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現代の効率厨、異世界で生産と経営を回して気づいたら領主の右腕  作者: てへろっぱ


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140/210

第140話 満載を待たない


朝。入口は暗いまま。箱壁も返却棚も灯りも触らない。外変化0。


返却棚へ三箱。


一番。補修班内。

二番。東通りの金具工房。

三番。革具工房。


返却3。破損0。遅延0。

穴札12。机出し0。朝値変更0。


三箱とも揃っている。

だが、戻った時間は揃っていなかった。


一番は昨日の昼過ぎ。

二番は夕方。

三番は夜便直前。


最終的には全部戻った。

数字だけなら問題0。


フィン 昨日は揃ったからいいんじゃないか。

ミナ 昨日は。

ゼフ 運送人が満載まで待ち始めたら、夜便を越える。

レイナ 次は溜める。

フィン 箱を盗むんじゃなく、効率って言って止めるのか。

レイナ うん。

ミナ 今日の進捗は?

レイナ 満載を待たない。


ミナが紙を一枚だけ置く。外から見えない位置。理由は書かない。


返却は一箱から 満載待ち0 夜越し0 途中保管0 説明無し


フィン 荷車に一箱でも戻す。

レイナ 通る便で返す。

ゼフ 荷車が空いてなくても?

レイナ 次に通る便。満載にはしない。

ミナ 満載を待たないだけで、即時を強制するわけじゃない。

レイナ うん。夜を越さない。

フィン 運送人の効率は悪くなるぞ。

レイナ 運賃で決める。こっちは箱だけ。


一箱ずつ戻すために、こちらが荷車を増やすわけではない。

専用の返却便も増やさない。

公式の時間表も作らない。


市場を通る荷車。

工房へ向かう荷車。

帰り道が返却棚の近くを通る荷車。


その便へ一箱ずつ載せる。


三箱揃うまで工房へ置く、をしない。

倉庫へまとめる、もしない。

夜まで荷車を待たせる、もしない。


箱は満載にならなくていい。

戻ればいい。


フィン 女商人、巡回を始めるって言ってたな。

ブラント 今日からです。午前と午後に市場を一周すると。

ミナ 一周で一箱しか無くても戻す?

レイナ 戻す。

ゼフ 三箱揃うまで荷車へ積んだままは?

レイナ 途中保管。0。

フィン 荷車も倉庫扱いか。

レイナ 止まれば倉庫。


昼前。女商人が来た。

昨日と同じ小さな荷車。看板なし。余計な札なし。


女商人 返却巡回の相談があります。

フィン 相談って言った瞬間、椅子。

女商人 立ったまま話します。

ミナ 長くしないで。

女商人 午前に一周、夕方に一周します。ただし、一箱だけの場合は夕方便へまとめたい。

レイナ 満載待ち0。

女商人 満載ではありません。二箱以上です。

レイナ 同じ。

女商人 一箱だけ運ぶと、運賃より車輪の摩耗が大きいのです。

フィン それは本当に困るやつだな。

レイナ 運賃を上げる。

女商人 工房が嫌がります。

レイナ 選ぶのは工房。

女商人 安くするためにまとめるのは合理的です。

レイナ 箱が止まる。

女商人 数刻だけです。

レイナ 夜越しの入口。

女商人 夜は越しません。

レイナ 今日一回なら、明日は二回。

ミナ 安くするために待つ形が残る。

ゼフ 箱が戻らない間、次便の空きも確定しない。

女商人 ……返却棚へ戻すまでが一便でしたね。

レイナ うん。


女商人は荷車の車輪を見る。

商人としては、空に近い荷車を何度も走らせたくない。

それは正しい。


こちらも、運送人へ損を押し付けたいわけではない。


フィン 他の荷物と一緒に運ぶのは?

