休日 1日目−バスタイム 4
チェフとメイド長は身を構え、フミャが木天蓼に触れるのを待っていた。ジリジリと木天蓼への距離を縮めるフミャが、ついに木天蓼を掴み取った。そして、木天蓼を堪能し始めた。
少し時間をおいて、メイド長がチェフに指示を出した。
〈チェフ様! 今です!〉
そう指示するとメイド長がフミャの横に回り込み、床を蹴り、高く飛び上がると、フミャの背中にのしかかった。
「ふみゃぁっ!?」
フミャがのしかかられた勢いで叫び声を上げたと同時にチェフは、『ハッ!?』っと我に帰った。完全にフミャに見惚れていたようだ。
『す、すぐに行くわ……!』
慌てて、駆け出すチェフは、メイド長に取り押さえられたフミャにアイマスクを装着した。
「ふみゃぁあ……真っ暗ぁ……。見えないぃ……。重たいよぉ~……」
軽く酔いながらも、ジタバタと暴れるフミャは少しの間、もがいたが力尽きて、眠ってしまった。
「すぅ……すぅ……」
『ま、木天蓼の効果……恐るべし……。ていうか、これほんとに木天蓼なの? こんなにすぐに寝ちゃったけど……』
チェフは何か違和感を感じたので、念のためにメイド長に確認をした。しかし、返事がないので振り返ってみるとメイド長の姿はなかった。
『…………。神出鬼没って、こういう事を言うのね……。まぁ、とりあえず、助かったからメイド長には感謝ね。』
〈礼には及びません。これくらいは、メイドとして当然の事ですから〉
チェフの背後にメイド長が立っていた。
『うわっ!? び、びっくりしたぁ……。いつの間にそこにいたのよ……!? 出てったんじゃなかったの!?』
〈つい先程でございます。メイドは迅速に仕事を片付けるのがお仕事ですから。どこかのズッコケて、「お皿割っちゃいました~」なんて、メイドのする事ではありませんので〉
安定の真顔でメイド長は答えた。
『あんた、ホントは人間じゃなくて、鬼神か何かなんじゃないの……? でなければ、そんなに素早く動けるはずがないわよ……」
〈わたくしは、鬼でも神でもトイレットペーパーでもございません〉
『その紙じゃねぇよ……」
さり気ない、メイド長のボケにチェフはバッチリと突っ込みを入れた。
〈ちなみに、わたくしはテーブルの裏に設置してありました非常用台車を用意していただけでございます〉
『あぁ……それで、姿が見えなかったのね……。鬼神じゃなくて安心したけど、迅速には変わらないわね……。まぁ、安心したわ。このまま、フミャをお風呂場まで運びましょ』
〈かしこまりました。フミャお嬢様をお風呂場までお連れ致します。その後の入浴に関しては、わたくしは面倒を見切れませんのでチェフ様お一人で頑張ってくださいね〉
『そうね。わかったわ……。一人で……って、ぇええっ!?』




