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『KillerWorld ―七つ目の答え―』  作者: ザクロ
イース編

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27/57

KillerWorld ―イース編―「最後までやっていない」

リナが死んだあとも、青年の目は止まらなかった。

ラドが消えた。

リナも消えた。

カイルはネミティブから離れ始めている。

その瞬間、青年の頭にはもう次の形が見えていた。

空いた場所へ、ルイスなら入れる。

気分は悪い。

罪悪感もある。

それでも同時に、青年はその崩れ方を「綺麗だ」と感じてしまう。

そして、ネミティブが呟く。

「俺は……止めようとしただけだ」

その言葉は、かつてラドを死なせた時の青年自身と同じだった。

僕は撃っていない。

押しただけ。

最後の一歩を踏み出したのは、自分ではない。

それが青年のやり方だった。

相手が何を欲し、何を恐れ、どんな嘘を信じたがっているのかを見る。

少しだけ世界の見え方を変える。

そして最後だけは、本人に選ばせる。

「僕が決めたわけじゃない」

そう言えるように。 KillerWorld_イース編_第17章_第18章

だがゴイは、リナの死さえ「対象ではない」と切り捨てる。

観察を続けろ。

判断傾向が固定するまで。

そして必要なら処理する。

青年は、その命令を聞きながら一つのことに気づく。

どこまでが「最後」なのか。

何を「結果」とするのか。

そこまでは、細かく決められていない。

ならば。

命令を破らず、その隙間を歩けばいい。

盤面の外側にいると思っていたゴイまで、少しずつ盤面の中へ置きながら。 KillerWorld_イース編_第17章_第18章 KillerWorld_イース編_第17章_第18章

そして倉庫に残ったネミティブは、自分の失敗から一つの答えを出す。

「もっと見てれば分かった」

「次は間違えない」

青年が何度も正解させ、自分自身を信じさせてきた結果。

ネミティブは失敗してなお、自分の判断を捨てなかった。

むしろ。

さらに深く、自分だけで見る方向へ進んでいく。

ラドもいない。

リナもいない。

カイルも離れた。

残った視線は、ルイスだけへ向いていた。

そして青年は、また最後の一手には触れない。

選ぶのは本人。

その方が面白い。

そしてその方が――

自分はまだ、最後までやっていないことにできる。リナが死んだあとも、青年の目は止まらなかった。

ラドが消えた。

リナも消えた。

カイルはネミティブから離れ始めている。

その瞬間、青年の頭にはもう次の形が見えていた。

空いた場所へ、ルイスなら入れる。

気分は悪い。

罪悪感もある。

それでも同時に、青年はその崩れ方を「綺麗だ」と感じてしまう。

そして、ネミティブが呟く。

「俺は……止めようとしただけだ」

その言葉は、かつてラドを死なせた時の青年自身と同じだった。

僕は撃っていない。

押しただけ。

最後の一歩を踏み出したのは、自分ではない。

それが青年のやり方だった。

相手が何を欲し、何を恐れ、どんな嘘を信じたがっているのかを見る。

少しだけ世界の見え方を変える。

そして最後だけは、本人に選ばせる。

「僕が決めたわけじゃない」

そう言えるように。 KillerWorld_イース編_第17章_第18章

だがゴイは、リナの死さえ「対象ではない」と切り捨てる。

観察を続けろ。

判断傾向が固定するまで。

そして必要なら処理する。

青年は、その命令を聞きながら一つのことに気づく。

どこまでが「最後」なのか。

何を「結果」とするのか。

そこまでは、細かく決められていない。

ならば。

命令を破らず、その隙間を歩けばいい。

盤面の外側にいると思っていたゴイまで、少しずつ盤面の中へ置きながら。 KillerWorld_イース編_第17章_第18章 KillerWorld_イース編_第17章_第18章

