KillerWorld ―イース編―「君は覚えてなくていい」
古い商業施設に集まった六人。
朔。彼女。美咲。拓海。圭介。そして吉宗。
そこへ、青年すら知らされていなかったゴイの試作個体が現れる。
圭介へ振り下ろされた腕を。
朔が掴む。
その瞬間。
止まった。
腕も。
足も。
首も。
触れられた場所から、位置だけが固定されていく。
朔は人を助けた。
けれど。
振り返った先にあったのは。
感謝だけではなかった。
恐怖。
戸惑い。
気味の悪さ。
青年は、その空気を見て笑う。
「僕が作ってない」
最初からそこにあるなら。
必要なのは。
一滴だけ。 KillerWorld_イース編_第23章_第24章
青年は別々の顔で。
一人ずつ。
耳元へ違う言葉を置いていく。
彼女には。
「あなたにも使えるんだよね」
美咲には。
「彼女には使わないって、約束してる?」
圭介には。
「さっき、お前の方も止めようとしてなかった?」
拓海には。
「……自分じゃなくてよかったな」
答えは一つも渡さない。
ただ。
それぞれが最初から持っていた恐怖へ。
名前を付ける。
そして。
吉宗まで怖がっているように見せることで。
朔は仲間全員から一歩ずつ遠ざかっていく。 KillerWorld_イース編_第23章_第24章
さらに青年は。
知らない顔で朔の耳元へ囁く。
「やっと全員、お前と同じ顔になった」
そして。
「……助けたのにね」
人を救った結果。
朔は孤立する。
その様子を見ながら。
青年自身もまた。
使った顔の数を思い出せなくなり始めていた。 KillerWorld_イース編_第23章_第24章
商業施設の一件から数日。
仲間たちは朔のそばにいる。
けれど。
以前と同じ距離には戻らない。
朔はさらに記録へ頼る。
「俺が忘れてるだけなら、残ってる方が正しい」
青年が混ぜた嘘は僅か。
だからこそ。
大量の本物の中にある一滴は、強い。 KillerWorld_イース編_第25章_第26章
そして青年は。
朔の部屋で。
本当の理由を見る。
母親。
父親。
妹。
すでに死んだ家族を。
紙。
録音。
服。
新聞。
人形。
記録によって。
まだそこにいるように残していた。
なくしたものを、なくしたままにできない。
それが。
菅原朔だった。 KillerWorld_イース編_第25章_第26章
頭の奥の声は。
死者を返すため、世界中のものが泣いた昔話をする。
けれど。
一人だけ。
泣かなかった者がいた。
そして死者は戻らなかった。
青年は考える。
なら。
「誰か一人くらい」
「泣かない方がいいってこと?」 KillerWorld_イース編_第25章_第26章
やがて青年は。
朔の家へ火を放つ。
今回は。
自分の手で。
「残ってる限り」
「この人、自分で終われないから」
これは救いではない。
青年自身もそう言う。
ただ。
全部なくなった時に。
朔が何を選ぶのかを見るため。 KillerWorld_イース編_第25章_第26章
炎の前で。
朔は思い出す。
家族は。
もう死んでいた。
そして泣きながら言う。
「忘れたくない」
そんな朔へ。
青年は優しく答える。
「僕が覚えてる」
「君が忘れても」
「僕が覚えてる」
家を燃やしたのも青年。
残っていたものを奪ったのも青年。
そして。
失ったものを預かると言っているのも青年。
最後には。
朔は青年へ縋る。
「君は覚えてなくていい」
「僕がいる」
その炎を見ながら。
頭の奥の声が言う。
「君も泣かなかったね」
青年は。
答えなかった。
# 第二十四章 耳元
最初に。
悲鳴がした。
古い商業施設。
半分以上の店。
閉じている。
照明。
ところどころ。
切れている。
吹き抜け。
剥がれた案内板。
止まったエスカレーター。
シャッターの隙間。
埃。
かつて。
人で埋まっていたはずの通路。
今は。
靴音だけが。
長く。
響く。
そこへ。
六人。
別々の理由。
同じ時間。
入ってきた。
朔。
彼女。
美咲。
拓海。
圭介。
そして。
吉宗。
青年は。
その吉宗の顔で。
一番後ろを。
歩いていた。
(揃ったね)
「うん」
(本当に全員来た)
青年は。
前を歩く五人を見る。
「本人たちが来たんだよ」
(君が理由置いたからでしょ)
「理由だけ」
施設の奥。
暗い。
その暗がり。
青年の目が。
少し。
細くなる。
何か。
いる。
金属。
引きずるような。
低い音。
一度。
響く。
青年の眉。
寄る。
聞いていた。
予定。
ない。
「……何」
次。
ガラス。
割れる。
ドンッ!
閉じていたシャッター。
内側から。
歪む。
金属。
大きく。
軋む。
そのまま。
何かが。
突き破る。
「何!?」
美咲が。
振り返る。
人。
見える。
でも。
大きすぎる。
腕。
長い。
皮膚。
一部。
腫れたように。
崩れる。
呼吸。
胸郭だけが。
異様に。
膨らむ。
青年の目。
細く。
「……聞いてない」
(ゴイ?)
