151話 みんなで対策してみた
そんなこんなで、世界の命運をかけたサ終対策がさっそく始まった。
とりあえず、サ終対策として必要なものを、あらためてまとめると。
①隕石攻略
②モンスターの大量発生対策
③避難所の準備。
そのうち、③の避難所については、時間がかかりそうなので最優先で動きだすことになったが。
『【悲報】隕石が降ってくるなら 地下シェルターが必須な件』
「ふむ。地下シェルターじゃと……2か月で用意するのはキツそうじゃの」
「うーん、地下シェルター……あっ、それならもうありますね! それも世界中に!」
「むぇ?」
「ほら――“ダンジョン”が!」
「「「――っ!?」」」
というローナの発案のもと、ダンジョンを避難所として使うことになった。
ダンジョンとは、はるか昔にその多くが地底に封印され、異界化した古代遺跡のことであり……なぜか、ちょうど都合よく世界中に点在しているのだ。
ただ本来ならば、危険地帯扱いされるダンジョンではあるが――。
「モンスターなら、我が家のときみたいに魔除けの松明を置けば出なくなりますし……それに、ダンジョンの恵みで、地底王国ドンゴワみたいに自給自足もできるかなって!」
「「た、たしかにっ!」」
そう、これはローナの今までの旅があったからこそ生まれた発想だった。
「我が使徒の言うように、ダンジョンなら回復の泉で水と薬が確保できますし、モンスターや採集ポイントから食料も確保できますねっ!」
「それに、ローナが暴れても問題ないぐらい頑丈じゃしな!」
「私は暴れませんよ?」
『A.まさに 避難所にうってつけ』
そういうわけで、ローナは今まで出会った知り合いたちの協力のもと――。
【ぴ? 隕石対策の地下シェルター? それなら、ピコが使ってた侵略基地バックノアも使うといいのデス✜】
「「「……くくく。我らの神殿……黄昏の地下神殿もお使いください……」」」
「黄金郷も使ってよいぞ!」
『A.我が家の地下も 避難所にすればいい』
(……ふむ……この夢の世をば避難所とするは、問題なし……)
と、さっそく各地でダンジョンシェルター化計画のために動き始めた。
また、ダンジョンだけではなく――。
「……地下シェルター? ンなら、地底王国も使えんじゃねぇか?」
「る? “聖地”を避難所に?」「る! いと問題なし!」
〘――ワープ装置で〈わたし〉たちの世界にも避難を――一時的な避難ならば、バックアップ用居住区に、最大5万人は受け入れ可能と推測されます――文化交流もかねてやりましょう――〙
と、ダンジョン以外に避難所に使えそうな国や異世界も、協力してくれることになり……。
さらには――。
「やー、またぶっ飛んだこと考えるね、ローナは……とりま、避難所ごとに足りない物資があったら、あたしたちが売りに行くよ」
「……くすくす……避難所作りには、お金もなにかといるでしょう? うちが出資するわ」
「避難所の設営ってんなら、あたしらドワーフに任せやがってください、ローナの姐御っ!」
「ダンジョンのモンスター駆除なら、僕たち冒険者の仕事ですね」
「冒険者ギルドの本部にも報告しておくわ、ローナちゃん!」
と、商人や職人、さらには冒険者たちも協力を申し出てくれて――。
こうして、避難所についてはなんとかなりそうな目処が立ったのだった。
もっとも、しばらくは余計なパニックを避けるために、大々的に動くことはできないが……。
「それにしても……世界の終わりって言っても、みんな驚かないんですね」
「んまー、そもそもローナがいなかったら、もう何回か滅んでるだろうしね、この世界……」
「……くすくす……ローナがいるなら、世界の終わりなんて、ただのかき入れ時でしかないわ」
「なるほど?」
――なにはともあれ。
ドールランド商会が資金や物資を提供し、冒険者たちがモンスターを駆除して魔除けの松明を設置し、ドワーフたちが避難所の内部を設営していき……。
少しずつだが、着実に……みんなの力でサ終対策が進んでいった。
