修学旅行 清水の舞台
久しぶりの更新です
またブックマークが増えていました。
ありがとうございます!
「京都だー!すごい!」
「陽夜、少し落ち着いて」
「ごめん」
新幹線に乗り京都駅を出たところで立ち止まる。
新幹線内でもテンションの高かった陽夜は、実際に着くと更に上がっていた。
「初めにどこ行くんだっけ?」
「清水寺だったかな」
行く先を書いたメモを確認して言う。
「もう一回、駅の中に入って電車に乗らないとかな」
「じゃあこっちか」
同じ班になった四宮くんと井上くんが先導してくれる。
ファンクラブの子の視線とカメラのシャッター音は気にしないでおこう。
「清水寺か〜、良いよね。綺麗だし」
「四宮さんの行きたいって言ってた場所だよね?」
「わざわざ最初にしてくれてありがとう」
「大丈夫だよ、行ってみたいと思ってたから」
そんなことを話しながら電車を降り、歩く。京都はいつもと街並みも少し変わって面白い。
景観を守るために色々しているとか授業でやったなと思い出しつつ先に歩いているみんなに着いて行く。
「葵、清水の舞台って登るよね?」
「みんなが良ければ行ってみたいなと思ってるけど……みんなはどうしたい?」
「私は行きたい」
「俺も」
「行ってみたいかな」
本音か気を遣ってくれたのかは分からないが行けることになったのは嬉しい。思わず頰が緩みそうになってしまい慌ててポーカーフェイスをする。
一人でにニヤついている不思議な人にはなりたいとは思わないので気をつけないといけない。
受付で拝観料を払い中に入る。
実際に清水の舞台に登ってみるととても見晴らしが良く、紅葉の時期ではないのが残念なくらいだった。
「綺麗……」
風が少し吹いているが、空は雲がほとんどなく透き通った綺麗な青で木々の緑とよく合っていた。
「葵……」
急に話しかけられ、驚いて陽夜を見ると、少し呆れた表情を浮かべていた。
「どうしたの?」
「別に私は何もないけど、ね……どうしてそんな後ろにいるの?」
「ここからでも綺麗なのは十分分かるけど」
少し後ろに下がった程度で、この美しい景色は色あせたりしない。何もおかしいことはないはずだ。
「綺麗なのは分かるかもしれないけど……五メートル近く離れるのは遠すぎじゃない?」
「その……高いところが苦手なことを忘れてて、ね」
意識すればするほど恐ろしく思える。
手すりのギリギリまでいる陽夜のことが信じられない。
ちなみに二人も私より手すりの近くにいる。
「葵、行こうよ。手、握っててあげるから」
「陽夜……」
優しさに目を潤ませそうになったが、そうはならなかった。別の意味で涙が溢れそうになってきた。
「陽夜、引っ張らないでよ」
優しさで手を出してくれているかと思えば、少し強引に手を引いてきた。
完全に小悪魔モードに入った陽夜は止められない。こちらが折れるしかないが、今回は別だ。自分の気持ちに嘘はつけない。
「分かったから、自分で行くから」
そう言うとにこりと笑って手を離してくれた。
「葵、おーいで」
微笑みは天使なのに言葉に悪魔の影が見える。陽夜が楽しそうなら良いか、と思いたいがそうも思えない。
「少し待って」
「良いよ」
言ったからには陽夜のところまで行かなくてはならない。
一回深呼吸をしてから足を動かす。
ゆっくりでも止まることなく歩く。一度止まってしまったら、もう動けそうにない。
あと五、六歩で陽夜のところに着くというところで視界の端に人影が映った。
そちらを確認すると、三人組の若者が自撮りをしながら後ろに下がってきていた。このまま下がると陽夜にぶつかりそうだ。
肝心の陽夜は手すりギリギリのところにい、三人組に気がついていない。
あと二秒で陽夜にぶつかる。
そう思った瞬間、身体が動いた。
高いところが怖いなど言ってられない。
走って陽夜のところに行き、身体を引き寄せる。ここまでで一・五秒。
ついでにあの三人組が落ちないよう、手を後ろに出しておく。ぶつかる。
「あっ、ごめんなさい」