そして倉庫に残ったネミティブは、自分の失敗から一つの答えを出す。

「もっと見てれば分かった」

「次は間違えない」

青年が何度も正解させ、自分自身を信じさせてきた結果。

ネミティブは失敗してなお、自分の判断を捨てなかった。

むしろ。

さらに深く、自分だけで見る方向へ進んでいく。

ラドもいない。

リナもいない。

カイルも離れた。

残った視線は、ルイスだけへ向いていた。

そして青年は、また最後の一手には触れない。

選ぶのは本人。

その方が面白い。

そしてその方が――

自分はまだ、最後までやっていないことにできる。





# 第十七章 盤面の外


リナが。


動かなくなってからも。


青年の目だけは。


働いていた。



ひどい。



そう思った。



同時に。



綺麗だとも。



思った。



その二つが。



同時に浮かんだことへ。



青年は。



少しだけ。



顔をしかめた。



倉庫の中。



火薬。



錆びた鉄。



古い油。



湿った埃。



シャッターの隙間から。



夜気。



入る。



でも。



臭いは。



消えない。



そこへ。



血。



重なる。



天井の蛍光灯。



一本。



じ。



ぱ。



じ。



不規則。



明滅。



光が戻るたび。



床へ広がった赤だけが。



妙に。



鮮やか。



リナは。



もう。



動かない。



さっきまで。



怒鳴っていた。



泣いていた。



自分で決めたい。



そう。



言った。



それが。



今。



ただ。



床にある。



青年の胃。



少し。



重い。



気分は悪い。



でも。



それだけではなかった。



ラド。



消えた。



リナ。



消えた。



カイル。



右足。



ネミティブから。



半歩。



離れている。



肩。



力。



目。



ネミティブの顔ではない。



銃。



そこへ。



向いている。



怒っている。



いや。



違う。



怖がっている。



青年は。



そこまで。



拾った。



そして。



拾った瞬間。



頭の中で。



次の線が。



勝手に。



伸びる。



カイルは。



離れる。



ネミティブは。



孤立する。



間違えたからといって。



自分の判断を。



捨てる男ではない。



逆。



次は。



もっと。



見る。



もっと。



確かめる。



もっと。



自分だけで。



決める。



ラド。



いない。



リナ。



いない。



カイルまで。



離れたら。



空白。



そこへ。



ルイスなら。



入れる。



青年は。



小さく。



呟いた。



「……綺麗に崩れたな」



言ってから。



自分で。



嫌になる。



言い方。



悪い。



でも。



嘘でもない。



(面白い?)



頭の奥。



声。



青年は。



少し。



息を吐く。



「少し」



素直に。



答える。



(気持ち悪いのに?)


「両方あるだけでしょ」


(便利だね)


青年は。



鼻から。



息。



「人間って」



一拍。



「そんなもんじゃない?」


(僕に聞くの?)


「聞いてないよ」



罪悪感。



ないわけじゃない。



ラド。



あの時も。



倒れた身体。



見た。



吐いた。



気分。



悪かった。



でも。



だから。



仕事を。



やめたわけじゃない。



むしろ。



その後。



ルイス。



作った。



空いた場所へ。



入った。



それが。



一番。



自然だったから。



「……止めただけ」



青年の目。



動く。



ネミティブ。



リナではなく。



自分の手。



見ている。



「俺は……」


一拍。



「止めようとしただけだ」



青年の口元。



少し。



歪む。



知っている。



その理屈。



人混み。



怒号。



ラド。



ネミティブの背中。



別人の顔。



自分。



「ネミティブ! 危ねえ!」



叫んだ。



押した。



腕。



跳ねた。



銃。



発砲。



ラド。



倒れた。



その場を。



離れながら。



考えた。



僕は。



撃ってない。



押しただけ。



銃を向けろとも。



言ってない。



撃つと決めたのは。



僕じゃない。



今思えば。



ずいぶん。



都合がいい。



今も。



使っている。



(まだそう思ってる?)


「思ってるよ」


(本当に?)


青年は。



ネミティブの手を見る。



「僕が撃った?」


(撃ってない)


「じゃあ間違ってない」


(押したね)


「押した」


(押さなかったら?)


青年の目。



少し。



細くなる。



「知らない」


(じゃあ――)


「そこから先は」



青年は。



声を遮る。



「答え出ないでしょ」



一拍。



「僕が撃ったことにはならない」


もう一拍。



「でも無関係でもない」



肩を。



少し。



竦める。



「それでいいじゃん」


(いいんだ)


「今のところはね」



声は。



黙る。



青年にとって。



それは。



昔から。



そうだった。



最後には。



触らない。



詐欺をしていた頃も。



同じ。



相手が。



欲しいもの。



見る。



怖がっているもの。



見る。



それから。



ほんの少し。



世界の見え方を。



変える。



急がせる。



安心させる。



疑わせる。



一つの選択肢だけ。



魅力的に。



見せる。



でも。



最後に。



財布を開くのは。



本人。



契約書。



名前。



書くのも。



本人。



秘密。



話すのも。



本人。



青年は。



その。



最後の一歩だけは。



残してきた。



善意ではない。



その方が。



面白い。



最後まで奪ったら。



ただ。



命令しただけ。



本人が。



どこまで行くか。



何を選ぶか。



それを見るには。



最後を。



残した方がいい。



それに。



何か起きた時。



――僕が決めたわけじゃない。



そう。



言える。



(昔ね)


青年は。



目だけ。



リナ。



「また?」


(何を投げても傷つかない男がいたんだって)


「唐突だね」


(石も)


(剣も)


(火も)


(水も)


一拍。



(その男を傷つけないって約束した)


「誰が」


(いろいろ)


青年の眉。



寄る。



「相変わらず雑」


(だから)


少し。



楽しそう。



(みんなその男に物を投げて遊んだ)


青年は。



顔をしかめる。



「趣味悪いな」


(死なないよ?)


青年は。



すぐ。



返す。



「死ななきゃ何してもいいわけじゃないでしょ」



少し。



沈黙。



(そう)


一拍。



(それ)


青年の目。



動く。



「……何」


(今の)


「何が?」


(続き聞く?)


「そこ誤魔化すんだ」


(聞かない?)


