150話 対策を話し合ってみた
――――“サ終”。
それは、この世界の終わりのことである。
そんなサ終の告知を受け取ったあと。
ローナは、同居神ズ(邪神テーラ&闇の女神ロムルー)とともに、光の女神ラフィエールのお告げ空間へとやって来ていた。
そして、現在……全員の視線の先にあるのは、配信サイトの画面。
そこに映っているのは――。
『――サ終は決定しちゃいましたが、世界の終わりまでイベントはたっぷり☆ で・す・の・で! ぜひぜひ、みなさん残された時間をエンジョイしてくださいね~♪』
世界の終わりを愉悦しそうに告げるラフィエールの姿だった。
「まさか、ラフィエールさんが裏切るだなんて……」
「くっ……前から、いつか裏切りそうな顔しとると思っておったのじゃっ!」
『A.汚いな さすが光の女神 きたない』
「んんっ! んんん~~ッ!!」(猿ぐつわ)
わりと人望のないラフィエールであった。
そして、猿ぐつわ+簀巻き状態のため、ラフィエールは弁明することもできず――。
『――それで、来週からはさっそくぅ~? はい……どん♪ えぇ~、というわけで、世界各地でモンスターが大量発生しちゃいます♪ ぱちぱちぱち~♪ いいですねぇ、こういうの……わたくし、わくわくすっぞ☆』
「こやつ、サイコパスかよ……」
『Q.人の心とかないんか?』
「ラフィエールさん、コメント欄で炎上してますね……」
「んんんんんん~~~ッ!!」(ふるふるふる!)
ラフィエールへの風評被害がとどまるところを知らなかった。
まあ、それはさておき。
「――で、じゃ」
床でびたんびたん跳ねているラフィエールをスルーして、テーラが口を開く。
「そもそも、『さしゅー』とはなんじゃ? うまいのか?」
『【悲報】余のデータにも ない件www』
「え、お2人とも知らないんですか? 神様なのに……?」
『A.全然わからない』
「われらは雰囲気で神をやっておる」
「なるほど。とりあえず、サ終っていうのは“サービス終了”の略みたいでして――」
――手加減の時間は終了だ。ここからは本気で世界を終わらせる。
「……という、“運営”を名乗る悪の組織からの宣戦布告だそうです」(※ローナ調べ)
「そやつら邪神かよ……」
『A.おのれ 運営め……』
「じゃが、まあ……ゆーても、ただ世界が危機るだけじゃろ? われはなんかもう、そうゆーの慣れちゃったのじゃ」
「いえ、今回の危機り方は、これまでとは“レベち”みたいでして……」
「れべち?」
『Q.運営は そんなに強い?』
「……はい。普段から『“にんて○どー”の倒し方を知ってる』と自信満々に言ってるほどだとか」
「よ、よくわからんが、それはやばそうじゃの」
「それで“運営”は、『サ終日まで世界中でモンスターを大量発生させる』『サ終日に隕石を降らせて世界を終わらせる』と犯行予告をしてまして」
『A.殺意高すぎ 高杉くん』
「い、いや、もう少しこう……なんとゆうか、手心とゆうか……のぅ?」
「まあ、手加減終了なので」
とはいえ……モンスターの大量発生については、頑張れば対処はできるだろう。
たとえば、港町アクアスでの“水曜日クエスト”のときのように、トラップタワーやウォールローナを駆使すれば、それだけでも対処の難易度は下がるわけで――。
「ただ、問題は……」
『A.隕石』「……隕石、じゃな」
そう、隕石だ。
さすがに、宇宙から飛来してくる隕石は、どうしようもない。
『Q.隕石を壊すことは 可能?』
「うーん。一応、できなくはない……みたいですが」
ローナが手元の攻略サイトを見ながら、歯切れ悪く答える。
倒せるかどうか、と言えば――答えはイエス。
この世界では、生物だけでなく、あらゆる物に耐久値があり……。
そして、隕石にもまたHPが設定されていた。
おそらくは、最後の一瞬まで世界の終わりに抗えるように、という“運営”のはからいによって。
ゆえに、隕石のHPをゼロにできれば……。
ひとまず、世界の終わりを回避できるかもしれない。
「ならば、話は簡単じゃな――ほれ、おぬしが前に自慢してたやつあったじゃろ? 魔王ですらワンパンとかゆう……」
「現金弾ですか?」
「それじゃ、それ」
「うーん」
と、ローナは微妙な表情で攻略サイトを見る。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
≡ エタリア攻略wiki [ ]検索 ⍰
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▍武器/銃/【回転式金銃デット・オア・ア
ライブ】
▍ランク:SSS ▍種別:銃
▍効果
全ステータス-77%
▍装備スキル:【現金弾】
▍効果:消費金額の1%の威力の弾を生成
する。
▍概要
カジノの景品で手に入る武器。
999兆シル(所持金上限)注ぎこめば、
10兆ダメージを叩き出せるバカみたいな
銃。
いろいろとバグっているが……もはや修正
されることはないだろう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
SSSランク装備――回転式金銃デット・オア・アライブ。
その装備スキル【現金弾】の効果は――『消費金額の1%の威力の弾を生成する』。
それは、HP100億の“魔王”ですら1兆シルあれば倒せるという、ぶっ壊れスキルだ。
……しかし。
「でも、内部解析? っていうのをした神様たちが、隕石のHPを調べたみたいなんですが……その、隕石のHPは、すごく高いみたいでして……」
と、ローナは少し言いよどむ。
「む? なんじゃ、そんなHPが高いのか? ま、もしHPが1兆とかあっても、われはもちろん抵抗するのじゃ――肘で!」
『A.余もwww』
「んんんッ!」(こくこくこくっ!)
