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タイムリープするお嬢様――二度目の婚約破棄はもう遅い。あなたが破滅する始まりです  作者: 御咲花 すゆ花
4話 リディア・ウルペッカ

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33 罠の設計

 翌朝、キャサリンの屋敷にリディアが訪ねて来た。

 扉を開けた瞬間、キャサリンはリディアの顔を見て状況を察した。

 目の下にうっすらと隈がある。

 徹夜明けの顔だ。

 しかし、表情は清々しく、その目には揺るぎない光があった。


「できました」


 開口一番、リディアが言った。


「ご苦労様でした」


 キャサリンは余計な驚きも、過剰な称賛も口にしなかった。

 その言葉を穏やかに受け取る。

 リディアが手帳を机の上に置いた。


「投与の順番さえ守れば、衰弱した患者でも副作用は十分に押さえられます。処方の仕方も、だれでも間違えないように工夫しました」


「見せていただけますか」


 差し出された手帳を、キャサリンは開く。

 内容の深いところまでは理解できないが、記録の丁寧さと細かさは十分に伝わった。

 7年分の積み重ねが、一ページに凝縮されていた。

 キャサリンが手帳を閉じ、リディアに返す。


「……これが本物ですわね」

「ええ」


 リディアがうなずく。


「では、次の話をしましょう」


 キャサリンが静かに言った。


「ヴィクター様の申請は、もう止められません。無理に止めてもかえって余計な混乱が起きるだけでしょう。発表は予定どおり行われます。セリーヌ嬢もここで動くはずです」


「わかっています。だから、逆に利用するのでしょう?」


 リディアの目が、キャサリンを捉える

 飲み込みが早い。

 キャサリンは満足げに口元を緩めた。


「そのとおりですわ。向こうが動くなら、その動きを全部、こちらの証拠にしてしまえばいい」


 キャサリンは3つの手順を順番に説明した。

 一つ目。リディアが完成させた本物の処方を、発表当日まで信頼できる第三者に預けること。どれだけセリーヌが書類を改竄しようとも、この人物が本物を保証する証人になる。


 二つ目。ヴィクターが申請に使う処方には、意図的な欠陥を仕込んでおくこと。表面上は完成品に見えるが、専門家が精査すれば明らかに未完成だとわかるものにする。発表当日の質疑応答で、その欠陥が暴かれる構造だ。


 そして、三つ目。セリーヌの改竄工作の現場を、エマが証拠ごと押さえておくこと。

 キャサリンは一拍置いてから告げる。


「預け先の第三者ですが、ルシアン殿下にお願いしようと思っています」


 リディアの目が大きく見開かれる。


「第二王子殿下……ですか?」

「ええ、そうです。少しお付き合いがありましてね。何より王族が証人であれば、だれも覆せないでしょう」


 リディアがしばらく言葉を失っている。


 ――まあ、無理もないわね。


 ただの薬師の話に、なぜか第二王子が登場するのだから驚くのが普通だ。


「殿下は引き受けてくださるのでしょうか?」

「話を持っていくのは私ですから、ご心配なく」


 あっさりとキャサリンが答える。

 リディアが少し呆気にとられたような顔をしてから、ふっと息を吐いた。

 キャサリンは話を戻す。


「それで……欠陥の仕込みですが、これはあなた自身にやっていただく必要があります。どこにどんな罠を仕掛ければいいのかは、あなたにしかわからないことですから」


「……はい」


 自分の薬に欠陥を仕込む。

 薬師としての矜持を考えれば、簡単なことではないはずだが、リディアの声は震えていない。

 キャサリンはそのことを改めて認めながら、静かに立ちあがった。


「では、私はルシアン殿下へのもとに参ります。準備が整い次第、また連絡しますわ」

「ありがとうございます」


 リディアが深く頭を下げる。


「礼はあとで」


 キャサリンは軽く手を振って、応接室を出た。

 廊下に出るなり、エマが静かに並ぶ。


「ルシアン殿下への文は、もう用意しております」

「……。本当に早いわね、あなたは」


 キャサリンが呆れたような、感心したような声で言えば、エマが静かに一礼を返した。

 コメントまでは望みませんので、お手数ですが、評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。

 次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ

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