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現代の効率厨、異世界で生産と経営を回して気づいたら領主の右腕  作者: てへろっぱ


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139/210

第139話 往復で一便


朝。入口は暗いまま。箱壁も返却棚も灯りも触らない。外変化0。


返却棚へ三箱が落ちる。


一番。補修班内。

二番。東通りの金具工房。

三番。鋳物工房。


破損0。遅延0。中身0。返却3。

穴札12。机出し0。朝値変更0。


昨日、三番を運んだ女商人は来ていない。

運送した事実をこちらへ残さないと理解したらしい。


フィン 女商人、来なくなったな。

ミナ 来る理由がない。

ゼフ 運賃は工房から受け取った。箱も戻った。

レイナ 仕事が終わった。

フィン 静かになったなら成功か。

レイナ 次は運賃で壊す。

ミナ 高くする?

レイナ 片道を無料にする。

フィン 無料なら工房は喜ぶだろ。

レイナ 帰りを運ばない。

ゼフ 箱が使用先で止まる。

レイナ 進捗、一つ。往復で一便。


ミナが紙を一枚だけ置く。外から見えない位置。理由は書かない。


運送は往復で一便 片道完了0 返却確認で終了 運賃は工房と運送人 説明無し


フィン 箱を届けただけじゃ、こちらの数字では運送完了にしない。

レイナ 使用して返すまで。

ミナ でも運賃をいつ払うかは工房次第。

レイナ 関与0。

ゼフ 行きだけ無料でも止めない。

レイナ 止めない。箱が戻らなければ次便0。

フィン 損で覚える。

レイナ うん。


運送を往復で一便と数えるのは、運送人を縛るためではない。


行きだけ運び、空箱を置き去りにする。

帰りだけ高い金を要求する。

工房が払わなければ箱が戻らない。


箱が戻らなければ、次の箱も出ない。

工房は困る。

困った工房が、新しい箱を増やせと言い始める。


運送人は、行きだけでも仕事をしたと言う。

工房は、使い終えたのだから新しい箱を寄越せと言う。

外は、箱不足だと騒ぐ。


一箱が途中で止まるだけで、椅子が三つ並ぶ。


だから数字では、戻って初めて一便。


フィン 運送人に帰りも運べって命令するわけじゃない。

ミナ 帰りを運ばなければ、片道0のまま。

ゼフ 工房が別の人へ返却を頼んでも?

レイナ 戻れば一便。運んだ人は数えない。

フィン 行きと帰りが別人でもいいのか。

レイナ 箱が往復すればいい。

ミナ 人じゃなく箱で数える。

レイナ 正解。


昼前。ブラントが市場から戻る。

いつもより顔が疲れている。


ブラント 無料運送が始まりました。

フィン 早いな。

レイナ 何件。

ブラント 五工房へ声を掛け、二工房が受けたようです。今日の空き箱も狙っています。

ミナ 誰が運ぶの?

ブラント 南側の荷運び組です。表向きは新しい仕事を得るための試行だと。

ゼフ 左肩の男は?

ブラント 荷運び組の近くにいます。ただ、契約には名前を出していません。

レイナ 名前0。数字は。

ブラント 行き無料。帰りは別料金。別料金の額は未定です。

フィン 未定で頼む工房もすごいな。

ブラント 行きが無料という言葉だけが先に回りました。

ミナ 無料は大きい。帰りは小さい。

レイナ 箱は空き1。

ブラント 今日の鋳物工房は不要。代わりに革具工房が必要1です。

ゼフ 三番が空く。

レイナ 革具工房が運送を選ぶ。

フィン 無料の方を選びそうだな。

ブラント もう選んでいます。南側の荷運び組へ頼んだそうです。

レイナ 止めない。


フィンがレイナを見る。


フィン 本当に止めないんだな。

レイナ 選んだ結果を見る。

ミナ 先に注意したら、運送規則の説明会になる。

ゼフ 無料を禁止したと言われる。

レイナ 箱番号と行き先だけ。

ブラント では三番を南側へ?

レイナ 三番は革具工房宛て。南側は運ぶだけ。

ブラント 了解です。


昼。三箱が出る。


一番。補修班内。

二番。東通りの金具工房。

三番。革具工房。


一番と二番は子供便。

三番の前には、南側の荷運び人が立つ。


若い男が二人。

小さな荷車一台。

荷車の側面には、無料の文字が大きく書かれた布が下がっている。


フィン 布がでかい。

ミナ 箱より大きい。

ゼフ あれが看板になる。

レイナ 外の荷車。触らない。


荷運び人 革具工房まで無料で運びます。

レイナ 箱番号。

荷運び人 三。

ミナ 行き先。

荷運び人 革具工房。

ゼフ 途中渡し。

荷運び人 しません。

レイナ 返却は。

荷運び人 帰りは別契約です。

レイナ 片道0。

荷運び人 何が0なんです?