「多分」
実験体。
近くにいた男。
片手。
掴む。
そのまま。
壁。
投げる。
鈍い。
音。
「走れ!」
青年は。
吉宗として。
叫ぶ。
美咲。
彼女の手。
掴む。
圭介。
拓海の背。
押す。
朔も。
走る。
でも。
実験体。
六人。
見る。
踏み込む。
速い。
長い腕。
圭介へ。
振り下ろす。
「――!」
朔の身体が。
先に。
動く。
腕。
掴む。
その瞬間。
止まる。
「……え?」
圭介。
声。
実験体が。
腕。
引く。
動かない。
筋肉。
膨らむ。
足。
床。
削れる。
それでも。
朔が触れた腕。
一ミリ。
動かない。
実験体。
吠える。
空いた腕。
朔へ。
振る。
朔。
そちらにも。
触る。
止まる。
次。
足。
もう片方。
首。
顎。
触れられた場所から。
一つずつ。
固定。
生きている。
呼吸。
している。
筋肉も。
動く。
なのに。
位置だけ。
変わらない。
人の形をした何か。
その場へ。
縫いつけられていた。
青年は。
見ていた。
「……へえ」
(面白い?)
青年の口元。
僅かに。
上がる。
「すごく」
朔が。
振り返る。
その瞬間。
青年は。
能力ではなく。
周囲。
見る。
彼女。
一歩。
下がる。
美咲。
その前。
出る。
圭介。
自分を助けた朔。
見たまま。
動かない。
拓海。
顔。
血の気。
ない。
青年も。
吉宗。
息。
詰める。
肩。
硬くする。
目。
一瞬。
朔から。
逸らす。
驚く。
怖がる。
少し。
距離。
取る。
そういう顔。
作る。
(君まで怖がるの?)
青年は。
朔を見たまま。
「ここで喜んだら変でしょ」
朔が。
皆を見る。
「……何だよ」
誰も。
答えない。
「助けたんだけど」
彼女の唇。
僅かに。
震える。
青年は。
見逃さない。
恐怖。
戸惑い。
感謝。
安心。
気味の悪さ。
全部。
もう。
最初から。
そこにある。
青年は。
まだ。
何も。
入れていない。
「いいね」
(何が?)
青年は。
朔を見る。
「僕が作ってない」
一拍。
「ここからなら」
少し。
笑う。
「一滴で済む」
* * *
「おい!」
後ろ。
声。
知らない男。
本当に。
知らない。
「お前、危ないだろ!」
朔。
振り返る。
「は?」
「周り見えてんのか!?」
「何言ってんだよ」
「何って……!」
男。
固定された実験体。
指す。
「それ何なんだよ!」
別。
誰か。
「まだ生きてんの?」
「警察呼べ!」
人。
集まる。
スマートフォン。
出す。
距離。
取る。
「撮るな!」
別。
「証拠いるだろ!」
青年は。
吉宗。
位置。
黙って。
見る。
(この人たちも君?)
「違う」
(じゃあ何もしてない)
青年の目。
人の流れ。
なぞる。
「まだね」
朔。
声。
「俺じゃない!」
「分かってる!」
最初の男。
一歩。
下がる。
「分かってるけど……」
朔を見る。
「みんな怖がってるだろ!」
空気。
変わる。
一人。
下がる。
次。
下がる。
一人。
怖い顔。
する。
隣。
怖がっていい。
思う。
誰も。
命令。
していない。
それでも。
流れ。
できる。
青年は。
待つ。
流れ。
完成。
するまで。
朔の声。
大きく。
「助けたんだよ!」
男の肩。
びく。
「ほら!」
「何が!」
「そうやって怒るから余計怖いんだろ!」
ざわめき。
広がる。
彼女。
また。
一歩。
下がる。
青年の目。
動く。
「今」
(何?)
