水族館編 イルカショー
これしか水族館でのハプニングは思いつきませんでした。
不快になられた方がいたらすみません。
「お待たせ」
しばらくすると四宮くんが戻ってきた。
「四宮、助かった、ありがとう」
「大変だったよね、ありがとう」
お礼を言うと「大したことはないよ」と言い、一人一人に買ってきたものを配ってくれた。
渡されたものを見るとお弁当だった。水族館だからか、ペンギンの形をしたご飯の周りにおかずが置かれていた。
「可愛い」
思わず声を出しそうになったが、その前に陽夜が反応した。
「ペンギンの形で可愛いかなと思って」
確かに可愛いな、と思い相槌をうっていて気がついた。
「四宮くん、ごめんなさい。まだお金、払ってなかった。いくらだった?」
慌てて鞄からお財布を取り出す。
「良いよ、払わせて」
「ダメ、買って来てもらったから余分に払っても良いくらいだから」
じっと四宮くんの方を見つめる。値段を教えて、と伝われば良いなと思いながら。
『奢らせてくれないかな』
『お金のことはきちんとしたいので』
『男だし、カッコいいところ見せたいから』
『四宮くんはこれ以上カッコよくなるつもりなんだ!』
「葵さん!それは、無し」
顔を赤くした四宮くんがそう言う。
四宮くんと目で会話できたと思ったら、伝えるつもりのない本心まで伝わっていたみたいだ。
「お金のことはきちんとしたいの、教えてくれる?」
「葵さん、そのくらい払わせてよ」
私と陽夜はそう思わせてしまうほどお金が無いように見えるだろうか。
陽夜は社長令嬢でお嬢様、私は幼いころから働いている使用人と、他の人たちよりも自由に使えるお金は多いはずだ。
請求はしないが、陽夜の護衛中(陽夜と出掛けた時)にかかったお金は、旦那様が払ってくれる。
今まで一度も貰いはしていないが。
「四宮、じゃあ俺のを払ってよ」
「お前は自分で払ってくれ」
「まあ、払うけどさ......四宮さんは、いくらか知りたいんだよね?」
その通りなので頷く。
「村雨さんが知っていると思うよ」
「陽夜が?」
思いもしなかった返答に陽夜を見る。
「レシートが入ってたよ」
「陽夜、見せてくれる?」
「はい」
思っていたよりも安かった。こういうところのご飯はもっと値段の張るものだと勝手に思い、お財布に入れてきた。
「四宮くん、買ってきてくれてありがとう」
そう言いお金を渡す。
「確かにいただきました」
若干不服そうな顔をしているが、気にしなくても大丈夫だろう。
「四宮くん、私も!ありがとう」
「四宮、俺の分は奢ってくれたみたいだな。ありがとう」
「井上は自分で払ってくれ」
呆れたようにそう言っているが、どこか楽しそうだ。
クラスであまり意識して見たことは無いが、井上くんは場を盛り上げるのが得意なようだ。
クラスでは紳士的な態度をしているが、話が一度落ちついた時に、よく次の話題を提示しているのを見たことがある。
こんな日々が続けば、良いなと思いつつ箸を進める。
お弁当はとても美味しかった。味付けも濃すぎず、薄すぎず。
色々な人の口に合いそうなものだった。
食べ終わってからの時間があまりなく、ショーは食べ終わり五分もしないうちに始まった。
「皆さん、こんにちは。イルカショーの始まりです。今日、ショーに出てくれるのはルカちゃんとカイくんです。ご挨拶のジャンプから」
飼育員さんが合図をすると二匹のイルカは大きくジャンプをした。
席取りをしていたおかげで、前の方に座れたのでとても近く楽しい。
「じゃあ次は恒例の水かけです。参加してくれるお友達は挙手をお願いします」
いくつか芸を披露した後に飼育員さんはそう言った。
「井上、行ってくれば?」
「行かないから!」
即答し、指を指した。
「一回りくらい年齢が違う子達ばっかりじゃん」
言われて見てみれば、確かに五、六歳の子が多かった。
「面白いと思ったんだけどね」
「ウケ狙いかよ」
そう話している二人はひとまず放っておき、集まった子達を見ると私たちの目の前に並んでいた。
何人かはこちらを見て手を振ってくれている。主に陽夜にという気がするが。
「じゃあ行きます、カウントダウンをお願いしますね。三、二、一」
ルカちゃんと言われた子が始めにかけ、次にカイくんもがかける。
当然の結果だった。どうして予想を出来なかったのだろう。
私たち四人はびしょ濡れになっていた。
「冷たっ……」
「ここまでかかるとは」
今日が暑くて良かった。寒い日だったら風邪をひいていただろう。風邪……
「陽夜、大丈夫?」
慌てて鞄からタオルと上着を出す。念のために持ってきておいて良かった。
陽夜はよく体調を崩すので、風邪をひかなければ良いが。
「これで拭いて。拭き終わったら上着も着るんだよ」
「し、四宮さん……」
今のは四宮くんの声だ。最近は「葵さん」と呼んでくるのに珍しい。
「どうしたの?タオル?小さいのならあるよ」
「その……」
先程から四宮くんと目が合わない。
すると着ていた上着を差し出してきた。
「少し濡れているけど、良かったら着て」
「別に、そんなに寒くないよ?」
「だから、その……」
「四宮、早く言え。後ろ向いてやってるんだから」
言われてみれば、先程から井上くんは後ろを向いていた。
「服、透けてるから、着てください」
そう言われて自分の服を見ると、濡れて透けていた。
「み、見ないで」
慌てて鞄で隠すが上着は陽夜に貸した分しか持ってきていない。
「上着、着てくれる?」
「……洗って返すね」
せっかくなので借りておく。
少し大きいが、着れないほどではない。
「貸してくれてありがとう、後、教えてくれて……」
きちんとお礼を言いたいのに、段々と声が小さくなってしまう。
なぜこのくらいのことを予想出来なかったのだろう。
気がついたときにはショーは終わっていた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
蓄えがなくなってしまったので、次回は少し遅くなってしまうかもしれません。
また次回も読んでいただけたら光栄です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。