「みなさん……」
そう、ここに隕石を恐れる者はいなかった。
いや、ここにいる神々だけではない。
ローナが旅の中で出会ってきた、人間、エルフ、水竜族、ドワーフ、魔族、アンドロイド……そのみんなも、きっとローナの助けとなってくれるだろう。
(そっか……そうだよね……みんなとの絆の力があれば、きっと隕石にだって勝てるよねっ!)
と、ローナは思わず、じーんと胸を熱くする。
「で、じゃ。結局、隕石のHPはどんぐらいなんじゃ?」
「あ、そうでしたね。えっと、隕石のHPは――」
そして、ローナは告げた。
「――――922京3372兆368億5477万5807、です」
「「「………………」」」
……ちょっと絆の力でも無理そうなやつだった。
HPが922京ということは、つまり魔王の9億倍のHPということであり……。
「よーし! それじゃあ、みんなとの絆の力で隕石を倒しましょうっ!」
「……ちょっと待つのじゃ」
「はい」
テーラからストップがかかった。
「いや……の? 922京は、その……現実的に……無理じゃろ」
「でも、絆の力がありますし」
「おぬし、絆の力に親でも救われたの?」
「いえ、絆の力で親を牢屋に入れました」
「あ、うん……」
なにはともあれ。
「とりま、現金弾とかゆうスキルで隕石を倒すには、どんだけ金がいるんじゃ?」
『A.9垓シル以上www』
「……なら、普通に戦ったら?」
「えっと、原初の水クリスタル・イヴのHPが11億なんですが、私がそれを倒すのに10分ぐらいかかったので……」
『【悲報】倒すのに 15万年以上 かかる件www』
「……隕石が地表に到達するまでの時間は、どんぐらいじゃ?」
「たぶん数分ぐらいですね」
「ふむ、なるほどの」
………………。
「――うむ! もう終わりじゃな、この世界!」
というわけで、この世界が、今――終わろうとしていた。
ちなみに、あきらめムードになっているのは、ここにいる神々だけでなく……。
:922京ってなんだよ……
:システム上の最大値
:なら、回復でオーバーフローすんじゃね?
:前にそれでやらかしたから対策されてる
:てか、マジで隕石エンドやる気か……? 伝説になるぞ、悪い意味で
:新生しないF○14
:もしかして、このゲーム……クソゲーなのでは?
……などなど。
頼みの綱であった攻略サイトの神々も、もはや愚痴しか言えないようなありさまだった。
そう……最初から、勝ち目なんて用意されていないのだ。
なぜなら“運営”は、この世界を確実に終わらせにきているのだから。
ちなみに、このような理不尽な負け戦を、神々の言葉でこう呼ぶらしい――。
…………負けイベント、と。
隕石が衝突し、世界は炎に包まれて――この世界は終わる。
それが、この世界に与えられた正しい運命。
しかし、そんなあきらめムードの中にあっても。
「でも、隕石にHPがあるということは――攻略できるってことです!」
ローナだけは希望を失ってはいなかった。
いつも意味不明なことばかりしでかして、なんだかんだで世界の危機を破壊してきたローナだ。
そんなローナの言葉には、不思議と『また、なにかやっちゃってくれそう』という安心感があり――。
「……ふっ」
と、テーラたちは思わず顔を見合わせ、呆れまじりに微笑む。
「ま……たしかに、まだあきらめる時間じゃなかったかの」
『【朗報】まだ試合終了じゃない件www』
「んっ!」(こくこく)
「はい! みんなの手で隕石を攻略しましょう!」
こうして、ローナたちは隕石に立ち向かうことに決め――。
「で、じゃ……ずいぶん自信がありそうじゃが、なんか攻略の糸口でも見つかったのかの?」
「いえ、それはまだですが……でも、大丈夫です! だって……」
と、ローナは自信たっぷりに断言する。
「――たぶん、そのうち攻略サイトに攻略法が載ると思うので!」
「「「………………」」」
めちゃくちゃ他力本願だった。
「いや、まあ……それは、そうかもしれんが……なんか……えぇぇ……」
すごく微妙な気持ちになるテーラたちであった。
とはいえ、今のところ隕石とまともに戦えそうなのは、ローナ以外にいないわけで。
「まあ、いろいろ不安じゃが……とりま、隕石の攻略についてはローナに任せるのじゃ」
「はい!」
というわけで、隕石担当はローナで決まった。
「んじゃ、隕石はいったん置いといて……他の対策も考えんとな。モンスターの大量発生対策じゃとか、避難所の用意じゃとか」
『Q.ちなみに サ終までの猶予は?』
「2か月です」
………………。
「……うん。なんか思っとったより、まあまあ時間あるの」
「まあ、世界を終わらせるには、いろいろ法的な手続きも必要みたいでして。役所への事前相談とか届出とか」
「なんで、ちょっとコンプラ遵守しとるんじゃよ……」
よくわからないが、世界を終わらせるのも大変らしかった。
「ともかく、早く課題を終わらせて、気持ちよく残りの期間を過ごしましょう!」
「なんか夏休みの宿題みたいじゃな」
『A.明日から本気出す』
とまあ、最後は少しぐだぐだになってしまったが。
こうして、世界の命運を賭けたローナたちのサ終対策が始ま――。
「――んんんんんんん~~っ!!」(びたんびたん!)
「あ、ラフィのこと忘れとった……」
「ラフィエールさん、縄を解いても噛まないでくださいね……?」
「噛みませんよっ!?」
――なにはともあれ。
誤解をといたラフィエールも加わり。
今度こそ、ローナたちのサ終対策が始まったのだった――。











