158話 隕石を攻略してみた
一方、ローナたちがいる、はるか空の彼方では――。
いまだに熾烈な戦いがくり広げられていた。
〈@:残り3割!〉〈@:コンボ止めるなあああっ!〉〈@:つなげええええええええっ!!〉……。
隕石へと特攻しては、次々と光の粒子となって消えていく神々。
それにより、すでに神々のほとんどが消滅していたが、隕石のHPはまだまだ残っており……。
さらには、もう時間もほとんど残されてはいなかった。
しかし、神々の顔に絶望の色はなく――。
〈@:俺、消えっから!〉〈@:俺たちの戦いはここまでだ!〉〈@:人生最高の3分間だった!〉〈@:あとは頼んだ!〉〈@:b〉〈@:これを使ってくれ! ローナですちゃん!〉……。
神々は最後にローナへと振り返って親指を立てる動作をし……次々と光の粒となって消えていく――……。
まるで、ローナにバトンをわたすように。
たしかに、ローナへと希望をつなげていく……。
〈@:残り2割!〉〈@:あとちょっと!〉〈@:ローナですちゃんにつなげえええええっ!!〉〈@:いけえええええっ!! ローナですちゃん!!〉……。
弾幕のように、流星群のように、万を超える神々の祈りが宇宙を駆けめぐる。
さらには――。
『――むぉおおっ! 心を燃やすのじゃ、ローナ!』『……負けるんじゃないわよ、ローナ・ハーミット!』『我が使徒ローナよ! あとミリですよ、ミリっ!』『とっとと勝つのデス、ローナ✜』『――〈敗北確率〉:0%と推測されます――』『【朗報】あとHPが1割な件ww』『『る! いけるぞ、ローナ!』』『……ぶちかますがよし』『……勝て、ローナっ!』『勝ってください、ローナさん!』『『『……神ィッ!!』』』『エクスディェエエエエスッッ!!』『ローナちゃん、がんばえーっ! まけうなーっ!』『どわっほい!』『どわっほいでありやがります、ローナの姐御!』『ローナ殿しか勝たん!』『救世主様、まだ舞えます!』『殺せぇええですわッ!』『……くすくす……やっちゃえ、ローナ……』『いけえええええっ、ローナ!』…………。
通話画面からは、地上にいる仲間たちの声。
そして、インターネット画面を通して、幾千……幾万……もの声が、祈りが、重なり合い――。
『『『――――ローナっ!!!』』』
ひとりの少女の名を、形作った。
それは、本来の運命ならば……誰にも呼ばれないはずだった少女の名。
しかし……今は違う。
いつか憧れた物語の主人公のように、世界中のみんなが少女の名を呼んでいる。
だから――。
「――――はいっ!」
ローナは顔を上げ、とびっきりの笑みで返事をした。
隕石のHPは、残りわずか。
だが、その『わずか』が絶望的な数値であることに変わりはない。
ひとりの力では、どうすることもできない。
しかし、布石なら――もう、打ってある。
――この世界で一番強いのは『札束で殴る』こと。
それは、以前……ローナが攻略サイトで見た情報。
その情報に間違いはない。なぜなら、インターネットに書いてあったからだ。
だからこそ、この世界に召喚された神々は――。
――光の粒を残して消えていった。
周囲を見れば、宇宙の中、何億……何兆……もの光の粒が、星のように漂っている。
いや、それはただの光ではない。
その全てが――“金貨”だ。
――死亡時、所持金を全てその場に落として死に戻りする。
それが、この世界でのデスペナルティー。
だからこそ、神々はあえて特攻して散っていった。
それは、今……この瞬間のために。
「スキル、発動――――現金弾っ!!!」
ローナは黄金にきらめく銃を、頭上へと掲げる。
SSSランク装備――回転式金銃デット・オア・アライブ。
その装備スキル【現金弾】の効果は――。
――『消費金額の1%の威力の弾を生成する』。
当初、この隕石戦には使えないと切り捨てたスキル。
たしかに、この世界における所持金の限界は999兆シルであるため、ひとりではどう頑張っても、10兆ダメージしか与えられないが……。
しかし……もしも、ひとりではなかったら――?
