第3話:ここはどこだろう?
ふと気がつくと見知らぬ草原に立っていた。
先程までの死への恐怖から足が震えて膝から崩れ落ちてしまう。
一先ず、生きていたことに安堵し、落ち着くために呼吸を整える。
ここはどこだろうか?
辺りを見回すと遥か遠くの木々が生い茂る森であろう辺りと草原との狭間で、かすかに人影が動いたように見えた。
とりあえずあの人に聞いてみよう。
知らない人に話しかけるのは緊張するけど、これは避けては通れない道だ。
がんばらねば。
僕はそう決心して一歩を踏み出した。
しばらく歩くと人影がはっきりと視認でき、木々を伐採しているであろう中年の男性がいた。
どうやら林業関係の人であるようだ。
しかし殆ど開拓されきっている現代日本において、平地の森などあり得るのだろうか?
僕は心に一抹の不安を覚えながら、意を決してその人に話しかけた。
「すみません。道に迷ってしまったのですが、ここはどこでしょうか?」
自分の口から流れるように出た言葉に驚きを隠せない。
なぜか緊張しないで普通に話しかけられたのだ。
『…なんて言ったんだ?』
中年男性からの返答は思いもしないものだった。
日本語ではないのだ。
しかし言われたことを理解できてしまっている自分がいる。
僕は一体どうしてしまったのかと不安になる。
この時点でここが日本ではないことは、確信に近いものを得ているが、まだ決定したわけではないと一縷の望みを懸けて、同じ言語で返した。
『道に迷ってしまったのですが、ここはどこでしょうか?』
『あぁ、ここはマリノ村の近くだよ。』
…村…だと…!?
『そうですか。ありがとうございました。』
できれば国を教えて欲しかったが、さらに追及するとさすがに不法入国者だと怪しまれると思ったので、そこで会話を打ち切った。
とりあえず聞いたマリノ村とやらに向かおうと足を進めようとした時、中年男性が伐採した木材を鞄に仕舞い始めた。
針葉樹のような丸太を一本丸ごとである。
そして丸太は大きさを無視したようにすっぽりと鞄に収まった。
なんとなく感付いてはいた。
何度か小説で読んだような異世界転移の可能性が脳裏にちらついてはいた。
だがあり得ないことだと考えないようにしていた。
あの女神と光の奔流の時点であり得なくはないことだと示しているようなものだが。
そして大学卒業後2年間で築き上げた働かなくても収入を得られるシステム、さらには家族、友人との関わりを奪われたことを悟り、僕はまたしても膝から崩れ落ちてしまった。




