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岩見優司のリア充(?)な日常  作者: 霧島こう
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第三十一話 (母親と言う名の)鬼の居ぬ間の洗濯

小説の内容とは関係ありませんが、最近暑くなってきましたね。ちょっと前までは寒かったのに、急に暑くなっちゃいました。寒いのも、暑いのも苦手で、中間の気温を期待していた私のテンションは下がったままです。でも、小説は全力投球でお届けします。楽しんでいってください。

第三十一話 (母親と言う名の)鬼の居ぬ間の洗濯


 数日もすれば、光もちやほやされなくなるという早智の予言は見事に外れた。クラス替えから、もう一週間経つが、未だに光の周りには、何人かの女子生徒が取り巻きのようにくっついていた。


「すごいな、光人気。衰えることを知らない……」


「うん。最近は特定の女子が常に一緒にいるみたいね。琴羽グループが出来そうな勢いだわ」


 当然なことだが、光と会話の機会をあまり持つことは出来ず、光との距離が縮まることはなかった。


「光に友達が出来るのは嬉しいことだけど、私としてはちょっと寂しいかな……」


「私も、もっと琴羽さんと話したいな~」


「私は家で光と会話できるから寂しくないけどね。もし良かったら、私の家に来る?」


「……屋敷に招待するのもいいですが、何ならこの場で担いで来ますか?」


「いや、それはいい!」


 乱暴なやり方は結構だが、光ともっと校内で話したいと言う七海と早智の気持ちは分かる。俺は何気なく呟いた。


「親睦会でもやるか?」


「良いんじゃない? それ」


「うん。私も良いと思う!」


 元々みんなで集まってワイワイやるのが好きな性格の陽菜と早智は乗り気だった。学校では、人気者の光も、放課後なら連れ回せるとの考えだった。




 その日の放課後に、さっさと帰ればいいものを、陽菜、早智、七海の四人で馬鹿話に花を咲かせていると、思い出したように早智が家庭の事情をカミングアウトした。


「ねえ、今日さ。うちのお母さん、友達と旅行に行くからいないのよ!」


「知っているよ」


 何を隠そう、早智の母親と旅行に行く友達と言うのは、俺の母親だからな。旅行の話は耳にタコが出来るほど聞いている。


「つまり、今夜は私の家も、あんたの家も、親がいないって訳」


「そうなるな」


「いないのは母親だけでしょ? 父親が帰ってくるんじゃないの?」


 俺と早智の会話に疑問を持った七海が聞いてきた。


「七海にはまだ言ってなかったな。二人とも母子家庭なんだ。父親はいないし、お互い一人っ子なんだよ。だから、今夜は一人」


 俺が家庭の事情を説明すると、七海は驚いた顔を見せて、次に申し訳なさそうな表情になった。


「そうなんだ。……ちなみに謝った方が良いかしら?」


「? 何で?」


「いや、だから。嫌なことを思い出させたりしていないか、心配したのよ……」


 七海がぼそぼそ言っていたが、「気にするな」と一言だけ言っておいた。


「私も行っていいかな」


 親不在のお泊り会に、陽菜が興味を持ってきた。家では使用人たちに囲まれているので、友人だけで一晩明かすという経験はあまりないのだろう。


「もちろん!」


「ありがとう!」


 早智からOKの返事をもらうと、陽菜は嬉しそうに表情をほころばせた。その様子を羨ましそうに七海が見つめている。もしかして、七海も行きたいのか? 七海の物欲しそうな視線に、早智も気付く。そして、チャンスとばかりに瞳が怪しく輝く。


「何? あんたも来たい訳?」


「! まあ、たまにはそういうのもいいかなって……」


「行きたいなら、そう言いなさいよ」


 てっきり断るかと思ったら、意外にもすんなり早智は、七海の参加を了承した。


「じゃあ、私に大きな声でお願いしなさい。早智様、私めもお泊り会に参加してもよろしいでしょうか? はい、リピートアフタミー!」


「そんなこと言えるわけがないでしょ! いいわよ、そこまで行きたいわけじゃないし」


 やはりただで承諾するわけがなかった。結局、いつものように大声でいがみ合う結果になってしまった。


「もう! 冗談に決まっているじゃない。良いわよ、来ても。うちは来る者、拒まずだから」


 この日は早智が引いて、口論は決着した。せっかくこれから楽しい一晩を過ごそうと言うのだから、穏便に進めてほしいものだ。


「深海さんも来るよね」


「……はい」


 後ろの方で目立たないようにしている日向にも早智は声をかけた。日向も早智の家に来たかったようで、二つ返事で了承した。


「駄目よ。来たいなら、そう言わなきゃ!」


「……すいません」


 早智の言うことはもっともだ。早智でなければ、日向の薄い存在感に気づかずに、誘うのを忘れていたかもしれない。その場合、参加したいのなら、自分の口で行きたいと主張するしかないのだ。


