シンデレラ?
今回は劇の内容が中心ですが、いつもの三倍近くの量があります。
劇の内容と言ってもシンデレラにアレンジが加えられただけなので飛ばしていただいても構いません。
最後の少しだけ読んでいただければ今後の展開に問題は全くありません。
ナレーションから劇は始まった。
『シンデレラ……むかしむかし、シンデレラと呼ばれていた娘がいました。実の母親が亡くなり、継母と姉さん二人がやって来たことから全ては始まりました。やってきた継母と姉さん二人はいじわるでシンデレラに強く当たっていました。継母は自分の娘よりも気高く、美しかったのが嫌だったのです。シンデレラはお洒落で怠け者な姉さんたちよりもずっと美しかったのでした。』
「シンデレラ、このホコリはなあに?指についてしまったじゃない」
「何も付いていないと思いますが」
「あら、見えないの?このホコリが……んん、まあ良いわ私たちお城の舞踏会に招待されているの。その衣装を用意しなさいな」
継母は棚の上を指すがそこにはチリ一つないピカピカの棚があるだけだった。
「もちろん私たちの分もよ」
「あなたは招待されてないけど」
ここで姉さん二人が出てくる。
「私には薄い紫色の上品なドレスを」
始めに継母が。
「私には黄色のリボンのたくさん付いたドレスを」
次に上の姉さんが。
「私には桃色の花のたくさん付いたドレスを用意しなさい」
最後に下の姉さんがドレスの注文をする。
「「「もちろん今晩までよ」」」
『普通は一晩でドレスを三着も用意出来ません。しかしこのシンデレラはとても用意が良かったのです』
「お母様、お姉様方。少々お待ちください」
そう言いシンデレラは舞台袖に戻りドレスを持ち再び舞台に戻る。
「用意致しました」
シンデレラの手には三人の言った通りのドレスが三着あった。
すると三人はヒソヒソと話し始めた。
「あなたたち、あらかじめシンデレラにどんなドレスが良いか言ってしまったのかい」
「私は言ってないわよ」
「私もよ」
「「「………………」」」
「あら、用意が良いわね」
「はい!こちらは生地にもこだわって作ったんです。お母様の白い肌が目立つように刺繍も丁寧に作ったんです。こっちのドレスはお姉様の綺麗な髪が目立つように髪飾りも用意しました。こちらはお姉様の細くて綺麗な手足が目立つように丈の長さ細かく調整をして」
「「「もういいわ」」」
「あら、よろしいのですか。もっとこだわった部分があるのに」
「そんなに頑張っても連れて行けないわよ」
「そう、ですよね……やっぱり」
明らかに落ち込んだシンデレラに三人は再びヒソヒソと話し始めた。
「お母様、どうしても連れて行けないのですか」
「私、こんなに褒められたの始めてで……実は良い子なのでは?せめて従者としてなら連れて行けませんか」
「私に任せな」
「「流石お母様」」
「シンデレラ、貴方のドレスは用意したの?」
「連れてってもらえるんですか!」
「ドレスは作ったのか聞いてるのよ」
「はい!」
「見せてみなさい」
そう言われシンデレラは再び舞台袖に戻りドレスを手に舞台上へ戻っていった。
「これです」
『シンデレラの手にはそれはそれは美しいドレスがありました。シンプルですが美しいシンデレラにピッタリのものが。婚約者を探す舞踏会へ連れて行ってはきっと選ばれてしまう、三人はそう思いました。それは三人にとって邪魔ものでしかありませんでした。』
「貸しなさい」
「はい、お母様」
そう言うと継母はドレスを破いてしまった。
「やめてください」
シンデレラが継母の手から取り返すとドレスはボロボロになってしまっていた。
「これは亡くなったお母様の形見なのです」
「それを早く言いなさい、そんなもの捨てておしまい」
『姉さん二人の手に渡って形見のドレスはよりボロボロにされ、投げ捨てられてしまいました。』
ここで舞台が暗転しシンデレラだけが残る。
「お母様の形見のドレスが……」
そう言い落ち込んでいるとそこに魔女が現れた。
「シンデレラ。何を落ち込んでいるの?」
「お母様の形見のドレスを破いてしまったのです」
「あらあらこのドレス……」
「どうしたのですか」
「本当にあなたが破いたの?私は真実が分かるのです」
「でもお母様やお姉様たちは悪くないのです」
「そう、その人たちが……あなたはこのドレスで今夜の舞踏会に出たかったね」
