表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【WEB版】私はただの侍女ですので(大嘘) ~ひっそり暮らしたいのに公爵騎士様が逃がしてくれません~【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第五章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/24

前世から今世へ

「ロベルトだって考えてくれているでしょう? 私との将来のこと。知ってるのよ?」

「――っ、何のことでしょう」

「ふふっ、惚けちゃって」

「……」


 ロベルトさんは少しだけ頬を赤らめる。

 どうやら姫様の一方的な想い、というわけでもなさそうだ。

 ロベルトさん自身、姫様に惹かれているのかも。

 なら、二人の想いを阻んでいるのは一つ、身分差だ。

 

「はぁ……私が王女じゃなければ話は簡単だったのに。辞められないかしら」

「めったなことをおっしゃらないでください。国民が聞けばどう思うか」

「わかっているわよ。私は王女で、あなたは教育係。この関係がなければ出会えもしなかった。だから本気で嫌なわけじゃないわ。それでも、窮屈なだけよ」

「それが王族というものです。人々の模範であり、代表なのですから」


 人々の模範であり、代表。

 決して自己を優先せず、常に王国のために利する行動を選択し続ける。

 感情はいらない。

 ただ必要なことをする。

 たとえ人々に、周囲に疎まれても。

 それが王だと示し続けたのは、誰でもない私自身だった。

 千年後の現在も尚、私が残した考え方が根付いてしまっているのだろうか。

 だとしたら二人を阻む障害は……。


「イレイナさん、これがさっきの質問の答えよ」


 唐突に、姫様が私に語り掛ける。

 私の質問、二人はどうして婚約を保留にしているのか。

 二人に婚約の意思はない。

 なぜならば、姫様には想い人がいるから。


「私は王女。だから結婚する相手も自由には選べない。他国の王族、もしくはこの国でも名の知れた貴族でなければ釣り合わない。お父様はそうおっしゃっているわ。そういう基準なら、アスノトはピッタリでしょ? 騎士王だもの」

「だが俺にも、姫様にも婚約の意思はない」


 つまり、この話を完全になくさず保留にし続けることで、お互いの未来を守っている。

 姫様はロベルトさんと結ばれたい。

 だけど王族としては、利益のある相手と婚約すべきだ。

 放っておけば流れる様に相手は決まるだろう。

 だからこそ、アスノトとの婚約の話を残したまま保留にしておく。

 そうすることで、他の縁談や相手を断り続ける理由になる。


 一つ、合点がいく。

 アスノトが私と婚約したいと言った時、姫様のことを伝えなかった理由。

 彼が抜けているからだと思っていた。

 それもある。

 けど根本に、姫様の想いを知っていたから、二人が婚約することはないと心の奥で確信していたのだろう。

 それからもう一つ、考えている最中に気付いた。

 彼らの婚約は、私が出会う前からあった。


 彼はやっぱり、お人好しだ。


「アスノトのおかげで、私はまだ他の誰かと婚約しなくて済んでいるの。でも、アスノトにも素敵な相手ができたみたいだし、そろそろ潮時かもしれないわね」


 姫様は私を見ながら片目を瞑る。

 別に、私たちは急いでいるわけじゃないし、そもそも私にその気なんて……。


「そうでなくても、顔を合わせる度、陛下からは早く結論を出せと急かされている。一年も経っているから当然だがな」

「そうね。何か他の方法を考えないといけないわ。一番楽なのは、私とロベルトで駆け落ちすることだけど……」

「ダメです。そんなことをすれば、王国はパニックになります」


 そうそうにロベルトさんが否定する。

 王女が行方不明。

 ロベルトさんが一緒なら、まず誘拐だと思われるだろう。

 二人は一緒にいられても、安全はない。

 少なくとも穏やかには暮らせない。


「それに、次期国王となれるのは現状、姫様しかおりません。お立場を考えてください」

「わかっているわよ。お父様にも散々言われているもの」

「――?」


 姫様しかいない?

 私は疑問に思う。

 姫様が国王に、女王になるということではない。

 彼女しかいないというのはどういうことだろう。

 確か現国王には子供が二人いたはずだ。

 姫様と、その弟である王子が。

 元女王として、王族の事情は気になった。

 だから聞くことにする。 


「陛下は姫様を次期国王に決められたのですか?」

「決めていないけど、決まっているようなものなの。あの子は……私の弟は病気なのよ」

「姫様! その話を勝手に」

「いいのよ。貴族の一部も知っているわ。それに彼女はアスノトが心に決めた人よ? いずれ知ることになるわ」

 

 ロベルトさんは焦った表情を見せている。

 どうやら極秘の話だったようだ。

 というのも、第一王子が病という情報はどこにもなかった。

 ルストロール家でも聞いたことがない。

 