 だんだんテンションの上がってきた早智は参加人数をどんどん増やそうと画策しだした。


「もうこの際だから、琴羽さんも呼んじゃおうよ。学校じゃできない積もる話もたくさんあると思うしさ~」


「鹿内さん、太っ腹!」


「さっき親睦会でも開こうって話をしたじゃない」


 発言した俺が忘れていた親睦会のことを、早智は覚えていた。


 早速陽菜が光に連絡を取った。使用人らしく、陽菜からの電話にワンコールで出たようだ。俺たちは電話に向かって話す陽菜の言動に注目した。


「あ! 光? 私、私。えっとね、今夜は暇? え? ……そうなんだ。大丈夫、謝らなくていいから、光は友達と楽しんでいらっしゃい。後で鹿内さんの住所をメールしておくから、終わったらいらっしゃい」


 電話を切ると、本当に残念そうに携帯電話をしまった。


「え~とね。友人たちと遊びに行く約束をしているから、少し遅れるって……」


「うん。会話を聞いていたから、薄々分かっていたよ」


 あの性格じゃ、友人との約束を、今更断ることも出来まい。途中参加なのは残念だが、来ないわけではないので、早智の家で楽しみながら待つことにしよう。


 ただふと疑問に思ったことを陽菜にそっと耳打ちした。


「ボディガードどころか、陽菜との接点も薄れていないか?」


「それは言わないで」


 陽菜は顔を背けた。あまりこの話題に触れてほしくなさそうにしていたので、俺もそれ以上、追及するようなことはしなかった。


 結局、俺、早智、陽菜、七海、日向の五人で親睦会をスタートことになった。




 学校の帰り、早智の家に行く前に、スーパーマーケットに寄って、夕食の買い出しをしていくことにした。


 まだ今夜のメニューを決めていなかったことを思い出して、口笛を吹きながらカートをひいている早智に尋ねた。


「今日の夕飯のメニューはどうするんだ?」


「ん~! まだ決めていない!」


 しばらく考える素振りをした後で、堂々と言った。そんなことだろうと思ったよ。早めに聞いておいて正解だった。


「あんた達はさ。何か食べたいものでもある? 少しくらいならリクエストに応えてあげるわよ」


 どうせ最後は自分の食べたいものを優先するんだろうなあと思いつつ、思いを巡らす。


「……カレーはどうでしょうか」


「あ、カレーは止めてくれ。最近、苦手になったんだ」


「? あんた、カレーが大好物だったじゃない。いきなり嫌いになるなんて珍しいこともあるのね」


 早智は不思議そうにしていたが、林間学校の下見で、俺と同じような体験をしたやつなら、カレーを食べられなくなると確信を持って言える。


 こうして、カレーは却下されたが、夕飯のリクエストは次々と出てきた。


「ちゃんこ鍋」


「シチュー」


「キムチ鍋」


「チーズフォンデュ!」


 チーズフォンデュをリクエストしたのは陽菜。さすがお嬢様だ。目の付け所が違う。ただ、俺と早智の反対に遭い、却下される運命だけど。嫌いではないけど、もう少し慣れ親しんだ、庶民的な料理を食べたいのだ。


 一方の陽菜は、さらに見当はずれな料理のリクエストを続けた。


「あ! 一つ食べてみたいと思っていた料理があったのを思い出した!」


「何?」


「う~んとね! ちょっと前に本で読んだんだけど、……思い出した! 闇鍋」


「……へえ~」


 闇鍋か……。結論から言うと、アウトだな。早智が悪乗りして、何を入れるか分からん。革靴とか平気で入れるやつだからな。以前なんて、おばさんの結婚指輪を入れて大騒ぎになったこともあった。いや~、あの時は後始末が大変だった。


「早智に決めてもらおうか。今日早智の家のお世話になるんだから」


「え~、私が決めちゃっていいの~?」などと言いつつも、まんざらではない様子だ。


「じゃあねぇ……。みんなの意見を汲んで……」


 いかにも重大発表をしますよ、といった顔で、たっぷり間を取った後で、本日の夕食を発表した。


「すき焼きで行こうか!」


 最初に予想した通り、全然みんなの意見など組んでいない。ふと自分が食べたくなった料理を言っただけか。


「ふん! そんなことだと思ったわよ」


 呆れた顔で七海が鼻を鳴らすが、早智と言う人間を知っている奴なら、この事態は予想できたはずだ。


「どこにチーズフォンデュの名残があるの?」


 陽菜が不満を言っている。俺たちのリクエストが最終的に無視されたことには気づいていないようだ。さすが純粋なお嬢様だ。人を疑うことを知らない。


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