青年は。



リナを見る。



「聞くよ」


(でも一つだけ)


一拍。



(約束していないものがあった)


「何」


(小さな枝)


青年の眉。



さらに。



寄る。



「枝?」


(そんなものが危ないなんて)


(誰も思わなかった)



外。



風。



シャッター。



低く。



震える。



(目の見えない男がいた)


(みんなが遊んでるのに)


(その人だけ投げられない)


青年は。



黙る。



「……それで?」


(別の誰かが)


一拍。



(その枝を渡した)


もう一拍。



(向きも教えた)



青年の指。



止まる。



(投げたのは)


(目の見えない男)


青年の喉。



動く。



「死んだ?」


(うん)



青年は。



何も。



言わない。



(誰が殺したと思う?)


「またそれ?」


(投げた人?)


青年は。



黙る。



(枝を渡した人?)


「答えないよ」


(どうして?)


青年は。



少し。



目を伏せる。



「答えがないから」


(ない?)


「少なくとも」


一拍。



「一人じゃないでしょ」


(じゃあ何人?)


「知らない」


(君も入る?)



青年は。



リナを。



見る。



「……今日はよく刺してくるね」


(痛い?)


青年の口元。



少し。



歪む。



「少し」


(じゃあまだ大丈夫だね)


青年の眉。



動く。



「何が?」



返事。



なし。



「そこで黙るの」



鼻。



小さく。



鳴らす。



「ほんと嫌い」



でも。



話は。



残る。



枝。



投げた者。



渡した者。



向きを。



教えた者。



どこからが。



殺したことになる。



分からない。



だから。



青年は。



自分が。



盤面へ。



置いてきたものを。



順番に。



思い返す。



RATへ。



入り込んだのは。



ルイスだけではない。



最初。



ただ。



見るため。



誰が。



誰を信じる。



誰が。



ネミティブを頼る。



誰が。



カイルへ不満。



誰が。



酒で。



余計なことを喋る。



誰が。



噂を嫌うふりをして。



一番早く。



広める。



人を見るのは。



得意。



詐欺師にとって。



上手い嘘より。



大事。



相手が。



どんな嘘を。



信じたがっているか。



知る。



食堂。



名も覚えていない。



RAT構成員。



顔。



借りる。



パン。



千切る。



「北、最近騒がしいらしいな」



それだけ。



「何で?」


「知らない」


一拍。



「RATの中が割れてるとか」


肩。



竦める。



「誰か言ったんじゃない?」


「誰が?」


「さあ?」



終わり。



三日後。



ネミティブとカイルが揉めている。



ラドが死んでRATは終わり。



内部に裏切り者。



今なら北が動ける。



そんな話。



青年は。



そこまで。



言っていない。



人が。



勝手に。



足した。



あの時。



かなり。



面白かった。



一滴。



それで。



十分。



あとは。



勝手に。



混ざる。



北側。



女。



顔。



借りる。



「RATって最近危ないんでしょ?」



酒。



飲む。



別の日。



頬に火傷。



若者。



「今なら行けるらしいよ」


「何が」


青年は。



背中を向ける。



「知らないならいい」



追ってきたのは。



向こう。



青年は。



一度も。



攻めろ。



殺せ。



壊せ。



言っていない。



北側には。



元から。



恨み。



RATには。



元から。



亀裂。



青年は。



作っていない。



ただ。



触れる場所へ。



少し。



移した。



(少し?)


青年は。



口元。



上げる。



「その言葉好きだね」


(何人になった?)


「何が」


(君)



青年は。



少し。



考える。



ルイス。



ラド。



女。



火傷。



RAT構成員。



道端の男。



声だけ。



借りた人間。



「数えてない」


(数えたら?)


「嫌」


(なんで?)


青年は。



目を。



少し。



逸らす。



「多分」


一拍。



「思ったより多いから」


(ふうん)


「何」


(楽しそう)



青年は。



少しだけ。



笑った。



「楽しかったよ」



そこは。



否定しない。



「騙すの好きだし」


(知ってる)


「人が」


青年は。



指先で。



空中を。



軽く。



なぞる。



「勝手に勘違いしてくれる瞬間」


一拍。



「結構好き」


(うん)


青年は。



リナを見る。



「でも今は」


一拍。



「気分悪い」


(それも本当?)


「本当」


(両方?)


「だから」


青年は。



少し。



疲れたように。



笑う。



「最初からそう言ってるでしょ」



ネミティブへの。



やり方は。



もっと。



気に入っていた。



嘘を。



つく必要すら。



ない。



ネミティブ。



見る。



癖。



呼吸。



視線。



足。



人間関係。



青年は。



その目の前へ。



正しい材料。



置く。



「ここ、変じゃない?」


ルイス。



それだけ。



「どこが」


青年は。



笑う。



「さあ?」



ネミティブ。



自分で。



探す。



見る。



見つける。



「……こいつか」


「僕、何も言ってないよ」


「でも合ってる」


「どうだろうね」



一度。



二度。



三度。



青年は。



ネミティブを。



間違えさせない。



正解させた。



何度も。



自分で。



辿り着ける量。



材料。



置く。



そのうち。



ルイスを信じているのか。



自分を信じているのか。



分からなくなる。



違う。



分かっていた。



自分を。



信じるようにした。



自分で見れば。



分かる。



自分なら。



正しい。



その方が。



後で。



面白くなる。



(そこも?)


