141話 エリミナグッズを作ってみた①
◇メルチェ・ドールランド
ドールランド商会の天才少女商会長。
アニメが好きで『魔法少女エリミナ』をローナと一緒に作っている。
◇コノハ
元スパイの商人。今はメルチェの下で働く。
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○『魔法少女エリミナ 2ndシーズン』
○第1話 「エリミナは続くよどこまでも!」
『――エリミナちゃん、大変ぐごーっ☆』(役:溶岩魔人)
『どうしたの、グゴップル! まさか、またマモノンが出たの!?』(役:エリミナ)
『いや、違うぐご! マジカル☆税務署の職員ぐご!』
『マジカル☆税務署の職員!?』
『エリミナちゃん……ボクがあげた変身アイテム――“キラキラDX日輪ロッド”は、まだ持ってるぐごよね?』
『もちろんよ! 私とグゴップルの大切な絆の証だもの!』
『……実はあれ、原則として“マジカル☆贈与税”の課税対象になるらしいぐご……』
『えぇっ!?』
『あと、今まで手に入れたマジカルジュエルも、“マジカル☆一時所得”として申告が必要ぐご……つまり、エリミナちゃんは今、巨額の脱税容疑をかけられてるぐごっ!』
『そ、そんなっ!?』
『――開けろ! マジカル☆税務署だ!』(ドンドンドンッ!)
『……ひっ!? ど、どうしよう、グゴップル!?』
『こうなったら戦うしかないぐご……』
『職員と!?』
『勝負は今!! ここで決めるぐご!!』
『え、えぇ~いっ! ――きゃるる~ん♪ りゅんりゅん♪ エリエリりん♪ きらめけ、ミラクル☆ 爆ぜろ、マジカル☆ 愛と正義のエリート美少女戦士! 魔法少女エリミナ――爆☆誕っ!』
⇐To Be Continued…
『――次回予告! マモノンとの最終決戦が終わって、ようやく私たちの“黄金日常”が還ってきた、と思ってたんだけど……えぇ~っ、いきなり脱税容疑をかけられちゃった!? すぐ側まで迫りくるマジカル☆税務署の魔の手……でも、私たちの絆パワーで必ず倒してみせる!』
『――次回「地下強制労働編、開始」! ジュエルスタンバイ!』
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「――はい、OKでーす。おつかれさまでーす」
というわけで、壮大なる魔王編が終わったあと。
ローナはひさしぶりに“あにめ”の撮影(?)に参加していた。
以前、ローナたちが作った『魔法少女エリミナ』は、いったん物語が終了したものの、想定をはるかに超える大反響をまき起こし……。
このたび、めでたく2期の制作が決定したのだ。
そのため、本作のプロデューサーであるローナPも、ふたたび現場に戻ることになり――。
「エリミナさん、グゴップルさん、今のカットすごく激アツでした! マリリーンさんも幻術の腕が上がりましたね!」
「……ローナPもおつかれ。くすくす」
「やー、ほんっと来てくれて助かったよ。あたしのデータによると、ローナPがいないと『まほエリ』メンバーは集めらんないからさ」
「あ、メルチェ&コノハちゃん! 私もまたみんなで“あにめ”を作れてうれしいです!」
ローナは友達の商人メルチェ&コノハと、なごやかに会話をする。
“あにめ”作りも慣れたもので、撮影は順調そのもの。
とはいえ、なにも問題がないかというと、そうでもなく。
「……撮影は順調、となると……残る課題は、新作グッズね」
と、少し難しそうな顔をするメルチェ。
「新作グッズ?」
「そりゃ、『まほエリ』2期が始まるからねー。エリミナグッズも一新しようって話になっててさ」
「わぁっ、いいですね! 私もエリミナさんの新作グッズ欲しいです!」
――人類の英雄エリミナ・マナフレイム。
それは、この“あにめ”の主役にして、ローナの恩人である。
そんなエリミナのグッズが出たら、もちろんローナも3個は買いたいところだが――。
「……ただ、正直……新作グッズのいい案がまだ出てないの……主役はエリミナで固定だから、新鮮さを出すのが難しくて……」
「あたしのデータによると、グッズ収入は“あにめ”の生命線だしねー。ここがコケるわけにはいかないし……」
「……それで、ローナの知恵を借りたいと思って――」
「はいはい!」
そこで、ローナは元気よく手をあげた。
「そういうことなら、前からずっと欲しかった“おもちゃ”がありまして!」
「……それはインターネットに書いてあったもの?」
「はい! まあ、人生に必要なことは、みんなインターネットに書いてありますしね」
「間違いないね」
――インターネット。
それは、神々の書架にして(※以下略)。
