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修学旅行前日の夜

またブックマークが増えていました!

ありがとうございます。

とても嬉しいです!!

 

 修学旅行の前夜、私は陽夜の計らいでいつもより早く休憩をもらっていた。

「別にそんなことをしなくても間に合うんだけどな……」

 誰もいない部屋に響く。一人で住むには広すぎる部屋だが、ここに住んで十年以上。流石にもう慣れた。

 小さいころは誰もいないというのが寂しかったが、今は一人の方が気楽だ。

 この部屋には誰も尋ねてきたことはない。使用人同士でも互いの部屋に行くことはタブーとなっている。

 陽夜の家の空いている部屋にそれぞれ使用人が住んでいるが、それでも部屋が余るほど広い。

 しなくても使用人が住むことを想定して作られたのか、簡易キッチンやトイレ。冷蔵庫やお風呂なども付いている。

 電気代や水道代は旦那様持ちだ。

 洗濯機や何でも揃っているキッチンは共用だが、そこは防音室となっているので、仕事後の夜遅い時間でも気にせずかけられる。

 部屋も防音になっているので、髪を乾かすためにドライヤーを使うのも、時間を気にする必要はない。

 ちなみに隣の部屋は水谷さんだ。

 色々と謎な人だからか、私生活が想像出来ない。

 とてもシンプルな部屋かもしれない。実は可愛いぬいぐるみ好きで、部屋中にぬいぐるみが飾ってあるかもしれない。

 少し暑くなってきたので窓を開ける。

 窓が付いているのは良い。角部屋だからか窓が二つ付いている。

 カーテンは二年くらい前に買い換えたばかりだ。

 全体的に白で整えられた部屋は居心地が良い。

 参考書や小説の並べられた本棚や制服や衣装の入ったクローゼット、勉強机やベットも白だ。

 白い部屋の中で存在感を出しているのがぬいぐるみとハンガーにかけられたメイド服だ。

 ぬいぐるみは先日、水族館に行った時に買ったペンギンのもの。四人でお揃いで買おうとなり、手のひらサイズでキーホルダーとしても使えるこの子になった。

 机の上からペンギンのぬいぐるみをとり、頭を撫でる。

 そしてそのままペンギンを明日持っていく旅行鞄に入れる。ほぼ無意識だった。

 この時に入れたことを覚えておらず、翌朝、机の上にいるはずのペンギンがいなくなっていたため少しへこみ、出先で鞄を開けてペンギンがいて驚くのだった。



 〈陽夜の修学旅行の前日〉


「水谷さん、携帯の充電器って必要だよね?」

「はい、あった方が便利だと思われます。しかし、四宮さんはきっと持っていくと思うので借りることも出来ると思います」

「今回は葵に頼りたくないの」

 そう言い部屋を右往左往しながら荷物を用意する。

 今まで葵や水谷さんが用意をしていたため、今回が初めてのことだった。

「お嬢様、本当によろしいのですか?」

「大丈夫。確認だけ少し手伝ってもらえると嬉しいです」

 母親に用意を手伝ってもらうという選択肢はない。

 決して放置されているわけではなく、強く当たられているわけでもない。

 人一倍、愛情を受け取り優しい子に育っていた。

 今でも毎日朝、夜と一緒に食事をし、小さい頃は一緒に寝たりもしていた。客観的に見ても幸せな家庭だ。

 しかし、会いに行かなければ食事の時以外は会えない。学校から帰っておやつを食べながら今日あったことを話し、分からない勉強を教えてもらう。そんな家庭に陽夜は憧れを感じていた。

 憧れを感じても、葵の前では決して言わなかった。両親を既に亡くしている葵にとっては両親と一緒に食事をするということももう叶わないのだ。

 陽夜は親の愛情を受けて育った、純粋で優しい子だ。人の嫌がることを意識してするなどあり得ない。

 それはもう葵が立ち直っていようが関係ない。無意識のうちに心の奥で傷つくということを理解しているから出来ることだ。

「お嬢様」

「はい!何かあった?…………手が止まっていたからか、教えてくれてありがとう」

 水谷さんに呼びかけられてしまった。

 寝る時間になる前に用意をしなくてはならない。

 今一度気合いを入れなおし用意を進める。

 早く明日にならないかな、と願いながら。




 〈とある男の修学旅行(葵たちが京都に行く)前日の夜〉



「時期的にそろそろですかね」

「ああ、本命の代わりにと出してきたが中々の子だったよ」

「しかも代わりの子の希望だそうで」

「ねぇ〜、遊ぼう」

「ずるい、私とも〜」

 黒い上質なソファーに座る男の周りには何人もの女性がいた。

 執事のような男と女性たちに囲まれる男の会話に飽きたのか、女性たちが口を挟む。

「ちょっと待ってろよ、お楽しみは後だ」

そう言うと、口を挟んでいた女性たちは何も言わなくなった。

「その代わりと本命がこちらに来るらしいですが……どういたしますか?」

「そう聞くってことは準備は整ってるいるんだろうな。とりあえず代わりは呼びだそう。本命は……お楽しみってことで」

 執事のような男はニヤリと口角を上げ、女性たちに囲まれている男は不気味な笑い声を上げた。



 〈井上と葵(男)の修学旅行前日〉


 翌日の用意をしていると携帯が鳴った。

 画面には『井上』と写っている。

「急にどうしたか」

「何となくだけど、急に電話がかかってきて四宮さんかと思ったか?」

「思わないから」

「そっか、それは残念」

「勝手に期待したのはそっちだろ」

「まあそうなんだけど……良かったな。四宮さんと同じ班になれて」

「まあな」

「「…………」」

「それでいつ告白するんだよ」

「もうした」

「それは知ってる。相手にされなかったんだろ、どうせ」

「…………」

「で、同じところで働いていると知ってどうするんだよ。四宮さんのことだから働いていることを黙っていて、それが申し訳なくて相手にされてなかった可能性もあるんじゃないのか」

「そう、かもな」

 どうだろう。そうかもしれないが今なら違うと言い切れる。それでも諦めないと決めたが、本当のことは井上にも流石に言えない。

「……分かりやすいな」

「ごめん、なんか言ったか?」

 回線の調子が悪いのかあまり聞こえなかった。

「いや、なんでもない。気にしないでくれ」

「そうか?」

「明日は……いつもと違う四宮さんや村雨さんとかを見れるかもしれないな」

「そうだな。そう考えると楽しみだ」

「ファンクラブの子は俺らの班と一緒のところに行こうと必死だったがな」

「それは……大変だったよな」

 あまり大人数ではなく、あくまでも班のメンバーで楽しみたかったので行く場所は出来るだけ秘密にしていた。

「まあ、夜も遅くならないうちに。じゃあな」

「また明日」

「メールの一つでも四宮さんに送っとけよ」

「余計なお世話だ」

 そう言ったところで切られてしまった。


 四宮さんからの電話かもしれないと期待したのは本当だ。井上には黙っていたが。

 言われたようにメールを送ろうと何回も打っては消しを繰り返していると時間が遅くなってしまい、結局は送れなかった。

 恋する乙女か、と思いつつも、用意をして寝ることにした。




最後まで読んでいただきありがとうございます。

予定より何日も遅れての投稿となってしまいました。

次回からは修学旅行編に入っていく予定です。

次回の投稿は二週間後くらいになってしまうかもしれません。最近忙しく、投稿が難しいです。

時間が取れれば、二週間の間にも投稿をするかもしれないです。

また次回も読んでいただけると光栄です。

最後まで読んでいただきありがとうございました。


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