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しばし、両者は視線を絡ませるが雪華の方から視線を逸らす。
「柩は、そちらの台に置いてくれ」
雪華はスバン国王の長男の生首を置いた卓上の正面で三メートル程離れた場所にある台を指差しながら、指示をする。
スバン国王は巨大な柩を軽々と抱え直すと、縁国の女王の指示に従い柩を指定の台ヘ降ろした。
雪華は今すぐにでも、父の首から下の遺体を確認したい衝動に襲われるが拳をギュッと握り込み、立ち上がろうとする自身を叱咤して姿勢を正したまま傍らに立つ叔父上に視線を向ける。
主君である雪華の視線を受け止めると、宰相である叔父ベルベットは頷く。
雪華の代わりに、前王であり兄上の遺体を確認するために柩に近づく。
叔父が父上の遺体の確認に柩を開ける動作から、視線をスバン国王に移す雪華。
「そなたの息子の生首は、そちらにある。
父の遺体が本物であれば、返還する」
条件付きだが雪華は付け加えて、スバン国王に息子の生首の在り処を告げる。
スバン国王は勝者である縁国の女王に、会釈すると翡翠の陶器が置かれてある卓上に歩み寄る。
スバン国王は陶器の蓋を持ち上げ、陶器の中を覗き込む。
この翡翠の陶器には、中身が腐らないように氷冷魔法が掛けられている。
長男の生首を感慨深く覗き込む、スバン国王。
眉一つ動かすことなく、スバン国王は自身の長男の生首を見下ろしていた。
◆
宰相ベルベッドは、兄の遺体を見下ろし目頭が熱くなり涙が零れそうになる自身を叱咤して立ち尽くしていた。
身体の大きさは兄でよく似ている。
首から上を切り落とされている状況の遺体に、絶望感を覚える。
首から下の兄であったはずの遺体を見回す。
兄の遺体も氷結魔法がかけてある柩に保管されたようで、まったく腐り落ちることなく生前の綺麗なすがたのままをしていた。
決定的な兄の身体の特徴を探して視線を彷徨わせる。
ハッとした宰相ベルベットは、兄と思われる遺体の右掌を開いて確認する。
兄と思われる遺体の右手の平を覗き込むと、ほっと安堵のため息が漏れる。
右手の平には子供の頃に出来た古い傷だが、真剣白刃取りの練習でケガした兄の手のひらの傷が未だ生々しく鎮座していた。
宰相ベルベットは顔を上げ、玉座に座る姪である雪華に視線を向けると実の兄であることを伝える為にゆっくり頷いていた。
雪華は叔父上の真摯な視線を受け止めると、父の遺体であることが確定した。
母が死んだあの時に、父が同時刻に亡くなっていたはずなので父が生きている望みなどなかった。
母が亡くなり、火葬していたあの日にスバン国王が父の生首を持って現れた。
父の生首も損傷が激しく、父と断定はできていないが母が死んだ事で父の死も確定していた。
最初っから分かっていたのだ。
両親は命を共有する呪を掛け合っていたのだから。
雪華は大きく深呼吸をすると、スバン国王へ視線を向けていた。




