153話 攻略法を見つけてみた
「――というわけで、エリミナさんに世界樹の杖あげます!」
「ぶふぉおッ!?」
そんなこんなで、カジノでラッキーペンデュラムを手に入れたあと。
ローナはモンスターの大量発生対策のために、エリミナに世界樹杖ワンド・オブ・ワールドをプレゼントした。
「……え? あの……え? この杖って……え?」
と、エリミナが自分の手の中にある杖を見る。
それは、ローナがいつも持っていた世界最強の杖。
SSSランク装備――世界樹杖ワンド・オブ・ワールド。
いずれ世界の危機が来たときに、この星が“救世主”へと託すといわれる伝説の杖だ。
そんなものをいきなりわたされたエリミナは、喜ぶ……わけもなく。
意味がわからなすぎて、ひたすら混乱していた。
「あ、あ、あの、いいんですか……こんな貴重な杖を、私がもらっても?」
「はい! その杖、100本ぐらいあるので!」
「!?」
「えへへ、便利なので増殖させちゃいました!」
「!?!?」
杖の増殖のやり方については……まあ、いったん置いておいて。
(うん! エリミナさんが世界樹の杖を持ったら、モンスターの大量発生は大丈夫だよね!)
そう、ローナがひとりしかいないなら――ローナレベルの戦力を増やせばいい。
それに、世界樹の杖は、もともと今回のような大軍相手を想定して作られているのか……装備スキルでMPを補充でき、さらに魔法の範囲を倍増するという効果もついているのだ。
まさに、モンスターの大量発生の対策としては、うってつけだった。
また、エリミナだけでなく、信頼できるエルフや黒ローブ集団などにも世界樹の杖をわたせば、モンスターの大量発生は無事に解決できるだろう。
と、ローナがそんなことを考えていると。
「あ、あのぅ……私にこんな杖をわたして、いったい、なにが目的なんですか……?」
エリミナがおずおずと尋ねてきた。
「ああ……エリミナさんには話したほうがいいですね」
「え?」
「実は……2か月後に、サ終――つまりは、世界が終わることになりまして……」
と、ローナがサ終について語る。
さすがのエリミナでも、少なからずショックを受けるかと思ったが。
「……つ、ついに、決定したんですね……世界の終わりが……」
エリミナに動じた様子はなかった。
むしろ、ずっと前から覚悟を決めていたような表情だった。
「もしかして、知ってましたか?」
「まあ……はい。そろそろかなぁ、と……」
(――っ! さすが、エリミナさん! やっぱり、全てを見通す目を持ってるんだ! うん、エリミナさんにくわしい説明はいらなそうだね!)
と、ローナが目をキラキラさせる一方。
エリミナは遠い目をして、過去に見聞きしたあれやこれやを思い出していた。
『えっと、たしかローナは……(中略)……「人類に反乱を起こそうとしている」「世界を5回は滅ぼせる」とか言っておったの!』
『全てを無に帰します!』
『今は、「この世界をどう終わらせるか」についても考えてまして……といっても、1年後ぐらいの話ですが』
(……まあ、うん……知ってた……)
そろそろ、ローナ・ハーミットが世界を滅ぼしたくなっちゃうかなと思っていたが……。
やはり、滅ぼしたくなっちゃったらしい。
「そ、それで……どうやって、この世界を終わらせる予定で?」
「(? “運営”がって話かな?) それなら隕石を落として、この世界を焼き尽くす予定ですね」
「殺意が高い!?」
「まあ、サービス終了なので」
「今まで手加減とかしてたんですか!?」
「はい。これまでは、世界が終わらない程度に、人類を苦しめて遊んでいただけですね……」
「!?!?!?」
――遊んでいただけ。
たしかに、そう言われると、ローナ・ハーミットのこれまでの言動にも説明がつく。
おそらくエリミナに世界樹の杖をわたしたのも、ローナ・ハーミットにとっては、ひとつの“遊び”なのだろう。
と、エリミナが戦慄している一方、ローナはというと。
(……あれ、エリミナさん、震えてる?)
と、顔面蒼白になっているエリミナを見て、少し不思議そうな顔をするも。
(そっか……やっぱり、エリミナさんの愛と正義の心が、悪の〝運営〟を許せないんだね……なぜか、土下座しながら預金通帳と印鑑を差し出してきたけど……自分のお金を全部、世界のために使ってくれってことかな……さすがエリミナさんは、人類の高潔代表だなぁ)
と、ローナは勝手に納得して、エリミナの預金通帳と印鑑をしかと受け取ったのだった。
これなら、ローナが協力を持ちかけるまでもなく、エリミナはサ終対策のために動いてくれるだろう。
となると、残る問題は、隕石をどう攻略するかだが。
「あ、そうだ。この隕石は、私が担当してるんですが――」
ちょうどいいので、ローナは隕石の攻略についても、エリミナに相談してみることにした。
エリミナはIQが400ぐらいあるというし、隕石の足止め策についても、なにかいいアイディアを出してくれるかなと思ったが……。
しかし、ローナが『相談したい』と言う前に。
「? 隕石を、担当……? あ、ああ……ローナさんが、隕石を操るってことですね」
と、エリミナがそんなことを呟く。
「? 隕石を操る?」
「え? 隕石を担当するってことは……ローナさんが、この世界に星を引き寄せるんですよね?」
「――――」
なぜか“運営”ではなく、『ローナが隕石を操る』のが当然とばかりに言ってくるエリミナ。
だが、たしかに、『隕石をどう足止めするか』ということばかり考えて、『隕石を操る』ということは考えていなかった。
いや、そんなことができるとすら、考えたことがなかった。
(……でも、エリミナさんの言葉には、全て深い意味があるはずだし……エリミナさんが言うからには、私が隕石を操れるってことだよね……?)