レイナ こっちの運送完了。

荷運び人 届ければ仕事は完了でしょう。

レイナ 箱が戻って一便。

荷運び人 帰りは工房が考えることです。

レイナ うん。

荷運び人 なら問題ありませんね。

レイナ 問題0。運送も0のまま。

荷運び人 意味が分かりません。

フィン 説明すると長くなる。運べばいい。

ミナ 三番、革具工房。

荷運び人 ……分かりました。


荷車が出る。

無料の布が風で揺れる。


子供便より目立つ。

市場の者が見る。

無料で運ぶ新しい仕事だと噂が走る。


フィン あれ、宣伝としては強いな。

レイナ 強い。

フィン 止めなくていいのか。

レイナ 無料を止める理由0。

ミナ 帰りを誰が運ぶかだけ。

ゼフ 箱は使用元へ着く。

レイナ そこまでは正しい。


革具工房へ三番が届く。


工房主は外れた留め具を並べ、作業を始めるところだった。


荷運び人 三番、届けました。

革具工房主 助かった。無料なんだな。

荷運び人 行きは無料です。

工房主 行きは?

荷運び人 返却は別契約です。

工房主 空箱を戻すだけだぞ。

荷運び人 帰り便の基本料金と保管料が必要です。

工房主 保管料?

荷運び人 こちらが返却まで預かる場合です。

工房主 預けない。使い終わったら、子供便へ渡す。

荷運び人 それでは当方の返却実績になりません。

工房主 知らん。

荷運び人 往路無料は、復路契約を前提にしています。

工房主 先に言え。

荷運び人 契約書に、

工房主 契約書なんて見てないぞ。

荷運び人 代表者から説明が、

工房主 誰だ、その代表者は。


少し離れた角で、左肩が擦れた男が様子を見ている。

前へは出ない。

工房と荷運び人が揉めれば、箱は止まる。


止まった箱を理由に、返却制度が悪いと言える。

運送を正式に管理しろと言える。

箱を増やせとも言える。


だが革具工房主は、話を切った。


革具工房主 行きは無料。そこまでだな。箱は使う。帰りは別に頼む。

荷運び人 それでは今後、無料配送を利用できません。

工房主 構わん。

荷運び人 有料でもこちらの料金が基準になります。

工房主 勝手に決めろ。次から頼まん。

荷運び人 困るのはそちらです。

工房主 今困ってるのは、お前と話して仕事が止まってることだ。


工房主が箱の蓋を開ける。

補修材を取り出し、作業台へ置く。


用途へ落ちた。


箱を止める話は終わる。


フィン 強いな、あの工房主。

ミナ 前回、箱を返さないと次が来ないって覚えた。

ゼフ 無料より次便。

レイナ 損で覚えた。


荷運び人は空の荷車を押して帰る。

帰りの箱はない。


往路だけ。

数字上の一便0。


左肩の男が荷運び人へ近づく。


左肩の男 なぜ契約を取らない。

荷運び人 聞いていた話と違う。無料なら帰りも自然に任されると。

男 工房が分かってないだけだ。次へ行け。

荷運び人 帰りの料金を先に示さないと、揉める。

男 無料の文字を大きく出せば客は来る!

荷運び人 客は来ても、帰りの仕事が取れない。

男 箱が止まれば、向こうが折れる!

荷運び人 止めたら次の箱が来ないと言われた。

男 だから箱を増やさせるんだ!

荷運び人 それまで誰が払う。


フィン 仲間割れ始まった。

ミナ 無料だけでは荷運び人も儲からない。

レイナ 箱だけ見る。

ゼフ 左肩の男、声が大きい。

レイナ 観客が聞く。放置。


周囲の店から視線が集まる。

箱を増やさせるという言葉まで聞こえた。


左肩の男はそこで口を閉じた。

だが遅い。


荷運び人たちは無料の布を外し始める。

一人が布を畳み、荷車の下へ押し込む。


無料運送は、一便も完成しないまま看板を失った。


午後。補修が終わる。


革具工房主が三番の空箱を持って外へ出る。

いつもの子供便が来る時間には少し早い。


工房主 さて、どう戻す。

女商人 戻しましょうか。


いつの間にか女商人が立っていた。

昨日と同じ小さな荷車。看板なし。空。


革具工房主 いくらだ。

女商人 行きは運んでいませんので、帰り分だけ。

工房主 無料じゃないのか。

女商人 無料で困った直後に、それを言います?

