KillerWorld ―イース編―「間違えるのまで取らないで」
リナは、自分の判断を信じてほしいと訴える。
しかしネミティブは、もう他人へ判断を預けられなくなっていた。
「もう判断する側じゃない」
カイルの意見を退け、リナの銃を下ろそうとし、最後には言い切る。
「俺が納得してない」
自分で見て、自分で確かめ、自分で決める。
青年がネミティブへ与え続けたその考え方は、いつしか別の形へ変わっていた。
自分が納得しなければ、他人の判断を認めない。
それでもリナは止まらない。
自分が正しいかなんて分からない。
間違うかもしれない。
怖い。
だからこそ。
「間違えるのまで取らないでよ!」
自分の判断も、自分の失敗も、自分の恐怖も、自分のものだと訴える。
けれど青年が半歩動いた、その瞬間。
ネミティブは決める。
乾いた銃声。
倒れるリナ。
そして最後まで彼女は言う。
「大丈夫って……勝手に……決めないで……」
青年は何も撃っていない。
リナにも触れていない。
それでも。
噂を置いた。
顔を借りた。
言葉を置いた。
選び方を教えた。
そのすべての先に、今がある。
だから青年は初めて認める。
「材料を置いただけ」
それではもう――済まない。
# 第十五章 決めさせない
倉庫の中で。
誰も。
動かなかった。
風が。
高い壁の隙間から入る。
吊り布。
ゆっくり。
揺れる。
床。
倒れた棚。
散った埃。
リナの銃口。
まだ。
青年へ。
向いている。
ネミティブの銃。
下がりきっていない。
カイルは。
入口。
誰を見ればいいのか。
分からないように。
リナ。
ネミティブ。
ルイス。
順番に。
見る。
青年だけが。
壁際。
立っている。
ルイスの顔。
両手。
見える位置。
何も。
していないように。
頭の奥。
声。
静か。
(君ならどうする)
青年は。
少し。
息を吐く。
「……分かんない」
(珍しい)
「うるさい」
リナの言葉。
まだ。
耳に残っている。
私に決めさせて。
0にも。
選ばせた。
ネミティブにも。
自分で見ろ。
自分で決めろ。
何度も。
言った。
リナにも。
そう言った。
なのに。
今。
本当に。
それを要求されると。
怖い。
リナが。
自分で決めた先。
何がある。
青年には。
分からない。
そして。
分からないまま。
待つことに。
耐えられなくなっている人間が。
もう一人。
いた。
ネミティブ。
「カイル」
低い声。
カイルが。
顔を上げる。
「入口」
「何」
「塞げ」
カイルの眉。
寄る。
「誰を」
「全員」
「俺も?」
「ああ」
「何で」
「いいから」
カイルの顔。
固くなる。
「よくねえよ」
青年の目が。
カイルへ。
動く。
初めてだった。
ネミティブの命令に。
カイルが。
はっきり。
逆らった。
ネミティブも。
分かった。
目。
一瞬。
止まる。
「お前は銃渡した」
カイルの肩。
僅かに。
上がる。
「俺に隠して」
一つ。
「リナと話して」
二つ。
「ここまで来させた」
三つ。
ネミティブは。
倉庫を。
見る。
リナ。
銃。
ルイス。
さっきまで。
ラドだったもの。
「その判断が」
一拍。
「今これだ」
「だから?」
カイルは。
引かない。
ネミティブの目。
冷える。
「もう」
一拍。
「判断する側じゃない」
倉庫の空気。
一段。
冷たくなる。
青年の胸。
ざら。
小さく。
何かが擦れる。
(聞いた?)