と、ローナは額に指を当てて考える。
たしかに、『“運営”が隕石を降らせようとしている』ということは、『隕石は、なんらかの手段で引き寄せることが可能』ということではあるが……。
(――そっか!)
そこで、ローナがはっとした。
それから、慌てて攻略サイトを確認し――その情報を見つける。
「っ! ありがとうございます、エリミナさんっ! おかげで、隕石を操れそうですっ!」
「……え、私のせい?」
なぜか、エリミナは顔中に『?』を浮かべていたが……。
おそらく知能が高すぎて、『この程度は一瞬で気づけて当然』だと思っているのだろう。
なにせ、ローナが『相談したい』と言う前に……一瞬で、ローナがなにを相談したがっているかを見抜き、その解決法まで導き出すほどの神算鬼謀の持ち主なのだから。
いや、それだけではない。
(……『この世界に星を引き寄せる』……そっか! エリミナさんは、『集いし星が新たな力を呼び起こし、光さす道となる』ってことも言いたいんだね! うん……たしかに、これなら隕石を倒せるかも! 一言で全部解決しちゃうなんて、さすがエリミナさんだなぁっ!)
「……? ……?」
そんなこんなで、ローナのエリミナへの好感度が天元突破したが……それはさておき。
エリミナの助言のおかげで、隕石攻略における最後のピースが埋まった。
となれば、こうしてはいられない。
「エリミナさん! ちょっと用事ができたので、私はこれで!」
「……え? あ……はい」
そう言って、ローナはエリミナのもとを後にすると。
仲間たちと常につないでいる通話画面のミュートを切って、声をかけた。
「――みなさん、隕石の攻略法が見つかりました!」
『っ!? それは真実ですか、我が使徒ローナ!?』
『“幻想”じゃねぇんじゃよな!?』
「はい、エリミナさんが全部考えてくれました!」
『……さすエリね』
そう、エリミナのおかげで、隕石の攻略法は見つかった。
これなら、隕石に勝てる――とは思う。思うのだが……。
とはいえ、この先は『攻略サイト』には書かれていない戦いになるわけで……。
「……でも、これはひとりじゃできない攻略法なので、みんなを危険な目にあわせるかもしれなくて……それに、本当にうまくいくかもわからなくて……」
と、ローナの声が、少し自信がなさそうにしぼむ。
エリミナから教えてもらった攻略法に、問題があるとすれば――。
それは、これまでのローナのボス攻略とは違い……隕石をひとりでは攻略できない、ということだ。
いつもよりも不確定要素が多いうえに、ローナ以外にもたくさんの人を、戦場に駆り出さなければならない。
そして、そこまでしても……うまくいかないかもしれない。
ローナにいつも自信を与えてくれた『攻略サイト』には、もう頼れないのだから。
それでも、ローナが顔を上げると……。
『はぁ? なに勝手に、ひとりで世界の命運を背負ってやがるんですの?』
『……ふん。誰も、あんたひとりに戦わせようだなんて考えてないわよ』
『そういう葛藤パートはリソースの無駄なのデス* とっとと攻略法をシェアするのデス*』
そこにいたのは、本来の運命では仲間になるはずもなかった者たち。
そう、運命はすでに――神々ですら想定していないものへと変わっている。
ならば、“運営”ですら想定していない結末にも、きっとたどり着けるだろう。
たとえば……ここにいるみんなと、エンディング後もずっと笑っていられる――そんなご都合主義的なハッピーエンドにだって、たどり着けるはずだ。
(……いや、絶対にたどり着いてみせる……っ)
ローナはそう決意を固め、あらためて仲間たちへと向けて口を開く。
ここで言うべきことは、『力を貸して』でも『協力して』でもない……。
「――――私たちの力で、隕石を攻略しましょう!」
『――はい!』『おうなのじゃ!』『任せてちょうだい!』『A.おk』『『るっ!』』『……うんっ』『……ふん』『ぴっ✜』『――〈肯定〉』『よしきた!』『どわっほい!』『『『……神の御心のままに』』』『ふっ、了解道中膝栗毛』『おかのした!』『エクスディェエエエエスッッ!!』
そして、てんでバラバラながらもそろった声が、仲間たちから返ってきたのだった――。











