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現代の効率厨、異世界で生産と経営を回して気づいたら領主の右腕  作者: てへろっぱ


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136/210

第136話 箱は使う場所へ


朝。入口は暗いまま。箱壁も返却棚も灯りも触らない。外変化0。

補修班返却3。遅延0。穴札12。

昨日戻した余り1が今日の許可数へ混ざり、補修班が新しく作る数は2。


補修班の若いの 今日は二つですね。

レイナ 二つ。

若いの 一つ増えた。

フィン 昨日より仕事が増えた顔するな。

若いの 昨日が楽すぎたんです。

補修班頭 余裕があると余計な物を作るから、二つくらいがちょうどいい。

レイナ いつも通りに。

若いの 研ぎすぎません。作り込みすぎません。

ミナ 学習が早い。

若いの 毎日言われてますからね。


朝値は昨日と同じ。

市場の西では余っているという噂。東では品薄だという噂。

真逆の話が同時に流れているが、実際の数字は内部使用1、取引1、余り1だった。


なら値を変える理由はない。


フィン 今日も朝値そのまま?

レイナ そのまま。

ゼフ 高く買う奴がまた来ても?

レイナ 同じ。

ミナ 安く買う奴が本物の用途を持ってきても?

レイナ 箱は使う場所へ。

フィン それが今日の進捗か。

レイナ うん。


ミナが紙を一枚だけ置いた。外から見えない位置。理由は書かない。


用途一致なら使用先へ直送 代理受取0 途中渡し0 朝値固定 説明無し


フィン 本物の工房が欲しいと言えば売る。けど、注文を持ってきた奴には渡さない。

レイナ 使う場所へ箱。

ゼフ 金を持ってきた奴にも?

レイナ 渡さない。

ミナ 支払いと受取を混ぜない。

フィン 払ったのに受け取れないって揉めるぞ。

レイナ 代理払いも0。使う所が払う。

フィン 徹底してるな。

レイナ 箱を外へ流さない。


代理注文が厄介なのは、用途が本物になるところだ。

昨日の女商人は工房名を出せなかった。

なら今日は、本当に使う工房を連れてくる。


工房が必要だと言う。

値段も朝値で払う。

用途も合っている。


そこまで揃えば、断る理由がなくなる。

だが箱を代理人へ渡せば、工房へ届く前に行き先を変えられる。


だから使う場所へ直接流す。

新しい箱は作らない。

新しい受領札も作らない。

既存の子供便か夜便へ混ぜる。


誰が注文を持ってきたかは、箱の行き先に関係ない。


昼前。ブラントが市場から戻る。

昨日より早い。手には何も持っていない。


ブラント 来ました。

フィン 本物の工房付き?

ブラント はい。東通りの金具工房です。蝶番と留め具を作っている所で、補修材を一箱使いたいと。

ミナ 用途は合う。

ブラント 工房主本人も来ています。昨日の女商人も一緒です。

レイナ 箱は工房へ。

ブラント 女商人は自分が注文主だと言っています。

レイナ 関係ない。

フィン 本人の前で言うなよ。

レイナ 本人にも言う。


市場の角へ出る。

机はない。椅子もない。

ブラントの横に、昨日の女商人が立っていた。

その隣には、革の前掛けを着けた工房主。指先に細かい金属粉が残っている。


女商人 昨日は用途を示せませんでしたので、今日は使用者本人を連れてきました。

レイナ うん。

女商人 金具工房で一箱使います。値段は朝の額で。私が支払います。

レイナ 代理払い0。

女商人 支払うだけですよ。

レイナ 0。

女商人 箱は工房へ渡せばいい。私は受け取りません。

レイナ 工房が払う。工房へ直送。

女商人 同じことでは?

レイナ 違う。

女商人 何が違うのです。

レイナ 途中の持ち主を作らない。


女商人の目が細くなる。

怒ってはいない。こちらの線を探している。


女商人 私が代金を出し、工房へ贈る。それだけです。

フィン 贈り物の椅子が出たな。

ミナ 所有者が一度増える。

女商人 所有するつもりはありません。

レイナ なら払わない。

女商人 一時的に立て替えるだけです。

レイナ 立替0。

女商人 融通が利きませんね。

レイナ 燃えない。


工房主が二人の間で困った顔をする。


金具工房主 俺が払えばいいんだな。

レイナ うん。

工房主 値段は昨日と同じ?

