160話 過去に行ってみた
……そんなこんなで。
世界の命運をかけた隕石戦のあと。
ローナたちの世界は、ふたたび隕石のような世界の危機に見舞われることなく、なんだかんだ普通に存続し――。
「――えへへ、今日もインターネットは楽しいなぁ」
ローナは今日も今日とて、自宅でだらだらとインターネットをしていた。
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▍掲示板/スレッド掲示板/【サ終】エタリ
ア雑談スレ その607【ローナです】
[56@名無しの一級廃人]
【超速報】エタリア新生決定www
[57@名無しの貧弱一般人]
おおおおおおお!? マジか!?
[58@名無しのリアルモンク]
オフライン版の話かと思ったらリメイクかこ
れ! 判断が早い!
[59@名無しのサムライ]
そりゃ、ローナですちゃんが今、バズりに
バズってるしな
オフライン版のクラファンも、ローナです
ちゃん効果で5000%達成だし
乗るしかないだろ、このビッグウェーブにw
ww
[60@名無しのシーフ]
てか、前のやつを新規コンテンツ更新停止と
かで続けるわけにはいかんの?
[61@名無しの大剣使い]
一度、サ終しちゃったからなぁ
スタッフも解散してるし法的な問題もあるし
結局OSのバージョンアップ対応とかで、ア
プデはし続けることになるし
[62@名無しのハンター]
なんにせよ、ローナですちゃん様々だな!
[63@名無しの大剣使い]
ちなみにローナですちゃんまとめ(更新)
・隕石とデートする
・なぜか歴代ボスたちを仲間にしている
・さりげなく世界樹杖を増殖している
・インターネットをバグらせて、参加者万超
えレイドイベ開催
・隕石を蹴り殺す(推定威力1垓オーバー)
・倒した隕石に無慈悲な屈伸煽り
・インターネットの異常現象で、世界的な
ニュースになる
・なぜか、サ終したはずのゲームを配信し続
ける
・クラファン5000%達成させる
・ついにゲームそのものを新生させる(NE
W!)
[64@名無しの貧弱一般人]
何度聞いても意味わかんなすぎて草
[65@名無しのハンター]
マジでなんだろうな、ローナですちゃんって
ガチで異世界人説あるけど、エタリアは異世
界だった……?
[66@名無しの貧弱一般人]
運営「……知らん……なにそれ……怖……」
[67@ローナです]
こんにちは!
[68@名無しの一級廃人]
!?!?!?
[69@名無しのリアルモンク]
噂をすればローナですちゃんキタ―――
―ッ!!
[70@名無しの遊び人]
えっ、待って本物!?
[71@名無しのメイン盾]
来た! ローナですちゃん来た! これで勝
つる!!!
[72@名無しのナイト]
ローナですちゃんが降臨したと聞いて
[73@名無しの忍者]
本日のローナですちゃんスレはここですか?
[74@名無しのワッショイ]
さあ、盛り上がってまいりましたwww
[75@名無しの一級廃人]
お前らローナですちゃん好きすぎだろwww
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……ちなみに。
後にローナが、攻略サイトの掲示板にいる神々に教えてもらった情報によると……。
ローナがインターネットの向こうにいる神々に与えた影響は、思いのほか大きかったようで。
隕石戦の配信(+そのときにネット上で起きた異常現象)が、連日、神々の世界のニュースでも取り上げられ、インターネットは謎の少女『ローナですちゃん』の話題一色となったらしい。
そして、インターネットで『ローナですちゃん』がバズりにバズった結果――。
――ついに、この世界の新生も決まったのだとか。
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▍掲示板/スレッド掲示板/【サ終】エタリ
ア雑談スレ その607【ローナです】
[83@ローナです]
ということは、この世界はもう終わらないっ
てことですか?
[84@名無しの大剣使い]
リメイク版はまたサ終するかもですが
今度、コンシューマ版なんかも出るみたいな
ので
終わらないと言えば終わらないですね
[85@ローナです]
こんしゅまー? ぶいちゅーばーの挨拶です
か?
