休日 1日目−5
貧血で気力すら失ってるチェフは夕方まで何もせず、グッタリもしていた。
フミャはムシャムシャと安売りの生サバを貪り食っていた。
どれだけ買い溜めしているのか知らないが、相当、サバを食い荒らした様だ。その時、また扉をノックする音が聞こえた。
『は〜い、起きてますよ〜。入っていいよ〜』
物凄く大雑把にチェフは答えた。
〈失礼します〉
さっき、フミャをデコピンして、冷えピタを貼った豪腕メイド長だった。
〈チェフ様。つい先程、屍になっておりましたが、またそこの木製の板に倒れたのですか?〉
『んっ……? あぁ……。そうっぽいね……。覚えてないけど……』
チェフは目を逸らし、フミャを見つめる。
〈彼女は何も関係ありませんよ。恐らく、ここまでお連れになったのでしょう? そして、またベッドの横に倒れた。顔面ぶつけて、血塗れにして……。という具合でしょうね〉
実に察しの良いメイドだった。もはや、完全正解している。このメイド長は、長だけあって、只者ではない様だ。
「ねぇ、チェフ……? この人、だぁれ……?」
『んっ……? あぁ……ここに仕えるうちのメイドのトップだよ。まぁ、ちょっと分かりやすく言えば、お手伝いさんの隊長ってとこかな。うちとは、体型が本当に真逆でそこが腹立つな……。オマケに美人だし……』
〈えぇ、胸は鉄板、身長も低めでほんと中学生と言う単語がよくお似合いです。あわよくばでございますがね〉
ズバッと反論もなく、むしろ、反対言葉の様に答えを返してきた。
『ぬぐぅっ! う、うるさいわね! うちだって、その気になれば、あんたなんか超えられるわよ!』
〈断言しますが、1000%無理でございます。少なからず、あなた様はもう大人なのですから、今更、わたくしの様な体型には、美容整形でも行わない限り、近づけるはずがありません。と申しましたが、美容整形は大変危険が伴いますので、あまりお勧め致しません〉
『あ、あぁ……あんたねぇ……。さっきから聞いていれば、言いたい放題言ってくれて……!』
チェフは怒りに震え上がり、中で溜まっていた怒りのTNT爆発寸前のその時だった。
〈お顔はとても可愛いのですから、そんなに怒り全開のお顔ですと可愛いお顔が勿体無いですよ?〉
メイド長の一言でチェフの怒りが一気に鎮火した。
『う、うち……可愛い……?』
チェフはとてつもなく、戸惑っていた。急に可愛いと言われたら、誰でも戸惑うものだ。
「チェフ、可愛いよ……。わたし、そう思ってた……」
『ふ、フミャまで何を……!?』
かなり戸惑っていた。一人と一匹に可愛いと言われて、物凄くテンパって、チェフはごまかす為に布団の中に潜り込んだ。
「あっ、チェフ隠れた……」
〈これだけ、動揺する秘書です。可愛くないはずがありませんよ。さて、洗濯物は干しておきましたから。あとは、この部屋の掃除ですが……。だいぶ、散らかってますね。今日はこの調子ですし、掃除はまた明日にします。下のフロアでお食事を準備致しましたので、チェフ様はお顔を洗ったら、いらして下さい。あっ、あとフミャ様ですね?先程はわたくしのご無礼をお許し下さい。では、お待ちしております〉
そう言うと、メイド長はパックを全て拾って、扉の前でお辞儀をして、部屋を後にした。
「めーどさん、お部屋……キレイにして……いったよ」
フミャはメイド長の事が気に入った様である。
そして、メイド長にデコピンされた事も未だに知らないのであった。




