49 雪の準備(1)
翌朝、キャサリンは早くから机に向かっていた。
「エマ」
呼べば、すぐに侍女が前に出る。
「アーサー様について、調べてちょうだい。特に、ベアトリス嬢のことをどう思っているのか……それがわかるような話を、周囲から拾えるだけ拾って」
「承知しました。それと、もう一点よろしいですか」
エマが静かに続ける。
「ビオラ様についての調査が、昨夜の段階でおおよそまとまっております」
「聞かせて」
エマが手元の書類に視線を落とした。
「没落貴族の出であることは以前にお伝えしたとおりです。エドワード伯爵以外にもビオラ様に財産を横取りされた男性が数多くいらっしゃいます。しかし……」
エマが説明を区切る。
不審に思ったキャサリンがエマを見返した。
「……?」
「ビオラ嬢の生家は依然として貧しいままです。財産は巧妙に隠蔽されているのかもしれません。それから、単なる偶然かもしれませんが、ビオラ嬢に狙われた男性は、元々、身持ちの悪かった方が多いようです」
「その噂、あなたはどこまで信じている?」
キャサリンがエマに厳しい視線を向ける。
「私の直観でも構いませんか?」
「もちろん、あなたの感性を私も信じるわ」
「間違いなく、ビオラ様にはダメンズしか狙わないという傾向があるのだと思います」
「わかったわ、エマを信じましょう」
アーサーの気持ち次第にはなるが、ビオラのアンテナに引っかかったことは、何かしらのダメな要素があったとも考えられる。そこを矯正することができれば、ビオラの的から外れるだけでなく、ベアトリスにとってもいいはずだ。
エマが一礼して、部屋を出ていく。
その背中を見送りながら、キャサリンは保険のための計画にも着手する。
――念のため、ビオラ嬢にエドワード様以上の獲物を用意しましょう。
舞踏会の当日、ビオラの視線を釘付けにするほどの存在が、会場に必要だ。ビオラが自分のターゲットを探す前に、その目を一点に縛りつけてしまえばいい。
会場全体の注目を一身に集められる人物。
――やはり、あの方に頼むしかないか。
キャサリンは小さくため息をついて、新しい紙を取り出した。
コメントまでは望みませんので、お手数ですが、評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。
次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ




