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岩見優司のリア充(?)な日常  作者: 霧島こう
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第三十六話 ストーカー撃退大作戦

第三十六話 ストーカー撃退大作戦


 授業が終わった後、ファミレスに場を移して、ストーカー対策会議が再開した。主題は、本当にストーカーがいるかどうか確認することと、もしいたらどう撃退するか、だった。


「囮捜査とか良いんじゃないかしら?」


 ジャンバラヤを頬張りながら、早智が発言した。


 光と日向に囮になってもらい、ストーカーが姿を現したところを捕まえると言うわけか。作戦としては悪くないけど、光と日向の身に危険が生じるのではないだろうか。


「私たちはそれで構いません。ストーカーの問題をどうにかしなければ、常に危険と隣り合わせですから」


 確かに日向の言うことに間違いはなかった。


「じゃあ、囮捜査でいこう。もし、ストーカーを見つけたら、囮になっている二人と、尾行している俺達で挟み撃ちと言うことで!」


 みんな異論はなく、異口同音の「OK」が出た。


「あ、それから、二手に別れた方が、都合が良くないか?」


 ロコモコ丼のハンバーグの部分だけを食べながら、ホイケルが付け足す。もし、ストーカーが出てきても、一方を捕まえているうちに、もう一方を取り逃がしてしまうことを危惧しての提案だった。


「それで良くない? 両方捕まえるのがベストだけど、取り逃してもまたストーカーされなきゃいい訳でしょ」


 確かに、ストーカーがばれていると知れば、警察に逮捕されるのを恐れて行為を止めるかもしれない。そっちの場合でも、撃退と言う俺たちの目的は達成されるのだ。


 結局、ホイケルの案は却下されて、光と日向が二人並んで囮になって、それを尾行しつつ、俺たちが双方のストーカーを探すことになった。




「ちょっと、ちょっと! 聞いてよ、優司君!」


 翌日の学校にて、使用人の態度がおかしいことに不審がった陽菜から、声をかけられた。基本的に人を疑うことを知らない彼女も、ここ数日の光と日向のよそよそしい態度に疑いの目を向けていたのだ。


「最近、光と日向が妙によそよそしいんだよ。今日も一緒に帰ろうって言ったのに、用事があるから無理だって断られたの!」


 陽菜と一緒に下校しないように指示したのは俺だ。だって、陽菜に真相を黙ったまま、一緒に下校しながら、俺たちが後を尾行するなんて無理がある。


「反抗期じゃないの? あいつらも年頃の女子だから、秘密の一つや二つあってもおかしくないんじゃないのか?」


 我ながら、説得力のかけらもない言葉だ。陽菜は特に反論せずに、不満げに唸っている。


「そういえばお前って、かなりかわいいし、男子生徒にも人気があるんだよな」


「! ど、どうしたの? いきなり私のことをかなり可愛いだなんて……」


 俺の可愛い発言に、陽菜は顔を真っ赤にして、視線をずらした。


「ストーカーに後をつけられたことはないか?」


 男子人気なら、陽菜の方があるので、彼女もストーカーの被害に遭っているのではないかと、ふと気になったのだ。


「ないよ! 私は地味だから」


 あっけらかんと答えてくる。嘘をついているような素振りは見えない。


 もしかしたら、本人が気づかないところでストーカーの被害に遭っているのかもしれないが、ボディガードのお兄さんたちが穏便に解決してくれるので、実害を被ることはあるまい。


「えへへ……。私のことを心配してくれているのかな……」


「当たり前だろ。彼女なんだから」


「嬉しい!」


 さっきまでのふくれっ面はどこへやら。陽菜は嬉しそうにはにかんだ。


 本当のことを言うわけにもいかないので、俺は陽菜に心配しなくても大丈夫なんじゃないかと適当な言葉をかけた。陽菜は特に疑うこともなく、すんなりと承諾した。そんな彼女の無邪気な笑顔を見ていると、嘘をついたことに良心がチクチク痛んだ。




 そして、迎えた放課後。作戦通り、俺たちは光を尾行するグループと、日向を尾行するグループに分かれた。


 いつも通りに授業を終えて、光と日向が校門を出る。そのかなり後から、俺たちが尾行する。


 尾行は穏やかに始まった。夕暮れでオレンジ色に染まりつつある街中を二人の女子高生が闊歩する。その後を俺たちがつける。


 最初の内は、のどかな時間が流れた。ストーカーが絡んでいなければ平和そのものだった。


 これで、ストーカーが現れなくても、そんなものはいない、ただの気のせいだったということが明らかになるだけで、だいぶ楽になると思っていた。


 一時間くらいだろうか、光とかなり距離を取った状態で尾行を続けていたところ、気になる男が一人目に入った。年齢は三十代くらいで、スーツ姿。一見すると、営業中のサラリーマンに見えた。校門を出た辺りから、ちょくちょく視界に入ってくるのだ。


