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現代の効率厨、異世界で生産と経営を回して気づいたら領主の右腕  作者: てへろっぱ


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138/210

第138話 運んだ人は数えない


朝。入口は暗いまま。箱壁も返却棚も灯りも触らない。外変化0。


いつもなら別々に落ちる三箱が、今日は一台の小さな荷車に載ってきた。


一箱目。補修班内。

二箱目。東通りの金具工房。

三箱目。革具工房。


箱番号は合っている。破損0。中身0。返却3。

だが荷車を押しているのは、昨日まで共同注文をまとめようとしていた女商人だった。


女商人 おはようございます。三工房分、まとめて返却します。

フィン 朝から来たな。

ミナ 三箱とも本物。

ゼフ でも返却元が一か所に見える。

レイナ 見えるだけ。

女商人 何か問題がありますか。

レイナ 問題0。受領3。

女商人 では、次の三箱は私の荷車へ。各工房へ配ります。

レイナ 0。


女商人は笑顔を崩さない。


昨日、箱を返した場所へ次が行くという話が市場へ流れた。

だから三つの工房から箱を集め、自分が返す。


返却したのは自分。

なら次便の窓口も自分。


箱の数は増やさず、箱の流れだけを握る手だ。


フィン 返却をまとめて、次の受取口になろうってことか。

女商人 運送を効率化しただけです。三人が別々に運ぶより、荷車一台の方が早い。

ミナ 運送は早い。

ゼフ でも箱が一度集まる。

レイナ 進捗、一つ。運んだ人は数えない。


ミナが紙を一枚だけ置く。外から見えない位置。理由は書かない。


返却は箱番号で受領 運搬者は行先にしない 次便は使用元へ 集積受取0 説明無し


女商人 使用元というのは、昨日使った工房ですか。

レイナ うん。

女商人 ですが、返却したのは私です。

レイナ 運んだだけ。

女商人 返却の手間を引き受けました。

レイナ 運んだだけ。

女商人 同じ言葉を繰り返さないでください。

レイナ 同じだから。


フィンが横を向いた。

笑うと話が長くなるので、咳に変えた。


女商人は荷車の持ち手から手を離さない。

三箱は返却棚へ移さず、荷車の上に置いたまま。


女商人 受領するなら、返却した者の記録が必要でしょう。

ミナ 不要。

女商人 紛失した場合は?

レイナ 戻らなければ返却0。

女商人 誰の責任か分からなくなります。

レイナ 使った場所の次便が0。

女商人 運送人の責任は問わないのですか。

レイナ 工房と運送人の話。箱の流れに混ぜない。

フィン 運賃を取るのは止めないけど、箱の行き先を決める権利は付かないってことだな。

レイナ 正解。

女商人 なるほど。


女商人が初めて、少しだけ真面目な顔になった。


運送そのものを0にするわけではない。

工房が忙しく、返却を誰かへ頼むこともある。

子供便へ間に合わない日もある。


誰が運んでも返却箱は受け取る。

ただし、運んだ者を次の行き先にはしない。


運搬を仕事にするなら運賃を取ればいい。

箱の値段へ混ぜない。

箱の予約権へ変えない。

返却した数を、次の所有権にしない。


女商人 では、この三箱は受け取っていただける?

レイナ 受領3。

女商人 次便は?

レイナ 使用元へ。必要なら。

女商人 私が配ることは。

レイナ 工房が頼めば運んでいい。

女商人 ここから私が受け取るのではなく?

レイナ 箱は使用先直送。運ぶなら便の中。

女商人 あなた方の指示を受けて運べと。

レイナ 指示0。工房が選ぶ。

女商人 料金は?

レイナ 工房と決める。

女商人 箱代とは別。

レイナ 別。

女商人 記録は?

レイナ こっちは0。

女商人 徹底していますね。

フィン 運賃帳まで持ったら、また紙が増えるからな。

ミナ 箱の数字だけ。


女商人が三箱を返却棚へ降ろす。

手渡しはしない。

受領札も出さない。


三箱が棚へ落ちる。

返却3。終わり。


女商人 運送をした事実すら残らない。

レイナ 運送した事実は工房と残せばいい。

女商人 ここでは残さない。

レイナ うん。

女商人 私が箱を盗んだら?

