第4話:声のする方へ
「おい、兄ちゃん。大丈夫か?」
僕を現実に引き戻してくれたのは心配そうに声を掛けてくれる中年男性だった。
「あぁ大丈夫です。ご心配おかけしました。」
僕はそう言って気力を振り絞りなんとか立ち上がる。
なにも考えられない。
ただ行く当てもないまま、ふらふらと足を進める。
「兄ちゃん、そっちは行っちゃいけねぇ!」
どうやら森に入ってしまったようで慌てたように中年男性が追いかけてくる。
すぐに追い付いてきた彼は、僕の腕を掴んだ。
「この森は危ねぇんだ!すぐに戻るぞ!」
その時だった。
『助けて!誰か助けて!』
なにかが僕の心に語りかけてくる。
「行かなきゃ…」
僕は引き寄せられるように声のする方に歩き出す。
「おい待てって、兄ちゃん!」
腕を掴んで引き戻そうとする中年男性を振り払いながら、ただ思考を放棄したように駆け出す。
『助けて!』
声の出所まで駆けつけると、そこには何もいなかった。
「おい兄ちゃん、どうしたんだよ!」
「助けを求める声が聞こえたんだ…」
僕はそう呟きながら、辺りを見回す。
目に入ったのは大きな蕾のある植物。
『助けて!動けないの!』
「この中なのか…?」
僕はそう思いながら、蕾を抉じ開けた。
するとそこには、全長20センチぐらいの羽が生えた小さな女の子がいた。
「驚いた…精霊様じゃねぇか…」
中年男性のそんな呟きを聞きながら、僕は女の子に手を伸ばすが、蕾の中に入っているべったりとした粘液に阻まれる。
その粘液は僕の手すら捕らえ離さない。
離せよ!
そう念じた瞬間、何故か粘性が消えた。
さらさらの液体になったのだ。
よく分からないが女の子を助け出す。
『ありがとう!助かったよ!お礼に加護を上げるね。あとさ、今だいぶ弱ってるから精気もらってもいい?だって凄く美味しそうな精気を感じるんだもん。』
僕は目の前を飛び回る精霊とやらの非現実さに思考が追い付かない。ただ深く考えず頷いた。
『わーい、ありがとう!』
小さな女の子の無邪気な歓喜の声が聞こえたと同時に僕の意識は闇に包まれていった。