「そこも」


(悪い顔してそう)


青年の口元。



少し。



上がる。



「今ルイスだからね」


(そういう意味じゃないよ)


「分かってる」



リナにも。



似たこと。



した。



ラドの顔。



近づく。



自分で見ろ。



一つずつ確かめろ。



決めるのは。



お前。



答え。



渡さない。



リナは。



見た。



青年の知らないもの。



使った。



ラドとの。



小さな記憶。



どうでもいい。



会話。



仕草。



青年が。



観測する価値もないと。



切った細部。



それで。



偽物。



見抜いた。



あの瞬間。



焦るより。



先。



面白い。



そう。



思った。



予定から。



外れた。



この子。



どこまで。



来る。



見たかった。



そして。



今。



リナは。



死んでいる。



青年の口。



小さく。



「……ごめん」



自分で。



少し。



首を傾げる。



(何に?)


青年の眉。



動く。



「そこ聞く?」


(だって分からない)


「僕も分かんないよ」


(顔を使ったこと?)


「それは別に」


(面白がったこと?)


「それも別に」


(じゃあ?)


青年は。



少し。



考える。



「……多分」



リナを見る。



「ここまで来るとは」


一拍。



「思ってなかったこと」


(それ、謝ること?)


「知らない」


(じゃあ取り消す?)


「それも違う」


(難しいね)


青年の顔。



少し。



歪む。



「君が言うと腹立つな」



青年は。



リナから。



目を離す。



罪悪感。



ある。



でも。



だから。



過去の介入を。



全部。



後悔しているか。



違う。



やらなければよかった。



そんな。



綺麗な答え。



まだ。



ない。



ラド。



ルイス。



噂。



偽装。



途中。



明確に。



面白かったもの。



ある。



青年は。



それまで。



なかったことに。



する気はない。



「兄貴」



カイル。



声。



青年の頭。



一瞬。



現在。



切り替わる。



肩。



距離。



銃。



リナ。



入口。



全部。



拾う。



止めようとしても。



目が。



身体より。



先。



動く。



「銃、置けよ」


ネミティブ。



顔を上げる。



「何で」


カイルの声。



低い。



「怖いからだよ」



青年は。



ネミティブを見る。



自分の失敗。



どう処理する。



もう。



見える。



自信を失って。



全部。



他人へ。



任せる。



そういう男ではない。



間違えた。



なら。



次は。



間違えない。



そのため。



もっと。



見る。



自分で。



確かめる。



自分で。



決める。



自分で。



その時。



ルイスは。



使える。



青年の口。



小さく。



「……ほんと、最悪」


(でも使う?)


「仕事だからね」


(それだけ?)



青年は。



少し。



黙る。



「……それだけだったら」


一拍。



「楽なんだけどね」


(ふうん)


「何」


(別に)


青年の眉。



寄る。



「真似しないでよ」



青年は。



壁から。



背を離す。



今。



声を。



かけない。



慰める。



必要。



ない。



ネミティブが。



自分から。



ルイスを見るまで。



待つ。



最後は。



本人に。



選ばせる。



そこだけは。



変えない。



倉庫を。



出る。



冷たい夜気。



頬。



血。



火薬。



薄れる。



濡れた路面。



錆。



匂い。



少し前まで。



雨。



水溜まり。



外灯。



揺れる。



遠く。



大型車。



低い音。



積まれた鉄板。



かすかに。



鳴る。



青年は。



一度。



振り返る。



閉じた扉。



向こう。



リナ。



ネミティブ。



カイル。



(逃げる?)


「空気吸いに来ただけ」


(聞いてない)