女商人 できます。ただし、返却箱を積める空きを毎回残す必要があります。

ミナ 専用にする必要はない。

レイナ 箱を途中で置かなければいい。

女商人 市場の商品を運びながら、返却箱を一つ拾い、そのまま棚へ落とす。

レイナ 問題0。

女商人 帰り道を少し変える分、工房から少額を取る。

レイナ 関与0。

女商人 分かっています。運賃は工房と決めます。

フィン それなら満載を待たなくて済むな。

女商人 荷車全体は満載でも、箱は一つずつ返せます。

レイナ 正解。

女商人 満載を待たない、というより、返却箱で満載を作らない。

ミナ 紙を増やさない。今の一枚で終わり。

レイナ うん。


女商人は巡回へ出る。

荷車には布の束と金具の包み。普通の市場荷物。

返却箱を載せる空きは一つだけ。


専用車ではない。

返却札もない。

ただ、通るついでに一箱を戻す。


昼。三箱が出る。


一番。補修班内。

二番。東通りの金具工房。

三番。鋳物工房。


革具工房は今日は不要。

昨日の返却元から空き1が出て、鋳物工房へ移った。


一番と二番は子供便。

三番は鋳物工房が選んだ荷運び人。


昨日、無料の布を下ろした南側の若い男だった。

今日は看板なし。料金も先に決めてきたらしい。


荷運び人 三番、鋳物工房。

ミナ 途中渡し。

荷運び人 0。

ゼフ 返却は。

荷運び人 工房が帰り便を選びます。

レイナ うん。

荷運び人 行きだけでも運送の仕事は仕事です。

レイナ そっちの帳面では。

荷運び人 こちらでは片道分を受け取ります。

レイナ こっちは往復まで0。

荷運び人 分かっています。


フィン 昨日よりだいぶ話が早いな。

荷運び人 無料で運んで揉めるより、最初から片道分をもらった方が楽です。

レイナ 学習。

荷運び人 商売ですから。


三番が出る。

止まりなし。

新しい契約書なし。


午前の作業が早く終わったのは、東通りの金具工房だった。


二番の箱を使い切り、空箱を入口横へ置く。

置いた直後、女商人の荷車が通る。


女商人 二番、返却ですか。

金具工房主 二番。今日はもう使わない。

女商人 返却棚まで運びます。いつもの額で。

工房主 一箱だけだぞ。

女商人 他の荷物があります。箱の満載は待ちません。

工房主 なら頼む。


二番が荷車へ載る。

荷車には市場荷物がある。

だが二番の上へ物を重ねない。

途中で降ろさない。


女商人は次の工房へ向かわず、そのまま返却棚を通る道へ入る。


左肩が擦れた男が角に立っていた。


男 二番だけか。

女商人 二番だけです。

男 金具工房と鋳物工房の分を待て。二箱なら運賃を下げられる。

女商人 工房とは額を決めました。

男 こっちの倉庫へ置け。夕方にまとめて戻せばいい。

女商人 途中保管0です。

男 数刻置くだけだ!

女商人 数刻置いて、あなたは何を得るのです?

男 効率だ!

女商人 私の荷車の効率を、なぜあなたが心配するのです。

男 市場全体のためだ。

女商人 では倉庫代も荷運び代も無料で?

男 話をすり替えるな!

女商人 お金の話を避ける商人は信用しません。


フィン また刺した。

ミナ もう完全に運送側。

ゼフ 箱を握るより、運賃を守る方が得になった。

レイナ 損で向きが変わった。


男は荷車の前へ回る。


左肩の男 二番を置いていけ。後で俺が戻す。

女商人 返却を取れば、次便の口になれると思っています?

男 そんな話はしてない!

女商人 運んだ人は数えないそうですよ。

男 分かってる!

女商人 なら、なぜ欲しいのです。

男 確認だ!

女商人 確認は椅子。ここ椅子ない。

フィン そこまで覚えたのか。

レイナ 使い方が正しい。


周囲から笑いが一つだけ出た。

長くは続かない。


左肩の男は顔を赤くする。

だが荷車へ手は出せない。

市場荷物も載っている。止めれば、関係のない店の荷まで止めることになる。


女商人はそのまま通り過ぎる。


二番が返却棚へ落ちる。


レイナ 返却1。

女商人 満載待ち0。

ミナ 途中保管0。

ゼフ 往復1。

女商人 では次の荷へ行きます。

フィン 休まないのか。

女商人 荷車を止めると倉庫になるのでしょう?

レイナ 休むのはいい。箱を載せたまま待たない。

女商人 そこは別なのですね。

レイナ 人は休む。箱は戻す。

女商人 覚えておきます。


女商人は空になった一枠へ別の市場荷物を積み、離れる。


午後。補修班内の一番が戻る。

ここは運送なし。返却棚へ直接。


返却2。


残る三番は鋳物工房。


鋳物工房の作業は予定より長引いた。

型枠の留め具が一つではなく二つ傷んでいたらしい。


夕方の巡回時間。

女商人が鋳物工房の前を通る。


女商人 三番は?

