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「は?」
表情筋をコントロールできず、仮面の隙間からでもわかるように深緑の瞳が大きく見開いて驚愕していた。
予想外の言葉を投げつけられて、雪華の思考が停止していた。
「何も、直ぐに返事を欲しいわけではないが。
頭の片隅に考えていても、良いではないのか?」
スバン国王は、返事を急がないがゴリ押しをしてくる。
「・・・御冗談を?」
なんとか、声をしぼりだす雪華。
「しごく、真面目に話してるが」
雪華の言葉に、即座に打ち消してくるスバン国王。
「私の両親より遥かに、年が離れているのだが・・」
雪華は厭味ったらしく、拒絶の返事をする。
「王侯貴族の間では、政略結婚なら長寿なので大して年齢は関係ないと思うが」
すかさず、雪華の懸念を打ち消していく。
「・・・そもそも、両親の仇に嫁ぐとか無いに決まっているだろう?
それに私は、貴国の王太子を打ち取ったのだから、息子の仇にあたるだろ?
その他に、そなたの次男の右腕を切り落としたり、そなたの右目を射抜いた。
どこに、婚姻に繋がる要素があると言うんだ」
雪華は必死に、お断りの言葉を投げつける。
◆
目を白黒させて、拒絶の言葉をはき続けるサーチェの娘の必死な様相に溜飲が下がる。
別に思いつきで、サーチェの娘に求婚を提案したわけではない。
スバン国王は、雪華の問いに直ぐに返答せずにもったいぶって無言で見つめ返していた。
戦には負けを認めたが、この国の港を諦めた訳では無いのだ。
基本的なスペックは父親似であろうとも、サーチェの娘なのだ。
愛しい従妹殿のサーチェに似た部分が探せば、無数にあるのだ。
サーチェを娶れなかったのだから、サーチェの娘でも良い。
呆きれば、それまで。
この国の港を手に入れれば、手に入れられなかったサーチェの代わりにならなくとも、処女の証である仮面を付けた私に敗戦と、右目の消失の痛みを刻んだこの娘を抱ければ溜飲は下がる。
縁国の戦後の食料事情も乏しいとみたのだ、互いに悪い話ではない。
サーチェの娘はどうでるか、じっくり観察していた。
雪華は仮面の隙間から垣間見えるサーチェ譲りの深緑の瞳は、スバン国王を射抜く如く強い眼力で睨み据えてくる。
縁国の女王の肝が据わった辺りは、父親譲りの勝ち気な性分のようだ。
鬼神と謳われた英雄としての素晴らしい剣技も、身体能力も、スバン国王の望む強い子供を生み出す母体としてとても魅力的な身体能力を縁国の女王は有していた。
それ以上に、鬼神と謳われたこの女王を蹂躙することこそに、とても魅力を感じているのだ。
怒りに燃える深緑の強気な眼差しは男の嗜虐心を掻き立てることを、20歳の幼い女王は気づいていない。