「うん」
(判断する側じゃない)
「聞こえてる」
カイルは。
ネミティブを見る。
怒っている。
納得していない。
それでも。
ネミティブは。
もう。
カイルの表情を。
見ていない。
「入口行け」
「兄貴」
「行け」
「でも」
「三回言わせんな」
低い。
カイルは。
しばらく。
動かない。
呼吸。
一度。
二度。
やがて。
視線を。
外した。
ゆっくり。
入口へ。
向かう。
従った。
納得したわけではない。
ただ。
従った。
ネミティブには。
それで。
十分だった。
青年の喉。
少し。
乾く。
ラドなら。
止めた。
多分。
おい。
そこまでにしろ。
そう。
言った。
青年は。
言わない。
「ルイス」
青年が。
顔を上げる。
「うん」
「壁から離れるな」
青年は。
ネミティブを見る。
「このまま?」
「ああ」
「分かった」
簡単に。
従う。
両手。
見える位置。
肩。
力を抜く。
リナの目が。
その身体を。
見る。
青年には。
分かった。
また。
一つ。
リナの中。
繋がった。
「ほら」
リナが。
言う。
ネミティブが。
振り返る。
「何が」
「ルイス」
リナの銃口。
青年へ。
「何でお前の言うことだけ聞くの」
「今は」
青年は。
自然に。
答える。
「そうするしかないでしょ」
その瞬間。
自分でも。
少し。
遅れて。
気づく。
まずい。
「違う!」
リナが。
一歩。
出る。
「止まれ!」
ネミティブ。
声。
鋭い。
リナは。
止まらない。
「逃げ道塞ぐ!」
「俺が見てる!」
「見えてない!」
その一言。
ネミティブの身体。
一瞬。
固まる。
青年は。
見る。
肩。
首。
目。
息。
ラドが死んだ日。
背後。
見えなかった。
誰が押した。
分からなかった。
そこへ。
リナの言葉が。
刺さった。
「お前は!」
リナの声。
裂ける。
「こいつしか見えてないんじゃない!」
「止まれ!」
「私も見て!」
青年の胸。
痛む。
リナ。
一歩。
「私!」
もう一歩。
「ずっと!」
また。
「お前に!」
ネミティブの指。
銃。
握る。
青年の目。
そこへ。
落ちる。
(イース)
「分かってる」
(動かないで)
「分かってるって」
でも。
身体。
勝手に。
少し。
右へ。
出口。
距離。
無意識。
半歩。
リナの銃口が。
その動きを。
追う。
「動かないで!」
青年は。
止まる。
ネミティブの目。
ルイス。
動いた。
リナ。
追った。
銃。
揺れた。
そこだけ。
切り取る。
危険。
青年には。
そう見えた。
いや。
違う。
ネミティブに。
そう見えた。
(君が作った見方)
青年は。
返さない。
ネミティブが。
リナを見る。
「銃」
「何」
「床に置け」
「嫌」
「置け」
「嫌」
「リナ」
「私は撃たない」
「知ってる」
リナが。
止まる。
「……え」
ネミティブの銃口。
少し。
下がる。
「今は」
「撃つ気ない」
「なら」
「でも」
一拍。
「持たせない」
リナの眉。
寄る。
「何で!」
「必要ない」
「誰が決めたの」
ネミティブは。
迷わない。
「俺」
青年の胸。
きゅ。
縮む。
(あ)
「……」
「私の銃だよ」
「関係ない」
「関係ある!」
「今はない」
「何でお前が!」
「危ないから」
「私は撃たない!」
「聞いた」
「なら!」
「聞いた上で言ってる」
リナの顔から。
怒りが。
少しずつ。
消える。
代わりに。
もっと。
深いもの。
「私が言ってること」
声。
小さくなる。
「分かってる?」
「ああ」
「私が間違ってるかもしれないって言ったのも」
「ああ」
「間違ってたら下ろすって言ったのも」
「ああ」
「ルイスが北と会ってたのが本当だったのも」
「ああ」
「ラド兄がおかしかったのも」
ネミティブ。
一瞬。
止まる。
「……ああ」
リナは。
ネミティブを見る。
「じゃあ」
一拍。
「何が足りないの」
青年には。
答えが。
分かってしまった。
証拠。
違う。
情報。
違う。
ネミティブは。
もう。
それを求めていない。
ネミティブが。
一度。