青年は。



ポケットへ。



手。



「先に答えた」



指先。



震える。



見えなくすれば。



気にならない。



暗い通路。



抜ける。



街灯。



人影。



壁。



背。



青年は。



止まる。



「……何してるの」


「待っていた」



ゴイ。



青年の目。



少し。



細くなる。



「僕を?」


「報告を」


「珍しいね」


青年は。



近づく。



「呼びつけないんだ」


「現場の方が早い」


「効率的」


ゴイ。



「どうなった」


青年は。



街灯の下。



足元。



水溜まり。



ルイスの顔。



薄く。



揺れる。



「リナが死んだ」


「誰が撃った」


「ネミティブ」


「意図的か」


「本人は」


青年は。



水面。



見る。



「止めるつもりだったらしいよ」


「結果は同じだ」



青年の目。



僅かに。



動く。



「結果ね」


「何だ」


「別に」



ゴイの視線。



青年の顔。



「対象は」


「まだ壊れてない」


「壊れたかどうかは聞いていない」


「じゃあ何」


「固定したか」


風。



倉庫の間。



抜ける。



青年の髪。



少し。



揺れる。



「何が?」


「判断傾向だ」


青年は。



扉。



見る。



「逆に」


一拍。



「強くなると思うよ」


「理由は」


「間違えたから」


「説明になっていない」


青年は。



ゴイを見る。



「間違えたから」


一つ。



「次はもっと自分で見ようとする」


二つ。



「自分で確認する」


三つ。



「自分で決める」


青年は。



少し。



笑う。



「他人へ任せたせいだって思い始めたら」


一拍。



「もっと早い」


ゴイ。



少し。



黙る。



「カイルは」


「離れる」


「ルイスは」


青年は。



薄く。



笑う。



「残れる」


「なら続けろ」


青年の笑み。



僅かに。



止まる。



「まだ?」


「結果が出ていない」


青年は。



ゴイを見る。



「人、一人死んだよ」


「対象ではない」



その返事。



意外ではない。



むしろ。



正しい。



最初から。



対象。



ネミティブ。



リナ。



カイル。



ラド。



周辺。



反応。



変える要素。



青年自身。



同じように。



見てきた。



だから。



怒る資格。



あるとも。



思わない。



でも。



耳。



残る。



対象ではない。



青年は。



少し。



息。



「……そうだね」


「何だ」


青年は。



笑わない。



「僕も」


一拍。



「似たようなこと考えてたなって」


「なら問題ない」


青年は。



ゴイを見る。



「それと」


一拍。



「気分悪いのは別だよ」


ゴイは。



答えない。



青年も。



求めない。



「最後まで見ろ」



ゴイ。



言う。



青年は。



そこで。



初めて。



顔を上げる。



「最後って?」


「何だ」


「どこまで?」


「対象の判断傾向が固定するまでだ」


「固定したら?」


「測定終了」


「その後は?」


「必要なら処理する」



青年は。



少しだけ。



目を細める。



「へえ」


「何だ」


「いや」


一拍。



「終わりって」


青年は。



ゴイを見る。



「ゴイが決めるんだなって」


「私が決めているわけではない」


ゴイは。



即答。



「結果を確認するだけだ」



青年は。



その言葉を。



頭の中。



一度。



転がす。



結果。



確認。



固定。



「ふうん」


「次もルイスで行け」


「了解」



青年は。



ゴイの横を。



通る。



数歩。



右手。



指先。



また。



震える。



親指。



人差し指。



擦る。



感覚。



薄い。



青年の顔から。



笑み。



消える。



研究所。



薬。



処置。



延命。



ゴイ。



失えば。



身体。



どれだけ。



保つ。



分からない。



死ぬ。



その言葉。



今でも。



怖い。



(やめる?)


「無理」


(早いね)


「死にたくないから」


(そっか)


青年は。



少し。



顔をしかめる。



「何か言わないの?」


(何を?)


「情けないとか」


(人が死んだら)


一拍。



(自分は死にたくなくなるの禁止なの?)


青年の眉。



動く。



「またそれ?」


(何が?)


「ルール」


(嫌い?)


「嫌い」



即答。



少し。



歩く。



ゴイ。



遠くなる。



(昔ね)


「今日はよく喋るね」


(ある男が)


(大きな奴に捕まった)


「またろくでもない話?」


(殺されそうだったから)


一拍。



(助かるために仲間を売った)


青年は。



すぐ。



「最低」


(死にたくなかったんじゃない?)


「だからって」


(じゃあ死ねばよかった?)



青年は。



答えない。



(その男は)


(仲間を売って助かった)


「最低だね」


(そのあと)


(今度は仲間に殺されそうになって)


一拍。



(売った相手を助けに戻った)


青年は。



歩きながら。



眉。



寄る。



「……どっちなんだよ」


(何が?)


「売るのか」


一拍。



「助けるのか」


(両方)


青年は。



鼻で息。



「節操ないなあ」


(生きてたからね)



青年の足。



少し。



遅くなる。



生きていた。



だから。



その後。



ある。



最初の選択だけで。



終わらない。



(売った時のそいつが本物?)


「知らない」


(助けた時?)


「知らないって」


(じゃあどっち?)


青年は。



少し。



考える。



「どっちも」


一拍。



「本人なんじゃない?」


声。



黙る。



青年。



眉。



「何」


(いいね)


「何が?」


返事。



ない。



「……ほんと腹立つ」



青年は。



歩く。



ゴイ。



最後まで見ろ。



判断傾向。



固定。



測定終了。



必要なら。



処理。



言っていること。



分かる。



仕事としても。



筋。



通る。



だから。



少し。



気になった。



固定したら。



終わり。



それ。



誰が。



決める。



ゴイは。



結果を。



確認するだけ。



なら。



何を。



結果と。



呼ぶ。



青年は。



昔から。



契約を見る時。



まず。



穴。



探す。



書いてある。



書いていない。



禁止。



禁止したつもり。



(昔ね)


青年は。



目を細める。



「まだあるの?」


(壁を作らせた奴らがいた)


「今日は三本立て?」


(期限までに完成したら)


(大きな報酬を払う約束)


「払えばいいじゃん」


(絶対間に合わないと思ってた)


青年は。



鼻。



鳴らす。



「嫌な奴ら」


(でも間に合いそうになった)


「自分で決めた条件でしょ」


(払いたくなかった)


「最低」


(作ってた男には)


一拍。



(すごく働く馬がいた)


青年の目。



動く。



「……待って」


(何?)