「はい」
「分かったわ、出させてあげる」
「本当ですか!」
「ええ、カボチャとネズミたちがいれば」
シンデレラがどこからかカボチャとネズミたちを連れてくると魔女は微笑んだ。
「魔法をかけておくから三人を見送ってきなさい。三人にはありがとうと感謝を告げるの。そうすれば私が綺麗なドレスを用意してあげる」
シンデレラは言われた通り感謝を告げ、見送った。
「あら、きちんと出来たじゃない」
「そのくらいは……」
「いつものあなたなら確かに出来る。でも今のあなたはきっと出来なかったと思うわ。でも約束通り連れてってあげる」
魔女がそう言うと舞台は暗転し魔女だけにライトが当たった。
魔女は手に持っていた杖をバトンのように回し、シンデレラのいた方へ杖を向けるとそこには美しいドレスを身に包んだシンデレラがいた。
今まで舞台の照明で映らなかったシンデレラの顔がはっきりと見えるようにになった。
「魔法は十二時には解けてしまうからそれまでにはここに戻ること。それと一つ、良いことを教えてあげる。あなたのお母様の形見のドレスは舞踏会の禁忌に触れているの。白は舞踏会で着てはいけないの。ちょうど良いから見て来なさい」
「ありがとうございます」
「あとは……靴をあげる」
そう言いガラスの靴をシンデレラに差し出す。
シンデレラはそれを履きくるりと一回りした。
「さあ、行ってらっしゃい。十二時には戻るのですよ」
「ありがとうございます、魔女さん」
そう言うと馬車に乗り行ってしまった。
『継母がドレスを破いたのは恐ろしくなったからという理由だけでなくシンデレラのことを思って破いたのでした。そう、継母や二人の姉さんたちは言葉が足らないだけで実は優しい面があったのです。』
『シンデレラがお城の大広間に入ると話し声は止み、バイオリンの音さえも消えました。』
「私と踊っていただけませんか」
「ぜひ」
『そう言うと二人は踊り出しました。誰一人、あのシンデレラだとは気づきません。気づかないどころかみんながシンデレラに見惚れていました。踊りも終盤に差し掛かったところで十二時を告げる鐘が聞こえてきました。』
「もう戻らなくては。途中で申し訳ありません、失礼します」
『突然の出来事に驚き誰も引き止めることが出来ませんでした。シンデレラが階段を下りている途中でやっと王子が追いかけました。』
「待ってくれないか。せめて名前でも」
王子がそう言うとシンデレラは振り返り、また走り出した。階段の途中に一足の靴を残して。
王子はシンデレラの残したガラスの靴を拾った。そしてそれを手に大広間へと戻った。
「皆、聞いてくれ。私はこの靴にピッタリの女性と結婚する。見つけたものには褒美も与える」
そう言い舞台袖へと戻っていった。
『数日後、シンデレラの家にも王子の従者は現れました。』
「舞踏会に参加された方はいらっしゃいますか」
「私たちですわ」
『もちろん三人ともガラスの靴は履けませんでした。』
「では別の場所へ向かいます。ご協力ありがとうございました」
「もう一度ガラスの靴を見せてくださる?」
『そう言い継母は王子の従者の差し出した靴を壊してしまいました。』
「なんてことを……」
「あの……ガラスの靴ってこれのことですか?」
そう言い奥からシンデレラが現れた。
「それです!なぜ貴方が……いや、それを履いてみてください」
『もちろんシンデレラが履くとピッタリ合い、従者の人は安心したような顔をしました。』
「お名前は」
「シンデレラと申します」
「シンデレラ嬢、私とともに来ていただけますか」
「ええ」
『シンデレラはお城に行き王子と幸せに暮らしました……とはなりませんでした。』
「それと……そこの人。貴方も城に来てもらいます。未来の王妃の靴を壊して放っておくことは出来ません」
「もちろんですわ」
継母はそれに答えました。
『そう、継母は始めからこうなることが分かっていて壊しました。何故壊したのかというと、それは舞踏会の次の日のことです。継母と姉さん二人はシンデレラに舞踏会であったことを話していました。』
「その娘はとても綺麗だったのよ。ちょうど……貴方くらいの背だったかしら」
「舞踏会に行けなかったのだからドレスくらいは着せてあげるわ」
「化粧もしてあげる」