 しばらく様子を見ていたが、男は三十分以上、光と等間隔を維持した状態で、後を歩き続けた。試しに、電話で光に同じ経路を何度も往復するように指示してみたところ、向こうも馬鹿正直に同じ経路を回った。これはもう、勘違いではない。ストーカーだ。本当にいたとは……。


 まさか初日にいきなり遭遇するなんてな。早智とホイケルに無言で連絡して、そっと近づき、相手の背後に回る。相変わらず光の後姿を目で追っているストーカーに問いかける。


「あの女の子、可愛いよね。でも、ずっと見続けていると、目が疲れない?」


「ていうか、おじさん。ずっと歩きっぱなしだよね。足の方が疲れているんじゃないのかしら?」


 相手は戦慄が走ったように、体を硬直させる。三人と言うことで余裕を持っているのか。さっさと人気のないところに連れていけばいいものを、続いてホイケルが話しかけた。


「彼女、俺達の知り合いなんだよ。何か用……」


 ホイケルがまだ話している途中なのに、ストーカーは俺達に向かって、持っていた缶ジュースの中身をぶちまけて、駆け出した。不意打ちに怯んだせいで、スタートが遅れてしまい、走り始めたときは、だいぶ差がついてしまっていた。怒号を上げて追うが、追いつけない。


 ストーカーのくせに、人ごみを器用に避けて、曲がり角を曲がった。見失ったのは、一瞬だったのに、続いて曲がり角を曲がった時には、相手の姿は人ごみの中に消えてしまっていた。逃げ足の速いやつめ。情けないことに、取り逃がしてしまった。


「もう! せっかく見つけたのに、取り逃がすなんて、馬鹿!」


「お前も取り逃した馬鹿の一人じゃないか」


「私は女だからいいの! こういう荒事は男の仕事なの!」


 自分に都合の良い理論を振りかざして、早智は逆切れした。


 気を取り直して、一旦先行する二人と合流。今取り逃した男の人相を言うと、光のストーカーだと言うことが判明した。自分の予感が気のせいではないことが分かり、愕然とする光を宥めた。


 結局、この日はストーカーを捕まえることは出来なかった。ただ、光と日向を付け回している奴がいるのは確認できた。




 俺たちがマークしていることが分かったので、もしかしたら相手のストーカーも諦めるのではないかとひそかに期待したが甘かった。翌日以降も、相手は校門近辺から光を付け回した。学習能力がないのかと苛立ってしまうほど、同じ手法だ。


 しかし、逃げ足だけは早かった。俺たちが接近しているのに気付くと、駆けて逃走する。ストーカーのくせに足だけは速く、おまけに警戒するようになったので、俺たちの捕獲作戦は難航を極めた。


「あ~! 今日も取り逃した! 逃げ去る時のあいつの余裕の表情が最高にムカつく!」


 自販機の前で缶コーヒーを飲みながら、早智はイライラをぶちまけた。俺とホイケルも叫びこそしなかったものの、ストーカーに舐められていることに苛立ちを隠せないでいた。


 缶ジュースを飲み干すと、空き缶を握りつぶして、ホイケルが話し出す。


「作戦を変えた方が良いんじゃないのか?」


 ストーカーに負けを認めるようで嫌だったが、このまま今のやり方を続けても、捕まえられるとは思えなかった。


「あのさあ。ストーカーの姿を撮って、ネット上に貼り付けるのはどうかな? それで、この人の情報募集中とか書いて、知っている人がいないか聞き込みをするの」


 早智のネット上での顔の広さは、現実世界をさらに上回っているので、満更悪い作戦でもない。すぐにやってみようということになった。


 幸いなことに、デジカメは早智がいくつも所持していたので、その中から厳選した三台を、明日持ってくるとのこと。


 もはや、俺たちの頭に容赦するという概念はなかった。全力を持って、ストーカーを駆逐することで頭は一杯だった。


 明日こそは引導を渡してやると言う決意の元、この日は解散した。


今日村上春樹の新刊が発売されましたね。どのニュース番組でもやってましたw 本屋大賞の発表の時より報道されている気がします。初版50万部という数字にもビックリ! 印税もすごそうです。私もこのくらいの作家になりたい……。

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