工房主 言ってみただけだ。

女商人 いつもの帰り料金。

工房主 三分の二。

女商人 それでは空車で帰った方が楽です。

工房主 空車なら金は0だぞ。

女商人 こちらも仕事を選べます。

工房主 ……五分の四。

女商人 その額で。

工房主 細かいな。

女商人 商人ですので。


工房主が三番を荷車へ載せる。


革具工房主 三番、返却。

女商人 三番、返却を運ぶ。

工房主 次も必要なら戻ってくる。

女商人 必要なら。

工房主 お前まで同じ言い方になったな。

女商人 余計な約束をすると、面倒ですから。


荷車が出る。


行きと帰りで運送人は別。

それでも箱は往復する。


南側の荷運び組が往路。

女商人が復路。


どちらが運んだかは板へ残さない。

三番が革具工房へ行き、革具工房から戻った。

数字はそれだけ。


返却棚へ三番が落ちる。


レイナ 受領1。往復1。

女商人 行きは別の人です。

レイナ 人は数えない。

女商人 箱が戻ったので一便。

レイナ 正解。

女商人 では、無料運送も半分は役に立ったのでは?

フィン 行きだけはな。

ミナ 工房が帰りを別に選べたから戻った。

ゼフ 片道無料を禁止しなくても、箱は守れた。

レイナ うん。


女商人 帰りを私に頼む工房が増えたら、まとめて運んでも?

レイナ 途中で置かない。行き先が返却棚ならいい。

女商人 工房を順番に回り、空箱を複数積む。

レイナ 箱番号を混ぜない。

女商人 倉庫には置かない。

レイナ 問題0。

女商人 運送の仕事として成立しそうです。

フィン あんた、最初は箱をまとめて握ろうとしてたのにな。

女商人 握れない物を握ろうとするより、動かして稼ぐ方が賢いでしょう。

レイナ 商人。

女商人 褒め言葉として受け取ります。


夕方。三箱が揃う。


補修班内1。

金具工房1。

革具工房1。


返却3。

往復完成3。


一番と二番は同じ運び手。

三番は行きと帰りが別。


それでも数字は同じだ。


フィン 往復で一便、分かりやすいな。

ミナ 人ごとの実績表が要らない。

ゼフ 運送人が変わっても、箱の流れは変わらない。

レイナ 人を固定しない。

フィン 公式運送人を作れ、って話も消えるか。

レイナ 誰でも運べる。戻れば一便。

ミナ 戻らなければ次便0。

レイナ それだけ。


ブラントが市場から戻る。


ブラント 無料運送の布は外されました。

レイナ 数字は。

ブラント 無料往路1。無料側の復路0。別運送による返却1。箱としての往復1。

フィン 他の一工房は無料を断った?

ブラント 帰り料金が未定と聞いて断ったそうです。

ミナ 二件受けたって話だったよね。

ブラント 一件は箱の空きが無く、実際の運送まで進みませんでした。

レイナ 要求2、実行1。

ブラント はい。市場では無料より往復額を先に決めろ、という話に変わっています。

フィン まともになった。

ゼフ こっちは運賃へ関与0。

レイナ 工房が勝手に覚えた。


ブラント もう一つ。女商人が帰り箱を集める巡回を始めるようです。

ミナ 集積倉庫は?

ブラント 作らないそうです。荷車で回収し、そのまま返却棚へ。

レイナ 途中保管0なら問題0。

フィン 最初に狙ってた形と似てるのに、中身が違うな。

ミナ 箱を集めて支配するんじゃなく、返却先へ運ぶ。

ゼフ 行き先が一つなら迷わない。

レイナ 役に立つ。


領主へ数字だけ。


ブラント 当日数3。使用3。返却3。無料往路1。無料側復路0。別運送返却1。箱の往復完成3。

領主 無料は。

レイナ 禁止0。

領主 箱は。

レイナ 全返却。

領主 なら問題ない。

フィン 片道だけ無料にして箱を止め、増産要求へ繋げる狙いだったようです。

領主 無料を餌に倉庫を作る手か。古い。

ミナ 往復で一便にしました。

領主 良い。運んだ者ではなく、戻った箱を数えろ。

レイナ 正解。

領主 今日も腹が立たんな。

レイナ 体調不良?

領主 お前は一度、普通に心配できないのか。

フィン 心配してる顔ではあります。

領主 顔が変わっていない。

レイナ 外変化0。

ミナ そこに使う言葉じゃない。


領主は眉間を押さえながら帰った。

会議なし。

公式運賃なし。

運送人登録なし。


夜。灯りは二基。低く地味に足元だけ。入口は照らさない。外変化0。


三箱は返却済み。

無料配送札なし。

帰り専用箱なし。

公式運送人札なし。

運賃帳なし。


穴札12は腰袋のまま。

朝値変更0。

補修班の許可段+1もそのまま。


行きと帰りを同じ人が運ぶ必要はない。

無料で運んでもいい。

途中で運送人を変えてもいい。


箱が使う場所へ届き、そこから戻れば一便。

人の都合ではなく、箱の往復だけを数える。


俺は板に一行だけ残した。

無料往路1を片道完了0のまま流し、別運送返却1で三番を戻して当日三箱の往復3を揃えた。


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