂嫌いを無くすと同時にフミャお嬢様との関係を深めてはいかがでしょうか?〉
その話を聞いて、チェフは少し考え出したが、すぐに結論が出た。
『そうね。良いアドバイスをありがとう。メイド長。やっぱり、あんたは頼りになるうちの最高のメイド長よ!』
〈お褒めのお言葉、有り難く頂戴致します。そして、わたくしには勿体無いですね〉
メイド長が微かに微笑んだ。
『事実を言ってるだけよ。それと……あんたの微笑んだ顔……案外、可愛いわね』
〈…………!!?〉
メイド長は、照れ隠しにチェフに背を向けた。
『冷徹だけど、純粋ね。じゃぁ、行ってくるわね』
メイド長は振り向き、微笑んで見送った。
〈行ってらっしゃいませ。チェフ様〉