とりあえず、メルチェ&コノハも、これまでの“ぱーてぃー”や“あにめ”作りなどを通して、インターネットには絶大な信頼を寄せていた。
「……それで、どういうおもちゃなの?」
「ふふんっ! やっぱり、“あにめ”関連のおもちゃといえば――これですっ!」
と、ローナは自信満々に、インターネット画面をメルチェ&コノハに見せる。
「こ、これは……?」
「“あにめ”みたいな版権モノの最高到達点……少し前まで“あにめ”関連のメインの収益源とまで言われていたおもちゃです」
「……っ! そんなものがあるのね」
「はい」
ローナはこくりと頷き――。
そして、決意を込めたまっすぐな瞳で、メルチェたちに告げた。
「――私たちの手で“ぱちすろ”を作りましょう!」
……却下された。
「はいはい!」
ローナはふたたび挙手をした。
「えっと、まだ案が?」
「はい! 次はこれです!」
と、ローナが次に見せたのは――。
「ん、人形? にしては、すごい精巧だけど」
「これは、グッズ界の王様――“ふぃぎゅあ”です!」
と、ローナは胸を張って言う。
――“ふぃぎゅあ”。
それは、“あくすた”、“ぬい”、“缶バッジ”と並ぶ、グッズ四天王の一角である(※ローナ調べ)。
ただ、“あくすた”なんかも、すでにスライム素材を利用して再現が完了しており……あと作っていないのは、“ふぃぎゅあ”だけとなっていたのだ。
というわけで、さっそく“ふぃぎゅあ”の画像を、メルチェたちに見せてみたところ――。
꙳✧˖°⌖꙳――これは、お迎えしたいわっ! 作りましょうっ!꙳✧˖°⌖꙳
と、秒で食いつくキラキラ女児モードのメルチェ。
しかし――。
「やーでも……これは作るの難しそうじゃない? そもそも、この“ふぃぎゅあ”の材質ってなんなの?」
「ぽり塩化びにるです」
「「…………」」
ちょっと無理そうなやつだった。
それに“ふぃぎゅあ”作りには、他にも技術や素材がいろいろ必要そうであり――。
「んー、“あにめ”は魔法でなんとか再現できたけど……こういう『物』はゴリ押しが効かないからねー」
「そ、そうですね……」
そういうわけで、結局……この日の話し合いは、『この世界の技術だと“ふぃぎゅあ”の再現は無理』という結論でお開きとなったが。
しかし、その帰り道――。
(……ん? 『この世界の技術』だと難しい? あっ、そうだ!)
ローナはふと、ひらめいた。
この世界の技術だと難しいなら――この世界“以外”の技術ならいいのでは、と。
◇
というわけで、さっそくその翌日――。
ドールランド商館の会議室にて。
「――本日は、異世界から技術アドバイザーをお呼びしました!」
ローナはひとりの少女を、メルチェ&コノハに紹介していた。
その少女とは、もちろん――。
【――異世界から娯楽留学に来てるピコなのデス✜ よろしくしてやってもいいのデス、人間✜】
そう、最近知り合った少女型アンドロイドのピコだ。
蛍光色に光るゲーミング仕様の近未来服。
動くたびにピコピコと鳴る電子音。尻尾のように揺れるコンセントプラグ。
そんな少女の側には、ふよんふよん……とマスコットっぽいドローンが浮かんでおり……。
「あのさ、ローナ?」
「はい」
「なんか……世界観、違くない?」
コノハのこの一言が、全てを言い表していた。
「まあ、ピコちゃんは異世界から来てますしね」
「い、異世界? そーいや、ローナが前に『異世界旅行』がどうとか言ってたけど……」
「……じゃあ、この子は、本物の異世界人ってこと?」
【ぴぴぴ⚠ 〈誤字検出〉:『人』→『機械』なのデス✜】
「き、機械? この子が?」
「はい! ピコちゃんの世界は、すっごく科学が進んでまして!」
「……へぇ、それは興味深いわね」
「それで、機械たちが人間たちを、完璧で幸福に管理してるんですよ!」
「いきなり雲行きが怪しくなってきた」
【ただ、ピコたちの世界は、ちょっと前まで娯楽がなかったのデス✜ なので、技術提供の対価として、ピコたちの世界でも『魔法少女エリミナ』とやらを配信したいのデス✜】
「……わかったわ。さっそく契約しましょう」
「判断が早い」
そんなこんなで、エリミナがついに異世界へと羽ばたくことが決定したところで。
さっそく本題に入ることにした。
「んで……今回作ろうってのは“ふぃぎゅあ”だっけ? 昨日、画像は見たけど……異世界から材料調達できても、人間の職人技が必要そうだよね」
「……それに、そんなにすぐに作れるものなの?」
「まあ、“ふぃぎゅあ”作りは、神様たちも1~2年はかかるそうですね」
「……神々でも年単位なのね」
そう、インターネットによると“ふぃぎゅあ”を作るには……。