もしも奇跡が起きて、万を超える仲間が、ひとりの少女のもとに集まったら――?
その答えは、今――ここにある。
「……みなさん、私に……力を貸してください……っ!」
ローナがそう叫んだ――次の瞬間。
――――じゃらららららららららららららららららららららららららぁぁぁ……ッ!!
宇宙の星々が集い、光の道となるように……。
神々が残していった無数の金貨が、ローナの頭上に掲げられた銃口の先へと集束し……巨大な光球を形成していく。
そのまま、黄金の光球が、銃口へと吸いこまれていき――。
「――現金弾、装填……完了っ!」
……カキンッ、と。
威力10京オーバーの銃弾が――セットされた。
それは、この一瞬の奇跡が引き寄せた、世界が想定すらしていない攻撃力。
ただ、この一撃ですら……隕石のHPを削り切るには、まだ足りないが……。
……しかし、問題はない。
なぜなら、攻略サイトいわく。
この【現金弾】を装填した銃の威力は、もちろん……。
かつてローナが手に入れた半自動式散弾銃のように――。
――なぜか【キック】にも反映される。
「……最近覚えた【体術の心得Ⅹ】で威力1.5倍っ! ラッキーペンデュラム×2で確定クリティカルだから、威力はさらに2倍っ! 【大物食いⅩ】で威力はさらに4倍っ! それから、みんなの強化技とコンボボーナスで、威力は……えーっと、とにかくたくさんっ!」
インターネットによって、何万にも重ねられた祈りと奇跡……。
その全てが、ローナの右足に、ギュルルルルゥゥゥ――ッ! と集束していく。
――……ジッ――……――ジ……ッ――……ジジジ……――……ッ!!
その……あまりにも……膨大な負荷に……世界が……悲鳴を上げる。
空間が……ひび割れ……ノイズまじりに……剥がれ落ち……。
――〘ERROR〙――〘ERROR〙――〘ERROR〙――〘ERROR〙――〘ERROR〙――〘ERROR〙――〘ERROR〙――〘ERROR〙…………。
と、赤い警告文が……周囲の空間を、埋め尽くす……。
これこそが、インターネットの真の力。
世界にも運命にも縛られない、なによりも自由な力――。
…………ゆえに。
「――フルスロットル! 猪突猛進! プチフレイム逆噴射! からのぉ――――っ!」
……これが正真正銘、本当の――――。
「――――インターネット・キック!!」
ばしゅ――――ッ!!
と、自身が弾丸になったかのような速度で。
流星のごとき光の軌跡を残しながら――ローナの足が、一直線に隕石へと突き進む。
そして、世界最強の火力を乗せたその足が……その一撃が……。
隕石のど真ん中へと……突き刺さった。
――――――――。
――――――――。
――――――――。
一瞬の静寂。そして……。
…………………………ぴきっ………………。
攻略不可能なはずの隕石に、小さな亀裂が走る。
………………びき……びきびきびきびき…………っ。
……亀裂が、広がる……広がっていく……。
やがて、その亀裂の内側から――光が――あふれ出し――みるみる視界を――白く――染め上げていき――――――――。
――ド…………ッゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォ…………ォォォォッッッッ!!!!!!
そして、超新星爆発のような、世界一盛大な花火をまき起こしたのだった――――。
『〈ERROR:NAME_NOT_FOUND〉を倒した! EXPを2147483647獲得!』
『LEVEL UP! 139→300(MAX)』
『称号:【このゲームを遊んでくれてありがとう】を獲得しました!』
………………。
光と、音と、衝撃――――……。
その中で、ローナの視界にメッセージが表示される。
それは、戦いの終わりを告げる、世界からの祝福の言葉。
つまり、これにて――。
「――――――攻略完了、です!」











