1-8
「何の思惑からの話か知らんが、現実的な話ではない」
なんとか、罵倒する言葉を飲み込みながら言葉を紡ぐ雪華。
スバン国王はあごをさすりながら、怜悧なオレンジの眼差しで縁国の女王を見つめながら、
「ここに着くまでに、縁国の街道を馬車で通って来た。
山、畑は焼け落ち、草木一つない荒野が続いていた。
食料事情が厳しいのではないのか?」
ぐうの音も出ないほどの、縁国の現状について淡々と述べる。
途端に、雪華は奥歯をギリッと噛みしめる。
スバン国王の指摘してきた事は、事実なのだ。
反論のしようのない、現状がこの縁国に横たわっているのだ。
「そなたらには関係のないことだ」
雪華はツンと、そっぽをムキながら指摘された現実を、逸らそうとする。
スバン国王は腰をあげ立ち上がると、雪華の座る椅子の傍らに歩むと跪く。
ガッタッ・・・、雪華も立ち上がってスバン国王から距離を持とうと動き出す。
が、雪華の手を掴まれ両手で握り込まれ、スバン国王に囚われる。
「離せ!!」
流石に追い詰められた雪華は、拒絶の言葉を放つ。
「何を怯えている?
傷つける意思はないし、私の話を聞いてくれないか?」
スバン国王は朗らかに笑いかけながら、雪華が怯えないように言葉を選びつつ声をかける。
それでも、掴まれた手を離そうと必死な雪華。
スバン国王はその年相応の縁国の女王の姿に苦笑すると、屈むと縁国の女王の掴んだ手の甲に口吻を落とす。
「改めて、言わせてもらう。
私の花嫁にならないか?」
スバン国王は、いけしゃあしゃあと不快な言葉を並び立てる。
不快極まりない言葉の羅列に、顔が歪みそうになる雪華。
グッと、言葉を飲み込み深呼吸を重ねる雪華。
仮面の奥の深緑の眼差しは、怒りに炎を宿らせて睨み付けてくる。
追い詰められた縁国の女王は、クルクルと表情を変えながらスバン国王の言葉に怒りを無言で募らせていた。
「そう、邪険にするでない。
この婚姻には、双方にメリットだってある」
スバン国王は、この婚姻申込みには政略結婚の側面があることを伝える。
それでも、スバン国王の言い分が胡散臭いと雪華は判断していた。
「せっかくの提案ですが、お断りさせて頂きます」
雪華は思いっきり壁を作った状況で、声を強張らせて話の流れをぶった切る。