息を吸う。
「全部」
「何が」
ネミティブは。
止まる。
でも。
言う。
「俺が」
一拍。
「俺が納得してない」
リナは。
しばらく。
何も。
言わなかった。
青年も。
何も。
言えなかった。
(君)
「黙って」
(これ)
「分かってる」
材料。
置いた。
自分で見ろ。
言った。
自分で決めろ。
言った。
ネミティブは。
本当に。
自分で決めるようになった。
ただし。
今では。
自分が納得しなければ。
他人の判断を。
認めない。
そこまで。
来ていた。
リナが。
苦く。
笑う。
「じゃあ」
「何」
「私が正しくても?」
ネミティブ。
答えない。
「本当に」
リナは。
青年を見る。
「こいつがラド兄だったとして」
青年の喉。
僅かに。
動く。
「私が最初から」
一拍。
「全部合ってたとして」
リナの目。
ネミティブへ。
「それでも?」
ネミティブは。
黙る。
青年は。
横顔を見る。
答え。
もう。
分かっている。
ネミティブが。
ゆっくり。
言った。
「俺が確認する」
リナの顔が。
崩れた。
青年は。
目を閉じたくなった。
でも。
閉じなかった。
ずっと。
自分で見ろと。
言ってきたから。
# 第十六章 最後の一歩
「……分かんないよ」
リナの声。
怒鳴り声より。
小さい。
でも。
高い天井。
倉庫の奥。
そこまで。
届く。
「何」
「お前が正しいかなんて」
涙。
一つ。
落ちる。
「私には分かんない」
リナは。
カイルを見る。
「私が正しいかも」
首。
小さく。
振る。
「分かんない」
「カイルだって間違える」
ネミティブを見る。
「みんな間違えるじゃん!」
「だから俺が――」
「でも!」
声。
裂けた。
「間違えるのまで」
一拍。
「取らないでよ!」
ネミティブが。
止まる。
青年の呼吸も。
止まった。
0。
赤。
青。
どちらでも。
青年は。
待った。
理由は。
何でもいい。
選ぶ。
間違える。
それも。
本人のもの。
リナ。
今。
別の言葉で。
同じものを。
言っている。
「私が間違えるのも」
リナが。
一歩。
出る。
足。
震えている。
「私が怖がるのも」
もう一歩。
「私が決めたい!」
「リナ」
「ずっと!」
リナの声。
倉庫の壁へ。
跳ねる。
「誰かいなくなるの怖かった!」
息。
詰まる。
「だから何もしたくなかった!」
銃。
震える。
「でも」
一歩。
「それでも……!」
青年は。
壁際。
動けない。
(止める?)
「……」
(イース)
青年は。
喉を。
動かす。
「何て言えばいい」
(知らない)
青年の眉。
寄る。
「君」
息。
「こういう時だけ役に立たないね」
(君が作ったんだよ)
胸。
痛い。
「分かってる」
声に。
出た。
リナの目が。
青年へ。
動く。
「何」
青年は。
首を振る。
「……何でもない」
半歩。
横。
ただ。
リナとの距離を。
取ろうとした。
それだけ。
リナの銃口が。
青年を。
追う。
「動かないで!」
「リナ!」
ネミティブ。
鋭い。
「私も見て!」
リナは。
泣いている。
「こいつだけじゃなくて」
一拍。
「私も見てよ!」
青年の胸。
完全に。
止まる。
ラド。
ネミティブ。
ルイス。
ずっと。
青年自身も。
ネミティブの視線を。
自分へ。
集めていた。
正しい情報。
半分の情報。
足りない一片。
そこへ。
ネミティブが。
自分で。
答えを作る。
リナは。
その外へ。
少しずつ。
押し出された。
青年が。
半歩。
下がる。
ネミティブには。
逃げるように。
見えた。
リナが。
青年を。
追う。
銃口。
揺れる。
ネミティブの指。
動く。
青年には。
今度は。
全部。
見えた。
リナの銃。
ネミティブの銃。
指。
肩。
角度。
距離。
青年の口が。
開く。
「待――」
間に合わない。
「リナ!」
ネミティブ。
最後の警告。
リナが。
振り返る。
涙。
濡れた目。
銃口。
僅かに。
揺れる。
一度。
ネミティブへ。
そして。
青年へ。
戻ろうとする。
ネミティブが。
決めた。
パンッ!!