ゼフ 返却0。

ミナ 次便0。

フィン 工房が次からあんたに頼まなくなる。

レイナ 損で終わる。

女商人 信用を帳面ではなく、次の仕事で測るのですね。

レイナ 数字になるから。


女商人はしばらく返却棚を見た。

昨日までとは少し違う目だった。


流れを握るのではなく、流れの横で運賃を取る。

それなら箱を奪わない。

箱を余分に売らない。

箱を自分の倉庫へ積まない。


役に立つ仲介なら残る。

口だけの仲介は消える。


フィン 敵のままなのか、仕事を始めるのか、どっちだろうな。

レイナ どっちでもいい。数字だけ。

女商人 本人の前で言いますか。

レイナ 聞いてたの。

女商人 聞こえる距離でした。

ミナ 立ち話が長い。

レイナ 終わり。


女商人は荷車を引いて離れた。

荷車は空だが、昨日までの空振りとは違う。

三箱を本当に運んで返した。


運送1。

返却3。

次便の権利0。


昼前。今日の必要数を拾う。


補修班内は必要1。

東通りの金具工房も必要1。

革具工房は不要。


返却3のうち、継続2。空き1。


フィン 革具工房は今日は使わない。

レイナ 空き1。

ミナ 昨日、共同注文に入っていた鋳物工房が今日使うって。

ブラント 確認しました。昨日は翌日使用1だった所です。今日は作業台に直す部品が出ています。

ゼフ 用途一致。

レイナ 空き1を直送。

フィン 予約はしてなかったけど、必要な日に空きが出た。

ミナ だから今日だけ流す。

レイナ うん。


昨日の共同要求6から、今日の本当の需要が一つ出た。

未来の注文表は作らなかった。

それでも必要な日になれば、動作として現れる。


鋳物工房の前には、補修待ちの型枠が一つ。

部品も外されている。

箱が着けばすぐ使える。


紙より分かりやすい。


ブラント 問題が一つあります。

フィン 女商人?

ブラント 鋳物工房が、今日の箱を女商人へ運んでもらいたいと。

ミナ 早速、運送の仕事になった。

ゼフ 受取口にしないなら問題ない。

レイナ 箱は鋳物工房宛て。運搬者は数えない。

フィン 途中で消えたら?

レイナ 返却0。次便0。工房が選んだ結果。

ブラント 任せますか。

レイナ 任せるじゃない。止めない。


こちらが運送人を認定すると、認定制度が生える。

誰なら運んでいい。

保証はいくら。

事故の責任。

登録札。


全部、椅子になる。


だから認定しない。

禁止もしない。


工房が選ぶ。

箱番号と行き先だけは変えない。

途中の人間は数えない。


昼。三箱が出る。


一番。補修班内。

二番。東通りの金具工房。

三番。鋳物工房。


一番と二番はいつもの子供便。

三番は女商人の荷車。


女商人は再び現れた。

今度は荷車に余計な袋も看板も載せていない。


女商人 三番を鋳物工房へ。工房から運賃は受け取っています。

レイナ 箱番号。

女商人 三。

ミナ 行き先。

女商人 鋳物工房。

ゼフ 途中渡し。

女商人 0。

フィン もう覚えたな。

女商人 説明されなくても、同じことを何度も言われれば覚えます。

レイナ 正解。

女商人 それは領主様にも言っているそうですね。

フィン 市場にそこまで流れてるのか。

レイナ 噂は嫌い。

女商人 領主様の口癖まで移っていますよ。

ミナ 立ち話。

女商人 終わり、ですね。


女商人が荷車を押し出す。

子供便と同じ速さではない。

だが止まらない。寄り道もしない。


少し離れて左肩が擦れた男が現れた。

女商人の荷車を見て、当然のように横へ並ぶ。


左肩の男 上手くいったな。三箱まとめて受け取れるようになったか。

女商人 一箱です。

男 残りは後で集めればいい。まず倉庫へ運べ。

女商人 鋳物工房へ運びます。

男 話が違うだろ。

女商人 運送を請けただけです。

男 だから一度こっちの倉庫へ、

女商人 途中渡し0です。

男 お前までそれを言うのか!

女商人 箱が戻らなければ、次の仕事が無くなります。

男 もっと高い仕事を回してやる!

女商人 箱を握れなかった人が、何を回すのです?


フィン 刺した。

ミナ 見てたの?

フィン 角の向こう。声が大きい。

レイナ 見なくていい。箱だけ。


左肩の男が荷車の前へ回る。


男 その箱は共同注文分だ。代表はこっちだ。

女商人 共同注文0。今日は鋳物工房の一箱です。

男 俺たちが工房を集めた!

女商人 今日使うのは鋳物工房です。

男 だから一度こちらで確認する!

女商人 途中渡し0。

男 ふざけるな!


男が箱へ手を伸ばす。

女商人は箱を抱えない。奪い合わない。

荷車を少しだけ引き、男の手を空振りさせる。


女商人 触るなら、鋳物工房に確認してください。

男 お前が運んでるだろ!

女商人 運んだ人は数えないそうです。

フィン 完全に覚えてる。

ミナ 便利な所だけ。

レイナ それでいい。


周囲の店から視線が集まり始めた。

左肩の男も気づく。


運送を止める男。

工房の箱へ手を出す男。

そう見える位置に立ってしまった。


男は手を引く。


左肩の男 あとで後悔するぞ。

女商人 運賃はもう受け取っています。

男 金の話じゃない!