青年は。
少し。
息を吐く。
「入る」
* * *
人混み。
死角。
青年は。
一度。
入る。
吉宗。
顔。
解く。
頬。
喉。
戻る。
次。
女。
三十前後。
地味。
服。
覚えにくい。
髪。
人混みに。
溶ける。
ためだけの。
顔。
彼女。
朔。
間。
横切る。
肩。
僅かに。
触れる。
その近さ。
耳元。
「あれ」
彼女。
僅かに。
顔。
向く。
「あなたにも」
一拍。
「使えるんだよね」
それだけ。
彼女の身体。
固まる。
振り返る。
もう。
青年。
人。
波。
中。
(怖がらせた)
「もう怖がってたよ」
(増やした)
青年は。
歩きながら。
「一滴だけ」
次。
美咲。
若い男。
スマートフォン。
見ながら。
横。
通る。
「彼女には使わないって」
一拍。
「約束してる?」
美咲。
止まる。
「……え?」
青年は。
止まらない。
次。
圭介。
背後。
「さっき」
一拍。
「お前の方も止めようとしてなかった?」
「は?」
圭介が。
振り返る頃。
青年は。
もう。
違う歩き方。
次。
拓海。
肩。
軽く。
当てる。
「……自分じゃなくてよかったな」
「何だよ!」
青年は。
振り返らない。
全員へ。
違う。
言葉。
同じ答え。
一度も。
渡さない。
彼女には。
――自分にも使われるかもしれない。
美咲には。
――彼女だけ特別なのか。
圭介には。
――自分も止められかけたのでは。
拓海には。
――助かったのが自分でよかったのか。
結論。
渡さない。
考える向き。
それだけ。
元から。
持っている恐怖。
そこへ。
名前。
一つ。
置く。
* * *
死角。
戻る。
吉宗。
顔。
呼吸。
少し。
浅く。
朔を見る。
視線。
逸らす。
唇。
僅か。
強張らせる。
指先。
震わせる。
怖い。
本当に。
怖い。
そう。
見える。
朔が。
吉宗を見る。
青年は。
視線に。
気づいたうえで。
さらに。
一歩。
下がる。
(吉宗まで怖がってる)
「それが大事」
(本人、君なのに)
青年は。
小さく。
「だから使えるんでしょ」
また。
人の影。
今度。
知らない男。
吉宗ではない。
でも。
指。
トン。
トン。
二回。
朔の近く。
通る。
囁く。
「……ほら」
朔の目。
動く。
青年は。
続ける。
「やっと全員」
一拍.
「お前と同じ顔になった」
朔。
振り返る。
知らない。
顔。
でも。
指。
トン。
トン。
朔の表情。
変わる。
「お前……!」
青年は。
笑う。
「よかったじゃん」
「待て!」
人混み。
入る。
消える。
* * *
数秒後。
もう。
別人。
帽子。
少し丸めた背。
通りすがり。
誰の記憶にも。
残らない。
顔。
朔。
一人。
周囲。
全部。
視線。
受ける。
「……何だよ」
誰も。
近づかない。
「助けただろ」
青年。
横。
通る。
肩。
触れる。
耳元。
一言。
「……助けたのにね」
朔。
振り向く。
もう。
いない。
(ひどい)
青年は。
歩く。
「うん」
(楽しい?)
青年は。
少し。
考える。
以前なら。
もっと。
早かった。
面白い。
綺麗。
楽しい。
でも。
朔。
顔。
見る。
一瞬。
言葉。
遅れる。
「……面白いよ」
(それだけ?)
青年は。
少し。
眉。
寄る。
「それだけじゃない」
(何?)
「分かんない」
青年は。
自分の頬。
触る。
その瞬間。
一瞬。
分からなくなる。
今。
どの顔。
女。
若い男。
吉宗。
知らない男。
通行人。
頬。
触れた。
感覚。
直前まで。
使った表情。
重なる。
「……」
(どうしたの)
青年は。
目。
閉じる。
一秒。
二秒。
呼吸。
整える。
頬。
顎。
鼻。
指。
今の形。
確かめる。
「平気」
(本当?)
「今の顔」
一拍.
「分かったから」
(何の顔?)
青年は。
答えない。
* * *
「もういいだろ!」
群衆。
誰か。
叫ぶ。
「みんな帰ろうぜ!」
別。
続く。
少しずつ。
人。
散る。
青年は。
見る。
これも。
自分。
言っていない。
一人。
帰る。
次。
帰る。
一人が。
立ち去れば。
残らなくていい。
選択肢。
見える。
「便利だね」
(またそれ?)
青年は。
少し。
笑う。
「本物の人間」
一拍.
「最初の一人だけ動けば」
もう一拍.
「後は勝手に続く」
その時。
視線。
感じる。
遠く。
車。
横。
青年は。
見る前から。
分かる。
「……いる」
ゴイ。
普通の服。
街灯。
下。
最初から。
ずっと。
いたように。
立つ。
(毎回だね)
青年は。
少し。
嫌そうに。
「本当に毎回いるな」
* * *
「試作個体」
青年が。
先に。
言う。
ゴイ。
答えない。
「聞いてない」
「必要なかった」
「六人いる場所に出した」
「反応を見るためだ」
青年は。
ゴイを見る。
「誰の?」
「全員」
青年の笑み。
少し。
薄く。
「僕も?」
「お前もだ」
即答。
青年は。
一瞬。
黙る。
(言ったね)
頭の奥。
「うん」
ゴイ。
青年。
「結果は」
「何が?」
「誘導」
青年は。
肩を。
竦める。
「うまくいったよ」
「具体的に」
「最初は」
一拍.