一方、そんな中。
ローナが任せられた隕石対策のほうはというと……。
「――……はぁ、っ……ぅ、くっ……はぁっ!」
……かつてないほど苦戦を強いられていた。
隕石を攻略するためには、この勝負はなんとしても勝たなければならないが……。
……手が震える。息が苦しい。嫌な汗が止まらない。
それでも……この世界を守らないといけないから。
みんなが自分に希望を託してくれたから。
「……私は、こんなところで負けられないっ!」
ローナは遠のきそうになる意識を保って、しっかりと正面を見すえる。
「……はぁ、はぁっ……もう、これで終わってもいい……だから、ありったけを……っ!」
そして、今この瞬間に――全てを賭けて。
「――いっ……けぇえええええええええっっ!!」
と、ローナの魂の叫びが、はるか空へと響きわたり――。
………………。
…………。
『――モンゴリアンデスワームが差し切ったああああッ! モンゴリ1着ッ! モンゴリ1着ッ! 右手を上げた騎手ッ! スーパーUMA、モンゴリアンデスワームが、見事に引退レース、引退の花道を飾りました――ッ!!』
――わあああああああああぁぁぁぁ……ッッ!! と。
競馬場で爆発する歓声、拍手、悲鳴、そして馬券……。
そんな熱気と喧騒の中で。
「……ふぅ」
ローナはどこかすっきりしたような顔で、後ろにいる仲間たちのほうをふり返ると。
「みなさん」
かつてないほど真剣な瞳で、言った。
「――お金を貸してください」
「「「…………」」」
有り金を全て溶かしたローナの姿がそこにあった。
「いや、あの……隕石対策するって聞いたから来たんだけど……」
と、ローナの仲間たちの中――水月の魔女マリリーンが代表するように尋ねてきた。
「……え? いや……え? なにしてんの、あんた?」
「? 競馬ですが」
「そりゃ、競馬でしょうけど……」
「まあ、正確にはUMAレースですね。これはカジノの賭け事のひとつでして、UMAレースの面白いところは、推しのUMAにプレゼントを贈って好感度を上げると、能力が成長したり、デートしてくれるようになったりすることで――」
「こ、こいつ、いきなり早口になるわね……って、そうじゃなくて! この黙示録の危機に、なんであんただけ賭博黙示録してんのよ!」
「それは……ギャンブルは世界を救うからです」
「ちょっと、なに言ってるかわからない」
そう、インターネットによると……。
たとえ“魔王”が降臨しようと隕石が降ろうと、神々はカジノに行くのが普通らしい。
なぜなら、カジノの景品には、なぜか当たり前のように、神話級の装備やアイテムが――そして、『隕石の攻略の鍵になりそうな装備』さえも置かれているからだ。
ただ、カジノコインには、『所持コインが1000枚になるまでしか購入できない』という制限があるため、コインを増やすには勝たなければならないわけで。
「つまり、隕石攻略の“鍵”を手に入れるには、ギャンブルをしてカジノコインを稼ぐ必要があるってわけです!」
「な、なるほど……まあ、事情は理解したわ、一応……一応ね」
と、マリリーンが微妙そうな声を出す。
「けどそれ、カジノ運営に事情を話すわけにはいかないの? さすがに景品ぐらい貸してくれるんじゃ……」
「いえ、話したんですが……ダメでした」
と、ローナはカジノ運営を説得したときのことを思い出す。
まずローナひとりで行ったが、信じてもらえなかったので……光の女神ラフィエールを異世界のワープ装置を使って外につれ出し、一緒に事情を話してもらったのだが――。
『――わたくしは光の女神ラフィエールです。人の子よ……今、この世界に危機が……』
『――教会に通報しました♪』
『えっ』
『貴様か! 自分をラフィエール様だと思いこんでいる異常者は!』
『神を騙るのは重罪だぞ!』
『え、ちょっ……待ってください! わたくしはラフィエールです! 誰がなにを言おうとラフィエールなんです!』
『いや、君、女神像と顔違わない?』『顔が胡散臭い』『腕が太い』『煩悩にまみれてそう』