まず、粘土やパテで形を出し、紙やすりでひたすら表面をなめらかにして、下地を吹いては細かい傷を徹底的にチェックして削り……のループを延々とやって原型を作り――。
厳しい原型チェックをパスしたら、それぞれのパーツごとに高価な金型を削り出し、そこに熱で溶かした樹脂を流して固めて、塗料を食いつきやすくするために下地処理をし、エアブラシで立体感が出るようにグラデーションをかけながら塗装して、最後に目などの細部を精密印刷し、全パーツ組み立ててツヤ消しや光沢スプレーで質感を整え……。
……といった長い長い工程が必要であり――。
「――こうして、できあがった“ふぃぎゅあ”がこちらになります」
「できあがってる!?」
「ピコちゃんが一晩で作ってくれました」
「じゃあ、今の時間なんだったの!?」
「えへへ、異世界技術があると、いろいろ手っ取り早くていいですね!」
「手っ取り早すぎるよ!?」
ちなみに、ここまで早く作れたのは、『インターネット上になぜかエリミナの“3Dもでる”が無料公開されていたから』という事情もあったりするが……それはさておき。
ローナはさっそくエリミナの“ふぃぎゅあ”の試作品を――手のひらサイズのものから等身大サイズのものまで並べていく。
꙳✧˖°⌖꙳――優勝っ! これは優勝よっ!꙳✧˖°⌖꙳
「えへへ、メルチェちゃんの内なる女児が荒ぶってますね」
「やーでも、実際すごいよ、これ……てか、これ一晩で作れるんなら、異世界だけで娯楽作れるんじゃ……?」
【まあ、ピコはローナの指示文通りに生成しただけなのデス✜ 機械はデータがないものを生み出すスペック=〈低〉なのデス✜】
「なるほど、データがないんじゃ仕方ないね……」
とまあ、それはさておき。
「ちなみに……この“ふぃぎゅあ”は、ただの“ふぃぎゅあ”じゃないんですよ!」
「え?」
【ぴ✜ この“ふぃぎゅあ”には、AIがデフォルト搭載されてるのデス✜】
「えーあい?」
【まあ、つまり人工の頭脳なのデス✜ 物が自分で考えて動くようになるのデス✜】
「……なるほど。ゴーレムみたいなもの、ってことね」
「はい。たとえば、この“ふぃぎゅあ”のエリミナさんたちは、おしゃべりができまして――ヘイ、エリ! 返事をして!」
『『『――エリ!』』』
「「――シャベッタアアアアアッッ!?」」
メルチェ&コノハの叫び声がハモる。
やはり、この世界の人間にとって、しゃべるおもちゃというのは衝撃的だったらしい。
だが、この“ふぃぎゅあ”の機能はそれだけではなく――。
「それと、この子たちは“可動ふぃぎゅあ”でして!」
「……可動? 球体関節人形みたいなもの?」
【いえ、自立駆動が可能な“ふぃぎゅあ”なのデス✜】
『――メイン回路接続――』『――全システム・オールグリーン――』
『――エリミナ、起動します――』
「こいつ……動くぞ!」
「……すごい。神々が熱中するわけね」
【ピコも動いてるだけで褒められたいのデス✜】
「さらに、それだけじゃありません! しゃべって動けるってことは、もちろん――歌って踊れる機能もあります!」
『『『――エリぴょい♪ エリぴょい♪』』』
꙳✧˖°⌖꙳――わぁっ! エリぴょいしてるっ!꙳✧˖°⌖꙳
「これは、いいエリぴょいだね!」
「さらにさらに! 子供向けのおもちゃといっても、買うのは大人なので……大人が買いたいって思うような機能もつけてみました!」
「なるほど、知育おもちゃみたいな――」
「そう、モツ煮を作って出してくれる機能です!」
『『『……おぼろろろろ、ぇぇぇ……っ』』』(※口からモツ煮を提供する音)
「いきなり絵面が最悪になった……」
「……な、なんでモツ煮?」
「競馬場に行くと、大人はみんな食べてるので」
「……そ、そう」
「でも、なんか思ってたのと違う感じになっちゃいましたが……」
【それは指示文が悪いのデス✜ AIは『出せ』と言われたら、文字通り『出す』のデス✜】
「なるほど? まあ、とりあえず……ヘイ、エリ! もうエリぴょいに戻っていいですよ!」
【ぴっ!? おい、待っ――⚠】
『『『――エリぴょぶぼぃっ♪ エリぶぴょっごぼぼぼぼぇっ♪』』』
「わ、わぁっ、エリミナさんが苦しみだしたっ!?」
「モツ煮吐いてるときに、エリぴょいさせるから!」
【言わんこっちゃねぇのデス! ちゃんとモツ煮をストップさせる指示文を作るのデス⚠】
「ストップ、ストップぅっ! ど、どうしよう、エリミナさんのモツ煮が止まらない……っ」
『『『…………シテ……コロ、シテ…………』』』
「ああっ、おもちゃたちが死に救いを求めちゃった……っ」
【い、いったん、学習記憶をリセットするのデスっ!】
そんなこんなで。
ローナたちはどたばたと、モツ煮機能の後始末に追われることになり――。