[86@名無しの大剣使い]
はい
[87@名無しの貧弱一般人]
そうだよ(便乗)
[88@ローナです]
なるほど! メモメモ!
[89@名無しの一級廃人]
おい、ローナですちゃんに変なこと学習させ
るなwww
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……とまあ。
あいかわらず、ローナにはちんぷんかんぷんな言葉のオンパレードだったが。
なにはともあれ、インターネットの神々が、この世界を存続させるためにいろいろと動いてくれたようで……。
この世界はこれからも終わらずに、ずっと続いていくことになったらしい。
「――えへへ! インターネットありがとうっ!」
こうして、ローナがインターネットへの深い感謝の気持ちを新たにするとともに。
このたびのサ終騒ぎに完全に決着がつき――。
「――あっ、そうだ! 世界樹の杖のこと忘れてたっ!」
と、そこで、ローナは思わずソファーから跳ね起きた。
その声に、近くで盆栽をいじっていた同居神のテーラが、びくっとする。
「な、なんじゃ、いきなり? 世界樹の杖がどうしたんじゃ?」
「いやぁ……この前、世界樹の杖を増殖させたんですが……ちょっと増殖のさせ方があれだったので、このまま放置してたら世界が崩壊しちゃうところでして……あはは」
「!?!?!?」
そう、ローナにはまだ、やるべきことが残っていた。
それは、増殖させた世界樹の杖の後始末だ。
「ふぅ、危ない危ない……隕石関係なく、私が世界を滅ぼしちゃうとこでしたね」
「こやつ厄災かよ……」
というわけで、さっそく。
ローナはみんなに配っていた世界樹の杖を回収すると。
「よし、この辺りでいいかな……それじゃあ、フルスロットル! からのぉ――ヒップドロップ!」
我が家の庭にセットした“絵画”へと向かって、空高くから落下攻撃をした。
そのまま、ローナはお尻から超高速で絵画へと突っこんでいき――――。
「――よいか! 必ずや、迷いの森を突破し、エルフの秘薬を――んんんんんんんッ!?」
ずぅうううううん……ッ! と。
轟音とともに地面に激突したのだった。
「わっ、とと……ここは……」
と、ローナがお尻をさすりながら立ち上がり、きょろきょろと周囲を見ると。
そこは、見慣れた我が家の庭ではなく――絵画の中に描かれていた、イプルの森の中だった。
なにやら、貴族や騎士たちが、呆けたようにローナを見ているが……。
「よし、タイムトラベル成功♪」
と、ローナはかまわずインターネット画面へと視線を向ける。
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▍裏技・小技/【ヒップワープ】
落下攻撃【ヒップドロップ】を利用した
ワープ技。
【ヒップドロップ】には速度上限なく加速
し続けるというバグがあり、超高高度から
やると最終的に凄まじい速度にまで達する
ことができる。
その速度のままムービー開始地点へ突撃す
ると、操作ロック処理に不具合が生じ、
ムービー世界の中で自由に動けるようにな
る。
ただし、帰ることもできなくなるので、
【自爆ワープ】などの併用は必須。
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そう、このヒップワープという技を使って、『なぜか触れるたびに過去の一場面を見せられる絵』の中に入ると――過去へとタイムトラベルすることができるのだ。
まあ、もともとは……。
『……時間旅行! そういうのもあるのか……よーし、次は過去に旅行に行くぞぉ!』
『!?』
と、旅行目的で使おうとして、テーラやロムルーに止められていた技だったが。
ちなみに、ローナが中に入った絵画は、10年前のググレカース辺境伯――つまりは、ローナの父の絵であり。
「お、おい、なんだ、貴様はっ!?」
「あ、おかまいなく」
「いや、かまうわ!?」
と、少しだけ若い父が、なにやらわめいていたが……。
下手に関わると歴史が改変されてしまうので、ローナはさっさと目的地へと向かうことにした。
「……な、なんだ、あの娘は……まったく、親の顔が見てみたいものだ」
父が背後でぶつくさ文句を言っていたが……まあ、いいだろう。
それはそれとして、森に入ったローナはというと。
(あ、懐かしい! ここ、私が最初にスライムと戦ったところだ! えへへ、ここから私の旅が始まったんだよね!)
