告白
移動教室などが多くある新築部分は一般公開はしていないため、体育館での発表の控え室となっている。
うちのクラスは第二理科室を使うことができる。
休憩後、第二理科室に行くとすでに劇に出る人たちはみんな集まっていて最終確認をしていた。
「四人ともやっと来た!」
「もう来ないかと思ったよ」
「葵さん、そろそろ用意しないと」
口々にそう言い、それぞれ小道具などを持って近づいてきた。
「もうそんな時間だね」
「陽夜ちゃんも用意があるから」
陽夜がのんびりとした口調で言うとつっこまれ更衣室へと連れてかれてしまった。
まだ時間はあるのでそこまで急がなくても本当は大丈夫なのだがみんな気持ちが高ぶってしまっているのだろう。
「葵さんもそろそろ着替えよう!」
時間ギリギリまで言われ続けるのも嫌なのでそろそろ着替えることにする。
衣装を持ち更衣室へ向かう。
正直、ドレスは動きにくいのでもう少し、楽な制服でいたかったのだがそうもいかないらしい。
ドレスを汚さないように気をつけて着る。今から破れたり汚れたりしては、予備がないのでどうしても慎重になってしまう。
着替え終わり更衣室を出るとやはり視線を集めてしまった。
それもそうか、普段目立たないような人物でも豪華なドレスを着ていては目立ってしまう。仕方がないのかもしれない。
第二理科室のドアを開けると全ての視線がこちらに向いた。誰も声を出さずこちらを見ていた。
最近、話すようになったとはいえ、陰キャがそんな服を着ても似合わないとでも思われているのだろう。
……このようなことが前にもあった気がする。デシャヴといった気がする。
似合わないと言ってくれた方が何も言われないよりも気が楽なのに。
少し重く感じる空気を取り除いたのは陽夜だった。
「葵!綺麗だね」
そう言い笑う裏の無い笑顔に何回救われたことか。きっと、そのことを言っても否定するだろうけど。
「陽夜。ありがとう、陽夜のその髪型も可愛いね」
「ありがとう!この髪型、可愛よね。みんながやってくれたんだけど器用だよねー」
素直に「ありがとう」だけでなく他人のことも同時に褒めることが出来るのは本当に凄いと思う。
「葵も髪を結ばないとだね!この前休んでて見れなかったから楽しみ」
陽夜がそう言う頃には重く感じた空気も無くなっていた。
髪型も変え、ティアラも付けるとちょうどドアが開いた。
王子の登場だ。
髪型も変え、衣装を身に包んだ四宮くんはとてもカッコ良かった。
現に見惚れてしまっていたファンクラブの人たちは我に返り、四宮くんのことを写真に収めていた。
するとノック音が聞こえた。
「そろそろ準備に入って下さい」
委員会の担当の人が呼びに来てくれたらしい。
「葵さん、エスコートさせていただけませんか」
そう言うと四宮くんは手を差し出してきた。
正直、断りたい。私は普通の高校生なのでイケメンへの免疫がない。
それに、ここで手を取るとファンクラブの人たちから何を言われることか……
しかしそれよりも断った時の視線の方が冷たいだろう。そもそも、せっかく提案してくれたのを断るという選択肢はない。
「お願いします」
そう言い手を取る。
廊下を歩くとみんな自然と道を開けてくれる。
やはり四宮くんは凄い。こんな私が隣にいるなんて申し訳なく思えてくる。
舞台袖に着くと緊張感が増してきた。
人前はそんなに得意ではないので緊張する。人前と言ってもコスプレはもちろん別だ。
「葵、主役、頑張ってね」
「ありがとう、でも私じゃなくて主役は急遽代わってくれた子だよ」
確かに舞踏会のシーンは私が出るが、それ以外は代役の子が出てることの方が多いので主役はそのこの方が相応しいと思う。
「良いの!葵、頑張ってくれてたんだから。ほらそろそろ始まるよ」
そう言うとどこかへ行ってしまった。
舞台が暗転しアナウンスが入る。
すると誰かに手を握られた。暗くて誰か分からない。
明るくなると手は離されていた。近くにそれらしい人もいない。陽夜かと思ったが違ったらしい。お陰で緊張が和らいだのでありがたいが、誰だったのだろう。
結果から言うと劇は無事、成功した。シンデレラといってもアレンジが多い。本当にシンデレラと言っても良いのか不安になるほどに。
無事に終わったのだからもう劇はいいのだろう。
しかしきっとあれは夢だったのだ。四宮くんが劇中に「好きだ」と言ってきたことは……
最後まで読んでいただきありがとうございます。
劇の内容も入れる予定でしたが長くなり過ぎてしまったので次回に回しました。
またしても次回に伸ばしてしまいすみません。
次回もまた読んでいただけると嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。




