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忙しなく、動き回るメイドや執事を無言で雪華は見下ろしていた。
宰相の采配で、スバン国王へ返還するものを卓上に並べていく。
卓上には、大きなスイカが入るようなサイズの翡翠色の陶器が鎮座し、周囲に献花されていた。
この翡翠色の陶磁器の中身は言うまでもなく、雪華の打ち取った敵国のスバン国王の長男の生首を入れてある。
本日は、雪華の父の遺体の一部が2年ぶりに返還されるのだ。
2年前のあの日。
目を閉じれば、2年経った今も鮮明に思い出す。
雪華の目の前で母が吐血して、絶命したのだ。
一瞬で母を喪い、
母の遺言通りに、縁国の王都の入り口で母の遺体を燃やしていたところに、スバン国王が父の生首を持ってやってきたのだ。
現在の縁国の墓所には、父の生首と火葬され白骨化した母の遺体が埋められている。
やっと、父の首から下の遺体が返還されるのだ。
雪華は物憂げな視線で、忙しなく動き回るメイドや執事を眺めていた。
一変するように、玉座の間に慌てて走り込んでくるメイドの姿があった。
「スバン国王様お一人で、いらっしゃっております」
緊急の状況を雪華に伝えると、会釈をしてメイドは持ち場に戻った。
◆
スバン国王は縁国の城門の正門に5台の馬車で乗り付ける。
馬車と兵の城内へ侵入が断られる。
敗戦したことによる献上品を、縁国の衛兵に引き渡す。
前縁国王の遺体の入った棺は縁国の衛兵に渡すのを拒み、スバン国王自らが棺を片手で抱え上げると城内へ足を踏み入れた。
執事の案内で女王の待つ玉座の間へと、スバン国王を案内していく。
玉座の間の扉の前に到着すると、スバン国王の存在に扉を守る衛兵は唖然と見上げていた。
コホンッ
執事はスバン国王の呆気を取られている衛兵に聞こえるように、大きく咳払いをした。
気を取り直して、自身の姿勢を正した衛兵は玉座の間へと続く正門の扉を押し開いた。
スバン国王の容姿は、赤い髪にオレンジ色の瞳。
だが、右目には眼帯をしていた。
何故ならスバン国王の右目は雪華がつぶしたのだ。
2m超えの上背に、衣服から覗く肌には無数の傷跡が生々しく残っている。
長年戦場を駆けてきたスバン国王の勲章のような傷跡が全身に存在している。
玉座の間に入室したスバン国王の視線は、玉座に鎮座するまだ幼さの残る小柄な女王へ視線を向けると値踏みするような不躾な眼差しを縁国の女王へ向けていた。
雪華とスバン国王の視線が絡む。
不快極まりない視線に顔色一つ変えることなく、視線を逸らすのも癪なので雪華はあえて迎え撃つように眼差しを逸らすことなく受け止めていた。