と、ちょうど自分の旅が始まった場所を歩いていた。
以前にここに来たときは、気持ちに余裕もなかったが……今はサ終騒ぎにも一区切りがついたし、ちょっと観光気分になってくる。
(あ、そういえば、ここの茂みの中に500シル落ちてたんだっけ。なぜか、ぴったり500シルが……あれ、ない?)
攻略サイトの地図をあらためて見てみるが、ここで間違いないはず。
だが、いくら草をかき分けてみても……ない。
(あ、あれ? まだ、誰も落としてないのかな? 10年前だし……)
とはいえ、この辺りは、ほとんど人が通らない森の奥地だ。
だからこそ、ローナもこの辺りに捨てられたわけで……。
それも、茂みの中にぴったり500シルだけを落とすというのは、あまり状況の想像ができない。
(う、うーん……あのお金がなかったら、町に入れないまま旅が終わってたし……大丈夫だと思うけど、500シル置いとこっと)
そうして、ローナは茂みの中に500シルをそっと置いたあと。
(さて、と……過去観光はこれぐらいにして、私もそろそろあそこに行かないとね)
過去にいられる時間は、異世界旅行と同じく時間制限がある。
そのうえ、時間がかかりそうな用事もあるため、あまりのんびりしてはいられない。
というわけで、ローナは少し表情を引きしめると、さっそくその目的地へと向かうのだった――。
◇
――イプルの森の最深部。
そこに、世界樹の苗木を守るための神域があった。
過酷な試練を乗り越えた救世主だけが入ることを許される神聖不可侵な地。
そこに待っているのは、ひとりの精霊。
(……この世界は……もってあと10年、といったところでしょうか)
その精霊――世界樹の精ユグドラシルは、今日もまた深い憂いを帯びた声を漏らす。
かつて地底に封印された闇の勢力……それが今、じわじわと復活の兆しを見せ始め、ふたたびこの美しい世界を蝕もうとしていた。
また、かつてのような地獄の戦乱の時代が幕を開けようとしている。
世界樹が焼かれ、今のような苗木の姿となってしまった元凶の戦乱が――。
(……どうか……一刻も早く来てください……この星の救世主よ……)
そんな祈りの中で、世界樹の精は救世主を待つ。
何年も……何十年も……何百年も……。
………………。
………………。
…………そして。
「――“時よ止まれ、世界は美しい”」
――声が。
ふいに、聞こえてきた。
それは、数々の試練を乗り越えた者しか知るはずのない言葉で――。
「……っ!」
ついに……ついに、来てくれたのだ。この世界を救ってくれる救世主が。
ざっ、ざっ、と足音がどんどん近づいてくる。
だが思えば、ユグドラシルにとって、誰かと会うのは1000年ぶりであり……。
(……わ……わわ……っ)
ユグドラシルは内心で緊張しながら、慌てて服や髪の乱れを整えると。
やがて、彼女の前に姿を現した足音の主へと向け――。
美しく涼やかな顔で、厳かに言の葉をつむぎ出した。
「……はじめまして、人の子よ。わたしは――」
「――あ、エルフの隠れ里でヒントを聞いたあとに、【十二星の天文塔】の守護者を全て倒して【星図の円盤】を完成させてキーワード【時よ止まれ、世界は美しい】を手に入れてきたので――とりあえず、世界樹杖ワンド・オブ・ワールドください!」
「…………あ、はい」
というわけで。
救世主――もといローナは、世界樹の杖をもう1本手に入れたのだった。