ブラント 朝値です。

工房主 なら払える。

女商人 待ってください。話が違います。

工房主 必要なのはこっちだ。値段も払える。あんたに出してもらう理由がなくなった。

女商人 今後の取引も含めて援助すると、

レイナ 今後0。今日は一箱。

フィン 話を膨らませる前に切った。

ミナ 今日の用途だけ。


工房主は腰の袋から朝値分だけを出した。

余分はない。

先払いもない。

予約もない。


ブラントが数える。

数が合う。


ブラント 一箱。朝値。用途一致。

レイナ 使用先へ直送。

工房主 今ここで受け取れないのか。

レイナ 工房へ運ぶ。

工房主 俺も工房へ戻るが。

レイナ 先に戻って。箱は便。

工房主 分かった。


女商人 私が運びます。

レイナ 代理受取0。

女商人 工房までですよ。

レイナ 途中渡し0。

女商人 信用されていないのですね。

レイナ 誰にも渡さない。

ミナ 人の問題じゃない。流れの問題。

ゼフ 箱は使う場所へ。

女商人 ……なるほど。


女商人は笑わなかった。

昨日よりも静かに、こちらの運用を見ている。


工房主が帰る。

女商人も同じ方向へ歩き出そうとしたが、レイナが短く止めた。


レイナ 別の道。

女商人 なぜ?

レイナ 箱を待たない。

女商人 工房へ向かうだけです。

レイナ 待つなら代理。

女商人 私は工房と取引があります。

ミナ 今日は関係ない。

フィン 同じ道を歩くなとは言わないけど、箱を待つ位置には立つな。

女商人 細かいですね。

レイナ 細かいほど流れない。


女商人は一度工房主の背中を見た。

それから反対側の市場へ歩いていった。


ブラント 素直に離れましたね。

レイナ 素直じゃない。先を見る。

フィン 何を見る?

レイナ 直送先。

ゼフ 工房の場所を知った。

ミナ 次は工房前で受け取る。

レイナ うん。


箱を直接運んでも、使用先の前で代理人が待っていれば渡せる。

工房主が受け取り、すぐ女商人へ渡せば同じだ。


だがそこは、こちらが規則を増やして縛るところではない。

工房主が本当に使うか。

数字と動作だけを見る。


昼。子供便の三つが出る。

一つは補修班内。

一つはいつもの金物屋。

最後の一つが東通りの金具工房。


子供たちには行き先の説明をしない。番号だけ。


ミナ いち、いつもの内側。

子供 いち!

ミナ に、金物屋。

子供 に!

ミナ さん、東通り。

子供 さん!

レイナ 速歩き。途中渡し0。

子供たち 終わり!


フィン 子供便に途中渡し0を足して大丈夫か?

レイナ 一回だけ。説明しない。

ゼフ 誰かが声を掛けても止まらない。

ミナ 行き先まで持つだけ。

レイナ うん。


三番の子供が東通りへ向かう。

少し離れてゼフが別の道を歩く。護衛ではない。

近づかない。声も掛けない。箱がどこへ落ちるかだけを見る。


角を二つ曲がった先。

昨日の女商人はいない。


代わりに、左肩が擦れた男がいた。


フィン 分かりやすい方が来たな。

レイナ 途中受取狙い。

ミナ 女商人は姿を出さない。

ゼフ 男だけ前に出す。

レイナ 数だけ見る。


左肩の男は子供の前へ立つ。

手には紙も道具もない。今日は言葉だけだ。


左肩の男 その箱、工房から受け取りを頼まれてる。渡せ。

子供 三!

男 番号は分かった。俺が持っていく。

子供 三!

男 工房主が待ってるぞ。遅れるぞ。

子供 速歩き!

男 止まれ!


子供は止まらない。

男の横を抜けようとする。

男も道を塞ぎ切れない。塞げば周囲から、子供の荷を奪う大人に見える。


ユハはいない。

幅を殺す役はいない。

だが子供便は小さい。大きな男の脇を通れる。


子供 三! 途中ゼロ!

男 誰がそんなことを教えた!

子供 終わり!


子供が抜ける。

男は追おうとしたが、ゼフが別の角から姿を見せた。止めない。近づかない。

ただ見える位置に立つ。


ゼフ 途中受取1。0。

男 お前、見張ってたのか。

ゼフ 数えただけ。

男 工房に頼まれてる!

ゼフ 工房で受け取る。

男 俺が代理だ!

ゼフ 代理0。

男 理由は!

ゼフ 説明無し。


男がゼフへ食いついている間に、子供は工房へ着く。


金具工房主が入口で受け取る。

受け取った箱を机へ置かない。

そのまま作業台の横へ運び、蓋を開けた。


女商人はいない。

別の荷運び人もいない。


工房主 これでいいんだな。

子供 三!

工房主 三、受け取った。

子供 終わり!


子供はすぐ離れる。

工房主は箱の中身を取り出し、作業台で使い始める。


途中の所有者は生えない。

一度工房へ入り、その場で用途へ落ちる。

箱を外へ持ち出す余白が消える。


少し遅れてフィンとミナが到着する。

見張りではなく、帰り便の数を拾うだけ。


フィン 本当に使ってるな。

金具工房主 使うために買ったからな。

ミナ 女商人とは?

