第十話 ヴィクトールの采配
ヴィクトールが提唱したのは、武力向上と金儲け、生活力向上を歯車のように回していくことだった。
まず武力向上は戦闘系の才能と魔術系の才能で班を作り鍛えること。この訓練には治癒系、サバイバル術の罠、鷹匠の伝令との連携も含まれる。
金儲けは収穫物を売ったりバイトをすることで金を得るということ。インドア系の才能である薬師、商才、文才は特に読み書きをヴィクトールから学び、ヴィクトールがこなしている事務系の仕事をサポートすると同時に薬を作る、商売をする、手紙の代筆バイトをするなどして金を稼ぐ。
他にも魔術系だと例えば光魔術は街路灯を灯すバイトがあったりするので金儲けはしやすい。特に荒野の牙のメンバーは奴隷の僕らと違って一日中暇かつ街の外に出ることができるので、僕たちとの訓練時間以外をバイトに充てればいい。
収穫物を得る系だと、漁師は氷結魔術と組ませ街の上流にあるキール湖で魚介類を獲れば、冷凍保存した生鮮食品を得ることができる。農業は風魔術、土魔術、水魔術と組み合わせ秘密基地近くの森に畑を作りトオカカブなどすぐに育つ野菜を育ててみる。
商品があれば『商才』をもったディオと実家が商家で『おねだり』上手なココが売ったり買ったりする。ココが「パパ買って?」とおねだりするだけで、お金がチャリンチャリン入ってくるはずだ。流石は策士ヴィクトール。
お金や物品の管理はヴィクトールがメイン、サブでココ、ディオ、『文才』のシオン、『薬師』のイライザが担当する。
儲かった金や収穫物で生活力を向上させる。生活力が向上すれば自ずと体力もついてくる。
生活力の向上としては衣・食だけではなく住も大切だ。
メンバーが16人も増えたので、黄昏の丘秘密基地も手狭になってきた。スラム街に廃墟のアジトはあるが治安が悪いので、できれば黄昏の丘で眠れるようにしたかった。
そして丘の中にある秘密基地の壁の向こうは土だ。掘って壁を木材や石材で補強してやれば部屋を増やすことができる。
ということで、『鍛冶・大工』のエド、ハンスには秘密基地の増築をやってもらうことにした。
そして忘れてならないのは『本物の武器の購入』だ。
今度の敵【白夜の虎】は大人が人を殺すための本物の武器を使ってくる。今までのように子供同士が木剣でチャンバラというわけにはいかない。
ココの親御さん経由で狩のため、あるいは用心のためと言って購入する。買った鉄製武器はいざというときのために秘密基地に隠しておく。
当面は何も知らない不良少年のフリをして、儲けたお金をさも少年奴隷から奪ったように見せかけ、その一部を支払うことでしのぐことはできよう。スラムのアジトでボロを着て寝泊まりさせ、金はないというアピールもしよう。
だがいつまでもそんなことはしていられないしバレるのも時間の問題だろう。
だからそのタイムリミットまで戦いの準備をして牙を研ぎ続けるのだ。
僕の才能だって【荒野の牙】との実戦を経てさらに進化している。もっともっと修行して内なる大樹の力を使いこなし強くなってやる。
今に見ていろ。ここからは虐げられるだけだった僕たち子供が、汚い大人どもに叛逆する番だ。