乾いた音。
倉庫。
叩く。
青年は。
動けない。
リナの身体。
小さく。
跳ねる。
「……え」
銃。
手から。
落ちる。
カランッ。
床。
転がる。
金属音。
妙に。
長い。
リナが。
息を吸う。
「……っ」
入らない。
胸。
脇。
服。
赤。
じわ。
広がる。
一歩。
後ろ。
足。
力。
抜ける。
ドサッ。
「リナ!」
カイルが。
走る。
ネミティブは。
動けない。
止めるつもりだった。
銃を下ろさせる。
ただ。
それだけ。
「……リナ?」
ようやく。
身体が。
動く。
駆ける。
膝。
床。
リナを。
抱き起こす。
呼吸。
浅い。
速い。
吸おうとする。
途中。
止まる。
「おい」
ネミティブの声。
出ない。
「おい!」
傷。
押さえる。
血。
温かい。
指の間。
滲む。
赤。
手。
一瞬。
ラド。
あの日。
重なる。
「リナ!」
「布!」
カイルが。
横へ。
滑り込む。
ネミティブの反応。
遅れる。
「何」
「布!」
カイルは。
自分の服。
掴む。
ビリッ。
破る。
傷へ。
押し当てる。
リナの身体。
小さく。
震える。
「……やだ」
青年の喉。
締まる。
ネミティブが。
顔を近づける。
「何」
リナ。
息。
浅い。
「やだ……」
涙。
怖い。
青年には。
分かる。
これは。
死ぬかもしれない人間の顔。
「怖い……」
「大丈夫」
ネミティブの口から。
反射で。
出る。
リナは。
苦しそうに。
首を振る。
「……分かんない」
「大丈夫だから」
「分かんないって……」
涙。
頬。
「私……」
呼吸。
「死にたくない……」
青年の胸。
強く。
掴まれる。
同じ。
自分も。
死にたくない。
「死なねえ!」
ネミティブ。
「怖い……」
「大丈夫!」
リナ。
また。
首を振る。
「決めないで……」
ネミティブの顔。
止まる。
「……何」
「私が……」
息。
「怖いって……」
一度。
詰まる。
「言ってんだから……」
リナは。
ネミティブを見る。
「大丈夫って……」
一拍。
「勝手に……決めないで……」
倉庫。
静か。
青年は。
息が。
できない。
(聞こえた?)
「……うん」
(最後まで)
「うん」
最後まで。
リナは。
同じ。
自分の感情まで。
他人に。
決めさせなかった。
リナの目。
ゆっくり。
横。
青年へ。
「……ルイス」
ネミティブが。
顔を上げる。
青年は。
壁際。
まだ。
いる。
「いるよ」
声を。
出すだけで。
喉が。
痛い。
リナは。
小さく。
首を。
横。
「違う」
一拍。
「見て」
青年の身体。
冷える。
「……」
「見て……」
ネミティブが。
青年を見る。
青年は。
ルイス。
いつもの顔。
心配そうな目。
下がった眉。
僅かに開いた口。
何もしていない人間。
その顔を。
作っている。
(やめて)
「……」
(その顔)
青年は。
奥で。
小さく。
答える。
「分かってる」
壊そうとする。
でも。
何を。
どう。
壊す。
笑うな。
泣くな。
逃げるな。
平気な顔。
するな。
何も。
分からない。
その瞬間。
口元が。
ほんの僅か。
動いた。
青年自身にも。
分からない。
笑ったのか。
顔を保てなかったのか。
いつもの。
嘘の笑顔が。
反射で。
出たのか。
ただ。
リナは。
見た。
「……ほら」
小さい。
声。
それだけ。
ネミティブが。
リナを見る。
「何が」
返事。
ない。
カイルが。
顔を覗く。
「リナ?」
「リナ」
ネミティブの手。
肩。
触れる。
「……おい」
揺らす。
「リナ」
動かない。
「……おい」
声。
弱い。
「リナ」
倉庫。
静か。
風。
外壁。
かた。
かた。
ネミティブの手。
赤い。
ラド。
あの日。
同じ。
青年の胃。
縮む。
(イース)
「……」
(君)
青年は。
唇を。
動かす。
「僕」
一拍。
「何もしてない」
頭の奥。
長い。
沈黙。
(……本当に?)