陽夜にはぶつからなかったが、私の身体にぶつかってしまった。手を出す必要はなかったようで良かったが 、距離感を捉え間違えてしまったのは失敗だ。
帰ったら鍛え直さなくてはならない。
「おねーちゃん、ごめんね。大丈夫?」
「大丈夫です」
「本当にごめんね」
「携帯、落とすともう取りに行けないと思うのでお気を付けください」
「本当にごめんね」
金髪の人がやたら謝ってくれた。別に何ともなかったので良かったが。
「葵」
声をかけられ、ハッとする。
「ごめん、苦しくない?大丈夫?」
「平気」
「水いる?本当に大丈夫?」
「心配しすぎだから。大丈夫だよ、ありがとう」
またやってしまった。
友達としての時にお節介をしすぎてしまった。気をつけようと思っていたのに。
メイドとしての時は言われる前の行動を心がけているのでそのようなことは起きないが、友達としての時は言われる前にするのはよくないと思い、声に出すようにしている。メイドの時に気をつけていることを全て声に出しているだけなので、結果的にお節介を焼きすぎてしまう。
「葵?」
またぼーっとしてしまっていたようだ。
「大丈夫なの?ここ」
ここ……そう言われて意識をすると急に怖くなってきた。
「だめ……でも陽夜は危ないから井上くんの方に行ってて」
「何かあったら言ってね」
素直で良かった。ちょうど良い位置にいた井上くんのところと言ったが、四宮くんはどこにいるのだろう。
今はそれよりも恐怖が勝っているので探すことは後回しにする。
せっかくここまで来れたので景色を眺めてからゆっくりと戻ることしよう、そう思い景色を眺めていると背中が押された。
「えっ」
傾いた身体を戻そうとするが間に合わない。
後ろの人と位置を入れ替え、逆の状況にすることはできるがたまたまぶつかってしまったであろう一般の人をそんな危険な目に遭わせるわけにいかない。
とても怖いが、手すりを掴んでいれば身体が向こう側になってもなんとかなるだろう。
そう思い、手すりを持つ手に力を入れたところで身体が止まった。
思わず瞑っていた目を開けると何やら白いものが見えた。
「大丈夫?」
その声に顔を上げると息を切らした四宮くんがいた。
「四宮くん」
「間に合わないかと思った……良かった〜」
「ありがとう、四宮くん」
「どういたしまして」
四宮くんの顔が赤い気がする。そこまで顔を赤くするほど急がせてしまったようだ。なんだか申し訳ない気持ちになってくる。
「歩ける?」
「多分」
「お姫様抱っこ、する?葵さんにならするよ」
「されません、大丈夫です。お気遣いなく」
「それは残念」
いつもに増してキラキラとしたオーラが出ているからか、変なことを言ってくる。
きっと気のせいだ。そう自分に言い聞かせて陽夜たちのところへ、先程より急ぎ足で向かう。
その頃の陽夜と井上くんはというと……
「あいつ顔真っ赤じゃん」
「葵を助けてくれたのはありがたいけど……葵は無意識なんだよね、あれ」
「上目遣いにあの心底ホッとしたような声?」
「それに少し涙目になって笑うところも」
「「………………」」
「本当に無意識?」
「そう、だから可愛いと思うんだよ!葵は綺麗系だけど」
「なら村雨さんは……かわ……系だね」
「ごめんね、声が聞こえなかった」
「なんでもないから」
「顔、赤いけど……井上くんも葵狙い?やっぱり可愛いよね、葵」
「違うけど。友達の好きな人を好きにはならないよ」
「私もかな」
「……そろそろ二人とも戻ってきたし、次、行こうか」
「そうだね」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
久しぶりの更新となってしまいました。
また忙しくなるまでは更新出来たらなと思っています。
今回から京都での出来事になります。
調べつつ書いていますが、それでも現実と大きく異なってしまいます。
その辺りはご了承ください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。