「本物の群衆が勝手に怖がった」
青年の指。
一本。
「その後で」
二本。
「僕が少し足した」
「何を」
「質問」
「誰に」
「全員」
青年は。
指を。
折る。
「彼女には、自分にも使われるかもしれない」
一つ。
「美咲には、彼女だけ例外なのか」
二つ。
「圭介には、自分も止められかけたんじゃないか」
三つ。
「拓海には、自分じゃなくてよかったな」
四つ。
ゴイ。
「吉宗は」
青年は。
少し。
笑う。
「やっと全員、お前と同じ顔になった」
「吉宗はお前だ」
「役としてはね」
「意味がない」
青年は。
ゴイを見る。
「あるよ」
「説明しろ」
青年は。
朔。
いる方。
見る。
「吉宗が怖がってるように見えたら」
一拍.
「他の人も、自分の怖さを正しいと思える」
ゴイ。
黙る。
青年は。
少し。
楽しそうに。
「同じ結論は一度も言ってない」
一拍.
「それぞれ違う場所から押しただけ」
「結果は」
「全員、朔から一歩引いた」
「十分だ」
青年。
ゴイを見る。
「十分?」
「観察に必要な反応は取れた」
青年は。
少し。
眉。
寄る。
「……またそれ」
「何だ」
「終わり決めるの早くない?」
「まだ終わっていない」
「ならいいけど」
ゴイの視線。
青年の右手。
「手」
「何?」
「出せ」
青年は。
すぐ。
「嫌」
「出せ」
一秒。
青年は。
笑う。
それから。
右手。
出す。
指。
震え。
なし。
ゴイ。
手首。
掴む。
青年の笑み。
僅かに。
止まる。
「感覚は」
「ある」
「遅延」
「少し」
「顔」
青年の目。
僅かに。
動く。
「何」
「さっき」
一拍.
「戻りが遅れた」
青年の目。
ゴイ。
「見てた?」
「見ていた」
迷い。
なし。
青年は。
笑う。
「細かいね」
「継続可能だ」
青年の眉。
僅か。
「心配してる?」
「観察だ」
青年は。
小さく。
「だよね」
手。
引く。
ゴイ。
離す。
「処置を受けろ」
「後で」
「今だ」
「まだやることある」
「何だ」
青年は。
遠く。
見る。
人。
減った。
朔。
仲間。
距離。
さっきまで。
なかった。
そして。
朔。
メモ帳。
握る。
青年は。
少し。
笑う。
「まだ」
一拍.
「書いてない」
* * *
その夜。
朔は。
きっと。
書く。
何時。
どこ。
誰。
何が。
出た。
圭介。
彼女。
美咲。
拓海。
吉宗。
知らない男。
知らない女。
知らない声。
何が。
起きた。
何を。
言われた。
全部。
青年は。
見ていない。
でも。
分かる。
朔は。
残す。
だから。
青年は。
暗い道。
一人。
歩く。
今。
誰の顔でもない。
少なくとも。
本人は。
そう。
思っている。
(今日、何人だった?)
「何が?」
(君)
青年は。
少し。
考える。
「女。若い男。吉宗。知らない男。通行人……」
一度。
止まる。
「……あれ」
(もっといたよ)
青年の眉。
僅か。
寄る。
「そうだっけ」
(いた)
青年の足。
止まる。
数秒。
また。
歩く。
「数えてないだけ」
(忘れた?)
青年は。
すぐ。
「違う」
返事。
少し。
早い。
ポケット。
右手。
握る。
感覚。
ある。
少し。
遅い。
それだけ。
まだ。
それだけ。
前。
街灯。
人影。
青年は。
今度こそ。
本気で。
ため息。
「……また?」
ゴイ。
そこに。
立っていた。
# 第二十五章 泣かなかったもの
商業施設の一件から。
朔の周りにあった距離は。
元には。
戻らなかった。
誰かが。
露骨に。
避けるわけではない。
学校。
来れば。
挨拶。
拓海。
いつものように。
話す。
美咲。
必要なら。
答える。
圭介も。
彼女も。
いる。
でも。
以前なら。
無意識に。
詰められていた距離。
少し。
遠い。
青年には。
それで。
十分。
吉宗の顔で。
朔の隣。
歩く。
何度も。
確認。
朔。
メモ帳。
開く。
誰かの視線。
一瞬。
落ちる。
朔。
「昨日こう言っただろ」
相手。
答えるまで。
僅かな。
間。
その間。
朔は。
また。
記録。
そして。
記録が。
増えるほど。
会話。
難しくなる。
「昨日はそう言ってなかった」
「言ったよ」
「いや」
朔。
ノート。
開く。
「書いてある」
「……朔」
「ほら」
青年は。
吉宗。
横。
見る。
何十行。
ほとんど。
本物。
朔自身。
見た。
聞いた。
書いた。
その中。
青年。
混ぜた。
僅か。
だから。
強い。
(まだ一行だけ?)
「最初のはね」
(足さないの?)
青年は。
心の中。
「そんなに足したら偽物になるじゃん」
吉宗の眉。
少し。
曇らせる。
「朔」
一拍.