『姉さん二人はシンデレラに褒められたことが嬉しく、以前のようにもう辛くは当たっていませんでした。ドレスを体に当て、化粧をすると二人は驚きました。そう、シンデレラがとても美しかったからです。』
「お母様!来てくださいな」
「なるべく早くです」
「そんな大声を出さないの。シンデレラ、棚にホコリが残っていましたよ」
「お母様、シンデレラが……」
「なぜか美しく目が離せないのです」
「二人ともシンデレラを離しなさい」
継母はそう言うとシンデレラの顔を覗き込んだ。
「あの娘みたいわね」
「お母様、その通りなのです。雰囲気もよく見ると似ているのです」
「でもシンデレラはあの舞踏会に参加してないのですよ、お姉様。それにあのドレスは人のものとは思えませんわ」
「シンデレラ、何を隠しているのですか。ガラスの靴を出しなさい」
継母がそう言うとシンデレラはポケットからガラスの靴を取り出した。
「やはりね」
「まさかあれがシンデレラ!」
「信じられない」
二人は震えていて怒っているように見えた。
「「なんで早く言わないのよ」」
「えっ?」
「お母様、シンデレラは」
「お黙り、シンデレラ。棚の上のホコリを掃除してきなさい」
「分かりました、お母様」
そう言うとシンデレラは舞台袖へ消えていった。
そして継母はぽつりと呟いた。
「ホコリ一つ取れないと自分が苦労するのに、あの子はそれが分からないなんて」
『そう、継母は王子の従者が他の場所に移動してしまうと知ってわざと壊したのです。探している娘はシンデレラだと分かって。シンデレラに辛く当たったのも実の母親が亡くなって怠けないよう、嫁に行っても困らないように辛く当たっていただけだったのです。そして今に戻ります。』
「お待ちください」
「母は私にもチャンスを与えようとしてくれただけです」
「しかし」
「お願いします。どうかお許しくださいませ」
「シンデレラ嬢、それは」
「いいじゃないの、見なかったことにすれば」
「あの時の魔女さん……」
「シンデレラ、おめでとう。あのドレスをあげる」
魔女がそう言うと舞台は再び暗転し、明かりがつくとシンデレラは美しいドレスに身を包んでいた。
『その場の誰もがシンデレラに見惚れていました。』
「シンデレラ、もう魔法は解けないわ。言葉通りそのドレスはもう貴方のものよ」
「ありがとうございます、魔女さん」
「従者さん。お許しください、母を」
「えっ、あっ、はい!もちろんです……あっ」
「ありがとうございます」
急にシンデレラに話しかけられ、反射的に「はい」と言ってしまった王子の従者だったが、もう諦めたように笑った。
「まあ良いか」
場面はお城に変わった。
「シンデレラ嬢、もう一度私と踊っていただけませんか」
「先日は申し訳ありません。是非お願いします」
踊り終えると王子はシンデレラに求婚をした。
「私と結婚してくれないか」
「もちろんです」
場面は再び変わり結婚式となった。
王子はシンデレラのベールをあげ、顔を近づけた。
そして王子役の四宮くんはキスの代わりにお客さんに聞こえない声で囁いた。
「葵さん、好きです」
もうどうやって劇が終わったか覚えていない。
劇の直後に四宮くんに「付きあって欲しいという意味だから。考えておいて」と言われてからは更に記憶がない。
再び意識がはっきりしたのは陽夜に話しかけられたからだ。
「葵、流石!すごい綺麗だった」
「ありがとう」
「どうしたの?顔が赤いけど」
「何でもないよ」
「ならいいけど」
そんなに赤くなっていただろうか。劇の一貫での言葉だと考えたいが、劇の直後にも言われてしまったからには本気なのかもしれない。
もしくは罰ゲームか。劇中に誰でもいいから告白する……きっとそうだ!と思ったが本気だったときに申し訳ない。
まあ九割の確率で嘘だと思う。あの四宮くんが私を好きになるなんてあり得ない。
確かにカッコ良くて頭が良くて運動神経も良い。嫌いなところはないが付き合うなど考えられない。
私は陽夜にさえ仕えられれば幸せだから。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
本日二つ目の投稿です。
今回は劇の内容が中心となりました。
これからも井上くんを含めた四人の関係を見守っていただけると幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。