女商人 こちらは金の話です。


女商人は荷車を押し、男の横を通り過ぎた。


フィン 商人だな。

レイナ うん。

ミナ 箱の支配を諦めて、運賃へ切り替えた。

ゼフ 役に立つ方へ残った。

レイナ 数字が合えばいい。


鋳物工房へ到着。

工房主は作業台の横で待っていない。手を動かしている。

箱が来たのを見て、作業を一度だけ止めた。


鋳物工房主 三番だな。

女商人 三番。鋳物工房へ直送。

工房主 運賃は払った。

女商人 受け取り済みです。

工房主 箱は?

女商人 ここで渡します。

工房主 終わったら返却便へ。

女商人 帰りも運びますか。

工房主 いくらだ。

女商人 行きの半分で。

工房主 高い。

女商人 空で帰るより安いです。

工房主 ……三分の一。

女商人 間を取って五分の二。

工房主 細かいな。

女商人 商人ですので。

フィン 普通の商売してる。

レイナ 放置。

ミナ 箱の値段に混ざってない。

ゼフ 行き先も変わってない。

レイナ 問題0。


こちらは交渉へ入らない。

運賃が高いか安いかも決めない。

箱の朝値とは別。

工房と運送人の間で終わる。


工房主が箱を受け取る。

その場で蓋を開け、補修材を取り出す。

用途へ落ちる。


女商人は空の荷車を押し、工房の端へ移動した。

箱が戻るまで座り込まない。

別の荷を探しに市場へ戻る。


フィン 待たないのか。

女商人 帰り便の時間だけ聞きました。その頃また来ます。

レイナ 待ち0。

女商人 椅子を作る気はありません。

ミナ 学習が早い。

女商人 利益になりますから。


午後。

一番、補修班内から返却。

二番、金具工房から返却。

三番、鋳物工房で使用終了。


約束した時間に女商人が戻る。

工房主が空箱を荷車へ載せる。


鋳物工房主 三番、返却。

女商人 三番、返却を運ぶ。

工房主 途中で売るなよ。

女商人 空箱を誰が買うのです。

工房主 昨日までなら買い手がいたらしい。

女商人 昨日までの話です。


三番が返却棚へ戻る。


レイナ 受領1。

女商人 返却元は鋳物工房。運んだ人は数えない。

レイナ 正解。

女商人 明日、鋳物工房が必要なら、また三番が行く。

レイナ 必要なら。

女商人 その運送を頼まれたら、また運びます。

レイナ 止めない。

女商人 認める、とは言わないのですね。

レイナ 認定0。

女商人 分かりました。運賃だけもらいます。


女商人は空の荷車を押して帰る。

今度の空車は空振りではない。


往路1。

復路1。

返却1。

箱の権利0。


夕方。ブラントが市場から戻る。


ブラント 返却代行の希望が増えています。

フィン 女商人の運送を見たからか。

ブラント はい。小さな工房は、作業を止めずに返せると喜んでいます。

ミナ 集積所を作ろうという話は?

ブラント 出ています。一か所へ集めればもっと効率がいい、と。

レイナ 集積所0。

ゼフ 運ぶ人が個別に回るのはいい。箱を一度倉庫へ置くのはダメ。

レイナ うん。途中で寝かせない。

フィン 荷車に複数積むのは?

レイナ 行き先が全部決まってるならいい。倉庫0。

ミナ 箱をまとめても、持ち主と行き先はまとめない。

レイナ 運んだ人は数えない。


ブラント 今日の数字です。返却3。継続2。空き移動1。運送往復2。途中受取要求1、成立0。

レイナ 朝値は。

ブラント 変更0。

フィン 運賃は?

ブラント 箱取引とは別なので拾っていません。

レイナ 正解。


領主へ数字だけ。


ブラント 当日数3。使用3。返却3。外部運送往復2。集積受取0。途中受取0。

領主 運送人は誰だ。

レイナ 数えない。

領主 問題は。

レイナ 箱3、返却3。問題0。

領主 なら名前は要らんな。

フィン 返却をまとめる倉庫案が出ています。

領主 要らん。倉庫は物を溜め、物を溜めた者は権利を言い出す。

ミナ 運送だけは止めません。

領主 運賃を取るなら勝手に取れ。箱を握るな。

レイナ 正解。

領主 今日はそこまで腹が立たんな。

フィン 慣れてきました?

領主 慣れたくはない。


夜。灯りは二基。低く地味に足元だけ。入口は照らさない。外変化0。


三箱は返却済み。

新しい運送箱なし。

集積倉庫なし。

運送人札なし。

認定表なし。


穴札12は腰袋のまま。

朝値変更0。

補修班の許可段+1もそのまま。


箱を運んだ者へ、次の箱は渡さない。

だが運送の仕事まで奪わない。


役に立つなら運賃を取る。

箱の行き先は使った場所へ残す。

運んだ人間は、数字に入れない。


俺は板に一行だけ残した。

集積返却3を受領し、運搬者権利0のまま使用元継続2と空き移動1へ分けて三箱を直接戻した。


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