「一時的なもの、ではないのですね」

「ええ。ちょうど二年くらい前から体調を崩して、それからどんどん弱っていった。今はもうベッドから起きることもできないわ」

「そこまで……何の病なのかわかっているのですか?」


 姫様は首を横に振る。

 続きはロベルトさんが答える。


「王国最高の医師たちが検査しましたが、未知の病らしく治療法も見つかっていないのです。今は既存の薬品と、治癒の魔法を駆使して病の進行を抑えております。ですが……」


 一向に症状は改善しない、と悔しそうにロベルトさんは語った。

 どんな方法を駆使しても病は改善せず、一年が経過した頃、国王陛下は姫様とアスノトの婚約を提案したという。

 父親として国王がどう思っているかはわからない。

 ただ、国王としては王族の血を絶やすことは許されず、国民に不安を抱かせるわけにもいかない。

 それ故に、姫様を女王としようと考えているのだろう。

 国王としての判断は間違っていない。


「王族……治らない病……」

「君ならどうだ? イレイナ」


 アスノトが尋ねる。

 いつになく真剣な表情で。


「君の魔法なら、王子を救えるか?」

「アスノト君」

「アスノト、あまり彼女を困らせてはダメよ。宮廷の魔法使いたちも尽力して変わらなかったのよ?」

「――わかりません」


 私は数秒考えてから答えた。

 できない、ではなく、わからないと。

 姫様とロベルトさんが振り向く。

 アスノトが尋ねる。


「わからないというのは?」

「実際の症状や状況を見ないとわかりません。時間を巻き戻すことは可能ですが、それも一時的です。何よりリスクが大きいです」


 時間回帰は強力な魔法だ。

 世の理に反する、もしくは通じる効果の魔法には相応のリスクが伴う。

 命を削ることや、取り返しのつかない事態を引き起こす可能性がある。

 特に命の巻き戻しは、世界からどんな修正作用が起こるか未知数で、私でもどうなるかわからない。


「実際に見れば、わかるかもしれないんだな?」

「そうですね。そもそも病なのか、それ以外なのかも知っておく必要があります。ですが人の身に起こることは、必ず人の手の届くことです。対処のしようはあると――」

「本当なの!? あの子を、リクを救える?」

「姫様……」


 彼女は私の両肩を掴む。

 震えた声で、手で、私に尋ねてくる。

 彼女の瞳から、弟への心配があふれ出てくるようだ。

 自分と愛する人の未来のため、ではない。

 本心から弟を、王子を案じている。

 彼女にはちゃんと、姉弟としての絆があるんだ。


「断言はできませんが、不可能ではないと思います」


 私はハッキリとそう告げる。

 姫様は瞳を大きく見開き輝かせて、アスノトに視線を向けた。


「彼女は優秀な魔法使いでもある。個人の感想でしかないが、俺が知る魔法使いの中でも、彼女の魔法は華やかで、極められていた」

「――そう、イレイナさん! 私からあなたにお願いするわ。私の弟を、リクを救う方法を探してほしい。私たちのためじゃない。あの子の未来のためにも」

「かしこまりました。それがご命令とあれば、最善を尽くしましょう」


 別に、彼女たちのためじゃない。

 ただ命じられたから、というわけでもない。

 王族の癒えぬ病。

 前世の記憶が過って仕方がない。

 嫌な予感がする。

 元女王として、この国の今に関わった人間として、確かめずにはいられない。

 

 もしも同じ過ちが繰り返されているのだとしたら……。

 私には止める義務がある。


「ですがよろしいのですか? 仮に王子様が回復されても、姫様が次期国王になる可能性が消えるわけではありません」

「いいのよ。それとこれとは話が別だわ。一番はあの子が回復すること」

「かしこまりました」

「気を遣ってくれてありがとう。私もちょっとは女王っていう響きは素敵じゃない? 千年前、この国を守った偉大な女王様は……私の憧れよ」


 姫様の何気ない一言に、私は耳を疑った。

 偉大な女王?

 千年前?

 私は驚き、首を傾げる。


「ああ、この話は王族と一部の貴族しか知らなかったわね。千年前の女王様は、王国のために全てを捧げた偉大な人だったの。でもクーデターに倒れてしまった。それでも彼女の意思を継いだ人々が立ち上がり、国を取り戻したのよ」

「それは……」

「女王様の意思が、人々の心を動かしたのよ」

「――!」


 ずっと疑問には思っていた。

 私の時代で、女王である私が倒れたことで王政は破壊されたはずだった。

 けれど今、この国には王政が残っている。

 どこで戻ったのか、はたまた取り戻したのか。


「……そうですか」


 私が倒れた後、人々は戦ったのか。

 なら、私がしてきたことも……間違いではなかったのかもしれない。

 千年越しに少しだけ、前世の私が報われた気持ちになった。

【作者からのお願い】

短編版から引き続き読んで頂きありがとうございます!

ぜひともページ下部の評価欄☆☆☆☆☆から、お好きな★を頂ければ非常に励みになります!

ブックマークもお願いします。

ランキングを維持することでより多くの読者に見て頂けますので、どうかご協力お願いします!


次回をお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作投稿しました! URLをクリックすると見られます!

『残虐非道な女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女の呪いで少女にされて姉に国を乗っ取られた惨めな私、復讐とか面倒なのでこれを機会にセカンドライフを謳歌する~』

https://ncode.syosetu.com/n2188iz/

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

第一巻1/10発売!!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000

【㊗】大物YouTuber二名とコラボした新作ラブコメ12/1発売!

詳細は画像をクリック!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000
― 新着の感想 ―
 千年前、裏切り者たちは滅ぼされたのね。  ざまぁ♪
[一言] 千年後に 実は有能女王と認められてた と。。。 報われてて泣くわ °・(ノД`)・°・
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