水族館編 帰り道
またブックマークが一件増えていました。
ありがとうございます!
本当に嬉しいです。
〈四宮 葵(女)目線〉
最寄りの駅に着き、時間通りに帰って来られたことにホッとする。
「電車、ギリギリだったね」
「クラゲのフロアにいる時間が長すぎたからだろうな」
「お土産も買えたから良かったんじゃないかな」
「でも楽しかったね」
みんな口々に感想を言う。
私のは感想というよりは間に合って良かった、という心からの声だったが。
「今日はこの辺で解散かな」
そう言うと陽夜と井上くんは頷いた。
「遅くなっちゃったから、送っても良いかな?」
私が判断できることではないので、陽夜に任せることにする。
「じゃあ、途中までなら」
家までと言わなかったのは、自分の家が見られたくなかったからか、もしくは家のない居候の私を気遣ってくれたのかは分からない。
それでも私が、陽夜の判断に救われたのは事実だ。後でお礼でも言おう。
とりあえず今は、水谷さんに歩いて帰ることを伝える。どの人が陽夜の護衛かは分からないが、きっとそこら辺にいる人のほとんどがそうだろう。
旦那様はやはり陽夜に甘い。過保護すぎな気もするが、誘拐などがされる可能性がないというわけではないので、仕方のない気もする。
陽夜の家が近くなったところで陽夜が振り返った。
「この辺で大丈夫だよ。もうすぐそこだし」
「四宮さんも近いの?」
「うん、とても近いよ」
道を一つずれたところが陽夜の家なので、本当にもう目と鼻の先だ。
「近いんだったら尚更、家まで送らせてくれないかな」
「本当にすぐだからね、陽夜」
「だから大丈夫だよ」
「女の子を一人で返させるわけにはいかないよ」
「何かあった時のために家が分かると助かるんだけどな」
そこまで言われてしまってはと思い陽夜を見る。
私は良いけど、葵は?と言い出しそうなくらい、心配そうな顔で見てきていた。
「じゃあ、お願いする?」
「そうだね、後少しだけど」
そう言い陽夜は歩き出した。
黙って付いていく。
陽夜の家に着いたら私は誤魔化せば良い。
「ここが私の家」
辺りが暗くなっているが、大きさは伝わっているだろう。
「大きいね」
「村雨って、もしかして……」
四宮くんは大きさについて感想を言っているが、井上くんは何かブツブツと独り言を言っていた。
聞こうと思えば聞こえるが、そこまで気になることではないだろう。
「葵さんは?」
「ここで」
何も嘘は言っていない。ここで寝泊まりしているので、家と言われたらここだろう。
「家まで送っていくよ」
「ここで」
「でも……」
話の終わりが見えず、どうしようかと陽夜を見る。
『言っちゃえば?言いふらすような人たちではないと思うよ』
『バレたら……仕事が出来ないよ』
『言われたら言われたで良いんじゃないかな』
『分かった』
陽夜と軽く目で会話をし、一つ息をつく。
そして陽夜の横に並び軽くスカートの裾を持つ。
小さい頃からの習慣を見せるために息を吸い、ひと息で言う。
「陽夜お嬢様付きのメイドの四宮と申します。以後お見知りおきを」
「「…………」」
二人からの返事はない。ここまで言ってしまえば後はもう一緒だ。
「校則違反であることは承知しております。学校へ連絡されるならなさってください。否定は致しません」
先程から頭を下げているので、二人の表情か分からない。
二人が学校へ言うならばそれまでだと思う。私は学校を辞めるだけだ。
以前、旦那様が他の護衛も一人、学校にいると言っていたので私が抜けても何とかなるだろう。名前も知らない、もう一人の護衛さんがどうにかしてくれるに違いない。
「四宮さん、とりあえず顔をあげてよ。話しづらいから」
井上くんにそう言われ顔をあげる。
二人とも怯えておらず、怒ってもいなかった。表情から読み取れるのは困惑とその他少しの感情だけ。
「別に、俺らは言わないよ」
それが聞け、少しホッとする。
「誰でも言いたくないことの一つや二つはあると思うよ」
二人の優しさが身にしみる。
「ありがとうございます」
そう言いもう一度頭を下げる。決められたわけではなく、私がしたくてした。
久しぶりに自分がしたいと思ってしたかもしれない。
「葵?」
今まで黙っていた陽夜がハンカチを取り出し、声を発した。
「目」
「目?」
そう言われ目元を触ると、ひんやりとし指先が湿った。
「あれ、何で……」
止めようと思っても止まらなかった。
なぜ涙を流してしまっているのか、理由すら分からなかった。
完全に涙が止まるまで、少し時間がかかってしまった。
涙が流れるとは思わなかった。
しかし、改めて分かった。自分で思っている以上にここが、この仕事が好きで失いたくないんだと。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
今回は葵が陽夜のところで働いていることを言うという回でした。
また次回も読んでいただけると嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。