「契約に」


青年の口元。



少し。



上がる。



「その馬について」


一拍。



「書いてあった?」


(ない)


「馬を使うなとも?」


(ない)


「馬へ何かするなとも?」


(ないね)


青年は。



ゆっくり。



笑う。



「じゃあ」


一拍。



「馬が仕事できなくなっても」


もう一拍。



「契約そのものは破ってない」


(そうなるね)


青年の笑み。



深くなる。



「詐欺じゃん」


(君が言う?)


青年は。



笑う。



「僕だから言うんだよ」



そして。



そのまま。



ゴイ。



言葉。



当てはめる。



観測しろ。



観測する。



最後まで見ろ。



見る。



結果を取れ。



取る。



でも。



どこまでが。



最後。



何を。



結果として。



渡す。



何を。



見たと。



報告。



全部。



細かく。



決められていたか。



「……なるほど」


(何が?)


「別に」


(嘘)


青年の口元。



上がる。



「僕、嘘つきだから」


声が。



笑った気がする。



青年も。



少し。



笑う。



正面から。



ゴイへ。



逆らう気。



ない。



そんな。



勇気。



まだ。



ない。



死にたくない。



処置。



必要。



ゴイに。



切られれば。



困る。



なら。



破らなければいい。



言われたところまで。



守る。



その間。



書かれていない場所。



あれば。



そこを。



歩く。



青年は。



倉庫の前。



戻る。



扉。



手。



中。



ネミティブ。



カイル。



リナ。



盤面。



まだ。



動いている。



自分が。



何をした。



どこから。



責任。



まだ。



答え。



出ない。



別に。



今。



すぐ。



出したいとも。



思わない。



ただ。



ネミティブが。



次。



何を選ぶ。



見たい。



仕事。



生きるため。



それに。



少しだけ。



面白いから。



青年は。



扉を。



開ける。



最後の一手には。



触らない。



それが。



善いとは。



思わない。



ただ。



それが。



自分の。



やり方。



そして。



今。



今まで。



盤面の外。



そう思っていた。



ゴイまで。



青年は。



少しずつ。



同じ盤面の中へ。



置き始めていた。



# 第十八章 残った場所


扉を開ける。



倉庫の空気。



さっきより。



冷たい。



実際に。



温度が。



下がったわけではない。



人が。



一人。



喋らなくなった。



それだけ。



広いはずの空間。



妙に。



狭い。



リナ。



まだ。



床。



カイル。



そば。



膝。



青年が戻ったこと。



すぐ。



気づかない。



ネミティブだけ。



立っている。



銃。



下。



でも。



手放していない。



青年は。



扉を。



閉める。



ぎ。



金属。



擦れる。



やけに。



大きい。



誰も。



青年を。



見ない。



それでいい。



壁際。



歩く。



止まる。



近づかない。



声。



かけない。



慰めない。



今。



「お前は悪くない」



そう。



言えば。



ネミティブは。



そこへ。



逃げられる。



逆。



「お前が殺した」



そう。



言えば。



自分を。



罰する方へ。



逃げるかもしれない。



どちらも。



いらない。



青年が。



見たいのは。



どちらも。



与えられない。



その時。



ネミティブ自身。



何を。



選ぶ。



(待つんだ)


「うん」


(珍しいね)


「そう?」


(君)


一拍.



(隙間があるとすぐ何か入れるのに)


青年は。



小さく。



笑う。



「今は」


一拍.



「空けてる方がいい」


(どうして?)


青年は。



ネミティブを見る。



「向こうから来るから」



声は。



それ以上。



聞かない。



カイルが。



ゆっくり。



立つ。



「俺」


一拍.



「リナ連れてく」



ネミティブ。



反応。



ない。



カイルの眉。



寄る。



「聞いてんのか」


「……好きにしろ」



カイルの顔。



歪む。



青年の目。



その瞬間。



細くなる。



好きにしろ。



前なら。



言わなかった。



少なくとも。



カイルには。



切った。



青年の中。



線。



一本。



増える。



カイルも。



同じ。



何か。



言いかける。



口。



開く。



でも。



閉じる。



リナ。



抱き上げる。



腕。



位置。



直す。



その時。



カイルの指。



一度。



震える。



ネミティブは。



見ない。



違う。



見ている。



視線を。



向けていない。



だけ。



青年には。



分かる。



肩。



呼吸。



僅かに。



傾く。



顔。



音。



拾う。



気にしている。



それでも。



見ないことを。



選んだ。



(また見てる)


「仕事だから」


(それだけ?)


青年は。



少し。



目を細める。



「今日はそれ多いね」


(気になるから)


青年は。



カイルを見る。



「僕も」



カイルは。



出口へ。



青年の横。



通る。



その時。



一度。



止まる。



青年を。



見る。



怒り。



疑い。



でも。



まだ。



繋がらない。



「……ルイス」


「何」


「お前」



続かない。



青年は。



待つ。



数秒。



カイル。



首。



振る。



「いや」


一拍.