工房主 材料を安く回す話を持ってきた。代金も出すと言われた。

フィン で、なんで断った。

工房主 朝値で買えるなら、借りを作る必要がない。

レイナ 正解。

工房主 どこから出てきた。

レイナ 数を見に来た。

工房主 使った数なら後で返す。

レイナ 返却だけ。説明無し。

工房主 相変わらず短いな。


左肩の男が遅れて工房前へ来る。

ゼフは追わない。男が勝手に来ただけだ。


男 その箱は俺たちが手配した!

金具工房主 俺が払った。

男 話を持ってきたのはこっちだ!

工房主 だから何だ。

男 こちらへ一度渡す約束だっただろ!

工房主 そんな約束はしてない。

男 女商人から援助を受ける話は!

工房主 箱一つで借りを作るほど困ってない。

男 今後、材料が手に入らなくなるぞ!

レイナ 脅しは言葉。0。

男 お前は黙ってろ!

フィン 黙ってろって言った瞬間、長話の椅子。ここ工房だぞ。

工房主 仕事の邪魔だ。帰れ。


工房主は男を押し出さない。

怒鳴り続けない。

ただ作業へ戻る。


金槌の音が一つ。

二つ。

男の声が音に負ける。


箱の中身はすでに一つ目の補修へ使われている。

取り返しても新品ではない。

転売の形にならない。


左肩の男 使うのが早すぎるだろ!

工房主 使う物だからな。

フィン そりゃそうだ。

ミナ 用途一致。

レイナ 終わり。


男は何も持たずに帰った。

追わない。名前も板に書かない。

途中受取1、成立0。それだけ。


午後。いつもの金物屋から返却が落ちる。

金具工房からも、使い終えた分の返却が一つ落ちる。

補修班内を含め、返却3。


余り0。

値下げ0。

上乗せ0。

代理払い0。

途中受取0。


フィン 今日は全部使われたな。

ミナ 実需3。

ゼフ 値を上げる?

レイナ 今日は変えない。

フィン 朝だけだからな。じゃあ明日は?

レイナ まだ同じ。

フィン 全部使われたのに?

レイナ 一日だけ。

ミナ 噂を数字にしない。

レイナ 続いたら見る。


数字で決めるなら、一日だけの完売で値を動かさない。

女商人が一箱分の実需を作った可能性も残る。

本物の工房で使われたとしても、明日も必要とは限らない。


値段を上げれば、女商人の品薄話が本当になる。

値段を下げれば、西側の余り話が本当になる。


だから同じ。


夕方。ブラントが戻る。


ブラント 市場の話が変わりました。

レイナ 数字は。

ブラント 当日数3、使用3、余り0。朝値変更0。

ミナ 話は?

ブラント 代理人を通さなくても直接買える、です。

フィン 悪くない話じゃないか。

ブラント 商人側には悪い話です。仲介料が取れません。

ゼフ 次は工房をまとめる。

ミナ 複数工房の共同注文?

レイナ たぶん。

フィン 一箱ずつ直送するの、手間だぞ。

レイナ 便に混ぜる。箱は増やさない。

ブラント 市場には何を返しますか。

レイナ 当日数3。朝値。使用先へ直送。

ブラント それだけで。

レイナ それだけ。


領主へ数字を持っていく。


ブラント 当日数3。内部使用1。使用先直送2。余り0。代理払い1と途中受取1は成立0。

領主 値は。

レイナ 変更0。

領主 良い。商人を通さず工房へ売ったか。

フィン 商人を敵に回しませんか。

領主 不要な仲介が減って怒るなら、元から要らん。

ミナ 必要な仲介は?

領主 数字で役に立つなら残る。口だけなら消える。

レイナ 正解。

領主 だから私に正解と言うな。

レイナ 了解。正解。

フィン 増えたぞ。


領主は眉間を押さえて帰った。

会議はない。仲介制度の見直しもない。

箱が使う場所へ直接流れただけ。


夜。灯りは二基。低く地味に足元だけ。入口は照らさない。外変化0。

三箱はすべて返却済み。

新しい配送箱なし。新しい受領札なし。新しい価格表なし。


穴札12は腰袋のまま。

補修班の許可段+1もそのまま。

朝値変更0。

代理人が本物の用途を連れてきても、箱は代理人へ渡らなかった。


注文した者でもない。

金を見せた者でもない。

声が大きい者でもない。


箱は、使う場所へだけ流す。


俺は板に一行だけ残した。

当日数3を内部1・使用先直送2で使い切り、代理払い1と途中受取1を成立0にして朝値を動かさなかった。


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