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無力のランバージャック  作者: 餡乃雲(あんのうん)


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第八話 決戦! 荒野の牙

 もうすぐ夕暮れ時になる時刻。


 時計塔の上に陣取るヴィクトールには、買い出し奴隷を狙った不良少年たちがゾロゾロと徒党を組んでいるのが見えていた。


「ポイントDに敵が結集している。D班は一度時計塔へ退避」

 鷹匠のフリッツが見晴らしの良い時計塔から仲間に鳩を飛ばす。フリッツの後では司令塔のヴィクトールが紙と羽ペンを持ちながら敵の動きを観察し素早く文字を書いている。


 孤立した敵を待ち伏せして罠に嵌め各個撃破していく作戦。

 鳩で伝令ができるのは、ヴィクトールが読み書きの勉強を全員に徹底させた結果でもあった。


 罠ポイントはA~F。各ポイントで罠を張っているのはサバイバル術のノア、氷結魔術のオスカー、火炎魔術のアレン、水魔術のエミル。班は罠要員ごとに4つに分ける。


 力場を使い走る速度を上げられる僕は、敵のかく乱と誘導が任務だ。

 まずはポイントD方向へ敵を引き付ける役割をこなす。

 団体様を引き付けた後は、屋根に駆け上がり水路の上を走り逃げ回って撒く。

 時には隠れた物陰から小石を操作し、敵を誘導したい場所へと注意を引きつけた。


「ポイントA、視界良好。敵が一人向かっている、と。さあいけ」

 ヴィクトールが素早く書いた指示書をまた別の鳩の足に括り付けフリッツが飛ばす。


 ポイントA近くに敵が一人でいた。近くで待機していたノア班のハンスがヴィクトールの指令を受け取り、一人でいる敵をベロベロバーと変顔をして挑発。

 戦闘力のないハンスに油断したのか敵が罠ポイントへやってきた。待ち受ける罠はノアの竹とロープで作った吊るし罠。


 吊るし罠にかかった敵は片足を吊り上げられ身動きがとれなくなった。そこを剣術のテオが木剣でしばき倒しロープで拘束した。


 戦闘能力のない鍛冶師のエドとココも孤立した敵の引き付け係だ。エドもハンスと同じく変顔で挑発。ココは例の「モエモエーキュン」の呪文で目がハートマークになった敵を罠へと誘導した。


 オスカーの氷結魔術罠にかかった敵は、スケートリンク状になった地面に足を滑らし盛大にこけた。そこをロイが先を丸くした弓矢で動かぬ的状態の敵を降参するまで攻撃した。


 アレンの火炎魔術罠にかかった敵は尻を燃やされた。レフィが木盾で敵の攻撃を捌いている間に尻に火をつけられた敵は、その辺を転げまわっているところをロープで拘束した。


 エミルの水魔術罠は水球だ。敵の上半身を水球に閉じ込め呼吸困難になったところをフィンが木槍でしばき倒しロープで拘束した。



 その後も鳩を使ってポイントをずらしつつ敵の数を減らしていった。



「ポイントFにボスのゼクスが一人で向かっている、そこを囲んで叩け」

 ヴィクトールがアレン班と一緒にいる僕に鳩を飛ばしてきた。


 そしてポイントFに急行した僕とアレン班は敵のボス、ゼクスを追い詰めた。


 ココの秘奥義「モエモエーキュン」を食らい、目をハートマークにしたゼクスが袋小路に引き込まれる。


 そこで待ち受けた僕とレフィが木剣、木盾で引き付けている隙にアレンの火炎魔術で尻に火をつける。「うぎゃあああ!!」と転げまわっているところをロープで拘束したのだった。



 【荒野の牙】のボス、ゼクスは若干僕らよりも年上の灰色の髪をした目の鋭い少年だった。顔を腫らし尻を若干浮かした状態で座りながら、そっぽを向いている。


「自分たちがいつもしていることを逆にされた気分はどうだい?」

「てめえの仕業かヴィクトール、やってくれやがったな。……だが降参だ」

 ヴィクトールが声かけるとゼクスは意外と素直に応じた。


「ゼクス、僕たちにもう手を出さないと約束してくれるかい?」

「ああ。……まあ、そんなことよりもさ」

「ううん?」

「そこの可愛い子ちゃん、僕の彼女にならないか?」

「ひっ!?」

 腫らした瞼でキメ顔を作り、熱いマナザシをココに向けるゼクス。怖がって僕の後ろに隠れるココ。


「てめえ、まだ尻を焼かれ足りないようだな」

 アレンがこめかみをピクつかせながらそう言った。無銘の斧にはココのファンは多いのだ。


 【無銘の斧】には決して手を出してはいけない存在がいるということを身をもって知るゼクスであった。南無三。

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