「それ、全部合ってるって言い切れる?」
朔の目。
上がる。
「俺が書いた」
「そうだけど」
「じゃあ合ってるだろ」
青年は。
黙る。
反論。
しない。
朔自身。
言わせる。
ため。
朔。
ノート。
見る。
「俺が忘れてるだけなら」
一拍.
「残ってる方が正しい」
来た。
青年は。
表情。
変えない。
「そうかもな」
それだけ。
朔。
また。
ノート。
見る。
青年は。
その横顔。
見る。
自分で作った檻へ。
自分で。
鍵。
掛ける。
顔。
* * *
数日後。
彼女が。
朔から。
離れた。
青年は。
その場には。
いない。
正確には。
吉宗として。
そこに。
いない。
少し。
離れた。
場所。
二人だけで。
話させる。
彼女。
泣いている。
朔。
何か。
言う。
声。
届かない。
途中。
彼女。
自分の胸。
指す。
次。
朔。
最後。
メモ帳。
朔の手。
そこへ。
伸びる。
その瞬間。
彼女の顔。
崩れる。
青年は。
視線。
逸らす。
(見ないの?)
「見えてるよ」
(泣いてる)
「うん」
(君がやった?)
青年は。
少し。
間。
「違うよ」
もう少し。
「僕が作ったのは」
一拍.
「途中まで」
彼女。
立ち去る。
朔。
追わない。
違う。
追えない。
手。
まだ。
ノート。
青年は。
それを見る。
なぜか。
少し。
笑えない。
(変なの)
「何が?」
(いつもなら嬉しそうなのに)
青年の眉。
僅か。
「失礼だね」
(違う?)
青年は。
答えない。
代わり。
吉宗。
顔。
作る。
次。
自分が。
入る。
「朔」
* * *
部屋。
前より。
酷い。
紙。
壁。
机。
棚。
扉。
短い文字。
貼られる。
誰。
何を。
言った。
何時。
帰った。
誰と。
会った。
どこ。
行った。
彼女。
圭介。
拓海。
美咲。
吉宗。
青年は。
吉宗の顔。
それを。
見る。
奥。
別の紙。
目。
止まる。
『母さん 味噌汁は少し濃くする』
隣。
『父さん 新聞を読む時は左足を組む』
さらに。
『妹 眠い時は右目を擦る』
青年の笑み。
消える。
(……これ)
青年は。
小さく。
「うん」
部屋の隅。
人形。
椅子。
服。
新聞。
生活の跡。
でも。
人。
いない。
その時。
ザザッ。
ノイズ。
『――朔、ご飯できてるわよ』
録音。
朔。
振り返る。
「今行く」
普通に。
答える。
青年は。
動かない。
「吉宗?」
「ああ」
「何」
青年は。
少し。
間。
「……いや」
朔。
気づかない。
青年は。
知っていた。
資料。
過去。
火災。
家族。
死亡。
生存者。
一名。
菅原朔。
知識。
あった。
でも。
資料には。
この部屋。
ない。
「これ……」
青年は。
壁。
見る。
「お前が?」
「何が」
「紙」
「俺が書いたけど」
「全部?」
「そうだけど」
朔。
不思議。
顔。
何を。
聞いている。
そんな。
青年は。
それ以上。
聞かない。
(死んだ人を残してる)
「……うん」
(上手だね)
青年の眉。
僅か。
動く。
「何が?」
(いない人を)
一拍.
(いるみたいにするの)
青年は。
返せない。
その言葉。
自分へ。
向いている。
気がした。
* * *
帰り道。
夜風。
冷たい。
吉宗の顔。
解く。
でも。
口元だけ。
しばらく。
吉宗。
形。
残る。
青年は。
指。
触れる。
口角。
戻す。
「……最近しつこいな」
(顔?)
「うん」
(どれが?)
「今の」
(今のって?)
青年の足。
一瞬。
止まる。
「……僕の」
(どれ?)
青年の顔。
僅か。
歪む。
「うるさいな」
歩く。
少し。
頭の奥。
また。
声。
(昔ね)
「何」
(死んだ人を返してもらおうとした連中がいた)
青年は。
歩きながら。
眉。
上げる。
「急だね」
(死んだままにしておきたくなかったんだ)
「そりゃそうじゃない?」
(だから頼んだ)
「誰に?」
(死んだ者を預かっているところに)
青年は。
鼻で。
「雑だなあ」
(条件があった)
青年は。
黙る。
(世界中のものが)
一拍.
(その人の死を悲しんで泣くなら返してやるって)
「世界中?」
(人も)
(木も)
(石も)
(鉄も)
(病気も)
(毒も)
青年の眉。
寄る。
「毒まで?」
(みんな泣いた)
青年は。
少し。
笑う。
「人気者だったんだ」
(そうだね)
「じゃあ戻った?」
声。
すぐ。
答えない。
(戻らなかった)
青年の足。
少し。
遅くなる。
「なんで」
(一人だけ泣かなかった)
「一人?」
(女だった)
「嫌われてた?」
(さあ)
「何て言ったの」
少し。
間。
(生きていた時にも何も貰ってない)
一拍.