鋳物工房主 あと少しだ。待てるか。

女商人 箱を載せていないので、人としてなら待てます。

工房主 変な言い方だな。

女商人 箱を積んだまま待つと倉庫になるそうです。

工房主 誰がそんな面倒な、

レイナ 私。

工房主 どこから出てきた。

レイナ 数を見に来た。

フィン 最近、その登場気に入ってないか。

レイナ 効率がいい。


女商人は荷車を工房の外へ寄せる。

まだ三番は載せない。

他の荷物もない。空車。


待つ間、工房主が作業する。

女商人は次の運送先を小さな紙で確認している。

こちらは読まない。運賃と仕事の紙は女商人のもの。箱運用へ混ぜない。


しばらくして作業が終わる。


鋳物工房主 三番、使い切った。

女商人 三番、返却棚まで。

工房主 夕方料金を上乗せする気か。

女商人 待ち時間分だけ。

工房主 先に言え。

女商人 箱を載せる前に言っています。

工房主 ……少しまけろ。

女商人 次も頼むなら。

工房主 次があるかは空き次第だ。

女商人 では、今日の分はこの額で。

工房主 商人だな。

女商人 商人ですので。


三番が載る。


そこへ左肩が擦れた男が、今度は紙を持って現れた。


男 待て。夕方以降の返却は、まとめ便へ回す。

ミナ 外紙。

レイナ 0。

男 市場の荷運び組と工房の負担を減らすための提案だ!

フィン 提案って言った瞬間、椅子。ここ工房だけど。

男 満載になるまで預かるだけだ!

レイナ 満載待ち0。

男 夜までだ!

レイナ 夜越しの入口。0。

男 日が沈む前に戻す!

女商人 それなら今戻します。

男 お前は口を出すな!

女商人 運賃を受け取る仕事です。口も出します。

男 倉庫を通せば一度で済む!

鋳物工房主 倉庫へ運ぶ分、遠回りだろ。

男 全体では効率が、

工房主 俺の箱は返却棚へ戻せ。終わりだ。


女商人が荷車を出す。


男は紙を差し出そうとする。

だが女商人は受け取らない。


女商人 その紙を受け取ると、運送の条件が変わります。

男 変えろと言っている!

女商人 工房と決めた条件は返却棚までです。

男 市場のためだぞ!

女商人 市場は私に運賃を払いません。


荷車が通り過ぎる。


紙だけが男の手に残る。


三番が返却棚へ落ちる。


レイナ 返却1。

ミナ 当日返却3。

ゼフ 往復3。

女商人 満載待ち0。途中保管0。

フィン 一箱ずつ戻したな。

女商人 荷車全体は別の荷で埋めます。返却箱だけで満載を待つ理由はありません。

レイナ 正解。

女商人 今日は三回目です。

レイナ 何が。

女商人 正解と言われた回数です。

フィン 数えてたのか。

女商人 数字は大事なのでしょう?

レイナ それは数えなくていい。


女商人が少し笑った。

レイナはいつもの顔だった。


夕方。ブラントが市場から戻る。


ブラント 満載返却の提案が二か所で出ました。

レイナ 成立は。

ブラント 0です。金具工房と鋳物工房は個別返却を選びました。

ミナ 返却の数は?

ブラント 当日3。個別返却2、内部返却1。夜越し0。途中保管0。

フィン 女商人の運賃は上がった?

ブラント 工房ごとに違います。こちらでは拾っていません。

レイナ 正解。

ゼフ 満載を待たないと、運送人が損するって噂は?

ブラント 別の市場荷物と組み合わせればいい、という話に変わっています。

ミナ 返却専用にしない。

レイナ 箱だけ止めない。


領主へ数字だけ。


ブラント 当日数3。使用3。返却3。満載待ち要求2、成立0。途中保管0。夜越し0。

領主 荷車は増えたか。

レイナ 0。

領主 倉庫は。

レイナ 0。

領主 なら良い。一箱のために一台走らせる必要はない。他の荷と運べ。だが箱を溜めるな。

フィン まったく同じ答えです。

領主 同じ数字を見れば、同じ答えになる。

レイナ 正解。

領主 今日は自分でも正解だと思っている。

ミナ 慣れた。

領主 慣れてはいない。


夜。灯りは二基。低く地味に足元だけ。入口は照らさない。外変化0。


三箱は返却済み。

返却専用荷車なし。

集積倉庫なし。

満載札なし。

待機表なし。


穴札12は腰袋のまま。

朝値変更0。

補修班の許可段+1もそのまま。


一箱のために荷車を空で走らせる必要はない。

別の荷物と一緒に運べばいい。


だが、二箱目や三箱目を待って、返却箱を止めない。

満載にするのは荷車であって、返却箱ではない。


俺は板に一行だけ残した。

満載待ち要求2を成立0にし、個別返却2と内部返却1で三箱を夜越し0・途中保管0のまま戻した。


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