「いい」


青年は。



道を。



空ける。



「そ」



カイル。



出る。



扉。



閉じる。



残る。



二人。



正確には。



三人。



(数に入れてくれるんだ)


「今喋ったからね」


(じゃあ黙ったら?)


「減る」


(ひどいなあ)


青年は。



返さない。



ネミティブが。



ようやく。



こちらを見る。



「……お前は」



来た。



青年は。



顔。



変えない。



「何」


「俺が」


一拍.



「間違えたと思うか」



予想より。



早い。



でも。



質問。



予想通り。



青年は。



答えない。



「ルイス」


「聞こえてるよ」


「なら答えろ」


青年は。



即答。



「嫌だ」



ネミティブの眉。



動く。



「何で」


「僕が」


一拍.



「決めることじゃないから」


ネミティブ。



止まる。



青年は。



続ける。



「君が撃ったんでしょ」



ネミティブの手。



銃。



少し。



強く。



握る。



青年は。



その指まで。



見る。



「止めるつもりだった」


「うん」


「撃つつもりじゃなかった」


「うん」


「だったら――」


青年は。



ほんの少し。



首を傾ける。



「だったら?」



そこで。



止める。



青年から。



先。



言わない。



ネミティブが。



自分で。



言葉。



探す。



「……俺が悪いのか」



青年は。



少しだけ。



首を傾ける。



「それも」


一拍.



「僕が決めるの?」


「お前なら分かるだろ」


「何で?」


「お前は……」



ネミティブ。



詰まる。



青年は。



待つ。



「お前は」


一拍.



「見てただろ」



その言葉。



青年の胸。



ざら。



小さく。



見ていた。



ずっと。



ネミティブが。



知らない場所からも。



「見てたよ」


「なら分かる」


「何が」


ネミティブの声。



掠れる。



「俺が」


一拍.



「どうすればよかったか」



青年は。



答えを。



持っている。



いくつも。



もっと早く。



銃。



下ろせた。



リナ。



聞けた。



自分の観察。



間違う可能性。



残せた。



後からなら。



逃げ道。



いくらでも。



作れる。



でも。



言っても。



意味。



ない。



青年は。



「知らない」



ネミティブの目。



鋭い。



「ふざけんな」


「ふざけてないよ」


「お前なら――」


「僕なら?」



青年は。



少し。



笑う。



「僕なら」


一拍.



「最初から君と同じことしないと思うけど」


ネミティブ。



黙る。



「だから」


青年は。



肩を。



少し。



竦める。



「分かんない」



優しくない。



でも。



突き放してもいない。



青年は。



その中間。



置く。



ネミティブが。



勝手に。



意味を。



つけられる場所。



(上手いね)


「何が」


(何も言ってない)


青年の口元。



少し。



動く。



「聞こえてるよ」



ネミティブが。



また。



銃を見る。



「俺は……」


一拍.



「見てた」


「うん」


「全部」


青年の目。



僅かに。



細くなる。



「全部?」


「リナも」


一つ。



「カイルも」


二つ。



「周りも」



青年の中。



小さく。



来た。



「見てたのに」


「うん」


「間違えた」



その言葉。



出る。



青年は。



何も。



言わない。



慰めない。



責めない。



ネミティブ。



自分で。



続ける。



「足りなかった」



青年の目。



僅かに。



動く。



「何が?」


「情報」



やっぱり。



「もっと見てれば」



ネミティブの呼吸。



少し。



整う。



「分かった」


「何が」


「リナが何考えてたか」


一つ。



「誰と会ったか」


二つ。



「何を隠してたか」


三つ。



「全部」



青年の中。



ゴイへの。



予測。



そのまま。



形。



間違えた。



だから。



自分の判断を。



捨てない。



強化する。



「次は」



青年の口。



無意識。



「次は?」



ネミティブ。



顔。



上げる。



「間違えない」



青年の背中。



ぞく。



少し。



走る。



怖い。



違う。



綺麗。



ここまで。



予測通り。



人間が。



自分の穴へ。



深く。



入る。



青年は。



少し。



笑いそうになる。



すぐ。



止める。



(面白い?)


青年は。



内側。



「……かなり」


(気持ち悪い?)


「それも」


(便利だね)


「だから両方あるんだって」



ネミティブ。



青年を見る。



「ルイス」


「何」


「お前は」



また。



止まる。



「俺を疑ってるか」



青年は。



一度。



瞬く。



「何を?」


「俺の判断」



青年は。



笑った。



今度は。



隠さない。



「君」


一拍.



「間違えたばっかなのに?」


ネミティブの顔。



固まる。



青年は。



軽く。



肩を上げる。



「疑うでしょ」


一拍.



「普通」



優しくしない。



嘘も。



つかない。



だから。



ネミティブは。



青年を見る。



「でも」



青年は。



続ける。



「だからって」


一拍.



「全部間違ってたことにはならないよ」



ネミティブの目。



僅かに。



動く。



「ラドの時も」



青年の胸。



一瞬。



冷える。



それでも。



続ける。



「今まで見つけたものも」


一つ。



「君が当てたことも」


二つ。



「全部なくなるわけじゃない」



ネミティブ。



黙る。



青年は。



声。



少し。



落とす。



「一回間違えたら」


一拍.