(だから死んだままでいい)
青年は。
歩く。
やめる。
街灯。
下。
誰も。
いない。
「……ひどいね」
(そう?)
「一人のせいで戻れなかったんでしょ?」
(そういう話)
青年は。
少し。
眉。
寄る。
「じゃあひどいよ」
声。
静か。
(でも)
「何」
(本当にひどかったのは)
一拍.
(泣かなかった方かな)
青年の目。
細く。
(死んだものを)
一拍.
(死んだままにしただけかもしれない)
青年は。
黙る。
(みんなで泣けば戻るなんて)
一拍.
(最初からおかしいと思わない?)
青年は。
さっきの部屋。
思い出す。
母親。
声。
父親。
新聞。
妹。
椅子。
紙。
文字。
録音。
人形。
全部。
そこに。
いる。
そう。
言う。
一つ残らず。
泣いている。
みたいに。
青年は。
小さく。
「じゃあ」
一拍.
「誰か一人くらい」
夜道。
見る。
「泣かない方がいいってこと?」
(僕は何も言ってないよ)
青年は。
少し。
笑う。
「ずるいね」
(君ほどじゃない)
青年は。
笑う。
でも。
短い。
* * *
数日後。
吉宗。
朔の前。
座る。
部屋。
紙。
さらに。
増える。
青年は。
一枚ずつ。
見る。
昨日。
意味。
違う。
その前。
また。
違う。
同じ出来事。
後から。
書かれた行。
別の意味。
朔自身。
どこから。
記憶。
どこから。
記録。
どこから。
誰かの言葉。
区別。
難しい。
「朔」
「何」
青年は。
吉宗として。
一度。
視線。
落とす。
苦しそうに。
言いたくない。
でも。
言うしかない。
そういう。
顔。
「俺」
一拍.
「一回離れる」
朔の目。
上がる。
「……お前も?」
青年が。
想像したより。
弱い。
声。
胸の奥。
僅か。
引っかかる。
でも。
続ける。
「今のお前と話してると」
一拍.
「何言っても次の日には違う意味になってる」
「俺が忘れてるって言いたいの?」
「そうじゃない」
「じゃあ何」
青年は。
少し。
黙る。
「俺まで」
一拍.
「自分が何言ったか分かんなくなるんだよ」
嘘。
でも。
全部。
嘘ではない。
最近。
青年自身も。
何人。
顔。
使った。
一瞬。
分からない。
こと。
ある。
「……ごめん」
立つ。
扉。
向かう。
開ける。
出る。
閉じる前。
朔。
見る。
一人。
紙。
録音。
誰も。
いない家。
ガチャン。
扉。
閉まる。
青年は。
廊下。
数秒。
動かない。
(離れたね)
「うん」
(本当に?)
「役では」
(次は?)
青年は。
家。
見る。
「最後に一回」
* * *
夜。
誰も。
いない時間。
青年は。
別の顔。
家。
入る。
朔。
いない。
録音。
止まる。
静か。
昼より。
ずっと。
死んで見える。
人形。
母親。
服。
父親。
新聞。
妹。
椅子。
そして。
壁。
天井。
文字。
青年は。
ゆっくり。
歩く。
『母さん 味噌汁は少し濃くする』
『父さん 新聞を読む時は左足を組む』
『妹 眠い時は右目を擦る』
その下。
紙。
『忘れていることを忘れるな』
青年の手。
止まる。
剥がす。
読む。
長い。
沈黙。
(泣いてる)
青年は。
目だけ。
動かす。
「誰が?」
(全部)
青年は。
部屋。
見る。
紙。
録音。
服。
新聞。
椅子。
人形。
(みんな)
一拍.
(まだいるって言ってる)
青年は。
黙る。
(どうする?)
青年の指。
紙の端。
摘む。
昔話。
世界中。
泣いた。
木。
石。
鉄。
毒。
病。
でも。
一人。
泣かない。
青年は。
小さく。
「そうだね」
(何が?)
火。
つける。
小さな。
炎。
紙。
端。
赤。
「一人くらい」
ぱち。
「泣かなくていい」
火。
文字。
食べる。
『忘れていることを――』
黒。
縮む。
青年は。
床。
落とす。
火。
そこから。
ゆっくり。
広がる。
(君がやるんだ)
「うん」
(直接?)
青年は。
炎。
見る。
「今回はね」
(珍しい)
青年は。
少し。
息。
「残ってる限り」
一拍.
「この人、自分で終われないから」
(終わらせてあげる?)
青年は。
その言い方。
少し。
笑う。
「そんな綺麗な話じゃないよ」
炎。
大きく。
「何を選ぶか」
一拍.
「見るだけ」
(家がなくなったら?)
「思い出すかもしれない」
(思い出さないかもしれない)
「うん」
(どっちでもいい?)
青年は。
答えない。
玄関。
向かう。
途中。
窓。
自分。
映る。
「……」
一瞬。
知らない。
誰。
そう。
思う。
すぐ。
今。
使っている顔。
分かる。
青年は。
頬。
手。
「まだ」
(何?)