『お、おのれ、人間めぇぇ……ッ』
そんなこんなで、光の女神ラフィエールは逮捕されてしまった(脱獄した)。
その後、国王にも説得を手伝ってもらったが、こちらも空振り……それどころか、国王がカジノで受付に迫っている様子を激写され、スキャンダルを流されてしまう始末。
おそらく、カジノ運営は世界の終わりを信じていないというより……ローナたちが具体的な景品を求めたことで、『世界の終わりへの対抗策はすでにある』『なら、世界は終わらないだろうし利益を得よう』とでも考えたのだろう。
『――どうしますぅ? このままじゃ、世界終わっちゃいますよぉ~?』
と、めちゃくちゃ足元を見られてしまった。
ただ、世界の命運がかかっているので、こちらも手段を選んではいられず――。
「そこで、みなさんの出番というわけです!」
「みなさん……っていうと、今日集まったメンバーのこと?」
「はい!」
と、ローナはあらためて、今日呼んだ仲間たちに視線を向ける。
今日ここに呼んだのは4人。
その誰もがカジノ攻略の鍵となるプロフェッショナルであり――。
「では、イカれたメンバーを紹介します! まずは――まさかイカサマ!? マリリーンさん!」
「え……まあ、幻術なら、あたしの十八番だけど」
「――ビタ押しできない台はない! パーフェクト目押しロイド、ピコちゃん!」
【ぴぴぴ✜ 絵柄見てから目押し余裕なのデス✜】
「――立てば百毒、座ればポイズン、歩く姿は毒の薔薇! 毒の百花辞典、ザリチェさん!」
「あの……これ、なにか言わないといけないんですの?」
「――体は借金でできている! 借りぐらしのアリエスッティさん!」
「ふっ……借金の貯蔵は充分よ」
「――以上です!」
「最後のやついる?」
というわけで、ローナの愉快な仲間たちがカジノに参戦した。
「――待たせたわね、ローナちゃん」
「はい、アリエスさん! 私たちが2人そろえば2馬力です!」
「さあ、世界を救うための競馬を始めましょう!」
「「――い……っけええええええっ!!」」
………………。
…………。
「「――お金を貸してください」」
「……たしかに馬力が2倍になったわね」
というわけで、ローナとアリエスには賭け事禁止令が出されたのだった。
と、そんな一幕はあったものの、ローナが集めたのは、手段さえ選ばなければカジノで使える能力を持った者たちであり――。
『――な、なんだぁっ!? UMAたちが一斉に目をこすってくしゃみをし始めたぞ!? お、おおっと、ここでダークホース――毛玉のUMAケサランパサランが抜け出したッ!? ケサラン先頭ッ! ケサラン先頭ッ! そのまま1着でゴールイン――ッッ!!』
「……らふふ♡ わたくしの毒花粉ちゃんにかかれば、こんなの温室ですわぁ♡」
「――はい、ツーペア。あたしの勝ち」
「え……あ、あれっ!? フルハウスだったはず!?」
「くららら☆ “幻想”だったんじゃないかしら?」
【……リール1周時間:0.05秒✜ 猶予フレーム数:1✜ いくら調整しようと、ピコには通用しないのデス! ぴ~っこぴこぴこ、倍々金なのデス!】
「ぐ、ぐぅぅ……これ以上の調整は、台がもたんッ!?」
「ふふふ、ご婦人方……あの子たち、すごいでしょう? あれ、わたしの友達でして、ええ……今、わたしにカジノコインを貸してくれれば、あの子たちが倍にしてくれますよ! 大丈夫、うちにはドールランド商会の全面バックアップがあるから、貸し倒れリスクはゼロ! いいから黙って、全部わたしに投資しなさいっ!」
「の、乗ったわっ!」「私もっ!」「美しい……これ以上の土下座は存在し得ないでしょう」
――と。
カジノを荒らし尽くして、またたく間にカジノコインの山を積み上げていき……。
「――う、うぎぎぎっ……こ、こちら、景品の“ラッキーペンデュラム”になります……っ」
「わーい」
こうして、ローナは隕石攻略の鍵となる装備を手に入れたのだった。