青年は。
リナを見る。
ラド。
押した。
でも。
リナには。
触っていない。
撃っていない。
銃も。
渡していない。
噂。
置いた。
顔。
借りた。
言葉。
置いた。
ルイス。
作った。
ラド。
使った。
北。
混ぜた。
自分で見ろ。
自分で決めろ。
何度も。
言った。
全部。
置いた。
「僕は」
声。
出ない。
(材料を置いただけ?)
青年の目。
閉じる。
その言葉。
今まで。
何度も。
自分を。
守った。
でも。
今。
初めて。
逃げ道を。
塞ぐ。
青年の喉。
震える。
「……違う」
小さい。
本当に。
小さい。
初めて。
言った。
「それじゃ」
一拍。
「済まない」
頭の奥。
声。
何も。
返さない。
青年は。
目を開く。
リナ。
見る。
もう。
何も。
選べない。
もう。
間違えることも。
怖いと言うことも。
できない。
その姿を。
青年だけが。
最後まで。
見ていた。
そして。
リナが残した。
一つ。
「見て」
その言葉だけが。
青年の中へ。
残った。
第十五章「決めさせない」/第十六章「見て」でした。
今回は、これまでずっと続いてきた**「自分で決める」という言葉が、完全にひっくり返る話**です。
青年はこれまで何度も、
「自分で見ろ」
「自分で決めればいい」
と言ってきました。
0には、本当に選んでほしかった。
ネミティブには、自分で選んだと思わせたかった。
そしてその積み重ねによって、ネミティブは確かに自分で判断する人間になりました。
ただし。
その先で、
「自分で決める」
が、
「自分が納得しなければ認めない」
へ変わってしまいます。
第十五章で一番大きいのは、ネミティブの
「俺が納得してない」
だと思っています。
証拠が足りないわけでも、情報が足りないわけでもない。
最後の基準そのものが、自分になってしまった。
そこへリナが真正面からぶつけるのが、
「間違えるのまで取らないでよ!」
という言葉です。
正しくなくてもいい。
間違ってもいい。
怖がってもいい。
その結果まで含めて、自分で選びたい。
そして撃たれた後まで、リナはそれを手放しません。
「私が……怖いって、言ってんだから……」
「大丈夫って……勝手に……決めないで……」
生きるか死ぬかという場面になっても、最後まで「自分の感情を他人に決めさせない」。
ここは、0から続いてきた「選ぶ」というテーマへの、リナなりの答えになっています。
そして青年側にも大きな変化があります。
ラドの時は、
「僕、撃ってない」
「押しただけ」
と、自分と結果を切り離そうとしました。
今回はもっと遠い。
リナには触れてすらいない。
撃ったのもネミティブです。
それでも、青年はもう逃げ切れません。
噂。
ラドの顔。
ルイスという存在。
「自分で見ろ」という言葉。
全部、自分が置いたものだった。
だから最後に、
「材料を置いただけ?」
と問われて、
「……違う」
「それじゃ」
「済まない」
と認めます。
ここで初めて青年自身が、「自分は直接やっていない」という逃げ道を自分から塞ぐことになります。
そして最後に残るのが、リナの
「見て」
という言葉。
これまで誰より人を観察してきた青年が、今度は自分のやったことを「見ろ」と突きつけられる。
ここから先、その一言は青年の中に残り続けます。