「大丈夫」
外。
出る。
後ろ。
火。
大きくなる。
* * *
朔が。
帰った頃。
空。
赤。
消防車。
サイレン。
人。
煙。
青年は。
少し。
離れた場所。
全部。
見る。
朔。
走る。
止められる。
「家族がいる!」
青年の目。
細く。
朔。
本気。
「母さん!!」
声。
崩れる。
音。
重なる。
朔の身体。
止まる。
青年は。
その瞬間。
見る。
戻った。
顔。
子供。
みたいに。
「……あ」
(思い出した)
「うん」
青年は。
炎。
見る。
資料。
知識。
あの日。
火。
父。
母。
妹。
朔。
一人。
そして。
朔の口。
動く。
「……死んでた」
青年は。
目。
閉じる。
一秒。
開く。
別の顔。
朔が。
知っている男。
頼れる。
安心。
今。
ここに来ても。
不自然。
ない。
青年は。
走る。
「朔!」
人。
押し退ける。
肩。
掴む。
「朔! 大丈夫か!」
朔。
顔。
上げる。
涙。
煙。
炎。
「……死んでた」
青年は。
何も。
知らない顔。
「何が?」
「母さん……父さんも……妹も……」
朔の手。
青年の服。
掴む。
「俺、知ってた」
青年は。
黙る。
「知ってたんだよ」
聞く。
「なのに……忘れて……」
朔。
泣く。
「忘れたくない」
その一言。
青年の目。
ほんの一瞬。
細くなる。
さっき。
燃やした。
紙。
『忘れていることを忘れるな』
頭の奥。
昔話。
世界中。
泣いた。
一人。
泣かない。
「忘れたくない……」
朔。
もう一度。
青年は。
優しい。
声。
作る。
「朔」
手。
頭。
「今は考えなくていい」
「駄目だ」
「大丈夫」
「また忘れる」
「大丈夫だよ」
青年は。
炎。
見る。
「全部」
一拍.
「一度に思い出さなくていい」
「でも……」
青年は。
朔を見る。
「僕が覚えてる」
朔。
止まる。
「……え?」
「君が忘れても」
青年は。
ゆっくり。
「僕が覚えてる」
その言葉。
自分で。
言う。
吐き気。
するほど。
綺麗。
思う。
家。
燃やした。
自分。
朔から。
残っていたもの。
奪った。
自分。
今。
失ったもの。
預かる。
言う。
自分。
(ひどいね)
青年は。
小さく。
「知ってる」
朔の中。
母親の顔。
霞む。
「……待って」
父。
声。
「待って」
妹。
名前。
「……何だっけ」
呼吸。
速い。
「違う」
朔。
青年の服。
掴む。
「今、思い出した」
一拍.
「思い出したんだよ」
「うん」
「なのに……」
青年は。
朔の手。
取る。
「大丈夫」
「……」
「僕が知ってる」
朔。
青年を見る。
「……本当に?」
青年は。
笑う。
「うん」
指。
朔の手の甲。
トン。
トン。
「だから」
炎。
向こう。
家。
崩れる。
「君は」
一拍.
「覚えてなくていい」
朔の力。
少しずつ。
抜ける。
最後。
青年へ。
縋る。
「……俺、何を……」
青年は。
支える。
「大丈夫」
声。
最後まで。
優しい。
「僕がいる」
頭の奥。
声。
しばらく。
何も。
言わない。
やがて。
(ねえ)
「何」
青年は。
燃える家。
見る。
(結局)
一拍.