「今まで全部間違いになるなんて」


もう一拍.



「ルールないでしょ」



頭の奥。



声。



少し。



笑う。



(似てきたね)



青年は。



無視。



ネミティブ。



長く。



黙る。



そして。



顔を。



上げる。



「じゃあ」



一拍.



「次はもっと見ればいい」



青年は。



答えない。



肯定。



しない。



否定。



しない。



でも。



ネミティブは。



もう。



自分で。



答え。



出している。



青年は。



壁へ。



背。



預ける。



さっきまで。



リナ。



いた場所。



カイル。



いた場所。



ラド。



いた場所。



全部。



空いた。



今。



ネミティブの視線。



ルイスだけ。



向く。



(入ったね)


「何が」


(空いたところ)



青年は。



少しだけ。



目を細める。



「向こうから来たんだよ」


(そうだね)


青年は。



薄く。



笑う。



「僕は何もしてない」


(本当に?)


青年の笑み。



僅かに。



止まる。



「……今日はそればっかりだね」



声は。



笑う。



青年も。



少し。



笑う。



外。



雨。



また。



落ち始める。



一滴。



二滴。



やがて。



倉庫の屋根。



細かく。



叩く。



ネミティブは。



もう。



リナの血を。



見ていない。



自分の手も。



見ない。



青年。



見ている。



青年は。



その視線を。



受ける。



最後の一手には。



触れない。



選ぶのは。



本人。



その方が。



ずっと。



面白い。



そして。



その方が。



自分はまだ。



最後まで。



やっていないことに。



できる。

第十七章「盤面の外」/第十八章「残った場所」でした。

今回は、これまで青年がやってきたことを、かなり正面から言葉にする回です。

青年は基本的に、最後の一手には触れません。

詐欺師だった頃から、

相手が欲しいものを見つける。

怖いものを見つける。

見え方を少し変える。

選択肢を偏らせる。

でも最後に財布を開くのも、契約書へ名前を書くのも、秘密を話すのも本人。

そこだけは残す。

善意ではありません。

その方が相手の本性を見られるし、

何かが起きた時には、

「僕が決めたわけじゃない」

と言えるからです。 KillerWorld_イース編_第17章_第18章

今回、その考え方と重なるように頭の中の声が語るのが、枝を渡した者と、それを投げた者の話です。

投げた者が殺したのか。

枝を渡した者が殺したのか。

向きを教えた者はどうなのか。

青年は答えません。

「少なくとも一人じゃないでしょ」

ここでラドやリナの死についても、「誰がやったのか」という線が単純ではなくなっていきます。 KillerWorld_イース編_第17章_第18章

そしてもう一つ大きいのが、青年自身が、自分の悪さを急に否定し始めないところです。

リナが死んだからといって、

「全部やらなければよかった」

とはならない。

騙すのは楽しかった。

人が自分で勘違いしていくところも面白かった。

リナが予想外の方法で自分を見破った時も、最初に出た感情は「面白い」でした。

罪悪感があることと、楽しかったことは両立する。

青年はそこを綺麗に整理しません。 KillerWorld_イース編_第17章_第18章 KillerWorld_イース編_第17章_第18章

そして第十七章後半では、ゴイにも少し変化が起きます。

正面から逆らう勇気はない。

治療を失えば死ぬ。

だから命令そのものは守る。

でも青年は詐欺師です。

契約を見る時に最初に探すのは、書かれていない部分。

観測しろ。

なら観測する。

最後まで見ろ。

なら見る。

でも、

「どこまでが最後なのか」

そこは誰が決めるのか。

ここから青年は、ゴイという「盤面の外」にいるはずだった存在まで、少しずつゲームの中へ入れ始めます。 KillerWorld_イース編_第17章_第18章

第十八章では、その一方でネミティブが完全に青年の予測通りの方向へ進みます。

リナを撃った。

判断を間違えた。

普通なら、自信を失って他人へ任せることもある。

でもネミティブは違う。

「足りなかった」

足りなかったのは、自分の判断力ではない。

情報だった。

だから、

「次はもっと見ればいい」

という答えになる。

青年はその答えを教えていません。

肯定もしていません。

ただ、そこへ辿り着ける材料を置いただけです。

そしてネミティブ自身が、自分でその答えを選ぶ。

まさに青年が一番好きな形です。 KillerWorld_イース編_第17章_第18章 KillerWorld_イース編_第17章_第18章

最後。

ラドの場所も。

リナの場所も。

カイルの場所も。

全部空く。

そこへルイスが入る。

青年は言います。

「向こうから来たんだよ」

たしかに、最後にルイスを選んだのはネミティブです。

でも、そこへ辿り着くまでの盤面を作ったのは誰だったのか。

その問いを残したまま、

「最後の一手には触れない」

という青年のやり方が、ここで一度完成します。

そして同時に。

その言い訳が、いつまで通用するのかも少しずつ怪しくなってきています。

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