(君も泣かなかったね)
青年は。
答えなかった。
第二十四章「耳元」/第二十五章「泣かなかったもの」でした。
今回の二章では。
青年が菅原朔を壊していくというより。
もともと朔の中にあったものを、外へ出していく
形になっています。
第二十四章で大きいのは。
青年が最初の恐怖を作っていないことです。
朔は人を助けた。
圭介を救った。
能力を使った結果。
周囲が勝手に怖がった。
彼女も。
美咲も。
拓海も。
圭介も。
感謝と恐怖を。
最初から同時に持っている。
だから青年は。
「僕が作ってない」
と言います。
そして。
ゼロから作る必要がないからこそ。
「一滴で済む」
となる。 KillerWorld_イース編_第23章_第24章
ここで青年が一人ずつへ渡す言葉も。
全部違います。
同じ結論へ誘導するのではなく。
それぞれの中にある恐怖へ。
その人専用の名前を付ける。
彼女なら。
自分にも使われるかもしれない。
美咲なら。
彼女だけは本当に特別なのか。
圭介なら。
自分も標的だったのではないか。
拓海なら。
助かったことへの罪悪感。
青年が触る場所は違う。
でも。
全員が結果として朔から距離を取る。
これは今までの青年のやり方が。
かなり完成された形になっている場面です。 KillerWorld_イース編_第23章_第24章
そして。
その中で吉宗まで「怖がる側」に置く。
青年本人が吉宗なのに。
吉宗が怖がっているように見えれば。
他の人たちは。
「自分も怖がっていいんだ」
と思える。
青年は人間そのものだけでなく。
空気まで材料として使っています。
ただ。
今回そこへ。
もう一つ変化があります。
頭の奥の声に、
「楽しい?」
と聞かれた時。
以前なら即答できた。
面白い。
綺麗。
楽しい。
でも今回は。
一瞬。
答えが遅れる。
そして。
「それだけじゃない」
と言う。
何なのかは。
本人にもまだ分からない。
このあたりから。
青年の観察と。
青年自身の感情が。
少しずつ混ざり始めています。 KillerWorld_イース編_第23章_第24章
同時に。
身体もかなり危なくなっています。
使った顔の数を。
思い出せない。
一瞬。
今どの顔だったのか分からない。
右手の感覚も遅れる。
それでも青年は。
まだ。
「それだけ」
として扱おうとします。
壊れていることを認めれば。
ゴイとの関係でも。
自分の生存でも。
不利になるからです。
そして第二十五章。
ここで初めて。
朔の「記録」の本当の根が見えます。
記録好きだから書いているのではない。
整理したいからでもない。
朔は。
なくしたものを残すために書いていた。
母親の味噌汁。
父親が新聞を読む姿。
妹が眠い時に右目を擦る癖。
どうでもいいような細部まで。
全部。
残しておけば。
完全にはいなくならない。
そういう形です。 KillerWorld_イース編_第25章_第26章
ここで。
青年と朔がかなり似た形になります。
朔は。
いない家族を。
文字や録音や物で。
いるように残す。
青年は。
自分にはもう本来の顔がないのに。
他人の顔を使い続ける。
だから頭の奥の声が、
「いない人を、いるみたいにするの」
と言った時。
青年は返事ができない。
朔だけの話ではなく。
自分の話にも聞こえるからです。 KillerWorld_イース編_第25章_第26章
そして入る昔話。
世界中のものが泣けば。
死者を返す。
人も。
木も。
石も。
鉄も。
病も。
毒も。
全部が泣いた。
ただ。
一人だけ泣かなかった。
青年は最初。
その一人を。
「ひどい」
と言います。
でも。
頭の奥の声は問う。
死んだものを。
死んだままにしただけではないのか。
みんなで泣けば戻る。
その前提の方がおかしいのではないか。
この話が。
朔の家へそのまま重なります。
紙も。
録音も。
服も。
人形も。
全部が。
「まだいる」と言っている。
まるで。
世界中が泣いているみたいに。 KillerWorld_イース編_第25章_第26章
そこで。
青年が。
泣かなかった一人になります。
家に火をつける。
これは青年にとっても珍しい。
いつもなら。
材料を置く。
最後は本人にさせる。
でも今回は。
自分で直接やる。
頭の奥の声から、
「君がやるんだ」
と確認されても。
「今回はね」
と答える。
ここは。
これまで青年が守ってきた。
「最後の一手には触れない」
という線が。
かなり大きく崩れた場面です。 KillerWorld_イース編_第25章_第26章
ただし。
青年はこれを。
救いとは呼びません。
「終わらせてあげる?」
と聞かれて。
「そんな綺麗な話じゃないよ」
と返す。
青年が見たいのは。
家も。
記録も。
家族を残す装置も。
全部なくなった時。
朔が何を選ぶのか。
だから。
やっていることは。
最後まで青年の実験でもあります。
そして。
結果。
朔は思い出す。
家族はもう死んでいる。
ずっと知っていた。
でも。
忘れていた。
そして。
思い出した直後に。
また忘れ始める。
ここで青年が言う。
「僕が覚えてる」
これはかなり重要な言葉です。
これまで朔は。
自分より。
ノートを信じるようになった。
自分の記憶を。
外へ置いた。
そして今回。
その外部が。
紙ではなく。
青年になる。
青年が言う。
「君が忘れても、僕が覚えてる」
朔は。
最後にはそれを受け入れる。
自分で持たなくていい。
青年が持っている。
そう思えるようになる。 KillerWorld_イース編_第25章_第26章
しかも。
これが恐ろしいのは。
青年が全部やっていることです。
失わせたのも青年。
燃やしたのも青年。
そして。
失ったものを預かると言うのも青年。
だから青年自身も。
その構図を。
「吐き気がするほど綺麗」
だと思う。
慰めと。
支配と。
依存と。
観察が。
完全に同じ場所へ重なっています。 KillerWorld_イース編_第25章_第26章
最後。
頭の奥の声が。
「君も泣かなかったね」
と言う。
青年は否定しない。
肯定もしない。
ただ。
答えない。
世界中が「まだいる」と言っていたものへ。
火をつけたのは青年です。
今回のタイトル。
「君は覚えてなくていい」
は。
優しい言葉に見えて。
この二章で青年が何をしたのかを全部知ったあとだと。
かなり違う意味に聞こえると思います。




